BATTLE:049【アカネの過去・前編】
ちょっとプライベートが忙しく大変長らくお待たせしました。
内容が長くなったので前編と後編に分けます。
そして謝罪を1つ。お待たせしたのに今回はカードバトル描写はありません、どうもすみません!!
〈間もなく、東栄学園と炉模工業高校の試合を開始します。出場選手の方々は選手控え席までお越し下さい〉
「うっし、いよいよだな」
そう言うと、カイトはデッキ調整を終えて次の試合のために選手控え席に向かおうとする。
「おい」
すると、カイトに声をかける者がいた。そちらに視線を向けると、キシンが立っていた。
「お、鬼塚か。さっきの試合、ナイスバトルだったぜ。まあ、俺の戦術の猿真似だけはいただけなかったがな」
「カウンターリサイクルを使用すれば全部お前の戦術ってか? 思い上がりも甚だしいな」
フンと鼻を鳴らして笑うキシンに、カイトは意外そうに目を見開く。
「なんだ、案外落ち込んでないんだな」
「全国大会は年に2回、夏大会と冬大会がそれぞれある。今回の雪辱は冬に返すだけだ」
「へえ、なるほど」
「そういうお前は冬大会に参加しないのか」
「ああ。少なくとも、団体戦での参加は無いな。生憎、こっちの人数は5人ギリギリ、しかも大将はこの夏で引退」
「……そうか」
2人の会話はそこで止まり、少し間が開く。
口を開いたのはカイトだった。
「んじゃあ、俺は行くよ。見てろよ、ぜってー優勝をもぎ取ってやるからな」
「なら、観客席で楽しみに見ててやるよ。俺に大口を叩いたんだ、有言実行で頼むぜ」
「おうよ!」
そのまま会場にへと足を運ぶカイトの後ろ姿を見ながら、キシンは複雑そうな表情を浮かべていた。
「お前を倒すのは俺なんだから、負けんじゃねえぞ、バカ野郎」
◇◇◇◇◇◇◇
炉模工業高校のブリーフィングルームにて。
「ついに来たな」
アナウンスが流れて最初に呟いたのはシンヤだった。
周りのチームメンバーを見渡す。
エンジは相変わらずヘッドホンを装着したままベンチに横になっており、ヨウコはネイルアートに専念、サラサはブツブツ呟きながら水晶に両手をかざしている。
まるで話を聞いていない3人にシンヤは「はぁ……」と溜め息を漏らす。
「ったく、もうすぐ試合だって言うのに」
「だって、相手はあの東栄でしょう? 一度勝てた相手だし、そこまで神経質になるほどじゃないんじゃない?」
ヨウコの言葉にシンヤは益々肩を落とす。
「あのな、これは予選じゃない。全国大会本選なんだぞ」
「そう言われてもねぇ」
「ヨウコ、俺達とアイツらは同じ条件でここまで来たんだ」
「……だから?」
シンヤのドスの効いた声にヨウコは初めて意識をシンヤに向ける。
「炉模工業高校と東栄学園は共に敗者復活権を得て全国大会本選に出場した。つまり、どちらも同レベルということだ」
「私達とアイツらが……同レベル? 笑えない冗談ね」
「ああ。だから俺は笑ってないだろ」
「……そう、分かったわよ」
ヨウコは気だるけに立ち上がると、デッキケースを手に取る。
「そこまで言うんならやってやるわ。それで文句ないでしょう?」
「ああ、その調子でモチベーションをしっかり維持してくれよ……ん?」
シンヤのスマホの着信音が鳴り、そちらに意識が向く。シンヤはスマホを数回タッチした後、懐に仕舞ってからヨウコに言う。
「すまん、急用ができた。ヨウコ、悪いが今回の大将はお前に任せる」
「え、私が……大将?」
ぽかーんとした後、ヨウコはすぐに「はあ?!」と声を荒げる。
「ちょ、ちょっと! 私が大将ってどういうこと?! 普通、大将は部長のアンタでしょうが!!」
「だから言っただろ、急用ができたって。俺は試合に出られない、よって大将はお前だ」
「あ、アカネは?! アカネに任せればいいでしょ?!」
「今回の急用には稚推も絡んでるんだ」
