BATTLE:053【鮮血の暗殺者VS奇跡の歌姫達】
大変お待たせしました!
今回は味神ユウキさんがご投稿して下さったトライブ【アサシントライブ】の登場です!!
「よっしゃあああああああ!!! 俺の勝ちだあああ!!!!」
会場内に大きく反響するカイトの叫び声。それに続く形でバトルマスター・レツが先鋒戦の勝敗を告げる。
〈勝者は戦宮カイト選手! 長いダイスバトル――その回数なんと147回と来たもんだ!! いやぁ、本当に長かった! ……うん、本当に。これで炉模工業高校と東栄学園は1対1の引き分け、勝負の行方は大将戦に持ち越しだぞ!!〉
そして会場の観客席にて、カイトの勝利を聞いて心なしか嬉しそうに表情を緩める者が居た。
阿久麻学園のキシンとギンカクだ。
「……よし」
その中でも安堵の声を漏らしたのは、観客席で腕を組んでカイトとエンジのバトルを観ていたキシン。
途中、エンジに追い詰められているカイトに対して「なにやってんだ」とやきもきしていたが、最終的に勝ったのならキシンとしては文句は無い。
「なんだか嬉しそうね、キシン」
すると、そこへマヤカがやってきた。珍しい表情を浮かべる後輩を楽しそうに眺めている。
マヤカの顔を見たキシンはすぐにげんなりとして「げ、マヤカ……」と溢す。
マヤカはすぐさまキシンの頭に拳を振り下ろした。
「っぐ!! 痛えじゃねえか、おい!?」
「マヤカ“先輩”って何回言えば分かるのかしら、この脳筋バカは」
「誰が脳筋だ!!」
キシンとマヤカの最早お約束と呼べるようないがみ合いに、部長であるギンカクは「やれやれ」と呆れながらもマヤカに尋ねる。
「ところで、マヤカ。随分と席を外していたようだが、どこに行っていたんだ?」
「んー?」
ギンカクに尋ねられてマヤカは少し思案するような仕草をした後にニッコリと微笑む。
「まあ、私も決着を着けてただけよ」
「決着?」
首を傾げるギンカクに頷く。
「そう。――――まあ、まさか私のワンキルを打ち破ってくるとは思わなかったけど」
マヤカの言葉にギンカクとキシンは目を見開いた。
マヤカは別名『ワンキルの女王』と呼ばれる程のカードマスターだ。一度ワンキルルートに入られてしまえば相手にターンを回すことなく終わらせるのが彼女のバトルスタイルだ。
それにも関わらず、彼女のワンキル戦術が破られたと言うのだ。
「ギンカク、それにキシン。次の大将戦、中々面白いことになりそうよ」
マヤカは口元に笑みを浮かべたまま、次のヨウコとナミのカードバトルを観客席に座って楽しそうに、それでいて堪らなく待ち遠しいと感じるのだった。
東栄学園・選手控え室。
「うぅ、負けたのだー!」
控え室のベンチに腰掛けながら、リンナは不満そうに頬を膨らませて声を荒げていた。
それをイクサとカイトは必死に宥める。このまま不満が積もって裏リンナになられては非常に困る。
「いや、ほら、リンナ先輩だって惜しい所まで行ってましたし!」
「そうですよ、早期決着を狙いに行くのは相手の意表を突く上では必須だし、さっきのは偶々相手との相性が悪かっただけですよ!」
イクサとカイトの言葉に対し、リンナはジトーとした瞳でバッサリと切り捨てる。今はどんな慰めの言葉もリンナには意味がないのだ。
「惜しい所まで行っても勝てなきゃ意味ないのだー」
「うぐ……」
「それにあれは早期決着用の調整をしてなかったデッキで無理に早朝決着を狙ったら無理が出たリンナの誤爆だから、相性が悪かった以前の問題なのだー」
「そ、それは……」
リンナは落ち込んでいるものの、きちんと自分の敗因を理解していた。
イクサとカイトは互いに顔を見合わす。
(どうしよう……)
2人が思うのはたった1つだった。現在、控え室にはイクサ、カイト、リンナの3人だけである。
ナミは大将戦なので当然居ないとして、ユキヒコは眠ったリンナを控え室のベンチにまで運んで寝かせると用ことがあると言って出て行ってしまったのだ。
そして眠りから覚めたリンナは、この有り様というわけである。
「リンナはダメダメなのだー……こんなんじゃ、チームメンバー失格なのだー……」
「「いや、その……」」
全国大会の試合は短くても30分程度。つまり、最低30分間はナミは戻ってこない。この状況を打開できるのは、やはりリンナの扱いに長けたユキヒコしかいない。
(東條部長……早く戻ってきて下さい!!)
◇◇◇◇◇◇
「ほう……園生妹を連れ去ろうとしていたのは王ミツエだって言うのか?」
「……うん、あくまでも彼が言うにはね」
場所は炉模工業高校の選手控え室。気を利かせたエンジが「積もる話もあるッスよね」と言ってサラサと共に控え室から立ち去ったので、ここにはシンヤ、ユキヒコ、アカネの3人が集まっていた。ヨウコは大将戦なのでナミ同様にいない。
「ユキヒコは、鹿羽生徒会長の言葉を信じるの? ユキヒコは王ミツエがリンナちゃんを拐おうとした現場を見ていないんでしょう?」
「ああ。廊下でアイツを見かけて尾行したら迷宮の裏口に入って行ったんだ。何か企んでるんじゃないかと思って追いかけて駆けつけた時には、失神したリンナをアイツが抱えていた」
ユキヒコの言葉を聞いてシンヤとアカネは「ふーむ」と眉間に皺を寄せて思案する。
「状況だけで見たなら、明らかに怪しいのは鹿羽フジミだ。アイツなら、お前への人質として園生妹を拐ったとしても不思議じゃない」
「だけど、そこで王ミツエの名前を出すのは不可解だね。彼が特定の誰かに自分の罪を擦りつけるとは考えづらいし」
3人の間で結論は出ない。フジミの言葉を全て鵜呑みにはできない、かと言って王ミツエを見過ごすこともできない。
そこでユキヒコはふと「あっ」と声をあげ、ポケットにしまっていたUSBメモリを取り出した。
シンヤとアカネは揃って首を傾げている。
「そうだ、シンヤ。PCは持ってる?」
「ああ、まあ俺達は工業高校だからな。ノートブック型ぐらいなら当然常備してるぜ」
「なら、少し貸してもらえないかな?」
「別に構わないが……そのUSBは何なんだ?」
ユキヒコの持つUSB、それは本選の発表時にセンリがユキヒコに渡したものだった。センリが自分なりの方法で集めたカンナに関する情報がまとめられている。
「この中のデータを閲覧すれば、カンナの死の真相が分かるかもしれない」
ユキヒコの言葉にシンヤとアカネは目を見開く。
「なに、それは本当か!?」
「でも、どうやってそんなデータを入手したの?」
アカネからの問いにユキヒコは少し複雑そうな表情を浮かべる。
「孤高くんから貰ったんだ」
「孤高くん、って……もしかして孤高センリ?」
「ああ」
アカネはユキヒコとセンリの意外な繋がりに「へぇ」と驚きの声を漏らした。
「よし。あったぞPC」
とりあえずフジミの件はさておき、シンヤは業務用の鞄から取り出したPCを起動させてその側面の端子にUSBメモリを挿入した。
すぐにデータファイルを確認してみると、そこには【Re-Live】と書かれたデータファイルがあった。
「リライヴ……?」
「どうやら、被験者の一覧表みたいだな」
そのファイルを開くと、3人は固まる。
ファイル内には多数の人物の名前があるものの、見知った人物の名前が目に飛び込んでくる。
・聖野イクサ
・孤高センリ
・王ミツエ
・鬼桜マヤカ
・辰凪ココロ
・園生カンナ
・園生フジコ
・東條ユキマル
・阿久津エンジ
・天神セカイ
・天翔ユメル
・輝島ヒデオ
・虚木コノハ
・魁座マオ
ユキヒコが目に付いたのはイクサとユキマルだ。自分の後輩と兄が孤高グループが行った実験の被験者リストに含まれていたのだ。
特にユキマルは確か孤高学園への編入の途中で事故に遭い、死んだ筈だ。少なくとも、自分は両親からそう聞いた。
しかし、こうして被験者リストに名前があるということは実際は事故で亡くなっておらず、孤高グループの研究施設に連れて行かれたことを意味する。カンナと同じく、孤高グループの実験で亡くなった可能性がある。
そう考えるだけで、腹の底から怒りが込み上げてくるのが分かる。孤高グループは自分の愛する人物のみならず、自分の家族にまでその毒牙を広げていたのだから。
一方のシンヤとアカネも互いに顔を見合わせてアイコンタクトを送る。ユキヒコ程ではないにしろ、彼等もまた孤高グループへの不信感を募らせていた。
(シンヤ、エンジの名前があるね)
(……ああ、後で詳しく話を聞こう。思えば、アイツが人と一歩引いた関係でいるのは、こういうのが原因なのかもな)
(だとしたら、きっちり落とし前を着けさせないとね……フフ)
アカネが怪しい笑みを浮かべた途端に背後から暗黒オーラが立ち篭る。思わずシンヤは後ずさって「ほ、程々にしておけよ」と呟いた。
このままではユキヒコとアカネの怒りが収拾が着かなくなるのでシンヤが「ゴホン」と咳払いをし、話題を整理することにする。
「とりあえず、だ。一番の問題はこの被験者は一体何の実験をさせられていたのかだろ。それともう1つ、被験者の中には死んだ者も居れば生還した者も居る。なら、本当にこの実験が園生姉の死に直結したのか、それともまた別の要因があるのか、色々と検証する必要がある。だからまだ孤高グループを諸悪の根源と断定するのは早い……と思うんだが、どうだろうか」
「検証してる暇なんか……無いだろ」
ユキヒコは俯いたまま、フジミに言われた言葉を思い出す。
――カンナが死んで一番悲しんでたのはお前だろうが。なら、つべこべ言わずにもっと必死になれっての――
