第4話
え、じじい、今レイって・・・
俺は混乱した。今までレイがいなくなったことに対して悲しみの素振りさえ見せなかったのに。そしてまた、じじいも困惑していた。
「ノエル・・・俺は今・・・なんて言った・・・?」
「レイって・・・」
俺がそう答えたと同時にじじいは倒れ込んだ。
「おい!大丈夫か!どうしたんだ急に!」
「頼む。1人にしてくれ。」
今まで聞いたことがないほど弱々しくかすれた声でそう言い放った。
「あぁ、わ、分かった・・・」
なんだ?なんでじじいはあんなにうなだれているんだ。レイ、レイが関係しているのか?
夢の中でレイを見たとか?
いや、じじいはレイの名前を叫んだことを動揺していたようだったな。
レイの名前を言ってはいけないのか?
ダメだ。何一つわからない。
俺はしばらくこの疑問が頭から離れなかった。気づいた時にはもう数時間が経過していた。
すると、じじいがむくりと起き上がり、何かぶつぶつ言いながら部屋の隅の方へ向かう。
何かを見ている。なんだろう。
でも俺は話しかけることができなかった。
今まで強く当たってたのに加えてあんなにも落ち込んでいたのだから。
今日は何も話しかけずにそっとしておいた方がいいと思い、黙っていた。
明日、じじいがいつものにやけた顔で話しかけてくるのを少し期待していた。
でも、それは叶わぬ願いだった。
翌朝、物音で目を覚ますと、目の前にロボットがいた。今までの物品搬送用とは違う。おぞましさを感じる。
ふとじじいに目をやると怯えた表情でロボットを見ながら立ちすくんでいた。唇が真っ青で目は泳いでいる。
「やめてくれ・・・頼む・・・」
振り絞ったような声はもちろんロボットには届かない。
なんでじじいはこんなに震えて・・・
俺は訳が分からなかった。
「じじい・・・?お前何かしたのかよ・・・?」
俺の言葉は全く届いていない。
ふいにロボットが動き出した。じじいの元へ一直線に向かっている。
じじいは膝から崩れ落ちた。
「ノエル・・・ごめんな。お前を・・・ずっと見守っていたかった。お前は・・・家族だ」
何当たり前なこと言って・・・
そう言おうとした瞬間ロボットはじじいを持ち上げた。そして、折りたたまれていたであろうゲージを取り出し、中にじじいを入れた。
俺は動けなくなった。
固まった俺の前を通り過ぎて行くロボット。
後ろからじじいを乗せたゲージがついて行く。
「生きろ」
これがじじいの最後の言葉だった。