変なじいさん
「これからどうしようかしら?」
魔物の森を抜けだしてから私はあてもなくさまよっていた。飲まず食わずでここまで来ているから、正直もう歩く気力もないし、ここがどこかすらわからない。
ここら辺の地形については知っているけれど、自分の居場所が分からなければ意味がないというものだ。
さすがにこんなところでもたついている暇はない。こんなところで、盗賊や山賊にあってしまったら、どうなってしまうのか大体想像はつく。
もし捕まったとしたら、私だって汚されたくはないもの。全力で抵抗はさせてもらうけど、実際のところまだ私はこの力をコントロールできないから、しての命にまで心配をしている余裕はないのだ。
「とりあえずこのまま進んで、村でも探しましょう。こんなに小さな女の子が訪ねてきたらいくら何でも助けてくれるはずよ。頑張るのよ私、年齢と幼い顔を武器にしなさい。」
私はそう自分に言い聞かせて、再び歩き始めた。
歩き始めてから数時間、気が付いてみればもう太陽が上がってきているようだった。そして目の前には木々が開けており、道ができていた。
あまりの喜びに私はスキップをしながら、その道までかけていこうとしていた時ふと視線の端っこに倒れている人のようなものが見えた。私はおそるおそる近づき見てみるとそれは紛れもなく人でそれもぼろぼろの老いた老人だった。
「あの~おじいちゃん大丈夫ですか?そんなところで寝てるわけじゃないですよね。私の声が聞こえていますか?あの~おじいちゃん?おじいさん?おい、じじい早く起きないと私の杖が火を噴くわよ。」
「うっ」
私がそう言うとかすかにこの老人から声が聞こえた。そして私はまだ寝ているのかと思い杖でその老人を転がしてみると、仰向けになったその老人の顔はひどく苦しそうな顔をしていて、お腹には出血の跡が見えた。
「おじいちゃんどうしたのその傷。まさか山賊にでもやられてたの?
あっごめんなさい、今はこんな質問をしている時ではないわね。待っていなさい、私がすぐに直してあげるから。」
回復の魔法はまだやったことはないけど、またこの前みたいに念じてみればできるわ。
そう思いながら、私は倒れたおじいさんの上に手をかざして治れ治れと念じてみた。するとさっきまであったおじいさんの傷は見る見るうちに治っていき、おじいさんの顔つきもよくなった。
「おじいさんもう大丈夫よ、私にあえたことに感謝しなさい。」
私は堂々とおじいさんを見下ろしてそう言うと、おじいさんはさっきまで倒れていたおじいさんは私法に体を向け正座をしながら、地面に頭をこすりつけるようにしてお礼を言った。
「どこのお嬢さんか存じませんが、本当にありがとうございました。この恩は一生忘れず墓場まで持っていきます。そして私は命を助けてもらった身ですので、何かお礼をさせてください。」
あまりにも綺麗な顔をされるので、さっきまで堂々としていた私も、なぜだか申し訳ない気持ちになってしまった。私の推測からしてこの手のものは後々面倒なことを起こしてしまう引き金になるから、さっさととんずらしましょう。
そうして私はいまだにキラキラの笑顔を向けてくるおじいさんを無視して、踵を返しあくまでも優雅に逃げようとしていた。そう、ようとしていたのだ。
歩こうとした瞬間、私の足はまるで重い足枷を付けられているかのように動かなかった。何事かと思い足元を見るとおじいさんが必死に私の足にしがみついている姿があった。
「あの~おじいさん?何をしているんですか?私は用事があるので早くその手を放してくれたら知れしいのですが。それともまだどこか痛いのですか?」
私は少々苛立ち気に話してみた。しかしおじいさんはなんの悪びれもなく、いまだ手を放してくれない。
「いえいえ、どこもいたくありません。ですが私にも性分というものがありますから、助けていただいた方にお礼もせず見送るのはいささか気持ちのいいものではありませんから。
お願いします、本当にどんな些細なことでもいいんです。私に何かご恩返しをさせてください。」
さすがの私もこれには頭を縦に振ることしかできなかった。でもどうしようかしら、用事があるっていうのはだたの口実だし、見るからにこのよぼよぼのおじいさんにできることはなさそうだし、どうすれば・・・。あっ、いいことを思いついたわ。
「おじいさん、じゃあお願いしてもいいかしら」