「だ、だからって……」
突然の大将という責任ある役職の指名にヨウコは「う~」と頭を抱える。
その様子を見かねてシンヤはヨウコの肩を2回ポンポンと叩く。
「まあ、そう不安がるな。阿久津と朽木がストレート勝ちすれば、実質大将なんてただの飾りだ」
「ちょーっと、諸星部長? さりげなくこっちにプレッシャーかけるのやめてくれないッスか?」
「なに、お前でもプレッシャーを感じることがあるのか?」
「そりゃあ、あるッスよ! 人間ですもの!」
「ブーブー! パワハラッス!」と文句を言うエンジをスルーしつつ、シンヤはブリーフィングルームを足早に去る。
去り際に「後は任せた」という言葉をヨウコに残して。
「やあ、シンヤ」
「……ユキヒコ」
ブリーフィングルームから出ると、ユキヒコがニコニコとした表情で待っていた。
相変わらず能天気な昔馴染みの姿に、シンヤは思わず深い溜め息を漏らす。
「なんでお前がここにいるんだ?」
「アカネが鹿羽の後を追うのを見かけてね。こっちに戻ったかどうかを知りたかったんだけど……シンヤの様子から察するにまだ戻ってないみたいだね」
「……あのバカが」
「とりあえず、手分けして探そう。恐らく、会場内のどこかにいるはずだ」
「ああ。しかし、まさか本選にまで足を運ぶなんて、そっちの生徒会長様は随分とカードバトル部がお気に入りみたいだな」
シンヤの軽口に、ユキヒコは先程までの笑みを一瞬で消して真顔になる。
その様子にシンヤは肩を竦める。
「冗談だ。とにかく、鹿羽が稚推に手を出す前にどうにかして見つけねえとな。……まあそれ以前に、稚推の奴は極度の方向音痴だからなぁ、どっかで迷ってなきゃいいが」
「うん、そうだね。じゃあ、俺はこっちの西口エリアから探すよ」
「おう……ところでお前、試合は大丈夫なのか?」
「ご心配なく、こっちには優秀な部員達がいるからね」
「……そうかい。それはこっちも同じだな」
互いに小さく笑うと、2人はそのままアカネを探すために動き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〈ではこれより、東栄学園と炉模工業高校の試合を始める! 両チーム選手の入場だー!!〉
バトルマスター・レツの高らかな声と同時に選手入場口からスモークが噴射され、東栄学園と炉模工業高校の選手達が入場する。
〈それでは今回の試合形式のルールを説明しよう! 今回の試合はなんと、本選第1回戦での迷宮戦を各チームの先鋒と中堅で行ってもらう!〉
「迷宮戦?!」
「これまた面倒な……」
まさかの試合形式に、ヨウコとエンジは辟易した表情を浮かべた。
そんな2人の言葉が聞こえてるのかいないのか、レツは構わず説明を続ける。
〈毎回毎回ただ単に同じ試合形式じゃあ観客も飽きてしまうのでね。これぐらいの変化は目を瞑ってくれると有り難い! では説明に戻るが、今回の迷宮戦は基本的には第1回戦とルールは同じだが、1つだけ違う点がある。それはズバリ、ポイントマッチ形式。迷宮の中に隠されたポイントアイテムが2つある。先にこのポイントアイテム2つを入手したチームが勝利となるのだ! 因みにカードバトルで負けた選手は脱落となるので注意だ!〉
「ん? だったら各チームがポイントアイテムを1つずつ手に入れた場合はどうなるんだ?」
カイトが当然の疑問を述べていると、レツがすかさず補足を入れる。
〈もし各チームがポイントアイテムを1つずつ入手した場合、その時は引き分けとなり決着は大将戦に持ち越されることになる!〉
レツはひと通りの説明を終えると、両チームの面々を見渡す。
〈それでは、各チームから代表者を3名選出し、先鋒・中堅・大将と役職を決めてくれ!〉
レツの言葉を聞き、各チーム内での試合メンバーを決める。
こちらは炉模工業高校。
