BATTLE:051【因縁の決着】
お久しぶりです、1年以上間が開いてしまって申し訳ありませんでした。
今回は久々の次話投稿ということでほぼノーカットのバトルにした結果、文量が35000文字を越えてしまいました(汗
いつもが1話約10000文字を目安にしているので、約3話分ですね。
そして今回、現野イビツさんが考えて下さった【エクシードアビリティ】が登場します。
では、どうぞ。
――迷宮戦開始・30分経過――
「よっと!」
カイトは鳥型のガーディアンである【ディヴァイン・ガードウイング】の脚に掴まり、上空20メートルからざっと迷宮全体の様子を伺う。
「さてさて、ポイントアイテムはどこにあるかな――って、え?」
視線を下に向けようとしたところ、地上からビームのような光線がカイトに目掛けて向かってきている。
速度はかなり早くもう僅か3メートルという距離まで迫る勢いだ。
「おいおい、待ってくれって!」
カイトは慌ててガードウイングに指示を出す。
「ガードウイング、避けてくれ!!」
〈あいよー〉
呑気に言いながらガードウイングは自身の体を傾けて方向転換を迅速に行う。
なんとかビームの射程から外れ、避けられた事に安堵するもののすぐに地上に目を向ける。一体、誰がカイトに対してあのような光線を放ったのか。
目を凝らしてビームが発射されたであろう場所を見ると、こちらを見上げる少年と目が合った。
その少年はニヤリと笑いながら片手にポイントアイテムを手に持ち、手招きするように手をクイクイと曲げる。
パクパクと口を動かしているが、カイトには相手が何を言ってるのかおおよそ見当がついた。
――『こっちに来なよ、戦宮』――
恐らく、そのような内容であるのはこちらを小馬鹿にしたような表情から察しが着く。
「ガードウイング、アイツの元で降ろしてくれ」
〈お、いよいよバトルですかい? 腕が鳴りますなー。ま、あっしにあるのは腕じゃなくて翼ですが!〉
「……召喚してから初めて知ったけど、お前って結構フランクなのな」
〈なっはっはっ。そう誉められると思わず毛が生え変わってしまいますぞー〉
「うん、とりあえず降ろしてくれるかな」
〈かしこまりー〉
いまひとつ気持ちが締まらないガードウイングに辟易しつつ、カイトはこちらを誘っている少年を見つめる。
「阿久津エンジ……」
カイトにとって越えなければならない大きな壁の1つ、炉模工業高校の先鋒である阿久津エンジが待ち受ける。
ガードウイングの足から手を離して地面に着地すると、互いのマスターズギアが同時に電子音が鳴り響く。
【Battle Mode】
カードバトルを行うための状態に移行する。カイトとエンジのガーディアンは共にSF【0】、よって先攻と後攻はマスターズギアによってランダムに決められる。
マスターズギアがそれを決める間、2人は話に花を咲かせる。
「やあ、戦宮。あの時からまさか本当にここまで来るなんて正直思ってなかったスよ」
「へへ、お前を倒してそれから優勝する一心で来たんだ。前までの俺と同じと思ってたら、痛い目見るぜ」
「おー、そりゃあ怖い怖い。んじゃあ、その力を見せてもらおうかな」
「ああ、決着を着けようぜ!」
【Your Turn】
マスターズギアが静かに先攻後攻を決定し、その結果を独特な電子音で告げる。先攻はカイトである。
互いに相対してマスターズギアを構えて、2人はカードバトルを開始する。
「「ダイス・セット!!」」
戦宮カイト:手札【5】
:ライフカウンター【4】
【アタックガーディアン】
【ディヴァイン・ガードウイング】
SF【0】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【500】
阿久津エンジ:手札【5】
:ライフカウンター【4】
【アタックガーディアン】
【進化の繭】
SF【0】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【500】
まずはカイトのターンだ。終盤の展開を想定して手札増強の下準備をする必要がある。
そのためにも、ここはアタックガーディアンを召喚するよりもアシストガーディアンを召喚してしっかり地盤を固める方が良いだろう。
「うっし、先攻は俺だ。ドロー、からのフォースチャージだ!!」
戦宮カイト:手札【6】
:フォース【▽】
「フォースを1枚消費して手札からアシストガーディアン【閃光騎士 トーチ】を召喚!」
【閃光騎士 トーチ】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【600】
戦宮カイト:手札【5】
:フォース【▼】
「トーチのアシストアビリティを発動!」
【閃光騎士 トーチ】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:自分の手札からスペルカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からガーディアンカードを1枚まで選んで自分の手札に加え、その山札をシャッフルする。また、この効果のコストとしてジャンクゾーンに送ったスペルカードのSPが1以上である場合、自分のアタックガーディアンを1体選んでLPを300リペアする。
トーチは松明のような形をした剣を天に掲げて宣言する。
〈さあて、魔術の欠片よ、我等が勝利へ向かう灯火となれ!〉
カイトは手札からSP【1】のスペルカード【ダブル・ソード・アタック】を1枚選んで捨て札にし、デッキから【閃光騎士 ライジング】を手札に加えた。その後、トーチの剣から癒しの光が溢れだし、ディヴァイン・ガードウイングに降り注いだ。
【ディヴァイン・ガードウイング】
DG【0→-300】
LP【500→800】
「これだけじゃ終わらないぜ! 続いて手札からスペルカード【聖なる閃光】を発動!」
【聖なる閃光】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の手札から【閃光騎士】と名の付くアシストガーディアンカードを1枚選んで、そのカードのSFをあなたのジャンクゾーンに存在するスペルカードの枚数だけ下げる。その後、自分の山札からカードを1枚ドローする。
戦宮カイト:手札【4】
「俺のジャンクゾーンにはトーチのアシストアビリティのコストとして送ったスペルカードの【ダブル・ソード・アタック】が1枚ある。聖なる閃光はSP【0】のスペルカードだから無効にしやすいぜ」
カイトの挑発するような言動と表情に対して、エンジはニッコリと微笑む。
「無効にしたいのは山々ッスけど、生憎手札にスペルカードが無いもんでね。どうぞ、効果処理を」
「なら、遠慮なくやらせてもらう!」
カイトはマスターズギアの液晶画面に表示される手札の中から先程手札に加えた【閃光騎士 ライジング】を選択する。
「ライジングのSFを1つ下げてそのままノーコストで召喚するぜ。さらにドロー!」
戦宮カイト:手札【5】
【閃光騎士 ライジング】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【300】
戦宮カイト:手札【4】
「ライジングのアシストアビリティを発動!」
【閃光騎士 ライジング】
【アシストアビリティ】
【自】(セットフェイズ開始時)
┗この効果は1ターンに一度しか発動できない。あなたは自分のジャンクゾーンに存在するカードを2枚まで選び、自分の手札に加える。そして、あなたのアタックガーディアンをXリペアする。(Xは、あなたの手札枚数×100)
戦宮カイト:手札【6】
〈ヒカリ様の意思は我等の意思! 大地に眠りし同胞達よ、ここへ舞い戻れ!〉
【ディヴァイン・ガードウイング】
DG【-300→-900】
LP【800→1400】
ライジングが自身の長剣を地面に突き刺すと、そこから亀裂が走って光が漏れ、そこから出現した2枚のカードがカイトのマスターズギアに吸収される。
「俺がジャンクゾーンから手札に戻すのはアシストガーディアンの閃光騎士トーチとスペルカードの聖なる閃光だ。そして再び聖なる閃光を発動し、閃光騎士トーチをノーコストで召喚! 聖なる閃光の効果でドローもさせてもらう!」
【閃光騎士 トーチ】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【600】
戦宮カイト:手札【5】
「再度トーチのアシストアビリティを発動! 手札からSP【2】のスペルカード【不滅の意思】をジャンクゾーンに送り、デッキから【閃光騎士】をサーチし、ディヴァイン・ガードウイングのLPをさらに300回復する!」
【ディヴァイン・ガードウイング】
DG【-800→-1100】
LP【1300→1600】
デッキから手札に加えたのはアタックガーディアンである【閃光騎士 ライトニング】、だがカイトのコンボはまだ終わらない。
次なる布石を整えるのだ。
「トーチの起動効果でコストとして手札から捨てた【不滅の意思】の効果発動!」
【不滅の意思】
SP【2】
【ノーマルスペル】
【自】(起動効果のコストとしてジャンクゾーンに送られた時)
┗自分の山札の上からカードを3枚ジャンクゾーンに送り、その後ジャンクゾーンから【ディヴァイントライブ】のガーディアンカードを1枚まで選んで自分の手札に加える。
「よって、デッキトップからカードを3枚ジャンクゾーンに送り、ジャンクゾーンからライジングを手札に加えさせてもらうぜ」
「へぇ、中々やるじゃん」
戦宮カイト:手札【6】
エンジは感心しながらカイトに対して拍手を贈る。手札自体はターン開始時に比べて増えてはいないものの、デッキからカードをそれぞれ2枚ずつドロー及びサーチしさらに山札を3枚を削ったことで山札圧縮と墓地肥やしをしつつ、ジャンクゾーンから手札に回収した閃光騎士ライジングのアシストアビリティによるサルベージ対象も墓地肥やしによって増えておりアフターケアも万全だ。