「ああ、分かっているさ。いつだって俺は必死だった、一度だって胡座をかいた覚えは無い……」
「東條……?」
ユキヒコの発言の意図が読めず、シンヤは首を傾げる。
「孤高グループが諸悪の根源かどうかなんてどうでもいい。……少なくとも、カンナと兄さんの死に関わりがあるんだ。なら、俺達が足踏みしてる道理なんて無い」
「……東條、もっと冷静になれ。お前は園生姉が関わると熱くなりすぎる」
「俺はもう、これ以上失うわけにはいかないんだよ。全部失った後じゃ、遅すぎるんだ」
「聞けって。俺達は着実に真実に近づいている、だからこそ、ここから先はさらに慎重にならなきゃいけない。少なくとも、向こうにこちらの動向を気づかれたら先手を打たれるだけだ」
シンヤの言葉にアカネも首を頷いて賛同する。
「こっちには先手を打つための材料が無い以上、向こうに先手を打たれたらまた振り出しに戻ることになる。それは一番避けなきゃいけないってことは、ユキヒコにだって分かるよね?」
「……だけど」
シンヤは「はあ……」と大きく溜め息を溢す。こうも熱くなられては冷ますのは相当骨が折れる仕ことだ。
昔馴染みを宥めるというのも、中々疲れるものである。
「東條、たとえ動くにしても今は手元にある情報が少なすぎる。ひとまず、生還した被験者達から話を聞くのが一番じゃないか。この中で言えば、お前ん所の聖野イクサやこっちの阿久津、あとは界演学園の面々と言った所か」
「界演……学園……」
ユキヒコは思わずPCの画面に映し出された被験者リストの名簿を見つめる。
界演学園の試合チーム5人全員が孤高グループの実験の被験者であるのだ。少々異質な印象を受ける。
「東條と稚推は界演の奴等と面識があるんだろ。なら、お前達で話を聞いておいてくれ。俺は王ミツエをマークする」
「待って、シンヤ」
そこでアカネが待ったをかけた。シンヤの提案はあまりにも危険すぎる。
「仮に鹿羽生徒会長の言葉が真実だったとしたら、リンナちゃんを誘拐しようとした王ミツエは孤高グループと繋がりを持ってるかもしれないよ。接触するのはマズイ」
「ああ、それは分かってる。だがまあ孤高センリがこのデータをこっちに渡したってことは、少なくとも向こうはこっちが嗅ぎ回ってることは認識している筈だ。なら、向こうの目を撹乱する囮役が必要だろ」
そこでシンヤは「フッ」と小さく笑ってユキヒコに語りかける。
「あの時とやることは変わらない。そうだろ、東條?」
「……」
シンヤの言う“あの時”とは、フジミが部室に仕掛けた盗聴器を発見するために行ったレアハンター芝居の件のことだ。
こういう囮役のような損な役回りは自分が引き受ける、シンヤはそう言いたいのだ。
だからこそ、ユキヒコとしては複雑な気持ちになってしまう。囮役は必要だ、相手に対して先手を打てない以上は相手の目をこちらからなるべく反らさなければならないのだから。
〈さあて、いよいよ炉模工業高校と東栄学園の対決も大詰めだ! 大将戦はこの2人! 炉模工業高校からは相手の意表を突くトリッキーな戦術を駆使する琴原ヨウコ選手! 東栄学園からは華麗な連続攻撃による速攻戦術を得意とする早乙女ナミ選手だ!〉
すると、モニターからバトルマスター・レツの声が控え室内に響き渡った。
その声にシンヤは軽く笑う。
「ま、動くのは大将戦を見てからでも遅くはねえよな」
◇◇◇◇◇◇◇◇
【Climax-Mode】
早乙女ナミ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
:ライフカウンター【4】
琴原ヨウコ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
:ライフカウンター【4】
今回の大将戦もまた吹雪学園と阿久麻学園の時と同じクライマックスバトルが適用される。
おさらいではあるが、クライマックスバトルではチャージフェイズでチャージすることはできない。だが代わりに手札を自身の山札の一番下に置くことで追加ドローでき、また消費できるフォースの合計枚数は手札枚数と同じである。
「「ダイス・セット!!」」
先攻はヨウコである。
「私のターン、ドロー! 手札1枚をデッキボトムに沈めて1枚追加ドロー!」
琴原ヨウコ:手札【6】
「私はフォースを1枚消費して手札からアタックガーディアン【アサシン・ナイフ】を召喚!!」
【アサシン・ナイフ】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アサシン】
DG【0】
LP【1000】
琴原ヨウコ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▼】
「アサシン・ナイフは暗殺者集団の尖兵よ。その能力、早速ご覧に入れるわ――トライブアビリティ【破滅を招く猛毒】発動!!」
【アサシン・ナイフ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:フォースを1枚消費する)
┗この効果は相手の場にカードが存在しない場合にのみ発動できる。相手は自分の手札からカードを1枚まで選んでカードが配置されていないアタックゾーン以外の場に次のターンのエンドフェイズまで裏状態で置き、その後、そのカードを自分の手札に加える。この効果で場に置かれたカードが存在する限り、相手はその領域にカードを配置できない。また、この効果で場にカードが置かれなかった場合、相手はライフカウンターを1つ失う。
琴原ヨウコ:フォース【▽▽▽▽▼▼】
「げ……そんなのあり?」
「さあ、選びなさい。カード1枚を場に裏状態で置くか、それともライフカウンターを1つ失うのか」
「むむむ……」
いきなりのトライブアビリティ発動にナミは頭を悩ます。ライフカウンターは4つ、カードが存在しないアタックゾーン以外の領域はアシストゾーンとドメインゾーンの2つ。
そして起動効果はコストが支払える限り何度でも発動できるということは、ナミがフィールドにカードを置かなければ何度でも発動されるということだ。
ここで被害を最小限に抑えるためには、手札を2枚使用不可にするしかない。
「私は……手札を1枚選んでアシストゾーンにカードを置くよ」
早乙女ナミ:手札【4】
「なら、もう一度トライブアビリティを発動させてもらうわ。破滅を招く猛毒!」
琴原ヨウコ:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「うーん……じゃあ今度はドメインゾーンに置くよ」
早乙女ナミ:手札【3】
まだナミのターンが来る前にあっという間に手札が3枚になってしまった。
それだけじゃない。アイドルトライブは基本的にアシストガーディアンを起点に効果を発動してコンボを稼いでいくトライブである。
アサシン・ナイフのトライブアビリティでアシストゾーンを封じられたということは、ナミのデッキ全体が機能停止に陥ったことと同義であるのだ。
ヨウコはまずまずの動きに満足しつつ、マスターズギアの液晶を操作してカードを選択する。
「さらに、私は手札からスペルカード【意勁の極み――ブレイク・ダウン――】を発動!」
【意勁の極み――ブレイク・ダウン――】
SP【2】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:表状態のフォース2枚と手札のこのカードを含めた手札のカード3枚をそれぞれジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の上から2枚のカードを裏状態でフォースゾーンに置く。この効果のコストでジャンクゾーンに送られたカードの中に【アサシントライブ】のガーディアンカードが3枚以上存在し、相手のライフカウンターが3つ以上で尚且つあなたのライフカウンターの数が相手のライフカウンターの数以下である場合、相手はライフカウンターを2つ失う。
琴原ヨウコ:手札【2】
:フォース【▽▼▼▼▼▼】
「コストを支払うことでデッキトップからカード2枚をフォースゾーンに裏状態で置く。さらにコストでジャンクゾーンに送ったカードの中に含まれるアサシントライブのガーディアンカードは4枚なので、貴女のライフカウンターを2つ削るわ」
「うぇ~……出たよ、アサシントライブのライフカウンター削り」
早乙女ナミ:ライフカウンター【4→2】
ナミのライフカウンターが減少し、ヨウコは不敵に微笑む。中々自分の目論見通りにことが運んでいるので、このまま一気にナミとの差を広げるつもりだ。
「これだけじゃないわ、手札からスペルカード【アサシンズ・ドロー】を発動!」
【アサシンズ・ドロー】
SP【1】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは相手と自分が持つそれぞれのライフカウンターの差の分だけ、自分の山札からカードをドローする。
琴原ヨウコ:手札【1】
「貴女のライフカウンターは2つ、そして私のライフカウンターは4つ。その差は2つなので、私は自分のデッキからカードを2枚ドローさせてもらうわ」
琴原ヨウコ:手札【3】
「まずはこのくらいでターンエンドよ」
「うーん……私のターン、ドロー!」
早乙女ナミ:手札【4】
「手札からカードをデッキボトムに置いて追加ドローするよ」
追加ドローしたカードを手札に加え、ナミは手札のカードに目を通す。
(うん、大丈夫。この手札ならまだ動ける!)
