*月夜の中で*
この一年間色々な事があった…。
生まれて初めてした恋。
妹だったけど俺の心は確かに揺れたんだ。
初めて抱いたあの日…。
無理矢理してしまったけど満たされた体…。
あの時はまだ奈緒が俺の事好きでいてくれたなんて知らなかったから心に虚しさだけが残っていたよ。
エイズと申告されたあの日…。
正直怖くなった。
最初はね?
でも奈緒も俺を好きでいてくれたって知って死を恐れる事はなくなったよ…。
奈緒の見つめる瞳がこんなに綺麗だった事…覚えていたよ。
俺の大切な思い人……。
奈緒。
奈緒は今俺があの日奈緒を抱かなければ俺は苦しまなかった…そう思っているだろ。
でもあの日俺がお前を抱いていなかったらこんなに幸せな想いは感じれなかったと思う。
俺は奈緒をあの日抱いたこと悔やんではいないよ?
奈緒の体温。
いまでも覚えてる。
奈緒の泣き顔も可愛かったけど奈緒はやっぱ笑っていてよ………。
「行こう!!」
俺達は走りだした。
病院を抜け出し外に出る。裸足で地面を蹴る。
懇親の力を足にこめ走る。
野原に出た。
目の前には小川がチョロチョロと流れている。
一面に咲く白つめ草。
俺達はそこに身を投げ横になる。
見つめ合う二人。
夜風が気持ちいい。
俺は長めの白つめ草を一本抜いた。
「奈緒小指出して。」
奈緒は小指をちょこんと立て俺に差し出してきた。
俺も小指を出し奈緒の指に絡める…。
そして絡めた二本の小指を白つめ草で結んだ…。
「俺達は永遠の恋人。」
目を閉じる。
俺達は輝く星達に見守られるなか夜空へと舞い上がった………。