「前から思ってたけど、キミってカードのコンボだけは上手いよね」
「だけは余計だ!」
軽口を呟くものの、エンジは内心で汗を流す。前回のバトルの際も感じていた事だが、この戦宮カイトという存在は無駄に真っ直ぐで一見脳筋プレイヤーのように思えるが、その実複数のカードによるコンボ技を得意とするテクニックタイプの人間であり、中々侮れない部分がある。
ドロー、サーチ、サルベージ、あらゆる手段を講じて自分の中の理想ムーブを安定させながら展開してくるのだ。ターンを回せばその分だけ詰めの一手が近付いていく、ならばエンジとしても悠長にしているわけにはいかない。
こちらの意図を悟られないように自身の両耳を覆うヘッドホンを強く握りながら笑みを深めていく。
この勝負、長引けばこっちが不利になる。ならば、さっさとコンボを成立させてカイトの心を折るに限る。
一方のカイトはマスターズギアを操作してエンドフェイズに移行する。
「俺はこれでターンエンドだ」
「そ。なら、俺も行かせてもらう! ドロー!」
エンジにターンが回り、マスターズギアの液晶画面に注目する。
ドローしたカードは【ギフト・トゥ・ギフト】という名前のスペルカード。相手にアドバンテージを与えてしまうが、それでも手札に残しておく方が良いだろう。
「フォースチャージして、追加ドロー!」
阿久津エンジ:手札【6】
:フォース【▽】
「さて。悪いけど、初めから俺も飛ばしていくッスよ」
エンジはそう呟くと、マスターズギアの液晶画面をタッチして手札のカードの効果を発動させる。
「俺は手札からスペルカード【ギフト・トゥ・ギフト】を発動!」
「え、確かそのカードって……」
エンジの使用したカードに対してカイトは目を剥いた。エンジの方は予想通りのリアクションが得られたので思わず苦笑しながらも一応尋ねる。
「どうする、手札からスペルカードを捨てて無効にする?」
「い、いや……こっちとしてはメリットだから普通に通すけど」
「はは、だよねー」
カイトの言葉に「うんうん、分かる分かる」と何度も相槌する。このカードの効果は相手の行動の幅を増えるもの、それ故に絶対に無効にしないだろうという強い確信があり、だからこそこちらのコンボが絶対に通るという思惑が成就したのだ。
【ギフト・トゥ・ギフト】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗相手は自分の山札の一番上のカードを表状態でチャージゾーンに置き、あなたは自分の山札からカードを2枚ドローする。
戦宮カイト:フォース【▽▼】
阿久津エンジ:手札【7】
「お互いに1アド稼げて良かったッスね」
「……何が狙いだ?」
飄々とした態度を示すエンジの狙いがいまいち読めない。ただ単に手札を増やしたいのならもっと良いカードがある。何故わざわざこちらにフォースを譲り渡したのか。
「そう怖い顔しないで下さいッスよ。お互い、まだまだ仕込みの段階っしょ」
「仕込み……?」
やはり、この不可解な行動には何か大きな理由がある。カイトが警戒した表情を浮かべていると、3Dバトルシステムによって実体化している進化の繭が少しずつ光を帯び始めていく。
まるで蕾が花開くような幻想的な光景であり、繭の中に潜んでいるであろう何者かが目覚めようとしているのをカイトは本能的に察知する。
「進化の繭が……これは……」
「綺麗ッスよね。生物の進化の瞬間は、やっぱり美しいもの――――トライブアビリティ発動」
「っ?!」
思わず固まってしまう。それほどまでにエンジの声は不気味だった。
足取りが軽く跳ねるような高いトーンから一転し、足元が凍るような冷たく低いトーンに声が切り替わったのだから。
「進化の契約」
「い、いきなりトライブアビリティかよ!?」
「俺、言ったッスよね? 初めから飛ばしていく、って」
エンジは己の拳を強く握り締めて宣言する。
「キミの実力はこの前の練習試合で十分把握したからね。その程度のカードマスターに付き合ってる程、俺は暇じゃないんスよ」
そのエンジのあんまりな物言いにカイトは「おい!」と憤慨して抗議の声をあげる。
「俺だってここに来るまでに色々と成長したんだっつーの!!」
「前にも言った筈ッスよね。“お前が強くなる以上に、周りも強くなる”って。キミだけが成長しているわけじゃないってことさ」
「だとしても、今回は俺が絶対に勝つ!」
「あっそ、ならキミの完璧な布陣が整うよりも早く俺のガーディアンは進化するだけッスよ」
【進化の繭】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手の表状態のフォースを1枚選んで裏状態にする)
┗あなたは自分の山札から【進化技工士 レシプロ・アーリー】を1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚する。その後、このカードはマテリアルカードとしてアタックガーディアンの下に置かれ、その山札をシャッフルする。
戦宮カイト:フォース【▼▼】
「な、俺のフォースをコストにした?!」
「そういう事。デッキから【進化技工士 レシプロ・アーリー】をノーコストで召喚!」
【進化技工士 レシプロ・アーリー】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【1000】
「進化の繭は自身の効果でレシプロ・アーリーの下にマテリアルセットされる。さらに、手札からドメインカード【技術局/マテリアライズ・ステーション】をセット!」
【技術局/マテリアライズ・ステーション】
【ドメイン】
【永】
┗あなたのアシストゾーンにガーディアンが召喚される場合、あなたは自分の手札からカードを1枚まで選んでそのガーディアンの下にマテリアルカードとして置く。
阿久津エンジ:手札【6】
「マテリアライズ・ステーションが俺のドメインゾーンに存在する限り、俺はアシストガーディアンに手札のカードをマテリアルセットする事ができる。アシストガーディアン【エヴォル・マネージャー】を召喚!」
【エヴォル・マネージャー】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【100】
阿久津エンジ:手札【5】
「手札1枚をエヴォル・マネージャーの下にマテリアルセット!」
阿久津エンジ:手札【4】
「続いてエヴォル・マネージャーのバーストアビリティを発動!」
【エヴォル・マネージャー】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード1枚をジャンクゾーンに送る)
┗この効果は1ターンに一度しか発動できず、このガーディアンの下に置かれたマテリアルカードのみでしかコストにできない。相手は自分のフォースを1枚選んで表状態にし、あなたは自分の山札からカードを2枚選んで自分の手札に加えてその山札をシャッフルする。(手札に加えたカードを相手に開示する必要はない)
〈さあて、進化の手助けをするとしますか!〉
「戦宮、フォースを回復して良いッスよ。こっちはデッキから好きなカードを2枚手札に加えさせてもらうッスから」
戦宮カイト:フォース【▽▼】
阿久津エンジ:手札【6】
フォースが1枚表状態に回復したものの、カイトの表情はとても優れない。
「バーストアビリティとはいえ、サーチしたカードを開示しなくていいなんてインチキだろ……」
カイトの声からは「割りに合わない……」というかなりげんなりした色が強く出ている。
それもその筈だ。コストとして消費したマテリアルカード1枚と相手のフォース1枚の回復に対し、デッキから2枚のカードサーチ、一見すると2:2交換だが、サーチしたカードが開示されないために向こうはさらに情報アドバンテージを稼いでいるので実際は2:4交換なものだ。エヴォル・マネージャー自身を召喚したことも加味すれば3:4交換であり、どちらにしろエンジは確実にアドバンテージを稼いでいる。
そんなカイトの心境を察しているのか、エンジはニヤニヤと意地の悪い表情を浮かべている。
「言いがかりは良くないッスよ~。さあて、レシプロ・アーリーのバーストアビリティを発動!」
【進化技工士 レシプロ・アーリー】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード1枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは相手の手札からカードを2枚まで選んで相手のフォースゾーンに裏状態で置く。この効果のコストとなったマテリアルカードが【進化の繭】である場合、次のターンのドローフェイズ開始時に相手は自分の裏状態のフォースを1枚選んでジャンクゾーンに送る。
「これにより、キミの手札を2枚選んでフォースゾーンに裏状態で置かせてもらう」
「くっ、俺の手札が……」
戦宮カイト:手札【4】
:フォース【▽▼▼▼】
「あ、レシプロ・アーリーのトライブアビリティも発動しとくッス。はい、進化の契約」
「なんだその“ついでにやっとくか”みたいな軽い発動宣言は!?」
【進化技工士 レシプロ・アーリー】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手のフォースを1枚消費する)
┗あなたは自分の山札から【進化技工士 ジェット・ファイター】を1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚し、その山札をシャッフルする。その後、このカードをアタックガーディアンの下にマテリアルカードとして置く。
