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ポケットの中のデカイおもちゃ

 バグラ王国の魔王、トット・ベルクスは混乱に陥っていた。


 殲滅級の魔法が使用された以降どの国も宣戦布告は無く、また大きな被害報告も無く数日が過ぎ魔法六大魔術師の2名もアヤフローラ教国を出国したとの情報が届いた。


 全て何かの間違いだと思っていた矢先、またアヤフローラ領上空から過去に例を見ないほどの強大な魔力反応を捉えその調査に追われることとなったのだ。


 会議室は多くの者が出入りし、家臣達も頭を抱えながらも、未来に希望を見い出すために議論を重ねていた。


「魔王様! 解析部より報告書が上がって参りました」


「すぐ読み上げろ」


「はい! 魔法発動点の推定魔力量は7000億……。まだ被害報告は上がってきていませんが、この魔力量から被害を想定するとカスケード領だけでなくアヤフローラ国の5割、隣接する小国は蒸発した可能性があるという事だそうです」


 一瞬、その場の時間が止まったかのような静寂に包まれた。


 その場のいた聡い者は無条件降伏しかないと直ぐに感じていた。

 抵抗などは意味を持たず、矛先がこちらに向く前にひれ伏すしかないのだと。

 報告の内容が国と国との戦争などいう話では無くなっているからだ。

 世界のパワーバランスが今まさに崩壊するシナリオがその報告から読み取れた。


 魔力量7000億はもはや生物では出せない威力であり、ドボックス帝国にある最大級の魔石の約5000倍。世界中にある魔石をかき集めても届くか分からない数値になっている。


「そんな事はありえるのか?」


「解析部も何かの間違いではないかと、何度も何度も数値を見直しております。しかし結果は変わらないそうです」


「魔王様! アヤフローラ南ムーメ領の諜報員より書簡です」


「今度はなんだ」


「ムーメより北西よりの上空にて、山をも超える巨大な浮遊する物体を視認。ただ明確に見ることはできずそれが何かは不明。町の噂だと浮島が現れたとの話もあり。何らかの攻撃があったとされるが、被害は不明。とのことです」


「浮島だと、そんな――」


 普段なら馬鹿々々しいと一蹴していた。おとぎ話の中の物が外に出てくるなど現実味がないからだ。

 しかし、おとぎ話のような噂と、冗談のような数値を説明するには、空中要塞アデバルディアがそこにあったとしか考えられなかった。


「まさか、誰が……。封印を解いたのか?」


 長命な魔王でさえ本物などは見たことが無い。だが、存在は知っていた。一夜で焦土と化した国を見たことはあったからだ。そこは何もかもが焼き尽くされ1000年にわたり生命の存在を否定する土地となり果てていたのである。


 その存在は危険視され、多くの賢者を犠牲にし封印したとされていた。


「皆は王が乱心したと言うかもしれない。だが、私は国民の命を守る責任がある。例え愚王と呼ばれようと私の責務を全うする」


 そう言うとグッと拳を握り、耐えるように声を震わせながら続ける


「これより浮島改めアデバルディアの所有者、所有国に対して全面降伏をここに宣言しようと思う」


 一際大きなどよめきが起こり、待ってくださいと止めに入る者もいれば、諦めたように頷き下を向く者もいる。


「魔王様、戦わずにして負けを認めるなどあってはなりません。どうかご再考を」


「空中要塞アデバルディアと戦っては本当の意味で国を滅ぼす事になる。それだけは避けなければならない」


 国の特徴として亜人族や魔族が多い国であるため、何かと標的にされやすい国であることは歴史的にも多かった。


 魔王が統治する国なので、攻める理由をつけやすかったのである。


 ただそれも、他国が軍を送ってくるなどではなく、勇者によるパーティー単位での侵攻がほとんどだった。


 それなので魔王と親しい英雄や賢者が間に入って取り繕い、今の魔王は生き延びることができている。


「今は所有者又は所有国を探すことを第一とする。そしてわが国には降伏のする準備があることを伝えたい」



 この魔王の発言はすぐに国中を駆け巡り、他国にまで届いた。

 バグラの魔王が存在を認めた事で信憑性が増し、一気に広がっていった。


 中には魔王を騙そうと近づく者もいたが、降伏の条件はアデバルディアを魔王に見せる事となっており、見せる前に何かを要求してきた者は全て捕らえられ国家転覆罪とされ密かに処刑されていったのだ。


 見せればバクラの全てが手に入るのに、その前に何かを要求してくる時点で嘘なのは明白だからだ。


 しかし、魔王の考えとは裏腹に数日経っても偽者ばかりで本物からは何の音沙汰もない。

 更には大損害があったと思われていたカスケード領はブラックベヒーモスが町で暴れた程度で住民たちは健在である追加の情報が入っていた。


 家臣たちの中にも浮島の情報は何かのフェイクなのではないか、他国の策略ではないかと疑いを持つ者も多かった。


 それでも魔王は7000億の魔力量の正体を掴むまでは降伏宣言を取り下げることはしない、と頑なに家臣達の意見を退けていた。


 当の浮島は現在、ケーナのポケットの中でタイムの管理下に置かれている。

 コピーエーナは攻撃を見たので危険性を知っているが、ケーナはまだ記憶を共有してないのでデカイおもちゃが増えた程度の認識でしかなかった。

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