ダブルアップだ……!③
うろうろと店内を歩いてみまわると、転生者が創設しただけあって知っているゲームもあれば全く見たこともないゲームもある。
せっかくなので体験したことのないゲームに挑戦してみようとマジックポーカーなるテーブルに座ることにした。そこには既に7人が座っていて最後の8人目となった。
「御着席ありがとうございます。こちらのテーブルを仕切らせていただきますディーラーのハートダインと申します」
深々と頭を下げるが、目と目が合う。
(うぁああ)
頭部に付いている目がこちらを見ている。
「あら、お嬢様。蜘蛛人族は初めてですか?」
「そうです。ごめんなさい、ちょっと驚いてしまって」
「全然気にしていませんよ。私は腕も多いし目も多いので、テーブル全体を把握できてこの仕事に向いてますの」
4本の腕を器用に使い白紙のカードをプレイヤーの前にササッと配る
「ルールの確認が必要な方はいらっしゃいますか?」
ハートダインがこちらを見ているような感じがしたが、大丈夫だ。
このゲームのルールならガイドブックに載っていた。
ディーラーが引く3枚のカードの合計に一番近い数字を持っている人が勝ちというもの。
ディーラーがカードを引く山札には0から50までの数字のカードがあり、その山札3つから1枚づつ引いてくるといった具合だ。
3枚一気見せるのでなく、1枚引いたらそれを表にしてベットやフォールドが無いか確認をしまた1枚引く流れとなり、掛け金で他のプレイヤーを蹴落とすが最大の醍醐味だ。
袋から金貨を取り出すフリをして空間収納から金貨を取り出す。その数金貨50枚程。
後から追加できないが、まずは試してみるところからだ。
全員が最初の支払いである金貨1枚を出したところでがゲームスタート。
配られた白紙のカードに魔力を込めるとそれに対応する数字が浮かび上がる。
魔法は発動できないが魔力を流すことなら普通にできる。
しかし、張りきったつもりはないのだがスグに最大の150の数字になってしまった。魔力の多い者にとってはかなり繊細な魔力操作が必要とされるのが魔術師に人気な理由なのかもしれない。
⦅なんで150なんだ?⦆
(ちょっと黙ってて)
⦅………。⦆
最初のゲームはすぐにフォールドして降りた。
最終的には92だった。降りて良かったと思う。
不思議なことにフォールドするとカードが白紙に戻り魔力が自分に流れ込んでくるのが分かる。
これなら魔力疲れなどにならいでずっと楽しめる。
次は半分の数字に当たる75あたりを狙ってみるのだがそれでも150となってしまった。
⦅さっきと一緒⦆
(ちょっと黙ってて)
⦅………。⦆
とりあえずディーラーの1枚目は見てみようとチェックするも、大きくベットした者がいて降りるしかない。
こちらの焦りがまるわかりなのだろうか………?
初心者なんて金づるでしかないのだろうか。
3回目は慎重に慎重を重ね、100000を超えるMND値を頼りに僅かに魔力を流れさせる。
このとき使用しているMPは1もない。
⦅よっしゃ!ええやんけ!⦆
(でもピンポンで数字を狙うのは難しすぎるね)
浮かび上がる数字は68。数字的には勝負ができる。
あとはポーカーフェイスを貫くだけ。
「ベット!金貨10枚」
(皆コールして!)
と願いとは裏腹に
フォールド×7
自分以外全員が降りてしまい勝負まで持っていけなかった。最低掛け金で金貨7枚は得ることができたが大きく勝負しないと意味が無い。
表情に何か出てしまったのか。
口角1つ動かしていない。
カードが見られていた。
テーブルに伏せてあるので不可能だ。
何か手がかりがないかと、テーブルに座る人達を見ていると、端に座っている同じぐらいの歳と思われる女の子がこちらをチラッと一瞬だけ見たのに気づく。
ただ、目線が合わなかった。
(こっち見てたと思うけど)
⦅ああオラを見てたぞ⦆
あ、ゼンちゃんか。
え、ゼンちゃんを?
なんで、ゼンちゃんを?
ふと思い出す。
150を出した時は頭の上で溶けるとように乗っていたが、68を出した時は嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねていたこと。
そして念話のスキルレベルをSにしていたこと。
SL.Sだと念話ができるだけじゃ無くなっていた、感情も相互に共有できてしまい簡単に伝わる状態になっていたのだ。
まさか、スキルを発動できるようにしたせいで自分の首を締めることになっていたなんて。
(ちょっとゼンちゃん、玉になってて)
⦅なんでぇえ?⦆
(いいから)
⦅わかった!わかったよ!そんなに怒らんくても⦆
銀の玉になったゼンちゃんをテーブルに置く。
その姿をみてフフフとほほ笑むハートダイン。
ディーラーも分かっていたみたいだ。
ここからが本当の勝負といったところだろう。
もう油断はしない。念話も一時的にシャットアウトだ。
数字の傾向としては92・103・122と大きな数字が出ている。
使用したカードは山札が半数になるまで再使用はされないので、どちらかと言えば小さい数が出やすくなっていると言える。
狙うは60前後
魔力を流すコツも掴めてきたので浮かんだ数字は57。
既に5枚の金貨がベットされているのでコールを宣言。
降りたのは1人。残るは6人
1枚目ディーラーのカードは11。
いい感じ。
更に倍をベット。合計10枚
1人降りて、残る5人はコール。
続けて2枚目のディーラーのカードが47。合計で58。
57を超えてしまったがベットしている以上後には引けない。更にベットだ。
金貨20枚に対して、4人が降りる。残るは1人はコール、あの同年代ぐらいの女の子。
最後のカードが表になった瞬間に、女の子の眉間に寄るシワ。
せっかくの可愛い顔が台無しだ。
ディーラーの引いたカードは0
合計58。57の数字を持つので+1の誤差だ。
負ける気がしない、もしあの眉間のシワがブラフだとするなら相当の演者だ。
迷わずオールイン。
グッと手に力が入るが、最後の一人も降りてくれた。
そして手元の77と表示されたカードをこちらに向けてくる。
それを眺めているとハートダインが
「見せてあげてもいいんじゃない?」
とアドバイスをしてくれた。
見せつける程悔しかったということなのかもしれない。
そもそも77という数字は強いといっていい数字だ。
その圧にも負けずに張り合ったからこそ相手もこちらの数字を見たいのだろう。
チラッ
と見せた57を見るやいなや、また眉間にシワを寄せていた。
使用した数字。流れの傾向。手元の数字をある程度狙える力。
これらに圧倒的に高い運の良さが絡んで50枚だった金貨は増えに増え、全員の金貨を総取り、結果914枚まで増えた。
席を離れる時にチップとしてハートダインに金貨を20枚程渡すと、
「あら、こんなに! マジックポーカー強い人、わたし大好きよ」
と頭を撫でてくれた。
休憩しようとソファーに座っていると、一緒のテーブルで戦っていた先ほどの女の子がトトトッと近寄ってきて
「わたしはテッテ! 今度は1対1で、勝負しなさい!!」
と指を指しながら挑戦を叩きつけてきのだ。




