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第1話:魔法少女泣かすわ

 ──────魔法少女。

 数十年前までは空想の産物、漫画やアニメにしか出てこない代物だったそれ。

 ある時現れた侵略者と、それに対抗するように出現した魔法少女。彼女らの存在によってこの地球は守られているのだが……まあ当然、光があれば影もある。

 ──────だが。


「あああああっ『Sing New World』のライブ中止になったあああああッ!?」


 このアホをその『影』……被害とみなすことを躊躇うのは、今までコイツ……コイツらから受けた被害諸々が原因だろうか。




「で、何? ライブ中止なったの?」


 十年来……いやもう少し付き合い長いか。まあざっくり十年来の幼馴染にそう声をかける。スマホで電子書籍のラノベを読み、缶のコーラを飲みながら。視線? 向けるわけなくない?


「うう……周年ライブが……」


 そう言って蹲る我が愚かな幼馴染。うわ、涙と鼻水と涎で顔面ぐちゃぐちゃじゃん。


「寄るな触るな近付くな汚ねえ」


「楽しみにしてたライブが飛んだ人間に言うことかなあソレ!?」


 そう叫んで飛びかかってくるのを、雑な回し蹴りで打ち落とす。情緒不安定で喧嘩っ早い癖にフィジカルクソザコナメクジな幼馴染をこうして蹴り倒すのはもう慣れた。


「で、今回は何だ? 『M&M』の占拠? それとも『邪神軍』の転送ゲートでも開いたか?」


「いや普通に『戦闘』で会場が吹っ飛んだ」


「おぉう……」


 悪の組織と戦う魔法少女たちも頑張っている。頑張ってはいるのだが……悲しいかな、基本的に選ばれるのは戦闘訓練なんて受けていないティーンエイジャーばかり。何も分からず初陣に挑み、急いで倒さなきゃと焦る。そんなこんなで、『魔法少女が戦うと割と被害が出る』というのが日常茶飯事となってしまった。

 一戦あれば電車が止まり、侵略を迎え撃てば緊急休校。オンラインでの受講やテレワーク制度が進んだお陰で当初よりは悪影響は少なくなったものの、たまに交通インフラとかに直撃すると悲惨なことになる。重要施設などは復旧も早いのだが……今回被害を受けたのはコンサートホールという娯楽施設。再建までは短くても半月といったところだろう。つまり来週のライブは緊急中止ということだ。


「つっても無くなっちまったもんはしゃーねーだろ。一応後日再開催するんだろ?」


「それはそうなんだけど……来週を楽しみにしてたのに、延期ってのがさあ……」


 まあ気持ちはわからんでもないが。


「……こうなったら」


 あ、嫌な予感。こういう時の俺の勘はすっごく当たるんだ。実績は両手両足で指折り数えて指が足りなくなるくらいにある。先月は……多次元侵蝕型捕食生命体の出現だろ? 後は銀河を貪る星雲巨人到来の予言書発掘、超古代文明の生物兵器復活……うん。何回巻き込まれて、何回厄ネタ解決してんだろうな俺。


「……………寝るか」


 全ては未来の俺に任せよう。未来の俺に殺害予告されようと知ったことではないからな。




 数日後。うっきうきでやって来た幼馴染の顔にムカついたのでアイアンクローで頭蓋を軋ませ悲鳴を30秒ほど上げさせた後、渋々ながら解放。そうして案内されるがままに幼馴染の家へと向かう。


「ほら、地下においで!」


 このアホの幼馴染が()()した地下。ドルオタ・陰キャ・自己中心的の三拍子揃ったダメ人間なのだが……それを代償としたかのように、コイツは無駄に天才だった。特に理数系。その才能で遊びまくった果てに特許やら何やらを山ほど抱え──────何故かその申請などの手続きは手伝わされた──────趣味と実益が完全にシンクロしたバカタレになってしまった。で、そんなバカは今回何をやったんだ。


「聞きたい? ねえ聞きたい?」


「神楽呼ぶぞ」


「大人しく話させて頂きます」


 一瞬クソムカついたが、ある女の名前を出せば速攻屈服する。そんなに嫌か、お前の姉貴呼ばれるの。良い人じゃん、料理美味しいし優しいしお前ほどじゃないけど賢いし。ただちょっと並外れたシスコンとクソレズを併発しててお前の処女膜を狙ってるだけで。……いや充分な理由だな……俺だって仮に完璧超人な兄貴がいたとしても、ソイツが俺のケツ狙ってたら殺すしな……。


「……気を取り直して。この世界……というかこの地球を狙ってる侵略者と、それに対抗する魔法少女たち。その戦いの問題点って何だと思う?」


襲撃(カチコミ)かけてきた尖兵シバくだけで後手後手なこと」


 まあそういうのまだよく分かってないらしいし仕方ねえけど。今分かってるだけでも海底に沈んだ超古代文明とか機械生命体、宇宙人、異世界の邪神軍が地球(うち)狙ってんだっけ?