戦宮カイト:フォース【▼▼▼▼】
「また、俺のフォースが……」
「これがエヴォルトライブの【進化技工士】シリーズのカードさ。特定名称のマテリアルカードを消費することで追加効果を得られるバーストアビリティと相手のフォースを消費してデッキから特定名称のガーディアンをノーコストで召喚するトライブアビリティが売りッスよ」
一見地味に見えるトライブアビリティだが、相手のリソースを利用し自分の手札を一切消費せずにガーディアンを召喚しているため、一方的に相手にのみ負担をかけている極めて強力な効果である。
「さて、トライブアビリティによりキミのフォースを消費し、デッキから【進化技工士 ジェット・ファイター】をノーコストで召喚!」
【進化技工士 ジェット・ファイター】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【2000】
一気にSF【2】のガーディアンが召喚され、カイトは思わずたじろぐ。
ライフ回復コンボによってディヴァイン・ガードウイングはそのLPを1600まで底上げされているものの、SF【0】のガーディアンだ。このままの勢いではさらにSF差を広げられてしまいかねない。
「それじゃあ、ジェット・ファイターのバーストアビリティを発動させてもらうッスよ」
「!?」
【進化技工士 ジェット・ファイター】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード1枚をジャンクゾーンに送る)
┗この効果を発動したターン、あなたはバトルフェイズを行えない。相手は自分のフォースを任意の枚数まで選んで表状態にでき、自分の裏状態のフォース1枚につき自分のアタックガーディアンに300ダメージを与える。この効果のコストとなったマテリアルカードが【進化技工士 レシプロ・アーリー】である場合、次のターンのエンドフェイズ時に相手のフォースゾーンに表状態のフォースが存在しなければ相手は自分のアタックガーディアンを1体選んで【弱体化】させる。
「さあ、好きな数だけフォースを表にして良いッスよ」
「表状態にすれば、お前がまた俺のフォースを使うだけだろ」
「まあ、そうッスね」
だが、裏状態のままではダメージは免れない。現在、カイトのフォースゾーンには裏状態のフォースが4枚ある。エンジのカード能力を使用させないようにするために1枚も表状態にしなければ、1200の大ダメージがディヴァイン・ガードウイングを襲うことになるのだ。
まさに苦渋の決断を迫られ、カイトは苦々しい表情で告げる。
「俺は……1枚を表にする」
「そッスか。んじゃあ、900のダメージを受けてもらうッスよ」
「すまん、ディヴァイン・ガードウイング」
そのままカイトのマスターズギアからディヴァイン・ガードウイングに対して電撃が放たれ、ディヴァイン・ガードウイングは断末魔をあげながら感電する。
〈ぎゃああああ!!〉
【ディヴァイン・ガードウイング】
DG【-1100→-200】
LP【1600→700】
戦宮カイト:フォース【▽▼▼▼】
カイトのフォースが1枚表状態になったことでエンジは含み笑いを浮かべる。
これで更なるコンボにへと繋がるのだから。
「キミのフォースゾーンには表状態のフォースが1枚ある。ジェット・ファイターの進化の契約発動!!」
「……ってことは、次はSF【3】の【進化技工士】シリーズか」
【進化技工士 ジェット・ファイター】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手のフォースを1枚消費する)
┗あなたは自分の山札から【進化技工士 ターボ・ジェネレーター】を1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚し、その山札をシャッフルする。その後、このカードをアタックガーディアンの下にマテリアルカードとして置く。
「よって、キミのフォースを消費して俺はデッキから【進化技工士 ターボ・ジェネレーター】をノーコストで召喚!」
【進化技工士 ターボ・ジェネレーター】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【3000】
戦宮カイト:フォース【▼▼▼▼】
「ジェット・ファイターはターボ・ジェネレーターの下にマテリアルセットする。そしてバーストアビリティ発動!」
【進化技工士 ターボ・ジェネレーター】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード1枚をジャンクゾーンに送る)
┗相手は自分の裏状態のフォースの枚数だけ自分の手札を選んで自分の山札の上に好きな順番で置く。この効果のコストとなったマテリアルカードが【進化技工士 ジェット・ファイター】である場合、次のターンの間、相手がドロー以外の方法で自分の手札に加えたカードは全てジャンクゾーンに送られる。
「キミの裏状態のフォースは4枚あるッスね」
「ってことは、俺は手札を4枚選んでデッキトップに戻さなきゃいけないってことか」
カイトの手札は4枚、つまり全ての手札を山札の上に戻さなければならないのだ。しかも次の自分のターン、ドロー以外で手札に加えたカードは全て捨て札となることが決定している。
カイトの表情は芳しくない。それもその筈だ、次のターンの間だけとは言え、閃光騎士のジャンクゾーンからのサルベージ効果による手札増強が封じられたのと同義なのだから。
カイトは自分の手札のカードを見る。幸い、戻すカードの順番は自分で決めることができる。
(次のターン、通常のドローとチャージフェイズでの追加ドローによって手札にあった方が良いカードが手元に来るようにしよう。なるべくドロー能力を持ったカードが望ましいな)
マスターズギアに表示される手札から戻す順番を即座に選び、ついにカイトの手札が全て無くなった。
戦宮カイト:手札【0】
「これでキミの目障りな手札が無くなったッスね」
「……」
エンジの言葉にカイトは押し黙るが、やがて「くくく」と不敵に笑う。
その様子にエンジは首を傾げる。
「何が可笑しいんスか?」
「この程度のことで俺のディヴァイントライブを御せると思ってるなら、それはとんだ見当違いだぜ」
「へえ、言ってくれるじゃん。その威勢がどこまで保つのか、見物ッスね」
エンジはマスターズギアに表示される手札のカードを選択してタッチする。
「俺はフォースを1枚消費し、手札からスペルカード【プログレス・チャージ】を発動!」
「プログレス・チャージ……?」
カイトにとって初めて聞くスペルカードである。すぐにその効果内容を閲覧するために自分のマスターズギアの液晶表示を相手カード参照に切り替える。
【プログレス・チャージ】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:フォースを1枚消費し、手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗この効果を発動するターン、あなたはバトルフェイズを行えない。あなたは自分の手札から相手の裏状態のフォースの枚数と同じ数値のSFを持つ【エヴォルトライブ】のガーディアンカードをフォースを消費せずに召喚し、前のガーディアンはマテリアルカードとしてその下に置かれる。自分のフィールドに【エヴォルトライブ】のガーディアンが2体以上存在する場合、召喚制限を無視して召喚できる。
阿久津エンジ:手札【5】
:フォース【▼】
「キミの手札は0、つまりこの効果の発動を妨げることは不可能。そして俺の場にはターボ・ジェネレーターとエヴォル・マネージャー、2体の【エヴォルトライブ】のガーディアンが存在しているので、召喚制限を無視して召喚ができる!」
「俺の裏状態のフォースは4枚、ってことは――」
SF【3】のターボ・ジェネレーターの1つ上のSFを持つ【進化技工士】が召喚される可能性が高い。
カイトの考えが読めているのか、エンジは「キミの考えている通りだよ」と呟く。
「俺はノーコストで手札から【進化技工士 ロータリー・メイガス】を召喚制限を無視して召喚!」
【進化技工士 ロータリー・メイガス】
SF【4】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【4000】
「ターボ・ジェネレーターはロータリー・メイガスの下にマテリアルセットされる。そしてロータリー・メイガスのバーストアビリティ発動!」
【進化技工士 ロータリー・メイガス】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード1枚をジャンクゾーン送る)
┗相手は自分の山札の上からカードを自分の裏状態のフォースの枚数だけ閲覧して、その中から2枚までを選んで山札の上に好きな順番で戻し、残りのカードを山札の一番下に好きな順番で置く。この効果のコストとなったマテリアルカードが【進化技工士 ターボ・ジェネレーター】である場合、次のターンの間、相手はドローしたカードを山札の一番下に全て好きな順番で置いた後にその枚数だけ山札の上からカードを手札に加える。
「この効果でキミはデッキトップから4枚を閲覧し、内2枚までを選んでデッキトップに戻し、残りをデッキボトムに置くことができる」
「……」
カイトは神妙な面立ちで4枚のカードを見つめる。2枚をデッキトップに、残りはデッキボトムに。
ここで考えなければならないのは、次のターンにおけるドローフェイズだ。
(次のドローで俺はターボ・ジェネレーターとロータリー・メイガスの効果でドローカードを失うことになる。つまり、俺は次のターンも手札は0枚のまま……だが、それでもやれることはある!)