アシストゾーンを封じられてしまえば機能停止になるというアイドルトライブの弱点。
しかし、それは以前ユキヒコのブリザードトライブと戦って既に承知済みである。
この全国大会、吹雪学園と阿久麻学園での先鋒戦でキシンが見せたように、自身の弱点を補う戦術を繰り出すようなテクニックは最早必須であり、当然ナミのデッキの中にもそのカードはある。
あらゆる状況に対応できるように、様々なカードマスターと戦い、出来る限り自身のデッキの弱点を炙り出したつもりだ。
なんとしても、負けるわけにはいかない。
「私は、手札からスペルカード【トレード・カード】を発動!」
【トレード・カード】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分のアタックゾーン以外のフィールドに存在するカードを任意の枚数選んで自分の山札に戻してシャッフルする。その後、その山札からカードをこの効果で山札に戻した枚数だけドローする。
早乙女ナミ:手札【3】
「私はアシストゾーンとドメインゾーンに置かれた裏状態のカードをデッキに戻して、カードを2枚ドローする!」
早乙女ナミ:手札【5】
アシストゾーンとドメインゾーンに置かれていた裏状態のカードが場を離れたことで、ナミは2つのフィールドの使用権を取り戻すことに成功した。
ヨウコも口笛を吹いて感心したように呟く。
「へぇ、結構頭が残念な子だと思っていたのに、意外とやるものね」
「いやぁ、それほどでも――って、それ私のこと馬鹿にしてるよね!?」
プンプンと頬を膨らませるナミだが、ドローしたカードを見て少しだけ顔をしかめる。勿論、ヨウコに悟られないように。
(うーん……このカードはむしろデッキにいて欲しかったんだけど、手札に来ちゃったならコストにするしかないかなぁ)
マスターズギアの画面からカードを選択する。
「私は、手札からSF【2】のアシストガーディアン【試験教官 クリムゾン】を召喚!」
【試験教官 クリムゾン】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【100】
早乙女ナミ:手札【4】
:フォース【▽▽▽▽▼▼】
ヨウコはナミが召喚したガーディアンを見て眉間に皺を寄せて怪訝そうな声を出す。
「アタックガーディアンじゃなくて……アシストガーディアンを召喚ですって?」
「そうだよ。クリムゾンのアシストアビリティを発動!」
【試験教官 クリムゾン】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:フォースを1枚消費する、手札1枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からSF【2】以下の【アイドル候補生】と名のつくガーディアンカードを1枚選んで、フォースを消費せずにアタックゾーンに召喚する。その後、その山札をシャッフルする。
早乙女ナミ:手札【3】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「コストを支払ってデッキから【アイドル候補生 ツヴァイナ】を召喚!!」
【アイドル候補生 ツヴァイナ】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【1500】
「ツヴァイナのトライブアビリティを発動するよ! 貴方のための晴れ舞台!!」
【アイドル候補生 ツヴァイナ】
【トライブアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗この効果は、このガーディアンがカード効果によって自分の山札から召喚された場合にのみ発動できる。あなたのアシストゾーンに【試験教官】と名のつくガーディアンが存在する場合、互いのプレイヤーは自分の山札からカードを1枚ドローしてこのカードは以下の効果を得る。
『【アタックアビリティ】
【1】【5】……あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札から【試験教官】と名のつくガーディアンカードを1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚できる。』
「お互いにデッキからカードを1枚ドローして、ツヴァイナは追加のアタックアビリティを得るよ」
早乙女ナミ:手札【4】
琴原ヨウコ:手札【4】
「うーん……」
ナミはツヴァイナを召喚し、トライブアビリティによって付加されたアタックアビリティを見て少し思案する。
(アイドルトライブの【試験教官】と【アイドル候補生】の2つのシリーズカードを組み合わせた通称【試験候補生】デッキ。普通のアイドルトライブのデッキに比べてランダム要素が強めで堅実にアドは稼げない代わりに、一度型にハマれば高いデッキ回転力とアドを生み出すことができる。今回の特殊ルールでは最初からフォースが6枚与えられている上にチャージフェイズで手札のカードをデッキに戻せるからこのデッキとも上手く噛み合う筈……だと思ってたんだけどなぁ)
ランダム要素が強いというのは予想以上に先の展開のための戦略が立てづらく、行き当たりばったりになる傾向になりやすい。臨機応変にその場の状況にすぐに対応できる人間ならばデッキ特性と合致できるが、ナミはそこまで柔軟な人間ではない。
計画性こそ無いものの、大まかなゴール地点を設定し後はそこへひたすら目指す。それこそがナミのバトルスタイルである。
いつもならば展開力のあるアイドルトライブのカードのおかげでテキトーにデッキと盤面を回しつつ切り札のキララまで繋げて、キララの能力でトドメを刺すという勝利ルートが見える。
しかし、今はそれさえも難しい。キララにまで繋がるルートがランダム性の強さ故に見えないのだ。
確かに尽く運がナミに傾き、トライブアビリティによって付加された効果が全て発動できたのならば、ナミもここまで困らない。だが、効果を発動できたりできなかったりする不安定要素はアイドルトライブデッキからすれば大きなテンポロスであり、それがナミにキララまでのルートを示してくれない要因である。
まあ、つまり何が言いたいかと言うと、今回の大会用にナミが作り上げたこのデッキの特性が全くナミに合っていない、ということだ。
(しまったなぁ……アイドルトライブのカードだからって理由で組んだものの、このデッキを回せる気が全然しないや)
内心で汗を掻きつつ、どうしたものかと頭を悩ませていたのだった。
(でも……まあ、やってみるしかないよね)
どちらにしろ、このターンはバトルフェイズを行う他はない。特にデメリットがあるわけではないし、場合によってはハンドとボードでアドバンテージを稼げる可能性があるのだ。
「ダイスステップ!」
ナミはマスターズギアの液晶画面をタッチし、セットフェイズからダイスステップに切り替える。
【1】
マスターズギアにそう表示され、ナミはパチンと指を鳴らして笑顔を浮かべる。
「やった、ラッキー♪」
【アイドル候補生 ツヴァイナ】
【1】【3】【4】……相手のアタックガーディアンに100ダメージを与える。このバトルフェイズ中にアシストガーディアンが召喚された場合、相手のアタックガーディアンは【弱体化】する。
【2】【5】【6】……相手の山札からカードを3枚ジャンクゾーンに送る。このバトルフェイズ中にカード効果であなたが自分の山札からカードをドローした場合、ドローした枚数だけ追加で相手の山札からカードをジャンクゾーンに送る。
早乙女ナミ:フォース【▽▽▼▼▼▼】
「フォースを消費してバトルフェイズ! サイコロの目は1だから、トライブアビリティで付加されたアタックアビリティも発動するよ! 私は自分のデッキからカードを2枚ドローして、手札からアシストガーディアン【試験教官 ブラック】をノーコストで召喚するよ!」
【試験教官 ブラック】
SF【3】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【1200】
早乙女ナミ:手札【5】
「バトルフェイズ中にアシストガーディアンが召喚されたから、ヨウコさんのアサシン・ナイフを弱体化させる!」
「やってくれるわね……」
【アサシン・ナイフ】
【弱体化】
ダメージ計算はバトルフェイズ終了直後に行われるのでダメージを与える前に弱体化付与の効果が適用される。
それだけではない。
「さらに、試験教官ブラックのポテンシャルアビリティを発動するよ!」
【試験教官 ブラック】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗あなたは自分のジャンクゾーンから【アイドル候補生】と名のつくガーディアンカードを1枚選んで自分の山札に戻してシャッフルし、その後、その山札からカードを1枚ドローする。あなたの手札に【試験教官 ホワイト】が存在する場合、それを相手に公開することで代わりに2枚ドローできる。
ジャンクゾーンに送られたカードの一覧がマスターズギアに表示され、そこからカードを1枚選択する。
(さっきクリムゾンのコストで捨てたカードがこれで活かせる)
上手く機能するか不安だったが、中々いけるではないか。ナミはフフンと得意気になる。
「カード1枚をデッキに戻してシャッフル、そして1枚ドロー!」
早乙女ナミ:手札【6】
しかしフフンと笑ってドローしたカードを見てすぐに愕然と目を見開いた。
(あっるぇ~? 戻したカードが手札に戻ってきちゃったぞ~?)