「一応他にもマントルの超高温に晒され続けて極めて高い熱耐性を得た岩石怪人を尖兵とする地底人とか、後単発で野良の超越存在とかもいるけどねー……まあそこは被害規模はともかく組織としては木っ端だからいいや」


 別に良くねえけどな。普通に街一つ存亡の危機に陥るくらいのが朝昼晩で起きかねないし。


「問題は! 『戦闘の被害が大き過ぎる』ってこと!」


 そう言うと、先日吹き飛んだライブのことを思い出したのか怒りを顕にする幼馴染。でもお前そのニュース来る二時間前までは魔法少女の戦闘とか『おーやっとるやっとる』くらいの扱いだったじゃん。実害が自分に及んで手のひら返すのが人の常とはいえ理不尽じゃねえの?


「正論で殴られると暴力で返したくなるからやめて? しかも暴力では逆立ちしても勝てないし」


 お前弱っちいもんな。何でパワードスーツ付けてなお俺との喧嘩で瞬殺されるんだろうか。


「それは君が異常なんだけどね……? まあそれは置いとくとして。だからボクは考えた。『魔法少女が戦っても被害が大きい』のは、極端な話『戦闘能力不足』なんじゃないかって」


 ……まあ、一理あるけど。お前ら幼馴染集団が要らんことする度に尻拭いして、その後制裁で締め上げてる俺からすると実際魔法少女連中は……あまり言いたくないが『弱い』。

 と言っても、火力不足とかそういう意味じゃない。普通に最終的には侵略者を倒したり撃退している以上、最大火力自体は問題なく必要な分は持っている。寧ろ足りないのは『操作能力』の分野だろう。

 大火力だからこそ、制御を誤ると甚大な被害をもたらしてしまう。だからこそ高い精密制御技能を必要とするのだが……魔法少女たちはその制御が、あるいは制御のための練習すら満足に出来ていない。政府曰く『魔法少女の戦闘に消費されるエネルギーの安定生産が出来ない』らしく、訓練で消費することすら渋っているようだが……まあそこは俺らみたいな一般市民が邪推したって仕方ないからどうでもいい。

 問題は、『周囲に被害を出さずに侵略者を倒す』ほどの技術を持つ魔法少女が少ないこと。使う機会は本番のみ、練習ではイメトレだけ。そんな過酷な試練を、未成年で『たまたま選ばれただけ』の少女に課すというのは余りにも理不尽だ。その結果、序盤は周囲に被害を出すまいと抑えながら戦うしかなくなり……相手にトドメを刺せるレベルの大技は『周囲に被害を出す前提』で放つか、相手が散々暴れて『撃っても周囲の被害が今更増えない状況』で放つことになる。


「こうして考えてみると……余りにも不憫っつーか、不遇な環境だよな。魔法少女」


「ちょっと同情はするけどね。でもそれはそうとボクが楽しみにしてたライブを台無しにしたのは許さない……!」


 コイツ一回締め上げ直すか。そんな俺の邪気を感じ取ったのかは定かではないが、話は本題へと移る。


「で、結局何する気だよ。魔法少女のエネルギーにも対応した収束装置でも作って売りつけるから特許申請やれってんならやるけど」


「やるんだ……」


 何度やらされたと思ってんだ。今更その回数が1増えるくらいに思うところはない。


「まあその善意は有難いけど、本題は真逆。今回ボクが作ったこれを何処かに売りつけるつもりはないし、特許なんて以ての外だよ」


 ……うわ、数日前感じた『嫌な予感』が再起動してきた。言っとくがこれ反応した時は絶対ヤバいこと起こるからな。的中率95%だぞ。……訂正。『絶対』ではないな。『ほぼ確実に』くらいにしとこう。


「……で、何する気だよ」


「ボクが作ったシステムで特撮変身ヒーローやって人気奪って魔法少女泣かそうぜ!」


「やる」


 今回は5%の方だった。

主人公くん

男。一人っ子。

幼馴染たちに巻き込まれてCoCとかDX3rdのシナリオじみた案件に月3くらいのペースで首を突っ込んでどうにかしてる、自分のことを一般人と思い込んでるナチュラルボーンゴリラ。


幼馴染ちゃん

女。貧弱クソもやし。

主人公くんの幼馴染の一人。理数系の超天才だが、その代償に陰キャでドルオタで自己中心的というダメ人間になってしまった。魔法少女と侵略者の戦いで、推しのアイドルグループの周年ライブが延期になったので激おこ。

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