考えをまとめると即座にカードを選択した。その行動にエンジは「ヒュー」と口笛を吹く。
「そんなにすぐに決めちゃって良いんスか? もっとゆっくり考えても良いんスよ?」
「いや、これで良い。これ以外の選択は現状考えつかないんでね」
カイトの何てことないような言動にエンジは怪訝そうに表情を潜める。
一体目の前の存在は何を企んでいるのか。
「ふーん。ま、何でも良いッスけどね。このターンはバトルを行えないから俺はターンエンドッスよ」
エンジがエンド宣言をしたことでターンがカイトに切り替わる。
エンジはカイトの取る行動に注目する。
「よし、俺のターンだ!」
「この瞬間、レシプロ・アーリーの効果によりキミの裏状態のフォース1枚をジャンクゾーンに送る」
戦宮カイト:フォース【▽▽▽】
「フォースが削られたが……ドローだ!」
戦宮カイト:手札【1】
エンジは空かさず適用されている効果を宣言する。
「ロータリー・メイガスの効果でドローしたそのカードはデッキボトムに置き、デッキトップからカードを1枚手札に加える」
カイトはドローしたカードを横目で確認してからデッキボトムに沈めてデッキトップからカードを手札に加える。
さらに条件を満たしたことで、エンジは適用された効果を宣言する。
「そしてこの瞬間、ドロー以外の方法でキミの手札に加わったのでターボ・ジェネレーターの効果により、そのカードをジャンクゾーンに送ってもらう」
戦宮カイト:手札【0】
再びカイトの手札は0枚となってしまった。このままではカイトはこのターンの間、ほとんど何もできないに等しい。
「手札が必要不可欠なディヴァイントライブにとって、これ程の窮地は中々キツいんじゃないッスか?」
「まあな。だが、動けないことは無いぜ」
「……なに?」
カイトは不敵に笑うと、カード効果の発動を宣言する。
「たった今、手札からジャンクゾーンに送られた【聖なる踊姫】のポテンシャルアビリティを発動!」
【聖なる踊姫】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードが相手のカード効果によって手札からジャンクゾーンに送られた時)
┗あなたは相手フィールド上のガーディアンカード1枚を選んで【弱体化】させる。
「その効果により、お前のロータリー・メイガスを弱体化させる!」
「……めんどくさ」
エンジは忌々しそうに吐き捨てた。
【進化技工士 ロータリー・メイガス】
【弱体化】
「転んでもただじゃ起きないって言うのは、こういうことを言うんだろうね」
「おう、俺のデッキは手札が無くなったくらいで簡単に機能停止するほど、柔な作りじゃねえんだよ!」
意気揚々と言い放つカイトだが、エンジは大きく溜め息を溢した後に冷めた声で「で?」と疑問をぶつける。
「それでどうするつもりッスか? キミの手札が0枚なのは動かぬ事実。俺のロータリー・メイガスは弱体化してもそのライフは4000、一方でキミのディヴァイン・ガードウイングはSF【0】でライフは僅か700のアタックガーディアン。SF【0】のアタックアビリティ程度じゃロータリー・メイガスのライフはそんなに削られないし、反対にディヴァイン・ガードウイングのライフ700なんて簡単に削ることができる。このターンでどうにかしないとキミが負けるのは必至ッスよ」
「ああ、その辺も勿論考えてあるぜ。まあ、見てろって」
カイトは「にひひ」と笑いながらエンジに対して余裕の態度で臨む。
だが、内心では少なからず焦りの色が見え隠れしている。
(さあて、これからどうするかな。奴の言うとおり、俺の手札は0、このターンは能動的に動くことはできない。悔しいが、この状況をどうにかするためには、阿久津の野郎に頼るしかない)
チラッとエンジの場に存在するSF【4】のロータリー・メイガスを盗み見る。
(あともう少しなのにな。こんなことならもっとカードを厳選しておくんだったぜ)
今はできることだけをして、エンジの出方を伺うことにする。こちらの表状態のフォースが残るので、エンジが動きやすくなってしまうが、この状況では逆にエンジを釣るための良い餌になる。
「サイコロを振らせてもらうぜ!」
早々にダイスステップに移行してカイトはマスターズギアをダイスモードに切り替えた。マスターズギアにより、ランダムでその目の数が決定される。
【3】
【ディヴァイン・ガードウイング】
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。相手がこのバトルフェイズ中にカウンター効果を発動しなかった場合、このガーディアンのLPを1000リペアする。(Xの数値は効果発動時点におけるあなたと相手のそれぞれの手札枚数の差×100)
【2】【4】【6】……あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る。
「フォースを1枚消費してバトルだ! 行け、ディヴァイン・ガードウイング!」
〈あいよ、マスター! さっきのダメージに色をちょっと付けて返してやりますとも!〉
戦宮カイト:フォース【▽▽▼】
フォースが消費されたことでバトルフェイズに移行し、ディヴァイン・ガードウイングのアタックアビリティが発動する。
ディヴァイン・ガードウイングはそのくちばしを尖らせてロータリー・メイガスのもとに一気に突っ込む。
「俺と阿久津の手札枚数の差は5、さらにロータリー・メイガスは弱体化しているので1000ダメージをロータリー・メイガスに与える!」
「なるほど、手札が0枚なのを利用して逆にディヴァイン・ガードウイングの火力を底上げしたッスか。――――でもね」
エンジはマスターズギアを操作する。
「その攻撃を大人しく受けるつもりは無いし、回復もさせないッスよ。手札からカウンターカード【停戦契約】を発動!」
【停戦契約】
FORCE【0】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたと相手は互いに自分の山札からカードを1枚ドローし、山札の一番上のカードをチャージゾーンに表状態で置く。そうしたら、この効果を発動させたターンのバトルフェイズを強制的に終了させてエンドフェイズを開始させる。バトルフェイズ時に発動されたアタックアビリティは全て無効となるが、【弱体化】はしない。
ディヴァイン・ガードウイングの攻撃が目の前に迫る直前、ロータリー・メイガスは懐から契約書を取り出してディヴァイン・ガードウイングに向けて広げて内容を見せる。
ディヴァイン・ガードウイングは空中でブレーキをかけて契約書の内容を凝視する。
〈何です、これ?〉
〈勝負は一旦お預けだ。これはその契約書〉
〈……あらまあ〉
契約書の内容に納得すると、そのままディヴァイン・ガードウイングはカイトのもとへ大人しく戻ってきた。
「この効果により、互いに1ドローと1チャージしてこのバトルフェイズを終了させる」
戦宮カイト:手札【1】
:フォース【▽▽▽▼】
阿久津エンジ:手札【5】
:フォース【▽▼】
「そして、ロータリー・メイガスとターボ・ジェネレーターの効果が適用される」
カイトは停戦契約の効果でドローしたカードをデッキボトムに置いてデッキトップのカードを手札に加えた後、そのカードをジャンクゾーンに置いた。
戦宮カイト:手札【0】
「ちぇ、そう簡単に攻撃は通させてくれないか。だけど、これで終わりじゃないぜ」
「ん……?」
カイトの言葉にエンジは眉間に皺を寄せる。これで終わりじゃないとは、どういう意味なのか、カイトの発言の意図が読めない。
「エンドフェイズ時、ディヴァイン・ガードウイングのポテンシャルアビリティを発動するぜ!」
【ディヴァイン・ガードウイング】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(自分のエンドフェイズ時)
┗フォースを1枚消費し、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。その後、そのカードがガーディアンカードである場合、それを相手に公開することでこのガーディアンのLPをXリペアする。(Xの数値は相手に公開したガーディアンのSF×300)
「この効果により、俺はフォースを1枚消費してデッキからカードを1枚ドローする」
ドローしたカードを見て、カイトは小さく笑う。
戦宮カイト:手札【1】
:フォース【▽▽▼▼】
「どういうつもりッスか? たとえドローしたとしても、ターボ・ジェネレーターとロータリー・メイガスの効果が適用されるだけッスよ」
「ああ、だが回復することはできるだろ」
「っ!!」
カイトはドローしたカードをエンジに見せる。そのカードはSF【6】のガーディアンである【ディヴァイン・ナイト】だ。
よって回復する数値は1800となる。
【ディヴァイン・ガードウイング】
DG【-200→-2000】
LP【700→2500】
ドローしたディヴァイン・ナイトはデッキボトムにへと沈み、デッキのカードがジャンクゾーンにへと送られる。
戦宮カイト:手札【0】
「往生際が悪いッスね」
「それが俺の美点だからな。俺はこれでターンエンドだぜ」
少しずつだが、エンジの心の中で苛々とした感情が沸々と沸き上がってくる。
こちらはカイトの心を折るために逆転の芽を摘んでいるというのに、全く意に介してないのが癪に障る。神経を逆撫でるかのようなカイトの言動に心底うんざりする。
カイトのターンからエンジのターンに切り替わり、だるそうにドローフェイズを開始した。
「それじゃあ俺のターンッスか、ドロー」
阿久津エンジ:手札【6】
:フォース【▽▽】
ドローしたカードを見た後、エンジはカイトとディヴァイン・ガードウイングを見つめて思考を巡らせる。
カイトの表情からは焦りのような感情が見当たらない。それどころか、未だに勝つ気でいるのかその瞳には闘志がメラメラと燃えているのが分かる。
全くもって解せない。
(コイツは一体何を考えている? ディヴァイントライブじゃあ、手札0枚の状態で巻き返すのは難しいのは明白の筈なのに、どうしてここまで心が折れない……?)
知らず知らずの内にエンジの両耳を覆うヘッドホンが外れそうになり、慌ててヘッドホンを抑える。
(状況は俺が圧倒的に有利なんだ。何を恐れる必要がある? コイツには一度勝っている、何も恐れる必要なんてない。コイツは弱い、俺よりも弱いことを練習試合で悟った筈だ。確かに見込みはあるかなと少し思ったけど、それでも微々たるものだ)
エンジはゆっくりと呼吸を整えて乱れる思考を落ち着かせる。
「人はそう簡単には変わらない、俺はそれを知っている。フォースチャージして追加ドロー!」
阿久津エンジ:手札【6】
:フォース【▽▽▽】
このヘッドホンは自身が認めた強者とのバトルで外すと自分に課したもの。
断じてこのような相手の前で外すべきものではない。
(劣勢なのにヘラヘラ笑ってて不快だ。――なら、さっさと終わらそう。それで済む話だ)
このターンで決めきることを心に留めて自身の手札を見つめる。
カイトのディヴァイン・ガードウイングのLPは2500、ロータリー・メイガスの火力だけでは倒しきれない。確実に完膚ないまでに倒すためには、やはり自身の切り札を出すしかない。