早々にそんな上手くいかないものだ。そういうものである。
「ええい! とにかく、アサシン・ナイフにダメージを与えるよ! アサシン・ナイフは弱体化してるから、受けるダメージは200ダメージだよ!!」
【アサシン・ナイフ】
DG【0→200】
LP【1000→800】
「ターンエンド、だよ!」
「そう、なら私のターンね。ドロー!」
琴原ヨウコ:手札【5】
「手札のカードをデッキに戻して1ドローさせてもらうわね」
ドローによって追加されたカードがマスターズギアの液晶画面に表示されて、ヨウコはニヤリと笑う。
「私はフォースを3枚消費して、手札からアタックガーディアン【暗殺葬鬼 トウアズキ】を召喚するわ!」
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アサシン】
DG【200】
LP【3000→2800】
琴原ヨウコ:手札【4】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「さらに、私は手札からドメインカード【暗殺葬園 ポイズン・ガーデン】をドメインゾーンにセット!」
【暗殺葬園 ポイズン・ガーデン】
【ドメイン】
【永】
┗このカードがドメインゾーンに存在する限り、あなたが自分の【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンの起動効果を使用する場合、ジャンクゾーンに存在する【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカードを任意の枚数だけ選んで山札の一番下に置くことで、その枚数だけコストとなるフォースの枚数分の代用とすることができる。
琴原ヨウコ:手札【3】
「トウアズキのトライブアビリティを発動! 破滅を招く猛毒!!」
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札の【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカード1枚をジャンクゾーンに送る、フォース2枚を消費する)
┗相手は自分の場に存在するガーディアンを1体選んで【弱体化】させる。【弱体化】させなかった場合、相手はライフカウンターを1つ失う。この効果で相手のアシストガーディアンが【弱体化】した場合、このターン、あなたはフォースを消費せずにバトルフェイズを開始できる。
琴原ヨウコ:手札【2】
「手札1枚をジャンクゾーンに送り、ポイズン・ガーデンの永続効果でジャンクゾーンに存在する【暗殺葬鬼】を2枚デッキボトムに戻すことでフォース2枚分の代用とするわ。さあ、選びなさい。ガーディアンを弱体化させるか、それともライフカウンターを1つ失うか」
「うーん……なら、ブラックを弱体化させるよ……」
【試験教官 ブラック】
【弱体化】
「なら、手札からスペルカード【アサシンズ・ドロー】を発動するわ。貴女と私のライフカウンターの差は2つだから、デッキから2枚ドローさせてもらうわね。さらに、貴女がアシストガーディアンの試験教官ブラックが弱体化したことで、このターン、バトルフェイズをフォースを消費せずに開始できる」
【アサシンズ・ドロー】
SP【1】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは相手と自分が持つそれぞれのライフカウンターの差の分だけ、自分の山札からカードをドローする。
琴原ヨウコ:手札【3】
「ダイスステップに移行するわ!」
【3】
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
【1】【2】【3】……相手のアタックガーディアンに300ダメージを与える。相手の場に存在するガーディアンが【弱体化】している場合、あなたは自分の山札からガーディアンカードを1枚まで選んで自分のアシストゾーンにフォースを消費せずに召喚する。その後、その山札をシャッフルする。
【4】【5】【6】……相手の山札からカードを4枚ジャンクゾーンに送る。相手の場に存在するガーディアンが【弱体化】している場合、その数だけあなたは自分の山札からカードをドローする。
「さあ、バトルフェイズよ! あなたの場には弱体化しているブラックが存在しているから、デッキからアシストガーディアン【暗殺葬鬼 ジギタリス】をノーコストで召喚!」
【暗殺葬鬼 ジギタリス】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アサシン】
DG【0】
LP【1000】
「そして、貴女のツヴァイナに300ダメージを与えるわ!」
【アイドル候補生 ツヴァイナ】
DG【0→300】
LP【1500→1200】
「私はこれでターンエンドよ」
「よーし、私のターン、ドロー! 手札のカードをデッキボトムに戻してデッキから追加ドロー!」
早乙女ナミ:手札【7】
先程ブラックの効果で手札に引き入れてしまったカードをデッキボトムに沈めて、ドローしたカードを見てナミは内心でガッツポーズを浮かべる。
(よーし、アイドル候補生はデッキに、手札には試験教官、試験候補生デッキなら理想的なムーブだ)
「セットフェイズ! アシストゾーンのブラックのアシストアビリティを発動するよ!」
【試験教官 ブラック】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:フォースを2枚消費する、このカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からSF【3】以下の【アイドル候補生】と名のつくガーディアンカードを1枚選んで自分のアタックゾーンにフォースを消費せずに召喚する。その後、その山札をシャッフルする。
早乙女ナミ:フォース【▽▽▽▽▼▼】
「コストとしてフォース2枚を消費して、ブラックをジャンクゾーンに送るよ。デッキからアタックガーディアン【アイドル候補生 チュリーナ】を召喚!」
【アイドル候補生 チュリーナ】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アイドル】
DG【300】
LP【2500→2200】
「アイドル候補生チュリーナのトライブアビリティを発動! 貴方のための晴れ舞台!!」
【アイドル候補生 チュリーナ】
【トライブアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗この効果は、このガーディアンがカード効果によって自分の山札から召喚された場合にのみ発動できる。互いのプレイヤーは自分のジャンクゾーンに存在するガーディアンを1枚まで選んで自分の手札に加えて、このカードは以下の効果を得る。
『【アタックアビリティ】
【2】【6】……あなたは自分の山札からカードを3枚ドローし、手札からカードを1枚選んで自分の山札の一番上か下のいすれかに置く。その後、手札から【試験教官】と名のつくガーディアンカードを1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚できる。』
「効果により、互いにジャンクゾーンに置かれたガーディアンを手札に戻して、チュリーナは新たなアタックアビリティを得たよ」
早乙女ナミ:手札【8】
琴原ヨウコ:手札【4】
「さらに、フォースを2枚消費して手札からスペルカード【シュプレヒ・コール】を発動!」
「……【シュプレヒ・コール】?」
あまり聞き馴染みの無いスペルカードの名前にヨウコは眉間に皺を寄せる。
「【シュプレヒ・コール】の効果、それは互いにカードを1枚選んで公開して、それが同じカードの種類で一致した場合、私はデッキからSF【4】以下のアシストガーディアンをフォースを消費せずに召喚できる」
【シュプレヒ・コール】
SP【1】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:フォースを2枚消費する、手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗このカードの効果は互いのプレイヤーの手札の枚数が2枚以上である場合にのみ発動できる。互いのプレイヤーは自分の手札からカードを1枚選んで公開する。そのカードの種類が一致した場合、あなたは自分の山札からSF【4】以下のアシストガーディアンを1枚選んでフォースを消費せずに召喚できる。
早乙女ナミ:手札【7】
:フォース【▽▽▼▼▼▼】
ナミとヨウコは互いに自分の手札を確認する。
1枚とは言え、手札のカードを1枚開示するということは相手に情報アドバンテージを与えるということ。
ならば、これから先の展開に大きく関わるキーカードは開示できない。開示するならば、当たり障りのないカードに留めておきたいところである。
(ヨウコさんの【暗殺葬鬼】シリーズカードはコストに【暗殺葬鬼】が必要。なら、無難にガーディアンカードを選択してくるかな。どうせコストで捨てることになるんだし。――でも、もしかしたらってこともあるし)
ヨウコの手札は3枚、ナミは手堅くヨウコの選択するカードを予想する。
一方のヨウコもナミの思考を予想して「フフ」と微笑む。
(このタイミングでのシュプレヒ・コール……。中々やるじゃない。恐らくシュプレヒ・コールを発動させた目的は盤面増強じゃなくてこちらの動向を伺うため。【試験官候補生】デッキは運に大きく左右される以上はこちらの動きを知ることで、付加したアタックアビリティがヒットしなかった分のテンポロスを補うしかないもの)
さて、そうなるとこちらの選ぶカードがいよいよ問われるわけだが、無難に選ぶなら当然ガーディアンカードだ。
次のヨウコのターンに暗殺葬鬼のコストでジャンクゾーンに送ってしまえばいいのだから。
(ただ、それは相手も当然分かってるはず。このままガーディアンカードを選べば、情報アドバンテージを与えずに済む反面、早乙女ナミにボードアドバンテージを与える結果になるわ)
それはヨウコとしては非常に癪だ。ここは大人しく相手の手に乗るよりも、1つ上の手を見せるべきと判断する。
そして、ナミとヨウコは互いにカードを1枚選ぶと同時にそれを公開する。
(私が選んだのはカウンターカードの【真実の鏡】。シュプレヒ・コールの効果が不発に終われば否応なしにバトルせざるを得ないもの、良い牽制になるわ)
ヨウコは内心で自信満々にそう思考した。だが、それはすぐに破られる。
早乙女ナミ:【ハーフダメージ】〈カウンターカード〉
琴原ヨウコ:【真実の鏡】〈カウンターカード〉
互いのマスターズギアに表示されたカードと種類。互いに選んだカードはカウンターカードで一致した。
「え……」
思わず困惑の言葉を漏らしてしまった。それだけヨウコにとっては衝撃的だった。
