情けない帰り道 【月夜譚No.203】
私の幼馴染みは柄が悪い。学ランを着崩してだらしなく、茶に染めた髪は本人に似合わず明るくて、サングラスをかけた日には何処の不良かというほどだ。
数年前までは、彼は大人しい何処にでもいるような目立たない人間だった。それが偶然読んだ漫画雑誌に載っていた不良漫画に憧れを抱いてしまったらしく、突然このような風体になってしまったのだ。
とはいえ、いくら見た目を変えたところで中身が伴うことはなく、本物の不良に絡まれれば尻尾をまいて逃げ帰る臆病者に変わりはない。
電信柱の陰から向こうの通りに屯する他学校の不良達を怖々と見ている彼に、私は溜め息を吐いた。きっと以前に絡まれたことのある不良達なのだろう。
私は怯える彼に歩み寄って、その手首を掴んだ。びくりと飛び上がった彼が振り返って、驚いた目を返す。私は彼に見えないように俯いて、ついふふっと笑ってしまった。
そのまま彼を引っ張って、家路に就いた。
全く、手の焼ける幼馴染みである。戸惑うような様子の彼に、私はまた口の端を緩めた。