この手のバトル馬鹿は徹底的にやるくらいが丁度良い。下手に手心を加えればどこまでもこちらに食らい付いてくるのだ。現にカイトはしぶとくエンジに対抗しようとしているのが良い証拠だ。
「ロータリー・メイガスのトライブアビリティを発動! 進化の契約発動!!」
「お、来たな」
「っ!!」
カイトの「待ってました」と言わんばかりの反応、まるでカイトの思惑に自分が突き進んでいるかのような不快な感覚に、エンジの表情が歪む。
【進化技工士 ロータリー・メイガス】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手のフォースを1枚消費する)
┗あなたは自分の山札から【進化技工士 ディーゼル・エイド】を1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚し、その山札をシャッフルする。その後、このカードをアタックガーディアンの下にマテリアルカードとして置く。
「キミのフォースを消費してデッキから【進化技工士 ディーゼル・エイド】をノーコストで召喚!」
【進化技工士 ディーゼル・エイド】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【5000】
戦宮カイト:フォース【▽▼▼▼】
「ロータリー・メイガスはディーゼル・エイドの下にマテリアルセットされる! そして、ディーゼル・エイドのバーストアビリティを――」
「ちょっと待った!」
エンジがディーゼル・エイドのバーストアビリティの発動を宣言しようとした瞬間、カイトは待ったをかけた。
そのまま、マスターズギアを操作する。
「一体何のつもりだ?」
「俺はこの時を待っていたんだ。お前がSF【5】以上のガーディアンを召喚するのをずっとな」
「ガーディアンの召喚を待っていただと……?」
エンジは怪訝そうに眉を潜めるが、それも一瞬のこと、すぐにカイトが何をしようとしているのか見当が着いた。
「スピードガーディアンか!!」
「ご明察だぜ。お前がSF【5】以上のガーディアンを召喚した時、サイドデッキから直接スピードガーディアンを召喚する! 神速召喚! 現れろ、【神速騎士 ラウンド・ギャラン】!!」
【神速騎士 ラウンド・ギャラン】
SF【5】
GT【スピード/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【-2000】
LP【5500→7500】
【サモンコンディション】
┗このカードは相手がSF【5】以上のガーディアンを召喚した時、手札またはサイドデッキからフォースを消費せずに召喚できる。
ラウンド・ギャランの登場にエンジは目を見開いて驚愕する。あの絶望的な状況において、ここまで自分に食らい付いてくるカイトの底力を感じた。
「一気にSF【5】のガーディアンを召喚するだと?!」
「どうだ、エンジ。これでも俺が成長していないって断言できるか?」
「くっ……!」
苦々しく表情を歪める。どんなもんだと意気がるカイトがとてつもなく忌々しいのだ。
「認めない……こんなの、俺は認めないぞ! お前のような奴がここまで進化するなんて!!」
「だったら、しっかりとその目に刻むんだな。フォースを1枚消費してラウンド・ギャランのポテンシャルアビリティを発動!」
【神速騎士 ラウンド・ギャラン】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗あなたはフォースを1枚消費し、自分の手札が5枚になるように山札からカードをドローまたは手札のカードをジャンクゾーンに送る。その後、自分の手札から【ディヴァイントライブ】のガーディアンカードを5枚選んで相手に公開することで、このターンのターンプレイヤーはダイスステップをスキップする。
戦宮カイト:【▼▼▼▼】
「俺の手札は0枚、よって俺はデッキからカードを5枚ドローする!」
「そんな……折角、手札を全て削ったのに……」
ラウンド・ギャランの効果によりカイトはデッキからカードを5枚ドローした。
ドローした5枚を見て「よし」と小さく呟く。
戦宮カイト:手札【5】
「俺は手札のカード全てをお前に公開するぜ」
「手札を公開……まさか!!」
「おう、そのまさかだぜ。円卓の名の下に、集えディヴァインの仲間達!!」
【ディヴァイン・ガーディ】
【ディヴァイン・ディフェンダー】
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
【聖なる泉の女神】
【ディヴァイン・アームド・ディサイド】
公開された5枚のカードは全て【ディヴァイントライブ】のガーディアンカードである。
「よってこのターン、お前のダイスステップはスキップされる!」
「ダイスステップがスキップされるのなら、このターンはアタックアビリティによる攻撃はできなくなるッスね」
カイトは内心でガッツポーズを決める。自分のフォースを全て消費して裏状態にしたので、エンジが何かしらのアクションを起こさない限りはこのまま新たな進化技工士が召喚されることもない。
「手札からスペルカード【ギフト・トゥ・ギフト】を発動」
そう思っていた矢先に、あっさりとスペルカードを使われてしまった。
「先程の手札公開でキミの手札にはスペルカードが無いことが確定しているッス。つまり、この効果は無効化できない」
「まあ、そうだな」
ダイスステップはスキップできたものの、手札全てがガーディアンカードのみでは相手ターンにおける妨害手段がほとんど無いことを意味している。
「キミはデッキトップのカードを1枚フォースゾーンに、俺はデッキからカードを2枚ドローさせてもらう」
戦宮カイト:フォース【▽▼▼▼▼】
阿久津エンジ:手札【7】
「ディーゼル・エイドのバーストアビリティを発動!」
【進化技工士 ディーゼル・エイド】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード1枚をジャンクゾーンに送る)
┗相手は自分の手札からSF【4】以下のガーディアンカードを1枚選んで召喚してもよい。召喚しなかった場合、相手は自分の裏状態のフォースを1枚選んで表状態にする。この効果のコストとなったマテリアルカードが【進化技工士 ロータリー・メイガス】である場合、次のターンのエンドフェイズ時に相手のアタックガーディアンはXダメージを受ける。(Xの数値は相手のアタックガーディアンのSF×300)
「さあ、SF【4】以下のアタックガーディアンを召喚しても良いッスよ」
「……おいおい、俺の表状態のフォースは1枚だけだぜ。召喚できるとしたらSF【0】か【1】だっての」
カイトがげんなりして答えると、エンジはにこやかに言いのける。
「じゃあ、SF【0】か【1】のアタックガーディアンを召喚すればいいんじゃないスか?」
そのあまりに晴れやかな笑顔にカイトの額に青筋が浮き上がる。確信犯な質問に口角も震える。
「ふ・ざ・け・ん・な。それじゃあ、またディヴァイン・ガードウイングに逆戻りするのと変わらねえじゃねえか」
ジャンクゾーンの奥底から「そりゃ無いですよ、マスター!」という悲痛な叫びが聞こえたような聞こえなかったような。
エンジは変わらず笑顔で言う。
「いやいや、そんなに遠慮しなくて良いンスよ。召喚しないとフォースを1枚表状態にしなきゃいけないんだし」
「召喚できないの分かっててそんな質問してんじゃねえ!!」
戦宮カイト:フォース【▽▽▼▼▼】
「フォースを表にしたッスね。なら、ディーゼル・エイドのトライブアビリティを発動! 進化の契約!!」
【進化技工士 ディーゼル・エイド】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手のフォースを1枚消費する)
┗あなたは自分の山札から【進化技工士局長】と名の付くガーディアンを1枚まで選んでフォースを消費せずに召喚し、その山札をシャッフルする。その後、このカードをアタックガーディアンの下にマテリアルカードとして置く。
「キミのフォースを消費し、デッキから【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】をノーコストで召喚!」
「いよいよ、阿久津の切り札がお出ましってわけか」
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エヴォル】
DG【0】
LP【6000】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードが【進化技工士】と名の付くガーディアンをマテリアルカードとしている場合、起動効果のコストとしてフォースを消費する場合は相手のフォースを代わりに消費してもよい。
戦宮カイト:フォース【▽▼▼▼▼】
仁王立ちしながら背中から生えた巨大な2つの排気パイプから「ブオオオン」と轟音をあげるハイブリッド・カイザーの姿にカイトは「おお」と声を漏らす。
「なんか強そうなのが出てきたな」
「ホントは決勝までお披露目はしないようにしておこうと思ってたんッスけどね。……ウザイ芽は徹底的に潰しておいた方が後腐れないだろうし」
「ん? 何か言ったか?」
「いーや、何でも」
後半の言葉は小声で言ったのでカイトの耳には入っていない。エンジは相変わらずのにこやかな笑顔である。
その笑顔で何かを察したのか、カイトは「あの野郎……」と口角がヒクヒクと引きつる。
一方のエンジはマスターズギアの液晶画面からカードを選択する。
「さーて、手札からドメインカード【技工局/プログレッシブステーション】をドメインゾーンにセット!」
【技工局/プログレッシブステーション】
【ドメイン】
【自】(このカードがドメインゾーンに置かれた時)
┗あなたは自分のアシストゾーンに存在しているガーディアンを1体選んでジャンクゾーンに送ることで、このカードは以下の効果を得る。そのガーディアンをジャンクゾーンに送らなかった場合、このカードはジャンクゾーンに送られる。
【永】
┗あなたのガーディアンがマテリアルカードを起動効果のコストとして消費した場合、そのターンのエンドフェイズ時に消費した枚数だけジャンクゾーンからカードを選んで自分のガーディアンの下にマテリアルカードとして置く。
阿久津エンジ:手札【6】
「プログレッシブステーションの自動効果により、俺はアシストゾーンに存在しているエヴォル・マネージャーをジャンクゾーンに送る。これにより、プログレッシブステーションは永続効果を得るッス」
「バーストアビリティを使用しても、ジャンクゾーンからすぐさま補充されるってわけか」
「……まあ、ハイブリッド・カイザーはバーストアビリティを持ってないッスけどね」
「え、それってどういう――」
カイトが言い終わる前にエンジが口を挟む。
「エクシードアビリティ、発動ッス」
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
【エクシードアビリティ】
【起】(COST:フォースを1枚消費する、マテリアルカードを1枚消費する)