一方のナミは両手を腰に据えて「フフン」と得意気に笑っている。
「私とヨウコさんが選んだのはカウンターカード。一致したから私はデッキからアシストガーディアンを召喚するよ!」
「そんな……まさか、私の裏を読んだと言うの?!」
ヨウコの意表を突いたナミは「このスーパーウルトラグレート美少女のナミちゃんは全てお見通しなのです」と完全に調子に乗りながら解説する。
「セオリー通りならガーディアンカードを選ぶ場面で、ヨウコさんが単純にガーディアンカードを選んでくるとは考えられなかったんで。なら、ガーディアンカード以外に何を選んでくるかって考えたら、カウンターカードによる牽制かなって思ったわけですよ」
「……ええ、その通りよ。私の考えを完全に読むなんてやるじゃない」
それだけではない、ナミが提示したカードはガーディアンが受けるダメージ効果1つの数値を半分にするカウンターカードの【ハーフダメージ】だ。
ヨウコに対する防御札を握っているという逆牽制にも繋がっている。
そして、ナミのアシストゾーンにシュプレヒ・コールの効果でアシストガーディアンが召喚される。
「デッキからアシストガーディアン【試験教官 ホワイト】をノーコストで召喚!」
【試験教官 ホワイト】
SF【3】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【1200】
「試験教官ホワイトのポテンシャルアビリティを発動!」
【試験教官 ホワイト】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗あなたは自分の手札から【アイドル候補生】と名のつくガーディアンカードを1枚選んで自分の山札の一番下に好きな順番で戻し、その後、自分の山札からカードを1枚ドローする。あなたの手札に【試験教官 ブラック】が存在する場合、それを相手に公開することで代わりに2枚ドローすることができる。
「手札の試験教官ブラックを公開して、手札の【アイドル候補生 フィーナ】をデッキボトムに戻すよ。これで私は2枚ドローする!」
ナミは一度手札の試験教官ブラックをヨウコに見せてから手札の【アイドル候補生 フィーナ】をデッキボトムに戻してカードを2枚ドローした。
早乙女ナミ:手札【8】
「さらに手札からドメインゾーンに【お披露目舞台―ルーキーズ・ステージ―】をセット!」
【お披露目舞台―ルーキーズ・ステージ―】
【ドメイン】
【自】(あなたのバトルフェイズ開始時)
┗あなたのアタックゾーンに【アイドル候補生】と名の付くガーディアンが存在する場合、あなたは自分の手札から【試験教官】と名の付くガーディアンカードを1枚選んでジャンクゾーンに送ることができる。そうしたら、このバトルフェイズ中ではカウンターステップは発生しない。
早乙女ナミ:手札【7】
手札にカードを加えた後、すぐにドメインゾーンにカードを配置した。
このことにヨウコは目を見開く。
「ルーキーズ・ステージ……カウンター封じのドメインカード!?」
「そう、これでヨウコさんの真実の鏡は発動できないですよ。ダイスステップに移行!」
ナミのマスターズギアに【3】と表示される。
【アイドル候補生 チュリーナ】
【1】【3】【6】……相手のアタックガーディアンに300ダメージを与える。このバトルフェイズ中にアシストガーディアンが召喚された場合、相手の場のガーディアンを1体選んで500ダメージを与える。
【2】【4】【5】……相手の山札からカードを3枚ジャンクゾーンに送る。このバトルフェイズ中にカード効果であなたが自分の山札からカードをドローした場合、ドローした枚数だけ相手は自分の手札からカードを選んでジャンクゾーンに送る。
「うーん、追加効果のアタックアビリティは【2】と【6】だからヒットはしなかったかぁ。でも、ダメージは受けてもらうよ! フォースを1枚消費してバトル!!」
早乙女ナミ:フォース【▽▼▼▼▼▼】
「ルーキーズ・ステージの自動効果で手札から【試験教官 ブラック】をジャンクゾーンに送ることで、このバトルフェイズ中にカウンターステップは発動しない。アイドル候補生達のお披露目ライブは、彼女達を指導した試験教官達の犠牲によってあらゆる妨害を受け付けない!!」
チュリーナの攻撃がトウアズキに命中し、300ダメージを与える。
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
DG【200→500】
LP【2800→2500】
「くっ……その程度の攻撃であまり良い気にならないことね。私を出し抜いたことは誉めてあげるけど。まあ、それを称して貴女にプレゼントをあげるわ」
「え、プレゼント……?」
ナミが首を傾げるとヨウコはガーディアンの効果発動を宣言する。
「ええ、そうよ。ライブのお礼にプレゼントを貰うのはアイドルの特権でしょう? バトルフェイズ終了時、ジギタリスのアシストアビリティを発動するわ!」
【暗殺葬鬼 ジギタリス】
【アシストアビリティ】
【自】(あなたの【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンがダメージ効果の対象となったバトルフェイズ終了時)
┗このカードをジャンクゾーンに送ることで、相手のアタックガーディアンに以下の効果を与える。
『【ポイズンアビリティ】
【自】(互いのドローフェイズ開始時)
┗このガーディアンはX00ダメージを受ける。(Xの数値はあなたがこのゲーム中に消費または失ったライフカウンターの数)』
「さあ、ジギタリスの毒を受けなさい! ジギタリスをジャンクゾーンに送って貴女のチュリーナにポイズンアビリティを付与する!」
「ええ?!」
ジキタリスはもがき苦しみながら、毒の花粉を撒き散らして爆発四散する。
その毒の花粉がチュリーナの周りを囲うように漂い、チュリーナは激しく咳をして吐血する。
〈うぅ……鉄の味がして気持ち悪いですぅ〉
互いのドローフェイズにポイズンアビリティが発動する都合上、早くチュリーナ以外のアタックガーディアンを召喚してチュリーナを退場させなければダメージが重なることになる。
「……ターンエンドです」
「私のターン、ドロー!」
琴原ヨウコ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
「この瞬間、チュリーナはポイズンアビリティの効果でダメージを受けるわ」
【アイドル候補生 チュリーナ】
DG【300→500】
LP【2200→2000】
「残りのライフは2000かぁ。ちょっと厳しいかな」
ナミは力無く笑いながら手札のカードを見つめる。このターンを耐えることは容易いが、そこから先に繋げる場合、少々心許ないのが率直な意見だ。
一方のヨウコはナミを少しずつ確実に追い込むための準備をこのターンで整えるつもりでターンを進める。
「手札のカードをデッキボトムに沈めて、追加ドロー!」
マスターズギアに表示されるカードをタッチしてカードを使用する。
「サモンフェイズとドメインフェイズをスキップしてセットフェイズ。手札からスペルカード【暗殺葬鬼の供物】を発動!」
【暗殺葬鬼の供物】
SP【2】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードと【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカード1枚をジャンクゾーンに送る、フォースを3枚消費する)
┗あなたは自分の山札から【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカードを5種類まで選んでジャンクゾーンに送り、その山札をシャッフルする。この効果で5種類の【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカードがジャンクゾーンに送られた場合、次のあなたのターンの1回目のサモンフェイズ開始時にあなたは自分の山札から【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカードを1枚選んでフォースを消費せずに召喚できる。
琴原ヨウコ:手札【3】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「コストとして手札から【暗殺葬鬼の供物】と【暗殺葬鬼 スズラン】をジャンクゾーンに送り、フォースを3枚消費するわ。デッキから以下のガーディアンカードをジャンクゾーンに送らせてもらうわよ」
【暗殺葬鬼 トリカブト】
【暗殺葬鬼 スイセン】
【暗殺葬鬼 イチイ】
【暗殺葬鬼 ジギタリス】
【暗殺葬鬼 クサノオウ】
「5種類の暗殺葬鬼をジャンクゾーンに送ったことで、次の私のターンのサモンフェイズ開始時に私はデッキから【暗殺葬鬼】をノーコストで召喚できる」
ヨウコの不敵な笑みにナミは戦慄する。間違いない、次のヨウコのターンでヨウコの切り札が召喚される。
そしてこのヨウコの強い自信のある表情から、恐らく一気にゲームエンドに持っていける程のパワーカードである可能性も高い。
「私の手札は3枚、表状態のフォースも3枚。ルール的にもうフォースは消費できないけれど、ポイズン・ガーデンの永続効果を適用させてもらうわ。トウアズキのトライブアビリティを発動! 破滅を招く猛毒!!」
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札の【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカード1枚をジャンクゾーンに送る、フォース2枚を消費する)
┗相手は自分の場に存在するガーディアンを1体選んで【弱体化】させる。【弱体化】させなかった場合、相手はライフカウンターを1つ失う。この効果で相手のアシストガーディアンが【弱体化】した場合、このターン、あなたはフォースを消費せずにバトルフェイズを開始できる。
琴原ヨウコ:手札【2】
「ポイズン・ガーデンの永続効果により、ジャンクゾーンの暗殺葬鬼を2枚デッキに戻すことでコストとなるフォース2枚分の代用とするわ。さあ、アシストガーディアンであるホワイトを弱体化させるか、それともライフカウンターを失うか」
「……っ!」
ホワイトを弱体化すればフォースを消費せずにバトルフェイズが開始される。しかし弱体化させなければライフカウンターを1つ失い、チュリーナが次のドローフェイズで受けるポイズンアビリティでのダメージが増加してしまう。
「アサシントライブに対してライフカウンターを犠牲にするのは悪手だから、ホワイトを弱体化させるよ」
【試験教官 ホワイト】
【弱体化】
「賢明な判断ね。なら、ダイスステップよ!」
システムのランダム決定により、ヨウコのマスターズギアに【5】と表示される。
