1.3.学園生活(3)
神崎徐火は、生理不順に悩む女子生徒の悩み相談を聴き終えてから、腕時計を見た。その女子生徒は徐火のことを何度も美しいと表現した。徐火もまた自分自身が美しい容姿の持ち主であることに気づいており、時にはそれを利用する。
徐火に下心をもって相談に来る生徒がいることにはずいぶん前から気付いている。色気のない、できるだけ仕事にだけ専心している人間という風体を装っているが、下品な意図で徐火に近づいてくる男は少なくなかった。
男子高校生はまだかわいらしいと思うのだが、脂ぎった禿教員が男子高校生とそう変わりのない所作で近づいてくるのはおぞましい感じがする。曰く、私も個人的に相談に乗ってもらいたいですなあ、とのことだが、若さも美しさも知性も感じられないのがマイナス要素である。
徐火はESPの能力を応用して、その教員の睾丸の片方を破壊して遊んでみた。カウンセラーという仕事を始めてから色々と聞き及んだ限りでは、徐火を含めた女子にはあまりないことなのだが、男の子というのは虫を捕まえて足を引きちぎったり、蟻の巣にジュースを流し入れたりする悪ガキが少なくないらしい。徐火自身、他人に対する加虐心はあまりないのだが、マイナス要素しかない汚いおっさんの片方の睾丸を潰すというアイデアの魅力にはあらがえなかった。
全校生徒の前でその教師が話をしているときに、徐火は虚空へと意識を発散させた。自分が溶けていくような、空気が自分自身になるような感じ……そこから、チンパンジーの握力ほどの力をイメージして取り出し、教員の片方の睾丸を破砕した。
面白い光景だった。
ご立派な説教を垂れていた中年男性が、この学校の生徒が老人に席を譲らなかったのを別の老人が目撃してクレームを入れたという話をしたところで、
「ええ、皆さん全員がそういった配慮のない行動をするとは考えておりませんが、年を召された方に席を譲るのは社会の一員としての義務です。また、本校は、進学実績だけではなく、人間的に優れた教育をするということを目標として掲げており、その精神を大事にして一人一人が立派な……」
と続けて、急に、顔面が蒼白になり、前かがみに折れ曲がりながら
「立派な、立派な」
と繰り返す。何か問題でもあったのかと教員や生徒がざわついているなかで、教員は白目をむき、そのままうずくまった。泡を吹いて気絶してしまったらしい。
教員たちの間では何が起こったのかということは伏せられていたのだが、噂話は生徒中に広まっており、要するによくわからない理由で金玉がつぶれた男性教員が気絶して運ばれたのだということはもう公然の秘密となっている。
その様子があまりにも滑稽だったので、徐火は笑いをこらえるのに必死だったのだが、いたずらというものはいたずらそのものよりもそれを外巻きに眺めている人の感想のほうが面白いということを知ったのは初めてのことだった。
ある男子生徒が他の男子生徒に「立派な金玉潰すぞ」と言ってゲラゲラと笑っていた。思春期の男子高校生にいいおもちゃを与えたものだと思い、徐火は楽しくて仕方がなくなった。少しずつ何かがおかしくなっていることを徐火が自覚していないわけがなかった。