┗相手の裏状態のフォースが5枚以上である場合、その裏状態のフォースの中から2枚選んでカードが置かれていないアシストゾーンとドメインゾーンにそれぞれ1枚ずつ裏状態のまま次のターンのエンドフェイズまで置き、その後、そのカードは表状態で相手のフォースゾーンに置かれる。この効果で裏状態のカードが置かれている限り、相手はそのゾーンにカードを配置できない。この効果のコストとなったマテリアルカードが【進化技工士】と名の付くガーディアンでありこの効果で相手のアシストゾーンとドメインゾーンにそれぞれ裏状態のカードが置かれた場合、次のターンのエンドフェイズまで相手のアタックガーディアンは【弱体化】する。
「エクシードアビリティ?! ……って、何だ?」
「この前のブースターから追加された新能力ッスよ。マテリアルカードとフォースをコストとして消費することで、発動できる能力ッス」
「なるほど、バーストアビリティの強化版って感じか」
カイトが納得して何度も頷いていると、エンジは効果の説明の続きをする。
「ハイブリッド・カイザーの永続効果のポテンシャルアビリティは進化技工士がマテリアルカードとなっている場合、起動効果でフォースを消費する場合は自分の代わりに相手のフォースを消費ことができるッス」
「ん、ってことは――」
戦宮カイト:フォース【▼▼▼▼▼】
「キミの裏状態のフォースは5枚だから、その内の2枚をアシストゾーンとドメインゾーンにそれぞれ1枚ずつ置いてもらうッス」
「あー、へいへい」
戦宮カイト:フォース【▼▼▼】
「んでもって、ディーゼル・エイドをコストにしたからラウンド・ギャランは弱体化してもらうッス」
「へいへい」
【神速騎士 ラウンド・ギャラン】
【弱体化】
「さらに、ハイブリッド・カイザーのトライブアビリティを発動させてもらうッスよ。進化の契約。因みに効果分類はダメージ効果ッス」
「へいへい、効果分類はダメージ効果――――って、ちょ?! 弱体化してる時にそれはヤバくね!?」
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:フォースを2枚消費する、手札からカードを2枚ジャンクゾーンに送る)
┗このターンのダイスステップをスキップしてバトルフェイズに移行する。相手の場に存在する全てのガーディアンに3000ダメージを与える。
「ダイスステップをスキップし、フォースを1枚消費してバトルフェイズに移行するッス」
阿久津エンジ:手札【4】
:フォース【▼▼▼】
「ラウンド・ギャランは弱体化しているので、2倍の6000ダメージを与える!」
「げ、手札からプリベントアビリティを発動するぜ!」
【ディヴァイン・ディフェンダー】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。
戦宮カイト:手札【4】
【神速騎士 ラウンド・ギャラン】
DG【-2000→-5000】
LP【7500→10500】
【神速騎士 ラウンド・ギャラン】
DG【-5000→1000】
LP【10500→4500】
カイトは「ふぅ」と安堵の息を吐く。
「差し引き1000ダメージか。次のターンのエンドフェイズにディーゼル・エイドのダメージ効果に襲われるからな、なるべくライフは残しとかないとな」
「だけど、キミのアシストゾーンは封じたッスよ。閃光騎士による手札増強及びライフ回復はできない」
「お生憎様。閃光騎士だけがディヴァイントライブの回復役じゃないんだぜ」
「あっそ。じゃあターンエンド。エンドフェイズ時、プログレッシブステーションの効果でジャンクゾーンからカードをハイブリッド・カイザーにマテリアルセットする」
エンジのターンが終了し、カイトのターンに移行する。
「さーて、大口叩いたけどどうっすかな」
手札は増えたものの、その枚数は4枚。また、ライフは4500と心許ないのも事実。
このターンで決めることは不可能でもなんとか1ターン持ちこたえたいものである。
「よし、俺のターン、ドローだ!」
ドローしたカードを手札に加えてチャージフェイズに移行する。
「フォースチャージして、追加ドローさせてもらうぜ」
戦宮カイト:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽】
(ほう、これはこれは……中々悪くはないな)
手札のカードをよく見て吟味し、これからの作戦を脳内で速やかに組み立てていく。
打開策は悩むものの、勝ち筋だけははっきりとしている。自分にはいつだってこの方法しかないのだ。
まずは弱体化した自分のアタックガーディアンをどうにかしなければならない。そのためには、追加ドローで引いたカードを使用するしかない。
そして自分のジャンクゾーンも確認する。一時的にだが手札が0枚にまでカイトを追い込んだロータリー・メイガスとターボ・ジェネレーターのコンボだが、カイトにとっての利点が1つだけあった。
それはより多くデッキの中身を掘り進めることができたことだ。これにより、勝負に出るために必要なカードがまだめくられておらず、これからのドローによって引き当てられる可能性がかなり高い。
「俺は手札からスペルカード【ギフト・トゥ・ギフト】を発動するぜ!」
「……なに?」
エンジが使用したスペルカードを手札から発動させた。今度はエンジが驚く番だ。
「ドローカードなら基本的に俺はデッキに採用してるぜ。このカードの効果は、お前はフォースを1チャージし、俺はカードを2ドローする。止めるか?」
「……止めはしないッスよ」
戦宮カイト:手札【6】
阿久津エンジ:フォース【▽▼▼▼】
カイトはドローしたカードを見て「よし!」と内心で笑みを浮かべる。
(やっぱ引けたか、そうでなくちゃな!)
すかさずにマスターズギアを操作する。
「さらに、俺はスペルカード【ハイタッチ・チェンジ】を発動するぜ!」
【ハイタッチ・チェンジ】
SP【2】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗この効果を発動するターン中、あなたがガーディアンを召喚していない場合にのみこの効果は発動できる。あなたは自分の場に存在するアタックガーディアンまたはアシストガーディアンのいずれかを1体選び、そのガーディアンと同じSFを持ち名前の異なる自分の手札のガーディアンカードを1枚選んでフォースを消費せずに召喚し、あなたの場に存在していたガーディアンはシフトステップ時にジャンクゾーンに送られずに自分の手札に加える。この効果を発動するターン中、この効果以外であなたはガーディアンを召喚することはできない。
戦宮カイト:手札【5】
「俺の場にはSF【5】のラウンド・ギャランが存在する。よって、俺は手札からSF【5】のアタックガーディアン【ヴァルキリー・ディヴァイン】をノーコストで召喚する!」
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【1000】
LP【5000→4000】
ヴァルキリー・ディヴァインが召喚され、ラウンド・ギャランはカイトの手札に戻った。
「そして今回のバトルで初めてトライブアビリティを発動! 蓄積と解放!!」
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札を1枚ジャンクゾーンに送る)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたは自分の山札から【ディヴァイン・ナイト】を1枚まで選び、あなたの手札に加え、このカードのLPをX回復する。(Xは、この効果でジャンクゾーンに送ったSF×300)
「この効果により俺は手札からカードを1枚捨てて、デッキから【ディヴァイン・ナイト】を1枚手札に加える。俺がジャンクゾーンに送ったカードはハイタッチ・チェンジの効果で手札に戻ったSF【5】のラウンド・ギャランだ。よって、ヴァルキリー・ディヴァインのLPは1500回復する!!」
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
DG【1000→-500】
LP【4000→5500】
「ダイスステップに移行するぜ!」
サイコロの目は【2】。
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
【1】【2】【3】……相手のアタックガーディアンに2000のダメージを与える。このバトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかったら、あなたは自分の山札から1枚ドローする。
【4】【5】【6】……相手の手札を1枚選び、ジャンクゾーンに送る。このバトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかったら、あなたは自分の山札から1枚ドローする。
戦宮カイト:フォース【▽▽▽▼】
「フォースを消費してバトルだ! お前のハイブリッド・カイザーに2000ダメージを与えるぜ、カウンターカードを発動するか?」
「いや、発動させないッスよ」
「なら、俺はフォースを3枚消費して手札からカウンターカード【クリティカル・ヒット!】を発動する!」
「クリティカル・ヒットッスか……」
【クリティカル・ヒット!】
Force【3】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗この効果を発動したバトルフェイズ中、あなたのガーディアンが発動したダメージ効果のダメージ量は2倍になる。
戦宮カイト:手札【4】
:フォース【▼▼▼▼】
「これでハイブリッド・カイザーが受けるダメージは2倍の4000に跳ね上がるぜ!」
「なら、手札からプリベントアビリティを発動させてもらうッス」
【エヴォル・シャッター】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードを含めた3枚の手札のカードをジャンクゾーンに送り、このターンのバトルフェイズ中に発生したダメージ効果1つの数値を0にする。
「エヴォル・シャッターを含めた3枚の手札を捨てることで、ヴァルキリー・ディヴァインからのダメージは0になる」
阿久津エンジ:手札【3】
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
DG【0→0】
LP【6000→6000】
「キミの攻撃が俺に届くことは無い。せっかくのクリティカル・ヒットも無駄撃ちッスね」
「そうでもないぜ。確かにダメージは与えられなかったが、このターンのバトルフェイズ中にお前がカウンターカードを使わなかったおかげでヴァルキリー・ディヴァインのアタックアビリティによりカードを1枚ドローさせてもらうぜ」
戦宮カイト:手札【5】
ドローしたカードを横目で確認すると、カイトはおもむろにニヤリと笑う。
エンジはその表情が解せない。
「何がおかしいんスか」
「いやぁ、前回の全国大会予選の決勝戦は散々だったが、今日の俺の引きは最高についてるみたいだぜ」
「たった1枚のカードで一体何を――」
「そのたった1枚のカードで盤面がひっくり返るのが、カードゲームの醍醐味だろうが」
「――っ」
自分の声を遮ったカイトの言葉に思わず息を飲んだ。たった1枚のカードで盤面がひっくり返る。
