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1.2.学園生活(1)

田中祥子は、クラスの中で目立たない存在だ、と自覚している。彼女は彼女が自分自身で考えているよりも整った容姿をしているが、人目を惹くほどかわいいわけではない。彼女の元々の髪質は非常に強い黒で、そのままでは制服も洋服も似合わないので、少しだけ色を抜いている。目立ちたいというわけでもなく、全体のバランスを考えて少しだけでよかったので、やや暗めの栗毛色に調整している。

 彼女は自分が取るに足りない人間であるということに薄っすらと気付いていた。中学生の時には特に努力をしなくても成績も上位だったため、自分は無理しなくてもいい大学に入ることのできる優れた頭の持ち主だと勘違いしていた時期もあった。しかし、進学校に入ってみると、丁寧に勉強をして何とか上位層に食い込めなくもない程度だということが分かった。

 体が小さく、体力があまりないので、スポーツが得意なわけでもない。クラス長に立候補したのも、生徒会の書記に入ったのも、特に部活がやりたいわけでもなかったが、なんとなく青春したかったからだ。といっても、生徒会の存在はごくごくローカルな学園祭を実行するくらいの仕事しかなく、学園モノドラマや学園モノアニメのような権力を持っているわけもない。そんなポジションだったら、自分は生徒会に入ることができなかっただろう。

 学校は嫌いではない。学校のことが嫌いで嫌いで嫌いで嫌いでたまらない人だっているだろう。朝決まった時間に起きて、広いわけではない教室に偶然同じような場所で同じように生まれた学力が似通った人たちが閉じ込められる。好き勝手生きていたい人からすれば、不自由極まりない場所かもしれない。しかし、祥子は学校に感謝の思いさえある。もしも、祥子が町の人ごみの中にいきなり投げ込まれて、友人を作ってこいと言われたら、途方に暮れていただろう

 でも、単に隣に座ったから、毎日会っているから、友情が芽生えるというのは祥子にとってはとても有益なことだった。単純に毎日顔を合わせる。挨拶をする。教科書を忘れたときに見せてもらう。ノートの貸し借りをする、そういったひとつひとつのアクションが教室のなかにいなければ縁がなかった人たちをつなぎ合わせる。

 祥子はあまり積極にならなくても、何人か大事な友人ができた。祥子の端正な顔つきと柔和な性格と人当たりの良さが友人を作るのに幸いした。もちろん、同じ女子の中でも祥子に対して、点数稼ぎ女だとかおとなしそうな顔をしているからヤリマンだとかひどい陰口を叩いている人もいたみたいだが、無視できる分量だったので、気にならなかった。

 同世代の男子に対しては強く興味を持っていたわけではないが、関心があったのは横の席に座っている相波結樹だった。授業中に寝ている生徒は少なからずいるのだが、多くは運動部であり、へとへとになって授業中に寝てしまうというものだ。それに比して、結樹は根本的に異なった行動をとっていて、寝ているのが起きて授業を聴いているのと同じかそれ以上のウエイトを占めるくらいの基本行動になっていて、教師からは呆れられており、クラスからはいつも寝ているやつという風に認識されている。髪型や体格だけ見ていると、簡単な運動くらいはやっていそうに見えるが、運動部でもないし文化部でもない。また、ノートをとらないことにも危機感も罪悪感もないらしく、祥子がノートを貸し出すことを申し出たときには断られた。いつも寝ている人間がまじめに起きている人間のノートを写すのはなんだか癪に障る、というのが理屈である。

 その様子を祥子の友人たちは、祥子が結樹に気があるのではないか、などとからかったが、少なくとも恋愛感情ではない。人と違ったキャラ付けがされており、本人もそこに居場所を見つけてしまった、という状態が奇妙でたまらない。


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