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
【1】【2】【3】……相手のアタックガーディアンに300ダメージを与える。相手の場に存在するガーディアンが【弱体化】している場合、あなたは自分の山札からガーディアンカードを1枚まで選んで自分のアシストゾーンにフォースを消費せずに召喚する。その後、その山札をシャッフルする。
【4】【5】【6】……相手の山札からカードを4枚ジャンクゾーンに送る。相手の場に存在するガーディアンが【弱体化】している場合、その数だけあなたは自分の山札からカードをドローする。
「フォースを消費せずにバトルフェイズ! 貴女のデッキからカードを4枚ジャンクゾーンに送り、さらに弱体化したホワイトが1体居るので、私はデッキからカードを1枚ドローさせてもらうわね」
琴原ヨウコ:手札【3】
「私はこれでターンエンドよ」
ナミのデッキからカードが4枚ジャンクゾーンに送られる。ダメージを受けずに済んだが、ナミは大きなプレッシャーを感じていた。
(どうにかして、態勢を整えないと……)
◇◇◇◇◇◇
観客席にて、阿久麻学園の面々全員が厳しい表情で試合を観ていた。
「あんまり状況は芳しくないな」
キシンの言葉にギンカクとマヤカは頷く。
「ああ。ポイズン・ガーデンの状況下ではあのスペルカード【暗殺葬鬼の供物】はデッキ圧縮、コスト軽減、暗殺葬鬼の無条件召喚と、まさに至れり尽くせりの凶悪サポートカードとなる」
「唯一の救いは切り札の召喚に1ターンの猶予がある……ってことね。デッキから直接召喚するんだから当然召喚制限は受けないし」
「召喚できる対象範囲は【暗殺葬鬼】に限定されているから守護龍のような化け物が出てくることは無いが、それでも切り札級のSF【6】のガーディアンか召喚されるだろうな」
つまり、ナミは次の自分のターンで守りを固めなければならない。
だが、ナミが使用している【試験候補生】デッキでは満足なように行かないだろう。なんと言っても1つ1つのアクションにおいてランダム性が強いのだから。
「でも……そうね」
マヤカはポツリと呟く。
「あの娘のデッキは単純な【試験候補生】デッキではないわ」
マヤカの言葉にキシンは眉間に皺を寄せて首を傾げる。
「どういうことだよ?」
マヤカは「フフン」と笑いながらギンカクとキシンに向かって言う。
「あの娘、私がワンキルするより先にワンキルしてきたのよね。驚いちゃったわ」
「「なっ……?!」」
ギンカクとキシンが口を揃えて絶句してる一方、マヤカはナミの方に顔を向けたまま、まるで見守るように試合を観るのだった。
◇◇◇◇◇◇
「私のターン、ドロー!」
早乙女ナミ:手札【8】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
ナミのドローフェイズ開始時、チュリーナは再びポイズンアビリティの効果で200ダメージを受ける。
【アイドル候補生 チュリーナ】
DG【500→700】
LP【2000→1800】
〈うぅ……毒で目が回るぅ〉
ぐったりしているチュリーナの方を見てナミはドローしたカードを横目で見る。
(早くガーディアンを召喚してポイズンアビリティを解除しないと。それだけじゃない、守る手も考えなきゃいけない)
手札のカードを見てチャージフェイズから一気にセットフェイズまで移行する。
「デッキにカードを戻して追加ドロー、そしてセットフェイズまで進めるよ。ホワイトのアシストアビリティを発動!」
【試験教官 ホワイト】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:フォースを3枚消費する、このカードをジャンクゾーンに送る)
┗自分の山札からSF【4】以下の【アイドル候補生】と名のつくガーディアンカードを1枚選んで自分のアタックゾーンにフォースを消費せずに召喚する。その後、その山札をシャッフルする。
早乙女ナミ:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「ホワイトをジャンクゾーンに送ってフォースを3枚消費して、デッキからアタックガーディアン【アイドル候補生 フィーナ】を召喚!!」
【アイドル候補生 フィーナ】
SF【4】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アイドル】
DG【700】
LP【3500→2800】
「続いてフィーナのトライブアビリティを発動! 貴方のための晴れ舞台!!」
【アイドル候補生 フィーナ】
【トライブアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗この効果は、このガーディアンがカード効果によって自分の山札から召喚された場合にのみ発動できる。あなたのアシストゾーンまたはジャンクゾーンに【試験教官】と名のつくガーディアンが存在する場合、互いのプレイヤーは自分の表状態のフォースを1枚選んで自分の手札に加え、その後、自分の手札からカードを1枚選んで裏状態でフォースゾーンに置くことでこのカードは以下の効果を得る。
『【アタックアビリティ】
【3】【4】……あなたは自分のジャンクゾーンからガーディアンカードを1枚まで選んでフォースを消費せずにアシストゾーンに召喚できる。』
「互いのプレイヤーは表状態のフォース1枚を手札に加えて、手札からカードを裏状態でフォースゾーンに置くよ!」
「手札交換と間接的に相手のフォース1枚を封じる効果ってわけね」
早乙女ナミ:手札【8】
:フォース【▽▽▼▼▼▼】
琴原ヨウコ:手札【3】
:フォース【▽▽▼▼▼▼】
「さらに、手札からスペルカード【手札交換銃―マリ・ガン―】を発動!」
【手札交換銃―マリ・ガン―】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードを自分の山札に戻す)
┗あなたは自分の手札からカードを任意の枚数だけ選んで自分の山札に戻してシャッフルし、その後、自分の山札からカードをX枚ドローする。(Xの数値は、この効果で自分の山札に戻したカード枚数+1)
「この効果で私は手札からカードを3枚デッキに戻してシャッフル。その後、デッキからカードを4枚ドローするよ!」
早乙女ナミ:手札【8】
ドローしたカードを見てナミは手札のカード1枚をヨウコに公開する。
「ドローフェイズ以外でデッキから手札に加わった【プラスアシスタント ハンド】のポテンシャルアビリティを発動!」
【プラスアシスタント ハンド】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードがドローフェイズ以外で自分の山札から手札に加わった時)
┗あなたは以下の効果から1つ選んで発動する。
・【このカードをジャンクゾーンに送り、自分の山札からカードを2枚ドローする。】
・【このカードを表状態でフォースゾーンに置き、裏状態のフォースを1枚選んで手札に加える。】
「私は後半の効果を選択、ハンドを表状態でフォースに置いて裏状態のフォース1枚を手札に加えるよ」
早乙女ナミ:手札【7】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「まだまだ行くよ! 手札からスペルカード【ドロップ&ドロー】発動!」
【ドロップ&ドロー】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の手札からカードを任意の枚数だけ選んでジャンクゾーンに送り、その後、自分の山札からカードをX枚ドローする。(Xの数値は、この効果でジャンクゾーンに送ったカード枚数)
「ドロップ&ドローの効果で手札のカードを3枚捨てて、デッキからカードを3枚ドロー!」
早乙女ナミ:手札【6】
ナミは小さく「よし」と呟き、ダイスステップに移行する。
「このターンで決めてみせる! ダイスステップ!!」
ナミとヨウコのマスターズギアの液晶画面に【3】と表示される。
「アタックアビリティ・ヒット! フォースを1枚消費してバトル!」
早乙女ナミ:フォース【▽▽▼▼▼▼】
【アイドル候補生 フィーナ】
【1】【3】【6】……相手のアタックガーディアンに500ダメージを与える。このバトルフェイズ中にSF【4】以下のガーディアンを召喚した場合、そのガーディアンのLP分の追加ダメージを与える。
【2】【4】【5】……相手の山札からカードを4枚ジャンクゾーンに送る。このバトルフェイズ中にSF【4】以上のガーディアンを召喚した場合、そのガーディアンのSFの数だけ相手は自分の山札からカードを追加でジャンクゾーンに送る。
「まずはフィーナに付与されたアタックアビリティを発動! 私はジャンクゾーンから【タフネスアイドル レグリス】を召喚!」
【タフネスアイドル レグリス】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【3000】
「な、アタックガーディアンをアシストゾーンに召喚ですって?!」
「そう。アタックガーディアンをアタックゾーンに、アシストガーディアンをアシストゾーンに召喚しなきゃいけないのは、あくまで手札から召喚する場合だけ。カード効果で召喚する場合、アタックガーディアンをアシストゾーンに召喚できる。まあ、バトルを行えるのはアタックゾーンに召喚されたガーディアンだけに限られるけど」
「そんな、掟破りな!!」
「ヨウコさんみたいな上級者に勝つためには、こういう搦め手が私には必要なんです。さあ、バトルの続きだよ!!」
ナミはフィーナのもう1つのアタックアビリティ発動の宣言を行う。
「レグリスのライフは3000、よって合計3500ダメージをトウアズキに与える!」
トウアズキの残りライフは2600、この攻撃が通ればナミの逆転勝利である。
「アタックガーディアンをアシストゾーンに召喚する戦術、中々やるじゃない。でもね、私はこんな所で散るつもりは無いわ。手札からプリベントアビリティを発動!」
【アサシン・ガンドレッド】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。
「この効果により、トウアズキのライフを3000回復するわ!」
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
DG【500→-2500】
LP【2500→5500】
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
DG【-2500→1000】
LP【5500→2000】
3500ダメージを3000回復することで軽減し、ヨウコは「フン!」と鼻で笑う。
「このターンで決められなくて残念ね。でも、所詮は小娘、実力は私の方が上だと分かったかしら」
「……いーや、まだだよ」
