運命は勇者に従う①
突然の次期魔王の座。
テッテの華麗な術中にはまった形にはなってしまった。
でも冷静に考えれば現魔王やその部下たちがテッテのそんな我儘を許すわけがない。
ましてや人族である私が、魔族の王になどなれるわけがない。
たぶん、なんてことはない。
(大丈夫、きっと大丈夫)
そう言い聞かせ冷静さを保つしかなかった。
特別室を出て、カジノを出てたところでテッテが話掛けてくる。
「ケーナ姉様のご予定は、この後あるのかしら?」
「……内緒」
「では、明日のご予定はいかがかしら?」
「……秘密」
「かしこまりました。黙ってついてこい ってことでございますわね。ヨシエ、今後予定を全て変更いたしますわ。ケーナ姉様に同行いたしますことよ」
「その心構え見事。ルクセンブルク王国までの同行許可いたします」
なぜかマトンが許可をだす。
「ルクセンブルクに行かれて何をなさいますの?」
またマトンが先手を打ってしまい、詳細をテッテに話してしまう。
「妹様であれば、ケーナ様の晴れ舞台見届けることは当然かと思います」
「このテッテ、ケーナ姉様の優志えを見届けさせていただきますわ」
ここまでが予定調和のように進んでしまったが、たぶんツッコミを入れても何かと理由をつけてついてくる気だったのだろうと。諦めるしかないのかもしれない。
翌日、竜車は用意され一日遅れで出発となった。
昨夜はまたハイドの屋敷にお世話になったのだが、テッテの我儘も威力を増して一緒の部屋、一緒にお風呂、一緒のベッド、そして朝までおしゃべりという感じで常時べったりの状態。
ため息しか出なくなってしまった。
でも単純に姉という存在が嬉しかったのだろう。
今まで魔王の娘という立場で、対等な立場の者がいない状態だったのだ。
気を許せる間柄なんて貴重なのかもしれない。
(でもヨシエは我儘テッテをよくコントロールできるもんだ……ハッ)
と感心したのと同時に、カジノでの事件はヨシエの演技なのではないかと疑いをも持ってしまった。
ハイドは一足早く極楽怪鳥という空の運び屋を使って空路で向かったそうだ。
極楽怪鳥はとにかく金がかかるそうで、偽装婚約者程度だと揺れる竜車だ。
でも振動耐性を取得しておいたおかげでこの程度の揺れは伝わらない。
それを知っているのか知らないのかはわからないが、竜車に乗る前から眠そうだったテッテは私の膝の上に頭をおいて眠り始めてしまった。きっと安定していていいのだろう。
ヨシエが起こそうとしたが、こっちの方が静かなのでそのままにしてもらった。
ここからは暫く静かなので瞑想タイムだ。
レベルが上がったとき時に取得していたスキルの1つに並列思考Fがあった。
このスキルはガイドブックのおすすめスキルにもあるとっておきだ。
一度に複数の事を考えることができるスキルだけど体は1つなので使いみちが無いように一見思える。
でも同系統のスキルでも同時に発動できるという点においてはとても有効活用しやすいスキルなる。
例えば千里眼と鑑定眼のような同系統のスキルでも同時使用が可能になるので活用がよりしやすい。
今までは身を守るためにできるだけアブソーブを発動させていた。
そのせいで他の併用できるスキルに制限があったので切り替えが地味に手間だった。その制限が無くなり同時発動数が増えれば戦闘でも優位に立てる。
今回この竜車の旅で発動させたいスキルはもう決めてある。探索・感知・空間収納・解体上手・アブソーブの5つだ。なので並列思考のスキルレベルもナナスキルをつかって上げておく。
複数を常時発動させても分散させることができるので思考に負担が小さくなる。
早速竜車の中でスキルを発動。
【ビックホーンラビットを捕捉しました】
【収納しました】
【解体を完了、換金不可部位をエネルギーに変換しました】
【経験値、魔石、毛皮、生肉、角、を獲得しました】
(凄く快適!)
脳裏に表示を眺めるだけで戦闘が終わる。これが私流のモンスターとの戦い方だ。名づけて『〔た〕くさん倒せて、〔す〕ごく快適モード』略して『たすモード』だ。
戦闘が苦手な人向けにガイドブックに載せてもいいレベルかもしれない。
ただし探索スキルによる捕捉範囲を結構控えめにしておかないと、どっかの森のようにゴーストフォレスト化してしまうので気をつけている。
【ポイズンスネークを捕捉しました】
【収納しました】
【解体を完了、換金不可部位をエネルギーに変換しました】
【経験値、生肉、毒袋、牙を獲得しました】
もちろん対象はモンスターだけではない。
【オドリタケを捕捉】
【収納しました】
感知スキルのおかげで薬草や食料になりそうな物などのおまけもある。
基本的に人族や亜人族対象から外しているので収納されることはないが、希に森で迷子になっていそうな子供だったり、HPの少ない者だったりする場合は収納するかどうか思考がこちらに一旦返されることになっている。
ちょっとした人助けができるかと思って。
【ドスボアを捕捉しました】
【収納しました】
【解体を完了、換金不可部位をエネルギーに変換しました】
【経験値、毛皮、生肉、牙、を獲得しました】
出発前、御者のおじさんが私の身なりを見て
「そんな装備で大丈夫か?」
と心配してきた。
見た目はお嬢ちゃん。ギルドでも知らない受付嬢やお節介な同業者に同じようなことをよく言われていた。
猫目亭のアテシアから貰った防具と武器から買い替えや買い足しはしていないので、立派な剣や頑丈そうな盾などは持っていない。
アテシアは狩人だったので、狙った対象によって最低限の道具があればいい。
だけど冒険者は予想外の相手と戦う事の方が多い。
だからこそダガーナイフ1本で冒険者など心配しない方がおかしいのだろう。
しかし、それは相手と”戦闘”を前提とした話。
モンスターと対峙するまでに至らず、解体まで自動化であればダガーナイフすら必要無いと言い切れる。
スキルのおかげでモンスター出会う心配も無くなり、危険度も断然下がってくれる。
まるで複数のパーティーが周りのモンスタと狩りをしてくれいるのと遜色ないぐらい。
何事もないのが一番だ。
【人族を捕捉しました】
【収納しますか?】
一度千里眼で捕捉地点の様子を見てみると、倒れている女性とそれに寄り添っている子供が見える。
とりあえず鑑定してみる。
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エーコ・ステビア 女 29歳 死亡
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ノルク・ステビア 男 6歳 幸運の勇者
LV6 HP 9 MP 7
STR 3 VIT 4 MND 4
SPD 8 DEX 1 INT 3
LUK 999
スキル
福音の恩寵A+ 起死回生A+
称号 勇者
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「はひゃ!」
「きゃ!!!」
竜車のなかで思わず声をあげてしまった。
それにつられたテッテが飛び起き抱きついてきた。
マトンとヨシエは周囲を警戒しているが、竜車は止まることなくゴトゴト進んでいる。




