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妃の条件⑥

 出発前に今回の報酬を頂くのと、勇者親子の件がある。


 マトンは「一体どこから連れて来た」としつこく聞いてきたが、はぐらかしてハイドのもとに向かったのだ。


「ケーナが合わせたいというから、何か事情があるとは思っていたが、これは想定外だぞ」


 会った瞬間に、親子に対して見破るを使ったのだろう。

 こちらが伝える前に察してくれたようだ。話が早くて助かる。


「セバステ、この母親をここで働かせろ。お前の管轄だ、ちゃんと見てやれ。そして子供は騎士見習いとし騎士団で預かる事とする」


 いくらなんでも勇者とはいえまだ子供、低レベルなのに騎士見習いはキツイと思う。

 

 ちょっと心配になり改めてノルクのステータスを見ると、剣術の心得スキルを習得させレベルが10も成長していた。


 ---------------


 ノルク・ステビア 男 6歳 幸運の勇者


 LV16 HP24 MP15

 STR 29 VIT 20 MND 8

 SPD 12 DEX 6 INT 9

 LUK 999


 スキル

 福音の恩寵A+ 起死回生A+ 剣術の心得F


 ---------------


 このわずかな期間で仕上げてきている。


 空間収納から出る前にゼンちゃんから面倒を見ると言ってくれたので取りあえず任せてみたのだ。


 とは言っても所詮はスライム相手の修行なので期待は全然してなかったのだけど予想以上の成果を上げてきた。


「ありがとうございます。王様!」


「は! は! は! まだ気が早いぞ小僧。まだ正式な王ではない」


 勇者の保護はこれで大丈夫だ。ハイドならノルクに近づく者を見極められるし、騎士団の中にいればいざという時も守ってもらえる。そして自分自身が成長できる環境があれば自然と強くなるだろう。

 流石幸運の勇者だ。


⦅ぼうずに渡してほしいもんがあるんけんど、たのめっか?⦆


 ゼンちゃんからの念話。

 アイテム一覧に新しいものが増えている。ノルクへのプレゼントだろうか。


⦅それおよ。師匠からだってことで渡してくれぇ⦆


 コソッと取り出し、取りあえず鑑定。


 ”プラチナリング エピック”

 アビリティ:ステータスコンシール

 追加効果:物理耐性アップ/魔法耐性アップ/


 細い腕輪型のアイテム。素材はもちろんプラチナスライム製だ。自分の体を素材にしてアイテム生成できるとは知らなかった。

 短い付き合いでも師弟関係を結んでいたのだろう。弟子思いのアイテムだ。

 しかし誰に似たのか、高価な物をほいほいとあげてしまっていいのだろうか。


 まぁ、ノルクがこれを売ることはないだろうと信じて渡すことにした。


「はい、コレ、師匠からの贈り物だよ」


「え、師匠が! ありがとうございます! すごく嬉しいです!」


(いい子だなぁ)


 魔物にも好かれるなんてほんと幸運。

 このまま真っ直ぐ育っていってほしい。



 最後は多くの人に見送られ王宮を出ていくことになった。

 表向きには「婚約破棄」ということになっている。

 どこかの悪役令嬢にでもなった気分だ。

 ハイドには素敵なお嫁さんが見つかることを祈っている。


 どうせなら姉さん女房になりそうなネイトレスがいいと思う。

 着飾って喋らなければ誰も騎士だとは気づけないぐらいの見た目をしてるし、なにより真っ直ぐ正直者で嘘とかつけないタイプだ。


「あいつら、くっついちゃえばいいのに」


 なんて戯言をいってみた。



◇◇◇



「ハイド坊ちゃま。ケーナ様ご一行はルクセンブルク領を出ていかれました。予定通り追跡はそこまでとなります」


「ご苦労。セバステ2つ質問がある」


「なんなりと」


「まず1つ目だがセバステはケーナを殺せるか?」


「それは命令でしょうか?」


「違う、仮に敵対した場合の話だ」


「そうですね……。ナインドールを使い、1対10に持ち込めたとして時間稼ぎになるかどうか。できる限り敵対しない方法を考えます」


「それでいい、勘は鈍ってないようだな」


「ありがとうございます」


「ケーナの髪飾りに化けていた、未知のスライムでLv393。さらにテッテと呼ばれていたあの娘、半人半魔の小娘でありながら7大スキルの一つである色欲持ち。7大スキルは世界に7人しか所持できないとされているからな。テッテ・ベルクス、魔王トット・ベルクスの娘で間違いないだろう。その者達と普通に接している者がただの小娘なわけはない。見破らずともそれくらいは分かる」


「異様な気配は髪飾りからでしたか。しかしLv393のスライムなど聞いたことがありません。種族によるレベル上限をゆうに超えております」


「特殊個体であるのは確かだろうが、それでも疑問が残るな」


「ケーナ様の前に、スライムにも勝てぬかもしれません」


「昔は武神と豪語していたセバステがスライム相手に弱音とは、これは面白いぞ」


「おやめください、坊ちゃま。それは100年も前の話ですよ」


「とはいえ偶然ではあったが、ケーナと関わりを持てたし勇者を預かることで借りも作れた。悪くないと思うぞ」


「あの勇者様、ゆくゆくは国の戦力になりますね」


「ああそうだ。おまけに魔王の娘が簡単に王宮内に侵入できることも分かった。あの小娘が本気で色欲を使えば防ぐ手段はない。この国程度簡単に乗っ取られていたかもな。は! は! は!」


 セバステの苦笑い、ハイドの高笑いで一区切りとなる。


「それともう1つ俺の見破るスキルが効いているのかどうなのか、わからぬ者がいた」


「ケーナ様に続き3人目ですか」


「スキルを使用しても言動と本心とが一致しすぎていてな、何かしら偽装系のスキルでも使っているのかと思っている」


「その者は最近見たのでしょうか?」


「近衛騎士の格好をしていたぞ」


「近衛騎士でしたら全員顔を存じてます。特徴を言っていただければ」


「女だ」


「それでしたら、ネイトレスしかおりません」


「ネイトレスは知っておる。あいつは俺がここに連れてきたのだからな。だが以前とは顔つきや体つきが変わっているような気がするのだ。それどころか、そのネイトレスを見ていると心が落ち着くというか何というか……いったいなんなんだあいつは、以前のネイトレスとは別人のようだぞ」


「侵入者の情報は入ってきておりませんが、ネイトレスに何者かがなりすましている可能性も捨てきれません」


「もしネイトレスがやられたとなれば大変なことだぞ」


「わかっております。某とネイトレスの2人しか知らない話がござます。慎重に探りを入れてみましょう」


「任せた」


◇◇◇



 ここから数年後、とある吟遊詩人がとある国の王とその王を守る女騎士が恋に落ちた詩を歌っていたそうだが、現実離れしすぎた内容であまり人気がでなかったらしい。

 逆に人気がでたのは、とある王族が婚約者破棄した年増の貴族令嬢に命を狙われるスリリングな詩だそうだ。

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