プロローグ
俺たちは弱者だ。
人間がロボットに支配されて数百年、今ではロボットに敵う存在などいないに等しい。
“あー、今日も誰かが売られていく”
生まれた時から白い壁に囲まれた生活、もう飽き飽きだ。
なんでこんな施設に閉じ込められなきゃいけないんだ?
考えれば考えるほど腹が立ってくる
ー先代のじじいから教わったこの施設の秘密ー
「いいか、ノエル ここは人間の牧場だ。いや、牧場以下だな。」
ニヤニヤとした目つきで俺を見ていたあいつも数ヶ月前に売られた。あいつからは考えられないほど怯えながら・・・
売られるならいいじゃないか。どうせペットとしてとか、奴隷としてとかでロボットの下僕に成り下がるんだ。こんなちっぽけな施設から出られるならよっぽど嬉しい。
レイだって、売られていっただろ・・・
俺とじじいとレイは家族ぐるみの仲だった。毎日じじいから要らないうんちくを聞かされて、一緒にご飯を食べて、寝て、そんな当たり前の生活がただただ楽しかった。それがずっと続くと思っていた。なのにー。
「レイ!お前明日売られるってどう言うことだよ!なんで言わないんだよ!」
「ごめんね、ノエル。私、寂しくって。言ったらノエルだって気にしちゃうでしょ?」
「普通言うだろ!俺たち家族じゃないか!」
「やめろ、ノエル。レイはお前のために言わなかったんだ。レイの気持ちを汲んでやれ。お前ももうしょんべん垂れるようなガキじゃねぇんだぞ。」
「うるせぇなじじい!じじいも悲しいんだろ!ニヤニヤしやがって!ムカつくんだよ!」
「ノエルやめて!私明日行っちゃうんだよ?もっと楽しくすごしたいなぁ最後くらい」
レイは俺に、今にも泣きそうな潤んだ瞳で笑いかけた。
「ごめん、レイ。じじいも。明日まで一緒にいよう。離れてても家族だ。」
「うん」
この時の俺はまだ何も知らなかった。