「何ですって……?」
ナミの言葉に思わず眉間に皺を寄せる。それはヨウコだけではない、ヨウコとナミのカードバトルを観戦している者達もだ。……唯1人、マヤカは口元を笑みで歪めていたが。
「レグリスが召喚されたバトルフェイズ終了時、レグリスのポテンシャルアビリティを発動!」
【タフネスアイドル レグリス】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードを手札から召喚する場合、このターンの1回目のサモンフェイズ中でなければならない。
【自】(このカードが召喚されたフェイズの終了時)
┗このターンのプレイヤーはダイスステップを開始する。
「レグリスの自動効果により、私は再びダイスステップを開始するよ!」
「なっ……そんなの有り?!」
レグリスの効果にヨウコだけではない、キシンとギンカクも驚く。
「部長、この場合ってターンの流れってどうなるんですか?」
「レグリスの効果は【できる】ではなく【する】の強制効果だ、つまりダイスステップ以降のバトルフェイズからエンドフェイズまでの流れをもう一度行うという裁定になる。だが……」
言葉を濁したギンカクに対してマヤカは愉しそうに呟く。
「本来、レグリスのあの効果はサモンフェイズ中に召喚してドメインフェイズとセットフェイズを飛ばすデメリット効果としてデザインされたもの。それを2回目のバトルフェイズを開始するための効果として利用するなんて、面白い娘よね」
「ああ……。聖野イクサくんや戦宮カイトくんだけではない、東栄のルーキーは全員侮れないな」
ここまでの戦術を披露しただけで阿久麻学園の面々にはナミのカードのテクニックの高さを理解した。
そしてナミは目を見開いたままのヨウコに向かって宣言する。
「さあ、ダイスステップだよヨウコさん!」
ナミのマスターズギアに【6】と表示された。思わず「うぅん!」と悔しそうに声を漏らしてしまう。
「3か4じゃないからフィーナの付与されたアタックアビリティは不発かぁ。ワンキルは出来なくなったけど、とにかくバトルフェイズに移行するよ!」
【アイドル候補生 フィーナ】
【1】【3】【6】……相手のアタックガーディアンに500ダメージを与える。このバトルフェイズ中にSF【4】以下のガーディアンを召喚した場合、そのガーディアンのLP分の追加ダメージを与える。
【2】【4】【5】……相手の山札からカードを4枚ジャンクゾーンに送る。このバトルフェイズ中にSF【4】以上のガーディアンを召喚した場合、そのガーディアンのSFの数だけ相手は自分の山札からカードを追加でジャンクゾーンに送る。
早乙女ナミ:フォース【▽▼▼▼▼▼】
「さあ、バトル! トウアズキに500ダメージを与えるよ!」
「くっ!!」
【暗殺葬鬼 トウアズキ】
DG【1000→1500】
LP【2000→1500】
「ターンエンドだよ」
「貴女の戦術は確かに奇想天外だけれど、それもここまでよ。私のターン、ドロー!」
琴原ヨウコ:手札【4】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
ヨウコはドローしたカードを横目で確認してからチャージフェイズに移行しやがてサモンフェイズにまで移行する。
「カードをデッキボトムに戻して追加ドロー! サモンフェイズ開始時、暗殺葬鬼の供物の効果によりデッキから【暗殺女帝 ベラドンナ】をノーコストで召喚!!」
【暗殺女帝 ベラドンナ】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アサシン】
DG【1500】
LP【5500→4000】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードはデッキまたはフィールドにおいては【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンとして扱う。
「ベラドンナはデッキまたはフィールドでは【暗殺葬鬼】として扱うわ。暗殺葬鬼を束ねる彼女は、手下の効果のコストにできないのよ」
「これが、ヨウコさんのエースガーディアン……」
ベラドンナの威圧感に気圧され、ナミは苦虫を噛み締めた表情を浮かべた。
ヨウコは「フフフ……」と妖しく微笑む。
「さあ、ベラドンナのトライブアビリティを発動するわ! 破滅を招く猛毒!!」
【暗殺女帝 ベラドンナ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札の【暗殺葬鬼】と名の付くガーディアンカード3枚をジャンクゾーンに送る、フォースを3枚消費する)
┗相手は自分の場に存在するガーディアンを全て【弱体化】してもよい。この効果で相手が自分のガーディアンを弱体化させなかった場合、以下の効果から相手は1つ選ぶ。
・【弱体化させなかったガーディアンの数だけ、相手は自分のライフカウンターを失う】
・【相手の場に存在する全てのガーディアンのLPを半分にダウンする】
「ポイズン・ガーデンの永続効果でジャンクゾーンに存在する【暗殺葬鬼】3枚をデッキボトムに戻してフォース3枚分の代用とするわ。そして、手札から3枚の暗殺葬鬼をジャンクゾーンに送るわ」
琴原ヨウコ:手札【1】
「さあ、選びなさい。慈悲深い暗殺女帝は貴女に選択を与えてあげるわ」
「選択って言うほど選択じゃない件について……うーん、フィーナとレグリスを両方弱体化させるよ」
【アイドル候補生 フィーナ】
【弱体化】
【タフネスアイドル レグリス】
【弱体化】
「さらに、私はライフカウンターを2つ消費してデッキからカードを2枚ドローするわ!
「……」
ヨウコがライフカウンターを消費してドローした瞬間、ナミは人知れず眉間に皺を寄せた。
琴原ヨウコ:手札【3】
:ライフカウンター【4→2】
「ダイスステップ!」
ヨウコのマスターズギアに【1】と表示された。
【暗殺女帝 ベラドンナ】
【1】【3】【5】……相手は自分のライフカウンターを1つ失ってもよい。失わなかった場合、相手のアタックガーディアンに2000ダメージを与える。
【2】【4】【6】……相手は自分のライフカウンターを1つ失ってもよい。失わなかった場合、相手のデッキからカードを4枚ジャンクゾーンに送る。
琴原ヨウコ:フォース【▽▽▽▽▽▼】
「フォースを消費してバトルフェイズ! フィーナは弱体化しているから、4000ダメージを与えるわ!」
ヨウコはニヤリと笑う。
「私は見逃してないわよ、早乙女ナミ! 貴女がドロップ&ドローの効果でジャンクゾーンに送ったカードの中にカウンターカードの【ハーフダメージ】があったことをね!!」
「っ……!?」
ナミは「バレてたか……」と呟く。
「貴女は私に公開してたハーフダメージをドロップ&ドローで捨てた。よって貴女の表状態のフォース1枚は単なるブラフに過ぎないわ!」
「……なーんてね♪」
「え……」
ナミはマスターズギアの液晶画面にタッチしてカウンターステップ時にカウンターカードの発動を決定する。
「フォースを1枚消費して手札からカウンターカード【ハーフダメージ】を発動!」
【ハーフダメージ】
FORCE【1】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは自分のガーディアンを1体まで選び、そのカードが受けるダメージ効果1つの数値を半分にする。
早乙女ナミ:手札【5】
:フォース【▼▼▼▼▼▼】
【アイドル候補生 フィーナ】
DG【700→2700】
LP【2800→800】
「私が捨てたのは2枚目のハーフダメージでした~!」
「そ、そんな……っ!!」
一体何なのか、ヨウコは目の前のナミのことがまるで分からない。
先程からどれだけナミの裏をかこうとも全て空振りに終わる。こんな経験、ヨウコの人生の中でも初めてなのだ。
「私は……これで、ターンエンドよ」
項垂れるヨウコを見てキシンは冷徹に告げる。
「あの姉ちゃんはもうダメだな。カードバトルでびびっちまったらもう挽回は無理だ」
「それだけ早乙女さんの戦術が衝撃的だったのだろう、無理もない。…………東栄学園と全国大会の場で戦えないのが歯痒いな」
ギンカクは口惜しそうに呟き、同時に己の無力さを痛感する。
さあ、ナミのターンだ。
「私のターン、ドロー!」
早乙女ナミ:手札【6】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
「手札のカードをデッキボトムに戻してサイドデッキからドロー!」
「サイドデッキからですって……!?」
サイドデッキからのドロー、それはつまり強力なガーディアンが呼び出されることを意味する。
「フォースを1枚消費して手札からアームドガーディアン【ドレスコーデ・プリマ】を召喚!」
【ドレスコーデ・プリマ】
SF【1】
GT【アームド/アシスト】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【400】
早乙女ナミ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▼】
「フォースを3枚消費してプリマのトライブアビリティを発動! 貴方のための晴れ舞台!!」
【ドレスコーデ・プリマ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:フォースを3枚消費する)
┗あなたは自分の手札からクロスガーディアンを1枚選んで相手に公開する。そのガーディアンの【サモンコンディション】に記載された条件に合うガーディアンカードを自分の山札からフォースを消費せずに召喚できる。その後、その山札をシャッフルする。この効果を発動したターンの間、あなたはフォースを消費せずにバトルフェイズを行える。
早乙女ナミ:フォース【▽▽▼▼▼▼】
「私が公開するのはクロスガーディアン【演舞歌姫 キララ・プリマ】!」
【演舞歌姫 キララ・プリマ】
【サモンコンディション】
┗このカードはフォースを消費して手札から召喚できない。【キララ】と名の付くカードを素体とし、【ドレスコーデ・プリマ】のアームドアビリティの効果でのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。素体となったカードはこのカードのアンダーカードとなる。
「デッキから【スターアイドル キララ】をノーコストで召喚! 出番だよ、キララ!」
【スターアイドル キララ】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アイドル】
DG【2700】
LP【4000→1300】
「そして、プリマのアームドアビリティを発動!」
【ドレスコーデ・プリマ】
【アームドアビリティ】
【起】(COST:このカードをアンダーカードとしてアタックガーディアンの下に置く)