確かに、それは否定しない。だからと言って、どうしてここまでカイトは強く出られるのか、やはりエンジには理解できない。
「……そう言ってられるのも今の内だけッスよ」
「どうだかな。勝負は最後の最後まで分からないだろうがよ、ターンエンドだ」
カイトのターンのエンドフェイズ時、エンジはカード効果の適用を宣言する。
「この瞬間、ディーゼル・エイドの効果が適用される。キミのアタックガーディアンのSF×300のダメージを受けてもらおうか」
「ヴァルキリー・ディヴァインはSF【5】のアタックガーディアン、ダメージは1500か」
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
DG【-500→1000】
LP【5500→4000】
ヴァルキリー・ディヴァインの残りLPは4000。ハイブリッド・カイザーのトライブアビリティによるダメージ効果は3000であるため、なんとか持ち堪えることができる。
カイトも安堵からか「ほっ」と溜め息を溢す。
裏状態で封じられていたカードがカイトのフォースゾーンに表状態で戻る。
戦宮カイト:フォース【▽▽▼▼▼▼】
エンジのターンに移行する。
「俺のターン、ドローッス」
阿久津エンジ:手札【4】
続いてチャージフェイズに移行し、マスターズギアからカードを選択する。
「フォースチャージして追加ドロー!」
阿久津エンジ:フォース【▽▽▽▽▽】
「何を安心してるのか知らないッスけど、キミは大きなプレイングミスをしたッスよ」
「え、プレイングミス?」
カイトは首を傾げる。
「ハイブリッド・カイザーの永続効果により、起動効果のコストとしてフォースを消費する場合、代わりにキミのフォースを利用できる。キミのフォース1枚とマテリアルカード1枚を消費してエクシードアビリティを発動!」
戦宮カイト:フォース【▽▼▼▼▼▼】
「キミがクリティカル・ヒットを使ってくれたおかげでキミのフォースが5枚裏状態であるので、再びキミの裏状態のフォースを2枚選び、アシストゾーンとドメインゾーンに1枚ずつ裏状態で置かせてもらうッス。そしてこれにより、キミのヴァルキリー・ディヴァインは弱体化するッス」
戦宮カイト:フォース【▽▼▼▼】
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
【弱体化】
「げ……しまった」
「クリティカル・ヒットを使って勝利を焦ったのが裏目に出たね」
エンジはマスターズギアの液晶画面に表示される手札を見ながらカイトに隠すように密かに笑う。
(……それでも、キミの場には表状態のフォースが1枚置かれている。ハーフダメージで逃げられないように先手を打たせてもらうッス)
そう思案すると、手札のカードを選択した。
「手札からスペルカード【マテリアル・チャージ】を発動!」
【マテリアル・チャージ】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:フォースを1枚消費する、手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗この効果を発動するターンの間、あなたは【バーストアビリティ】を発動することはできない。あなたは自分のジャンクゾーンからカードを1枚選び、自分の場に存在するガーディアン1体の下にそのカードをマテリアルカードとして置く。
阿久津エンジ:手札【3】
:フォース【▽▽▽▽▼】
「この効果で俺はジャンクゾーンからディーゼル・エイドを選んでハイブリッド・カイザーの下にマテリアルセットする。そしてトライブアビリティ発動! 進化の契約!!」
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:フォースを2枚消費する、手札からカードを2枚ジャンクゾーンに送る)
┗このターンのダイスステップをスキップしてバトルフェイズに移行する。相手の場に存在する全てのガーディアンに3000ダメージを与える。
効果発動のためのコストとして、カイトとエンジのフォースが1枚ずつ消費され、さらにエンジは自分の手札2枚をジャンクゾーンに送った。
戦宮カイト:フォース【▼▼▼▼】
阿久津エンジ:手札【1】
:フォース【▽▽▽▼▼】
「ハイブリッド・カイザーの永続効果により、【進化技工士】の名前を持つガーディアンがマテリアルセットされたことで、再度キミのフォースをコストとして利用できるッス」
「ったく、どんだけ俺のフォースを利用すれば気が済むんだよ」
「それがこちらの戦術なものでね。さあ、フォースを1枚消費してバトルッスよ!!」
阿久津エンジ:フォース【▽▽▼▼▼】
「ハイブリッド・カイザーのトライブアビリティにより、ヴァルキリー・ディヴァインに3000ダメージを与える。ただし、ヴァルキリー・ディヴァインは弱体化しているので、6000ダメージを与える!!」
「ヴァルキリー・ディヴァインのライフは4000、迫り来るダメージ量は6000、そして俺のフォースは全て裏状態か」
カイトは軽く俯く。まさに絶望的な状況であり、普通ならばもうこれ以上の抵抗は到底不可能だろう。
だが、「それでも」とカイトの中にはこのまま素直にダメージを受けて負ける気など微塵も無かった。
俯いていた顔を静かに上げる。
「悪いな、阿久津。相手のカードを利用する戦術なら、俺にだってできるぜ」
「なに……?」
カイトのこの表情。大胆不敵な笑み、焦りのない真っ直ぐな顔色、そして瞳の奥底で燃え続ける闘志の炎。ここに来てまだ戦意は一切喪失していないことが伺える。
なぜだ、エンジは思わず強く手を握り締める。
コイツは誰だ、コイツは本当に練習試合の時に自分が負かした奴と同一人物なのだろうか。たった数ヶ月、その間でカイトに何があったのか、何が彼をここまで進化させたのか。
エンジの中で答えの出ない問いが浮かんで消えてまた浮かぶというループが巻き起こる。
「阿久津。確かにお前の言うとおり、俺はまだまだ弱いだろうさ。だけどな、このバトルだけは、絶対に負けられないんだ!!」
成長した自分の全力をエンジに示すためにも、妹のカイリを救う手がかりを得るためにも、ユキヒコとカンナの約束を成就させるためにも。
この全国大会は何が何でも優勝しなければならないんだ。
「ヴァルキリー・ディヴァインの効果で俺がドローしたカードはこれだ! 手札からカウンターカード【カウンター・リサイクル】を発動するぜ!!」
【カウンター・リサイクル】
FORCE【0】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは相手のジャンクゾーンに存在するカウンターカードを1枚まで選び、そのカードの効果をフォースを消費せずに発動できる。
「カウンター・リサイクル……相手のジャンクゾーンに眠るカウンターカードの効果を発動するカウンターカードッスか」
「そうだ。そして、お前のジャンクゾーンに存在するカウンターカードはただ1つ!」
「…………【停戦契約】」
戦宮カイト:手札【5】
:フォース【▽▼▼▼▼】
阿久津エンジ:手札【2】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
その効果は、互いにカードをドローとフォースをチャージすることで、このターンのバトルフェイズを終了させるというもの。
しかし。
「よく勘違いされるッスけど、停戦契約はアタックアビリティを無効にするだけでそれ以外の効果は無効にできないッスよ」
「ああ、分かってるさ。俺の狙いは別にある!」
「……?」
「ダメージ計算ステップ前のバトルフェイズ終了時に手札から【聖なる泉の女神】のポテンシャルアビリティを発動させてもらうぜ!」
「……ふふ」
エンジはカイトの意図することが分かり、気付けば自然に笑ってしまっていた。
【聖なる泉の女神】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(自分または相手のバトルフェイズ終了時)
┗この効果は手札からこのカードをジャンクゾーンに送ることで発動できる。このターンのバトルフェイズ中にカウンター効果が発動した場合、あなたはプレイヤーを1人選び、そのプレイヤーは自分の山札からカードを1枚ドローし自分の場に存在するガーディアンを1体選んで【弱体化】を解除し、それ以外の場に存在するガーディアンを1体選んで【弱体化】させる。
戦宮カイト:手札【4】
「聖なる泉の女神の効果、それはバトルフェイズ中にカウンター効果が発動した場合、俺がプレイヤーを1人指名してそのプレイヤーは自分のガーディアン1体の弱体化を解除し、弱体化が解除されたガーディアン以外のガーディアン1体を弱体化させる。よって、俺は俺自身を指名して1ドロー、ヴァルキリー・ディヴァインが受けるダメージは3000になり、お前のハイブリッド・カイザーを弱体化させる!」
戦宮カイト:手札【5】
【ヴァルキリー・ディヴァイン】
DG【1000→4000】
LP【4000→1000】
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
【弱体化】
ヴァルキリー・ディヴァインのLPは残り僅か1000。この絶体絶命の状況でも、カイトはエンジに懸命に食らい付こうとしている。
最早、エンジの中にカイトを見下すような感情は何1つ存在しない。ただ、感心するようなカイトに対する何とも形容し難い思いだけがそこにあった。
(まただ。何度攻撃しようとも、コイツは絶対にへこたれない。耐えて耐えて耐え抜いて、どこまでも俺に追い付こうとする。どこまでも俺の予想を上回ってくる)
次は一体何を仕掛けてくるのか、無意識に気持ちが高揚しているのが分かる。
そこでふと、マスターズギアに目を向ける。カウンター・リサイクルによってカイトに使用された停戦契約の効果で自分の手札に加わったカードを見ていなかった。
そして、そのカードを見て目を見開く。
(この、カードは……)
カイトの言葉が頭の中で木霊する。
――そのたった1枚のカードで盤面がひっくり返るのが、カードゲームの醍醐味だろうが――
「……ふ」
思わず笑ってしまった。思えば、ここまで本気で相手とぶつかったことなど今まで無かったかもしれない。
エンジにとって緻密に洗練された戦略の応酬こそがカードゲームの醍醐味であり、このようなドローによる運頼りのものは所詮は弱者の戯れ言だと思っていた。だからこそ、カイトに対して苛々が募っていたのだろう。カイトのバトルスタイルは、これまでの自分のバトルの全否定にも等しいのだから。
だが、戦略だけでは届かないこともある。そんな時、やはり最後に物を言うのは悲しいことに“運”ということになるのだろう。
(戦宮、キミがドローさせてくれたこのカードで、キミの戦略を崩させてもらうッスよ)
エンジが不敵に笑みを浮かべていると、カイトも思わず笑ってしまう。
「阿久津。ようやくバトルを楽しむ気になったみたいだな」
「……俺が、バトルを楽しむ?」
そう言われてエンジは笑みを浮かべていた口元を手で隠す。
まさか自分が、カードバトルを楽しむだなんて。カードバトルは部の存続のために必要な手段なだけであり、同時に学校側からの依頼をこなして報酬を得るためにあるのだ。