「……ま、こっちは初めから3人ッスから、別段悩むことは無いッスけど。先鋒と中堅はそれぞれ俺とサラサちゃん、大将は琴原先輩でいいっしょ」
「ちょ~っと、エンジ? さりげなく私を大将にしないでくれるかしら?」
「んなこと言ったって、諸星部長からの直々のご指名ですしおすし」
「ぐっ」
「それに、今回の大将戦はあまり意味無いッスよ?」
エンジは東栄学園の面々の方を横目でチラッと見る。
「先にポイントアイテムを2つ見つければこっちの勝ち。大将戦をやることなく迅速に終わらせられる。そうでしょ?」
「……」
「俺としては、ぶっちゃけ誰が大将だろうと構いませんよ。やることは変わらないんで。……あ、勿論俺は大将なんてやらないッスけど。めんどいんで」
「……はいはい、分かったわよ。シンヤが私に頼み事するなんて中々無いし、1つ貸しにしとくわ」
「了解ッス」
炉模工業高校の面々が決まった頃、一方で東栄学園。
開口一番にカイトが名乗りをあげた。
「俺は当然出るぜ。阿久津へのリベンジがあるからな!」
カイトに続くような形でナミも名乗りをあげる。
「なら、私はイクサの代理で出場するよ! スーパーウルトラグレートアルティメット美少女ナミちゃんの晴れ舞台、ド派手に決めるよ!」
ナミの言葉にイクサは自分の額に手を当てて「猛烈に不安だ……」と呟いた後にリンナの方に視線を移す。
「東條部長は不在だから、ということは残りはリンナ副部長か」
リンナは「ふぁ~あ」と大きなあくびを1つ出すと、デッキケースを取り出す。
「おー、がんばるのだー」
早々にメンバーが決まり、あとは役職を決めるだけだ。カイトは「よーし」と言ってリンナ同様に自身のデッキケースを取り出す。
「役職は前の練習試合の時ので良いかな。俺とリンナ副部長はそれぞれ先鋒と中堅、イクサの代理の早乙女さんは大将。こんなんでどうだろう」
カイトの提案にイクサは異を唱える。
「出場しない俺が言うのもアレだけど。カイト、阿久津さんとのリベンジをしたいんでしょ? だったらもっと役職は慎重に決めた方が……」
「良いんだよ、イクサ。前戦った時に分かったけど、阿久津はめんどくさがりな性格だ、そんな奴が大将なんてやるはずがないし、早く試合を終わらすためにこのポイントマッチで一気に勝ちを狙いにくるはずだ。俺としては、大将以外だったら何でもいいのさ」
「でも、ナミは大将でもいいの?」
イクサから話を振られたナミはこくりと頷く。
「うん、問題ないよ。だって目立つし」
「そ、そう。……でも、カイトとリンナ副部長がポイントアイテムマッチで勝っちゃったら目立つ以前に出番が無くなるんだけども」
「あーそれはちょっと残念だけど、それはそれで楽でいいじゃんと思うナミちゃんなのであった」
「おいおい……」
幼馴染みのマイペースな物言いにイクサは思わず頭を抱えたくなる。
カイトはイクサの肩をポンと叩く。
「まあまあイクサ、ここは俺達に任せとけって」
リンナ副部長もイクサに愛用の枕を渡す。
「泥船に乗ったつもりでどっしり構えとくのだー」
「いや、リンナ副部長。どっしり構えてたら沈みますからね、それ!? あと、なぜに枕?!」
「試合の邪魔になるからイクサに預かっててほしいのだー」
「そ、そうですか」
なんとも言えない表情でリンナの枕を見た後、「はぁ……」と息を吐いてカイトとリンナに言う。
「それじゃあ任せたよ、カイト、リンナ副部長」
「おう、俺の勇姿しっかりと見とけよ!」
「早く終わらせて安眠タイムなのだー」
イクサからの言葉を受け取り、カイトととリンナは迷宮の入り口にへと歩き出した。
「まさか、本当に本選に来るとは思わなかったッス」
すると、エンジとサラサの2人に出会った。
カイトは「にひひ」と笑い、エンジに宣戦布告する。
「今度は負けねえぜ」