┗あなたのアタックゾーンに【アイドルトライブ】のカードが存在する場合に発動できる。そのカードを素体とし、手札から【プリマ】と名の付くクロスガーディアンをフォースを消費せずに召喚する。
「私はアタックゾーンの【スターアイドル キララ】とアシストゾーンの【ドレスコーデ・プリマ】で、装着転成!! プリマドンナのドレスを纏った新しいキララのお披露目だよ、【演舞歌姫 キララ・プリマ】!!」
キララの周りにプリマが飛来し、その身に重なるように一体化する。
【演舞歌姫 キララ・プリマ】
SF【6】
GT【クロス/アタック】
Tr【アイドル】
DG【2700】
LP【6500→3800】
【サモンコンディション】
┗このカードはフォースを消費して手札から召喚できない。【キララ】と名の付くカードを素体とし、【ドレスコーデ・プリマ】のアームドアビリティの効果でのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。素体となったカードはこのカードのアンダーカードとなる。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードがあなたのアタックゾーンに存在する限り、あなたは自分のターンのエンドフェイズ時に、あなたのフォースを全て裏状態にしなければならない。
早乙女ナミ:手札【4】
「キララ・プリマのトライブアビリティを発動! 貴方のための晴れ舞台!!」
【演舞歌姫 キララ・プリマ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札のカードを3枚選んで公開する)
┗この効果はあなたの手札が3枚以上の時のみ発動できる。このターンのダイスステップをスキップしてバトルフェイズを開始する。相手のアタックガーディアンにX000ダメージを与える。また、この効果のコストで【アイドルトライブ】のアシストガーディアンを3枚公開した場合、相手のアタックガーディアンは【弱体化】する。(Xの数値は、この効果のコストで公開したアシストガーディアンの枚数)
「ドレスコーデ・プリマのトライブアビリティで、このターンの間、私はフォースを消費せずにバトルフェイズを開始できる。私は手札からこの3枚のカードを公開するよ」
【試験教官 クリムゾン】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アイドル】
【試験教官 ブラック】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アイドル】
【試験教官 ホワイト】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アイドル】
「私が公開したのはアイドルトライブのアシストガーディアン3枚、よってベラドンナを弱体化させるよ!」
「っ!!」
【暗殺女帝 ベラドンナ】
【弱体化】
「そして、ベラドンナに6000ダメージを与える!!」
「……まだよ、まだ私は終わらないわ!!」
キララ・プリマのトライブアビリティに対してヨウコはカウンターを仕掛ける。
「フォースを2枚消費して、手札からカウンターカード【パーフェクト・バリアー】を発動!」
【パーフェクト・バリアー】
FORCE【2】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗このカウンターステップを発生させた相手のカード効果を無効にする。
琴原ヨウコ:手札【2】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「これでキララ・プリマの効果は無効よ!」
「ええ、そうですね。でも私、ヨウコさんがパーフェクト・バリアーを使ってくるって分かってました」
「なっ……そんな、負け惜しみを!!」
「根拠ならありますよ。今回のクライマックスバトルでは手札の枚数がそのままフォースの消費量の制限になる。さっきのターン、ベラドンナの効果を発動した後のヨウコさんの手札は1枚、バトルフェイズを開始するためにフォースを1枚消費しなきゃいけないから問題ない筈です。にも関わらず、ヨウコさんはライフカウンターを消費してまでカードを2枚ドローした。それはつまり、手札1枚のままじゃフォースを2枚消費して発動するパーフェクト・バリアーが発動できないから……違います?」
「だ、だったらどうだと言うの?! 貴女のキララ・プリマはクロスガーディアンだからエンドフェイズ時にフォースを全て裏状態にしなきゃいけない。次のターン、私のベラドンナで貴女は終わりよ!!」
「そうはいかないんですよね、エンドフェイズです♪」
早乙女ナミ:フォース【▼▼▼▼▼▼】
「手札からスペルカード【カーテン・コール】を発動します」
「え、エンドフェイズ時にスペルカード?」
ナミは大きく頷く。
「カーテン・コールは終幕時に演者を舞台に呼び戻すんです」
【カーテン・コール】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【自】(自分のエンドフェイズ時、手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗このターン中にフィールドからジャンクゾーンに送られたガーディアンカードをジャンクゾーンから選び、そのガーディアンをアシストゾーンにフォースを消費せずに召喚する。
早乙女ナミ:手札【3】
「このターン中にフィールドからジャンクゾーンに送られたガーディアンですって……ドレスコーデ・プリマはキララ・プリマのアンダーカードになってる筈……いや、待って」
ここでヨウコはある考えに至る。
そうだ、ドレスコーデ・プリマを召喚した時、前に居たガーディアンはジャンクゾーンに送られていたではないか。
「ドレスコーデ・プリマを召喚したことでジャンクゾーンに送られた【タフネスアイドル レグリス】を再度ジャンクゾーンからアシストゾーンに召喚!」
【タフネスアイドル レグリス】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アイドル】
DG【0】
LP【3000】
「そしてエンドフェイズ終了時、レグリスの効果で再びダイスステップを開始するよ」
「ま、待ちなさい! エンドフェイズが終わったのなら私のターンに移行するんじゃないの?!」
ヨウコの抗議の言葉に対して、試合進行役であるバトルマスター・レツが解説する。
〈エンドフェイズが終わったらと言うより、正確にはエンドフェイズ後に訪れるエンド宣言ステップにて“ターンエンド”を宣言することで相手にターンが譲渡される。このターン、まだ早乙女選手はエンド宣言をしてないので琴原選手のターンには移行しないぞ!〉
「そんな……」
バトルマスター・レツの言葉にヨウコはガックリと項垂れる。もうヨウコの手札には防御札は無い。
「ダイスステップ! これで終わりだよ!」
ナミのマスターズギアの液晶画面に【4】が浮かび上がる。
【演舞歌姫 キララ・プリマ】
【1】【4】【6】……あなたは自分の手札からカードを3枚選んで公開し、相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの数値は、あなたが公開した手札の中に含まれているアシストガーディアンのSFの合計値×500)
「ドレスコーデ・プリマのトライブアビリティで私はフォースを消費せずにバトルフェイズに移行。私が公開する3枚は、さっきと同じこの3枚のアシストガーディアン」
【試験教官 クリムゾン】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
【試験教官 ブラック】
SF【3】
GT【ノーマル/アシスト】
【試験教官 ホワイト】
SF【3】
GT【ノーマル/アシスト】
「この3枚のアシストガーディアンのSFの合計値は8、さらにベラドンナは弱体化しているから合計8000ダメージを与えるよ!」
「その攻撃を防ぐ手は……無いわ」
悔しそうに歯を噛み締める。そこでふと、シンヤの言葉が脳内に響き渡った。
――炉模工業高校と東栄学園は共に敗者復活権を得て全国大会本選に出場した。つまり、どちらも同レベルということだ――
その言葉に思わず自嘲染みた笑みが溢れる。
(炉模工と東栄が同レベル……? シンヤ、貴方の方こそ東栄を過小評価しすぎよ……だってこんな型破りなコンボ、私達の中で誰も思い付かないでしょ)
【暗殺女帝 ベラドンナ】
DG【1500→9500】
LP【4000→0】
〈ついに決着! 強烈なコンボとコンボのぶつけ合い、制したのは東栄学園の早乙女ナミ選手だあああああ!! これにより、東栄学園は炉模工業高校に対して2勝1敗で勝利!!!〉
バトルマスター・レツの宣言に会場中で「すげえ!」、「あんなカードの使い方ありかよ!」、「今度俺も使ってみようかな」等の歓声が溢れる。
ナミは「ふふん♪」と胸を張りながらヨウコに近づいて言う。
「ヨウコさん。どうでしたか、私のバトルは!」
ヨウコはその言葉に対して悔しさもあるが、同時に一種の納得もある。
「……ええ、そうね。因みに、あのレグリスの使い方、どうやって思い付いたのかしら? 後学のために教えてもらえると嬉しいのだけれど」
「あー、あれですか? その場のただの思い付きですよ、だってあんなのそう簡単に狙えるわけないじゃないですか」
「なはは」と陽気に笑うナミの様を見て今度こそヨウコは自身の敗北を認めた。
「……そう、敵わないわね」
全国大会本選、着実に強者達が集いつつあるのであった。
◇◇◇◇◇◇
「やあ、孤高センリくん!」
「……天神セカイか」
孤高学園のブリーフィングルーム前にて、界演学園の主将であるセカイがそこに居た。
「何の用だ?」
「次はウチらとキミ達とのバトルだからね。主将同士、挨拶をと思ってね」
「そんなものは僕には必要ない。カードマスターならバトルの中で語るべきだ」
センリの釣れない態度にセカイは「ふふ」と楽しそうに笑う。
「硬派だねぇ、センリくん」
いまいち要領が掴めない態度のセカイだが、センリとしてはおおよその狙いは分かる。
「言っておくが。僕に近づいたところで“リライヴ計画”の情報は掴めないぞ」
「……あはは、何の話かな?」
「フンッ」
セカイの表情を見たセンリは淡々と答えながらブリーフィングルームにへと入室する。
「少しはポーカーフェイスというものを勉強した方が良いぞ……“音界の剣士クロー”」
そのまま扉が閉まると、廊下に静寂な空気が漂う。ただし、セカイの瞳は妖しい光を帯びているが。
「そう、忠告痛み入るよ……孤高センリくん」
【次回予告】
界演学園と孤高学園とのバトル。
それは1つの波乱を巻き起こす。
世界を生み出す者と世界を加速させる者がついに激突する!!
次回、【世界の真実―前編―】