これまでずっとそう思ってきた筈だった。これはあくまでビジネスなのだと。
「お前、前の練習試合の時もそうだけど、なんか淡白だよな。だから、本気でカードバトルしたこと無いんじゃないかと思ってさ」
カイトの言葉に素直に驚いた。それはあまりにも確信を突く一言だったからだ。
「参ったッスね。俺、心の底までカードマスターに染まった覚えは無かったんスけど……でも、そうッス。俺、今最高にワクワクしてるッスよ」
「そうか。だけど、ちょっと遅かったみたいだな。なんてったって、このターンで決着が着くんだからよ」
「それはどうッスかね」
カイトの売り言葉を笑いながら買い言葉で返すエンジ。そしてついに、エンジは自身の両耳を覆うヘッドホンを投げ捨てた。
これはただのヘッドホンではない。自身が認めた強者とのバトルで外す――その裏には弱者の言葉には耳を貸さないというエンジなりのカードバトルへのけじめであった。
それを投げ捨てたことに後悔は無い。むしろ、投げ捨てずにこのままバトルを続行する方が余程後悔することになるだろう。
その行動に両者の間には一切の驚きは無く、あるのはただただ愉快な笑みのみ。
――バトル中はヘッドホン外せよ! マナー違反だろうが!!――
――ああ、そういうこと。別にいいよ。ただし……俺を本気にしてくれたら、な?――
僅か数ヶ月前の出来事。だが、あの時から確実に時は経ち、こうして因縁の対決を迎えたのだ。
「こっちもようやく、ギアが入ってきたんスから、そう簡単には終わらせはしないッスよ」
「へっ、ようやくヘッドホンを外しやがったな。ならこのターン、俺は自分の全身全霊をそのままぶつけてやるぜ!!」
カイトの威勢のいい言葉にエンジは笑い静かに「ターンエンド」と告げる。
「なら、キミの全身全霊を俺は受けきってみせるッス」
「おう、受けきれるものなら受けきってみせな。俺のターン、ドロー!」
戦宮カイト:手札【6】
「チャージフェイズ、俺はフォースチャージしてさらにサイドデッキから追加ドローするぜ!」
戦宮カイト:手札【6】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
「俺はフォースを6枚消費して手札からアタックガーディアン【ディヴァイン・ナイト】を召喚するぜ!」
【ディヴァイン・ナイト】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【4000】
LP【6000→2000】
戦宮カイト:手札【5】
:フォース【▼▼▼▼▼▼】
「なるほど、停戦契約の効果を使ったのはディヴァイン・ナイトを召喚するためのフォースを稼ぐためでもあったわけッスか」
「まあな。俺はさらにライフカウンターを2つ使ってデッキからカードを2枚ドローする!」
戦宮カイト:手札【7】
:ライフカウンター【4→2】
「そして、ディヴァイン・ナイトのトライブアビリティを発動! 蓄積と解放!!」
【ディヴァイン・ナイト】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:自分の手札からカードを4枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたはこのターンはフォースを消費せずにダイスステップを無視してバトルフェイズに移行する。相手のアタックガーディアンにX000ダメージを与える。(Xの値はバトルフェイズ開始時の自分の手札の枚数)
戦宮カイト:手札【3】
「フォースを消費せずにバトルフェイズ! 4枚捨てたから俺の手札は3枚、さらにハイブリッド・カイザーは弱体化しているので、合計6000ダメージを与える!」
「なるほど、ライフギリギリを狙ってきたわけッスか。――でもね」
光の剣を振りかぶってハイブリッド・カイザーに迫るディヴァイン・ナイト。その斬撃に合わせてエンジはマスターズギアを操作してカード効果を発動させる。
「キミがドローさせてくれたこのカードで迎え撃つ! フォースを2枚消費し、手札からカウンターカード【パーフェクト・バリアー】を発動!」
【パーフェクト・バリアー】
FORCE【2】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗このカウンターステップを発生させた相手のカード効果を無効にする。
阿久津エンジ:フォース【▽▼▼▼▼▼】
「この効果により、キミのディヴァイン・ナイトのトライブアビリティは無効になり、ハイブリッド・カイザーはダメージを受けない!」
ディヴァイン・ナイトとハイブリッド・カイザー、両者の間に巨大な盾であるパーフェクト・バリアーが出現し、光の一撃を打ち消した。
【進化技工士局長 ハイブリッド・カイザー】
DG【0→0】
LP【6000→6000】
「キミの攻撃は通させはしないッスよ!」
エンジは自分の手札を見る。
(このターンは絶対に凌ぎきってみせる。俺の表状態のフォースは残り1枚。そして手札にはフォース1枚を要求する【ハーフダメージ】がある。ライフカウンターによるダメージ減少を使えば4000ダメージ未満までなら容易に打ち消せるッス)
このターンさえ乗り切れれば勝利まであと僅か。ここまでエンジの予想を上回ってきたカイトであるが、流石にもう万策が尽きた筈だ。
そう予想していた。
「…………フッ」
「?!」
だが、カイトは笑っていた。笑ってマスターズギアに手を伸ばす。
【EXTRA PHASE】
「え、エクストラフェイズ?!」
「言っただろ、阿久津。このターン、俺の全身全霊をぶつけるって。――――エクストラドロー!」
サイドデッキからドローし、エクストラフェイズが開始された。
戦宮カイト:手札【4】
「手札のディヴァイン・ナイト・ディサイドをジャンクゾーンに送り、手札から【次元騎士 ディヴァイン・ナイト・クラッシュ】を次元召喚!」
【次元騎士 ディヴァイン・ナイト・クラッシュ】
SF【8】
GT【エクストラ/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【4000】
LP【10000→6000】
【サモンコンディション】
┗このカードはエクストラフェイズでのみ手札から召喚できる。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗あなたは自分の手札から【ディヴァイン・ナイト】と名の付くガーディアンカードを1枚選んでジャンクゾーンに送ることで、このターンの間、このカードはフォースを消費せずに召喚できる。
戦宮カイト:手札【2】
「え、エクストラ……ガーディアン」
「まだもう少しだけ、付き合ってもらうぜ阿久津!」
カイトは声高々にディヴァイン・ナイト・クラッシュの効果発動を宣言する。
「ディヴァイン・ナイト・クラッシュのエクストラアビリティを発動!」
【次元騎士 ディヴァイン・ナイト・クラッシュ】
【エクストラアビリティ】
【自】(エクストラフェイズ終了時)
┗あなたが自分の手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送ることでこの効果の発動処理が行われる。互いのプレイヤーはそれぞれ自分の手札から任意の枚数だけカードを選んでジャンクゾーンに送る。この効果で相手よりジャンクゾーンに送った枚数が少なかったプレイヤーのアタックガーディアンにXダメージを与える。互いにジャンクゾーンに送った枚数が同じであった場合、互いにサイコロを振って小さい目を出したプレイヤーのアタックガーディアンにXダメージを与える。互いの目が同じであった場合、再度サイコロを振る。(Xの数値はこのガーディアンのLP)
戦宮カイト:手札【1】
阿久津エンジ:手札【1】
カイトもエンジも互いに手札は1枚。
エンジの額から汗が伝う。
(ディヴァイン・ナイト・クラッシュのLPは6000。手札を捨てなければダメージを受けるのは必至。ハイブリッド・カイザーは弱体化しているから6000じゃたとえハーフダメージを使ったとしても防ぐことはできない。この状態を打開するためには、ハーフダメージを捨ててダイス勝負に持ち込むしかない……!!)
カイトとエンジは手札からカードを互いに捨てる。
戦宮カイト:手札【0】
阿久津エンジ:手札【0】
ディヴァイン・ナイト・クラッシュの効果によって互いに捨てたカード枚数が同じである場合、互いにサイコロを振って出た目の小さい方がダメージを受けることになる。
ハイブリッド・カイザーのLPは6000、弱体化しているので受けるダメージは12000、ハーフダメージで受けるダメージを半分にしても6000。一方のディヴァイン・ナイト・クラッシュのLPも同様に6000、当然受けるダメージは6000だ。いずれにしても、ダメージを受ければ双方のLPは0になる。
つまり、このダイス勝負で大きな目を出したプレイヤーがこのバトルを制することになるのだ。
3Dビジョンによって空中で実体化したサイコロを互いに手に取った。特にカイトは強く握り締めている。
「トライブアビリティの派手なダメージ効果での決着も良いけど、やっぱバトル・ガーディアンズはダイスで決着着けるのがセオリーだろう?」
「……運任せなやり方は、あんま好きじゃないんスけどね」
「だけど、運も実力って言うだろ」
その言葉にエンジは「そうッスね」と素直に認める。
「確かにキミを見ていると、その言葉も鼻で笑い飛ばせないッス。戦略だけじゃない、時には運すらもこちらに引き寄せることができる奴こそ、きっと本当に強い奴ってことなんだろうね」
「ああ。俺はもう自分のやれることは全部やった。お前からの猛攻を全部捌ききってなんとかこの場にまで持ち込んだ。これで負けたとしても、悔いは無いぜ」
「それはこっちも同じッスよ。あれだけの猛攻を繰り出したのにここまで耐えられたんス、負けたら悔しさを通り越して最早称賛を贈りたいくらいッス」
そこで互いに一拍置いて深呼吸して大きく息を吐く。
「「でも――」」
勝ちたい。
その言葉を互いに飲み込んで睨み合う。
両者の想いは互いに同じ。ならば、これ以上の言葉を交わす意味も無い。
握ったダイスを勢いよく放り投げた。
「ダイス!」
「ロール!」
空中に投げられた両者のダイスが火花を放ちながら激しくぶつかり合った。
互いの勝利に対する強い想いがダイスにまで反映されているのが分かる。
この勝負、まさに両者の実力はほぼ互角。あとは想いの強い方が天に通じるのみである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方その頃。
「「ダイス・セット(なのだー)!」」
中堅である園生リンナと朽木サラサのカードバトルの火蓋も切って落とされていたのだった。
【次回予告】
ついに全貌が明らかになるサラサのウィザードトライブデッキ。
前回の練習試合では明らかに能力の使用を控えていたが、今回のバトルでその全てが爆発する。
果たしてリンナは、この猛攻を凌いで反撃の一手を掴むことができるのか。
そして、カイトとエンジの勝負の行方は――!?
波乱波乱の迷宮戦、ついに決着!
次回、【ウィザードの流儀】