「なら、お手並み拝見ッスね」
一方でリンナはニコニコしながらサラサに話しかける。
「サラサちゃん、お久しぶりなのだー」
「……………………………もう、負け、ない」
「んー?」
サラサがボソりと呟いた一言が聞こえなかったのか、リンナは首を傾げる。
そうこうしていると、大会運営の係員がやって来てそれぞれのチームを誘導する。
数分の後、各チームの先鋒と中堅がそれぞれ迷宮のスタート位置に立ったのを確認してレツは声高々に宣言する。
〈それでは、東栄学園対炉模工業高校、迷宮ポイントマッチのスタートだあああああ!!!〉
アカネを探すために会場を走っているシンヤは不安な表情を浮かべる。
「稚推、どこにいるんだ……」
――ボクを――
「一体……」
――ボクを、仲間に入れて下さい――
「どこにいるんだ!!」
シンヤの脳内にアカネと初めて出会った頃の記憶が沸々と思い起こされる。
約2年前。
「ど、どうも……東栄学園から転校してきた稚推アカネです。よろしくです」
そう、2年前の夏に入る少し前にアカネは炉模工業高校に転校してきた。教卓に立って堅い表情でクラスメイト全員の前で自己紹介を行うアカネの姿を見て、シンヤは思った。
(コイツが、ユキヒコが言ってた“例”の奴か)
シンヤがユキヒコから聞いたのは、とある事情で炉模工業高校に転校することになった友人が学校に馴染めるようにサポートしてほしいということだった。
そのことにシンヤは内心で「フンッ」と鼻を鳴らす。
(なんで高校にもなって同級生の世話を俺がしなきゃなんねえんだよ。ていうか、とある事情って何だよ。ちゃんと説明しろよユキヒコ)
ユキヒコに対して文句を言いつつ、アカネの姿をもう一度凝視する。
見た目は悪くない。むしろ人形のように整っている。そのせいか、女子は「可愛いー」とどよめき、反対に男子は「男かよ」と不満を漏らしている。
担任は最後尾のシンヤの隣の空席を指差し、アカネにそこに座るように言った。
アカネはビクビクしながらも頷き、担任の指示に従う。
「よ、よろしく。諸星くん」
「……おう」
初めて交わした言葉は、互いにぎこちないものだった。
一体、なぜアカネは東栄学園から炉模工業高校に転校してきたのか。ユキヒコが語った「とある事情」とは何なのか。
その答えをシンヤが知ったのは約1週間後のことだった。
この1週間、シンヤは特にアカネをサポートしていなかった。確かに学校設備の案内や簡単な説明はしたが、あくまでそれだけ。学校内での交友関係は本人が築き上げるべきだと判断し、それ以降の個人的な接触は一切しなかった。幸い、その整った外見から男子女子問わず話しかけられていたので1人ぐらい友人ができるだろうと安易に考えていた。
それが仇になったのかもしれない。
空き教室で何か騒ぐような声がしたのでシンヤは立ち止まり、躊躇いもなく開けた。
するとどうだろうか、女子の格好をしたアカネが泣きながら四つん這いになり、それを嘲笑うかのようにその光景を面白可笑しく携帯電話で写メを撮る数人の男子と女子が居た。
シンヤはすぐに男子全員を締め上げ、その場に居た全員の顔と名前を記憶し、アカネを連れ出した。
制服に着替え、なおも泣いてるアカネ。ひたすらにシンヤに「ありがとう、助けてくれてありがとう」と感謝の言葉を繰り返していた。
シンヤはアカネに事情を聞いた。
「最初は女の子達がふざけて化粧をしてくるだけだったんだ。化粧ぐらいなら、まあ大丈夫かなと……思ってたんだ。でもある日、男の子が女子の服も似合うんじゃないかって言い始めて……」
「なんで『嫌だ』って言わなかったんだ?」
「勿論言ったよ! でも、嫌がると、面白がって羽交い締めにされて、無理矢理女子の服を着せられた。それで写真も撮られて、逆らうんならネットに画像をばら蒔くぞって言われた……」
