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女神はギャンブルへ、教徒はせっせと布教活動③

「爺さん本気で言ってるんだな」


「もちろんです。これまでもその聖水の力で治してきました。最後まで使いきれなかったら、それは私の罪です」


 そう言って俯くブハッサに別の聖騎士が肩をたたいた。

 そしてナイトヘルメットを脱ぐと


「おい、爺さん、これ治せるか?」


 顔の半分を占める大きな火傷の痕を見せてきた。酷い火傷だったのだろう皮膚が黒ずんでしまっている。目も若干変色し、実は良く見えてないという。


「目が悪い事がバレたら俺は即刻聖騎士団を辞めなければならい。これでも俺の収入に家族の生活がかかっている、辞めることなんてできない。その聖水が本物だというなら俺に使ってくれ」


 ブハッサは少し悩んだが、これが没収され残りが無駄になるより、ここで使い切ってしまった方がいいと考えた。


「分かりました、それではその瓶をそちらの聖騎士様にお渡し下さい。普段は手のひらに聖水を垂らすのですが、甲冑とグローブをつけてますので、直接顔に1滴ほど垂らしてください」


「1滴でいいのか?」


「1滴で十分です」


 疑いつつもほほへ1滴垂らしてみる。


 再生は始まり皮膚は綺麗な肌色へ、目もまるで何もなかったかのように元に戻った。


「おい、誰か鏡持ってないか? 目が良く見えるぞ!!」


 覗き込む他の聖騎士たちも感嘆の声をあげる。


「先輩の顔が元に戻ってる! よかったっすね」


「ハイポーションでもダメだったのに、本当に聖水じゃんかよ! これヤベーんじゃね?」


「本当なら俺も膝の痛み治して欲しいんだが」


「構いませんよ。一滴づつお使いください」


 聖水を回して聖騎士達の古傷や膝・腰の痛み、持病などを治したのだった。

 聖騎士達からお礼を言われ、空の瓶を胸ポケットへと戻してもらった。


 聖水は本物だろうと聖騎士たちは確信していた。

 と、なるとこの爺さんは一体何の容疑で捕まっているか、聖騎士達の疑問が深まる。


 偽りの聖水を使用した詐欺とは聞かされていたが、詐欺に当たるような事がなくなってしまったからだ。


 それでも任務である以上連れて行かなければならないのが聖騎士であった。


「爺さんには申し訳ないが、俺たちも組織の中にいるものだ。上からの命令に背くわけには――」


「大丈夫ですよ。理解しております。聖騎士の仕事を最後までまっとうしてください」


「わりいな。もし誤解が解けて解放されたときは1杯奢らせてくれ」


「俺もだ!じいさん」


「俺は2杯でもいいぜ!」


「楽しみにしていますよ」


 楽しい道中となったが、フォーリア入ると容疑者と聖騎士が仲良く話していることろを見られるわけにはいかないので、誰も喋らなくなった。


「ここまでだ爺さん」


「ありがとうございます。聖騎士様達に女神様のご加護があらんことを」


 入口で教会の者に引き渡しを行い、ブハッサは中に入っていった。

 姿が見えなくなったところで聖騎士全員が敬礼をした。


 連れてこられた先はフローラ教の総本山、グレー・マレーブ大聖堂。その地下にある罪を犯した者が悔い改めるための部屋、いわゆる独房だ。


「持ち物は全て没収する。明日の正午、公開尋問を始めるそれまで大人しくしてろ」


「かしこまりました。教本は持っていても構いませんか?」


「ダメだ。今更聖人ぶってどうするんだ詐欺師め」


「そうですか、では祈らせていただきます」


「せいぜい悪魔にでも祈っていろ」


 没収した持ち物は教本と少しばかりの金が入った財布、そして空の瓶だけだった。


 枢機卿達も迷っていた。

 詐欺師と結び付けようにもこれだけでは無理がある。


 何か決定的な詐欺の証拠が欲しかった。


「1ついい案があります」


「なんでしょうリーフ猊下。是非聞かせていただきたい」


「その瓶に聖水が入っていたのでしょう? ならばその瓶に、水でも入れておくのはどうでしょうか? そうすればまた聖水の完成です。公開尋問をしてついでに詐欺師の指でも切り落として聖水をかけてあげればいい。治せなければ詐欺の証明となりませんか?」


「民衆に見届け人となってもらうわけですな。詐欺師どもへの見せしめにもなる素晴らしい案だと思いますぞ」


「いかがでしょうかルマーブ教皇?」


 この話し合いには最高位のルマーブ教皇も参加していた。


「許可する」


「ありがとうございます。それでは明日、女神の名のもとに詐欺師を見事に裁いてご覧入れましょう」


 翌日は朝早くから大聖堂前の広場に人が集まっていた。

 正午から公開尋問をすることが前日から告知され、民衆を見届け人にするとしていたからだ。

 ちょっとしたお祭り騒ぎよのうになってしまっているが、パフォーマンスを見てもらうには絶好の機会だとリーフは捉えていた。


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