お手本のようなお誘い②
この執事やたら高いステータスを持っている。もしも争って負けることはないだろうが楽勝なイメージが沸いてこないのである。
(セバステ・カガバン、Lv288。347歳 種族が半人半魔かぁ どおりで……)
鑑定眼の途中で目と目が合ってしまってもニコッ とダンディな笑顔向けてくれる。私のスキル使用に気づいているのか、気にしていないだけなのか表情からは掴めない。
「御屋敷まで少々時間がございますので、ことの経緯を説明してもよろしいでしょうか?」
「あ、お願いします」
聞くに、主であるハイド・ルクセンブルクは絶賛王位争奪戦中だそうで。
兄弟はハイドを合わせ5人。ハイドは五男の末っ子。さらに王位継承者を全て合わせると8人になるそうだ。
しかし、ハイドは王位には興味が無く、兄弟の中でも優秀で温和な三男がなるべきだと考えている。
問題なのは王位を決めるのにこの国独自の風習があり、王になる者の嫁や婚約者がその王位を勝ち取る必要があるそうだ。
三男には既に婚約者がおり、その方だと王位を勝ち取るには絶望的らしい。
今のところ長男の婚約者が最有力候補だそうだが、この長男は典型的な自己中男で家臣達ですら長男以外なら誰でもいい状態になっているとか。
そこでまだ婚約者がいないハイドが、王位を勝ち取れる偽のお嫁さん候補を見つけだし、王位を獲得後この習慣を廃止させ王位を三男に譲る流れとなっているとのこと。
ここまで聞くと意外にいい奴じゃんと思っていた。
「あのー、私12歳なのですが大丈夫でしょうか?」
「婚約者に年齢は関係ありませんので大丈夫でございます。ハイド様も15歳になったばかりですしお似合いだと思います」
「王位はどんな決め方なのですか?」
「それですが、非常に運や度胸が必要でして、なのであのカジノで運や度胸がある方を探していた次第でございます。といいますのも決め方は魔石を用いましてそこに魔力を注ぎ、より多くの魔力を注いだ者が王位の資格を得ることが出来ます」
「意外と簡単ですね」
「因みに魔石は特別製の爆破魔石となっておりまして、魔力を注ぎ過ぎて爆破させてしまった場合は継承資格が剥奪されますのでご注意下さい」
「えっ、爆破魔石?」
全然いい奴じゃなかった。むしろただの捨て駒扱いと言ってもいいかもしれない。
「ご安心ください。爆破と言いましても手や腕が火傷程度で即死に至る事はありません。多少の火傷は大神官の奇跡により治しますのでご安心ください」
こっちが冒険者だからだろうか、重要なことをサラリと伝えてきた。
もし貴族の令嬢じゃ断られてもおかしくない案件だが、冒険者なら金でどうにでもなると思っているのだろうか。というかモンスター討伐にも使用される爆破魔石で火傷程度で済むとは思えない。
冒険者と言った時ちょっと嬉しそうにしていた意味がなんとなくわかった気がする。
「あ、あの、これって断る事って――」
「それでしたら、直接お会いしたときにお伝えしていただければと思います」
(それって王族のお願いを直接断れって事かよ。無理じゃん)
「最後に報酬についてですが、協力していただければ王位継承権獲得有無にかかわらず金貨1万枚ご用意いたします。もし王位継承権を獲得していただけた場合は後日、王に即位されたハイド様から追加の褒賞が贈られます」
「いち、まんまい……」
失敗しても1万枚。それだとちょっと話が変わってくるぞ。
それだけの金額ともなればカジノで稼いだ金貨と合わせると約6万枚。町の完全復興にはまだまだ足りないけど、頭金的な金額としては申し分ない額となるだろう。
領土を治めるカスケード家も湯水のようにお金があるわけでは無い。少しでも負担を減らして良くしてくれた家族に恩返しができるってもんだ。
「セバステさん、私やります!」
「ありがとうございます。ケーナ様なら必ずそうおっしゃってくれると思っていました」
偽装結婚とはいえ誰も悲しまないし、国が良くなるかもしれない。おまけに金貨ももらえる。人助けになると信じて乗ったことにしようと思った。




