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第八話 人類とは

「……そんなに、可笑しかった? 私は真剣だったんだぞ」


 憮然とするステファニー。


「いや、悪い。……プッ。そうだな、この姿を見せるのは初めてだったな。……ククッ。人を食べるわけないだろ」


 笑いながら弁明するロウ。

 ロウは自分が魔族であることをステファニーに打ち明けた。

 ロウは、魔族の大陸であるヨーモニー大陸から来た。魔族は外見上、人間と変わらない。総じて魔力が高いことと、角や翼などの特徴が現れた者がおり、そういった者たちは特に魔力が高い。

 ロウは普段、角と翼は目立たないように小さくしているとのことで、ステファニーは全く気が付かなかった。

 ロウは、ここにいる目的も話してくれたが、この小屋を拠点とし、ナロー大陸に住む人間たちの事を観察するためだと言う。

 しばらく小屋で過ごすうち、ステファニーが辿り着いた。気紛れでステファニーを助け、ちょうど良かったのでステファニーから情報を仕入れた。


「そうか、情報収集に利用されてたんだ……」


 呟くステファニー。


「まあ、そう言うな。それもあるが、話相手が欲しかったんだ」


 宥めるロウ。


「ちなみに、この大陸に天使とかいるのか?」

「ーーえ? 天使? いないと思うけど」

「いや、俺を見て悪魔って言ってたから。こっちには天使でもいるのかと」


 ロウの翼や角を見て、悪魔と思ったステファニーである。

 一般的に、天使や悪魔という存在は、お伽噺である。遥か大昔に、いたとされる存在だ。


「……魔族を見たことがなかったから」


 ステファニーは小さく呟き、頭を整理させる。



【人類】は五種族に分類される。


【人間】

【獣人】

【エルフ】

【ドワーフ】

【魔族】


である。

 先の四種族はナロー大陸に住み、魔族はヨーモニー大陸に住む。ロウは、その魔族だった。

 魔族は四種族に比べて圧倒的に数が少ないが、魔力が高く肉体は頑健だ。また、人族に本能的な忌避感があるようで、ナロー大陸とヨーモニー大陸に交流はないとされる。

 ただし、これには『基本的には』とか『表向きには』という言葉が付け加えられる。

 裏では密貿易や人身売買など、公に出来ないことが横行していた。法の目を掻い潜り、危険を冒してまでも手を染める輩は後を絶たない。



 ステファニーは疑問を感じ、


「でも、なんでロウは情報を集めるの? 魔王でも生まれて、戦争を始めるの?」


とロウに訊いた。

 数十年から数百年の周期で、四種族ーー人間たちと魔族は戦争をする。

 ヨーモニー大陸には不定期に【魔王】と呼ばれる存在が生まれて、ナロー大陸に戦争を仕掛けるからだ。魔物を操る魔王がナロー大陸に攻め込み、大きな争いになる。


「そうだ、魔王は生まれた。ーーただ、俺は別に魔族と人間たちが争わなくてもいいんじゃないかと思った。だから、人間を観察してみたんだ」


 ロウが答える。


「そうか……。しかし、魔族と争わなくてもいいなんて、誰も賛成しないんじゃ……」

「だよな? 俺もそう思うし、勇者にも信用されなかった」

「勇者?」

「ああ。今回出掛けるとき、人と会ってくると言っただろ? 勇者と会って話してみたんだ」

「へ!? そ、そんな簡単に……」

「いやー、軽率だったかな? 戦闘になった」

「そうだろ、勇者が魔族を見たら退治するだろ」

「まあ、それが普通だろうな。ただ、俺は疑問に思った。人間たちと魔族、共存してもいいんじゃないかと」

「うん……!?」

「戦う理由なんて、ないからな」

「……!」

「とはいっても、道のりは険しい。魔王という存在は魔物を操ってナロー大陸に攻め込むという定説があるが、それは間違いだ。【魔王】と【勇者】が両方生まれて一定の期間経てば、魔物の活性化が始まって暴れ出す。魔王はそれをうまくナロー大陸へ追いたてて、攻め込んでいるんだ」

「ーーちょっと待って! どういうこと!?」

「何故なのか、わからない。わからないが、魔王と勇者が共に存在していると魔物が凶暴になって暴れ出すんだ。……どちらかがいなくなると、魔物は鎮まる」

「魔王と勇者は強いんでしょ? 暴れる魔物を討伐できないの!?」

「魔物が大陸中で暴れだすんだ。魔王や勇者だけでは手が回らない。どっちにしろ、これまで天敵同士だったんだ。急に馴れ合いなんかできない。魔王は、ナロー大陸に攻め込むことで魔族を守る。勇者は、迎え撃つことで人間たちを救う」

「ーーなんか、おかしいよ!」

「ほんと、おかしいよな。魔王は、勇者を倒してもナロー大陸に侵攻できなくなる。勇者を倒すことで、魔物が鎮まってしまうから、戦力が足りず、返り討ちに合うんだ」

「なんっ……なんなんだ……」

「なんだろうな」

「茶番だ……!」

「馬鹿らしいな」

「馬鹿だよ……」


 ステファニーは、泣き出してしまった。

 悔しい。

 なんでこんなに悔しいのか、自分でも理解が追いつかない。


「……それで、別れと言った件だが」


 ロウは、静かに切り出す。


「勇者と闘うの!?」

「そうだ」

「意味のない戦いじゃない」

「そうだ。だが、どちらかが消えなければならない」

「ーー魔王と勇者だけが闘えばいいじゃない!」

「……そうだな。それがいい」

「だったら!」

「俺が、魔王だ」

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