第三話 廃墟の【楽園】
ステファニーは廃墟で銀狼と仲良くなり、以前にも増して廃墟に通うようになった。
銀狼には『ルミナ』と名前もつけた。
「キミは『ルミナ』だぞ」
と言った時、一瞬銀狼は固まった。
「ん、もっと強そうな名前が良いのかい? じゃあ『銀王号』とか『ギンガダン』とか『ギンガム』みたいな?」
ステファニーは、銀狼が『ルミナ』という響きが気に入らないのかと別な名前を提案してみる。
対して、思いっきり首を横に振る銀狼。
「やっぱり『ルミナ』?」
首を縦に振る銀狼。
「よーし、キミは『ルミナ』だぞ! 私の友達だ!」
銀狼改め、ルミナの頭をグリグリ撫でるステファニー。
ルミナは憮然とした感じで喉を鳴らしたが、ステファニーはルミナの感情が喜びで爆発したのがわかった。
「ははは!」
ステファニーは、ルミナの首に抱き付いた。
ルミナは、抵抗する。ステファニーは、ルミナを撫で回す。一人と一頭は、じゃれ合った。
――時間は、ゆっくりと過ぎた。
ステファニーは、充実した日々を過ごす。
街での生活も安定している。休みの日は、廃墟でルミナとのじゃれ合いに興じる。
廃墟にいると、ルミナ以外にも小動物が寄って来た。初め、リスやウサギがステファニーの手に鼻面を押し当てて来たときはギョッとした。
(ルミナに食べられてしまうーー)
ステファニーの心配を他所に、ルミナはしれっとしている。
ゆったりと寝そべったままだ。それどころか、リスやウサギはルミナの背中に乗っかる。
「き、キミたち、それはやめた方がいいかも知れないな……」
さすがにステファニーがリスとウサギをつつくが、リスとウサギは素知らぬ顔だ。
更に、ルミナの上で跳び跳ねる。ルミナは頭に来たのか、カプッとリスとウサギを噛み、ステファニーの方へ投げ飛ばす。
一瞬、肝が冷えたステファニーだが、リスとウサギが興奮して何回もルミナの背中に乗り出したのを見て唖然とする。
その度にルミナはリスとウサギを口で咥え、ステファニーの方へ投げ飛ばす。次第に面倒くさくなったのか、されるがままになってしまうルミナ。
「ははは、キミたち、やるね」
ステファニーは腹を抱えて笑ってしまった。
それからも、ステファニーとルミナがいると廃墟には色々な動物や鳥が集まってきた。
ステファニーはルミナと戯れ、小動物たちに囲まれて過ごす日々を送る。幸せを感じた。
ーーここは、ステファニーだけの【楽園】だ。
が、それは長く続かなかった。