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ラムネ瓶のビー玉のように、取り出せない。

作者: 野槌

 何かを考えている時、ふと昔の事を思い出したりする。今まですっかり忘れていた、何の脈絡も無い思い出を。


 恋をしていると、もう言ってしまいたいと思うことがある。きっと、みんなそう思ったことがあると思う。ついそのまま勢いで、言葉が零れてしまった人も、苦しくても決して、言葉に出来なかった人もいるだろう。

私の場合、後者である。絶対に言わない。言わないと後で後悔する気がする。大いにする。でも言わない。

何が私に思い止めさせるかと言うと、やはり相手とのその後の関係性である。二度と会わないならいい。しかしそうではなかったりすると、絶対気まずい思いをするし、気まずい思いをさせる。この時点で、微塵も希望を持たないあたり、私は本当に救いようがない。


 昔、ラムネ瓶に閉じ込められたビー玉を、取り出したいと思った。それに、恋というのはそれによく似ている。私が思いつく方法は、瓶を叩き割ることだった。小学生の時分、ひとつ思いつくと、もうそれ以外の方法があるとは思わなかった。

しかし私が、たった一つのその方法を実行する事は、ついぞなかった。やってみれば、案外簡単にビー玉は手に入るかもしれなかった。それでも私はそうしなかった。つまり私はそういう人間なのだ。それ以上に賢い方法を思いつくでもなく、それ以外無いという方法を実行してみるでもない。


 結局、ビー玉を閉じ込めたままで、ラムネ瓶はどこかへ行ってしまった。この恋も、ラムネ瓶のように、どこかへ行ってしまうのだろうか。

いつか、私がまた恋をした時、まだ知りもしないこの恋の結末を、思い出すのだろうか。私がラムネを飲む度に、あの時のビー玉を思い出すように。



言えないままで終わった恋は、きっと夏に忘れ去られた線香花火だ。


運が良ければ、来年の夏にまた火がつく花火があるように、大人になってからまた火がつく恋もあるかもしれない。


そう願いながら、湿気ってしまった恋がどれほどあるのだろう。


願わくは、沢山の恋の花火が輝きますように。

夏は短し、恋せよ乙女。


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