EARTH
レビュー執筆日:2019/12/5
●初のアルバムでありながら、すでに独自の世界観が確立。
【収録曲】
1.幻の命
2.虹色の戦争
3.インスタントラジオ
4.青い太陽
5.死の魔法
6.世界平和
7.白昼の夢
世界の終わり(現・SEKAI NO OWARI)がメジャーデビュー前にリリースしたアルバム。彼らは「バンド」という形態を取っていながらも、楽器が絡み合ういわゆる「グルーヴ感」よりもメロディや歌詞を聴かせることをかなり重視しており、今作では打ち込みを多用していることもあって、それがかなり強く表れています。そのメロディに関しては、ポップで分かりやすく明るいものが多いのですが、それに乗せる歌詞には色々と興味深いものを感じられました。バンド名にもある「世界の終末」や「死」、「孤独」等重みを感じられるテーマを描いたものが多く、それが前述のポップなメロディや聴きやすさを重視した4つ打ち中心のサウンドが組み合わさることによって、明るさと切なさと不穏さが入り混じった独特な世界観が見事に醸し出されています。
個人的には、『白昼の夢』がかなり気に入りました。後半で曲調が一気に盛り上がる展開は歌詞以上に曲中の主人公の心情を雄弁に語っており、曲の持つ光と闇が混ざり合った雰囲気に強く引き込まれます。また、『インスタントラジオ』や『青い太陽』は良い意味で曖昧な表現が上手くなされており、「カボチャを割って生まれた」や「僕達の空に咲く青い花」等といったフレーズから様々な想像が膨らみます(『虹色の戦争』のように「歌詞がちょっと直接的過ぎるかな」と思う曲もあるのですが)。
ポップの皮をかぶった深遠な世界観を見事に見せつける本作。彼らにとっては初のアルバムだったようですが、そうとは思えないほど充分な完成度と個性を誇る作品になっているのではないでしょうか。
評価:★★★★★