「……アイツら」
話を聞き、シンヤはなぜアカネが転校してきたのかを察した。
(そりゃあ、ユキヒコも軽々しく事情を言えねえわな。友人が虐めが原因で転校した、なんて)
「はあぁぁ」と息と吐き、アカネに言う。
「とりあえず、アイツらが持ってた画像は全部消した。これから何かされたら、その時は俺に言え」
「え……でも」
戸惑うアカネに、シンヤは有無を言わせない表情で迫る。
「俺に言え。分かったか?」
「わ、分かりました」
「よろしい」
アカネの返答を聞き、シンヤは腕時計で時間を確認する。
「1人で帰れそうか?」
「う、うん、大丈夫。今日はありがとね、諸星くん」
「ああ、じゃあまた明日な」
そう言ってその日は別れる、はずだった。
「おい、なんでここに居るんだ? さっき駅で別れただろ」
「ん、それが……気づいたらなんかここにいて」
「いや、おかしいだろ! ここ駅と真反対な場所だぞ!?」
「うん、なんでだろうね」
「俺が知りてえよ……」
シンヤは再度時間を確認する。ここからもう一度駅に戻ったとしたら、確実に待ち合わせ時間に遅れる。
そして頭の上に「?」を浮かべるアカネに対して確信する。コイツは真性の方向音痴だと。
不安で頭がいっぱいになりそうなのを抑えて、横目でアカネに言う。
「おい、稚推。これから時間あるか?」
「え、うん。別に用事はないし大丈夫だよ」
「よし、丁度いいからお前も来い」
「来いって、どこに?」
「カードショップだ、そこで友人を待たせてる」
「へ? カードショップ?」
目を見開いて唖然としているアカネの腕をしっかり掴んで引き摺るようにアカネをカードショップまで連れて行く。
アカネは初めて行く場所に困惑しつつ、ちょっとした好奇心もあった。
(そういえば、ユキヒコもカードゲームをやってたなぁ)
東栄学園に居た頃に友人だったユキヒコもカードゲームをやっており、自分も始めてみようとした。
でも、始められなかった。
鹿羽フジミという男によって。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「久しぶり、鹿羽生徒会長」
「お前、稚推アカネか」
フジミと相対するアカネはフジミに対して静かに怒りを露にする。
その様子にフジミは気味悪く笑う。
「なんだ? 東栄時代の復讐でもしに来たのか?」
「いいや、違うよ。シンヤを傷つけた落とし前を着けに来たんだよ」
「シンヤ? ……ああ、あの時の負け犬野郎か。あまりにも弱すぎて今の今まで忘れていたよ」
アカネは無言でマスターズギアを構えてスイッチを入れた。
3Dバトルシステムによって出現したガーディアンがフジミ目掛けて大刀を振り下ろす。
すると、それを防ぐようにフジミのガーディアンが大刀を受け止める。
アカネと同様にマスターズギアを構えるフジミは愉快そうに笑う。
「おお、怖い怖い。これはカードゲームを楽しむためのシステムだろ、アカネちゃーん?」
「だったら、ボクとカードバトルしようよ。退屈させないよ?」
「おいおい、いいのか。てめえじゃ俺には勝てねえぜ」
「ユキヒコに連敗してるくせに、面白いくらいのビッグマウスだね」
「あ"?」
アカネを睨み付けていたフジミは暫くして「クックック」と漏らす。
「あの泣き虫のアカネちゃんが言うようになったじゃねえか。いいぜ、東條の前にまずはてめえから潰してやるよ」
「ならボクは、キミを噛み殺して皆を守る」
ヴァンパイアトライブを操るアカネとアンデッドトライブを使役するフジミ。
全国大会の裏側で、吸血鬼と不死者の戦いが幕を上げようとしていた。
【次回予告】
ついに始まるアカネとフジミの戦い。
一体、フジミはアカネに何をしたのか。
彼らのカードバトルの中で、アカネの過去が少しずつ露になっていく。
次回、【アカネの過去・後編】




