BATTLE:048【受け継がれる想い】
大変、長らくお待たせしました。それでは、とうぞ。今回少しだけ登場するヴォルケーノトライブはあすぎめむいさんが投稿して下さったトライブです。
互いに準備を終え、カードバトルの開始を待つマヤカとシュウスケ。
両者の様子を見て、バトルマスター・レツは高らかに宣言する。
〈さあ! それでは中堅戦、ダァァァイスゥゥ!!!〉
「「セット!!」」
まず先攻はマヤカ。シュウスケを一瞥してから自身のドローフェイズに入る。
「私のターン、ドロー!」
マスターズギアの液晶に表示されたカードを見て「ニヤリ」と笑う。
「フォースチャージして、追加ドロー!」
鬼桜マヤカ:手札【6】
:フォース【▽】
「私は手札からアタックガーディアン【初期の魔女 レイン】を召喚!」
【初期の魔女 レイン】
SF【0】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ウィザード】
DG【0】
LP【500】
鬼桜マヤカ:手札【5】
観客席で観戦しているナミは表情を固くする。
「ウィザードトライブ……今回はどんなコンボデッキを使うんだろう」
前回はマヤカの無限ループコンボによって為す術なく倒されてしまったからか、マヤカの一挙一動に注目する。
マヤカは液晶画面を軽快にタッチしていく。
「レインのポテンシャルアビリティを発動」
【初期の魔女 レイン】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札の上からカードを3枚閲覧し、その中からスペルカードを1枚まで選んで相手に公開し、それを手札に加える。残りのカードは山札の上に好きな順番で戻す。その後、あなたは自分の手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る。
マヤカは小さく笑ってデッキトップからカードを3枚閲覧してその中の1枚のスペルカードをシュウスケに見せる。
【メテオ・インパクト】
メテオ・インパクトを手札に加えてそれ以外のカード2枚をデッキトップに戻し、手札1枚を選んでジャンクゾーンに送る。
鬼桜マヤカ:手札【5】
「さらに手札からアシストガーディアン【ワンダー・ウィザード】を召喚!」
【ワンダー・ウィザード】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ウィザード】
DG【0】
LP【100】
鬼桜マヤカ:手札【4】
「ターンエンド」
「俺のターン、ドロー! フォースチャージして、追加ドロー!!」
松本シュウスケ:手札【6】
:フォース【▽】
シュウスケは目の前にいるマヤカとレインの姿を見る。すると、マヤカはシュウスケに対してニコッと微笑み、シュウスケは思わず顔が緩む。
(いやぁ、やっぱ鬼桜マヤカさんは美人だなぁ。召喚したガーディアンも可愛いし、やっぱ華がある。全く、フブキさんも少しは愛想良くすれば可愛げがあるんだから勿体ないよなぁ。やっぱ女の子は笑顔だよ、笑顔)
そう思っていると、後方の選手控え席に座っているフブキが「おい、シュウスケ」と声をかける。
その声には怒気が籠っているように感じられる。
「お前も真面目にやれよ。じゃなければ蹴りの1つでもお見舞いしてやるからな」
「うっ、……は、はい!」
シュウスケは途端に顔を青くして「おっかねぇ~」と呟きながら手札のカードを確認する。
「俺は、手札からアタックガーディアン【ヴォルケーノ・ライダー】を召喚!」
【ヴォルケーノ・ライダー】
SF【0】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ヴォルケーノ】
DG【0】
LP【500】
松本シュウスケ:手札【5】
「よーし、まずは熱烈アタックをさせてもらおうか! ヴォルケーノ・ライダーのトライブアビリティ発動! 【灼熱の業火】!!」
【ヴォルケーノ・ライダー】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札のガーディアンカード1枚をジャンクゾーンに送る)
┗この効果は1ターンに1度しか発動できない。このカードの全てのアタックアビリティに以下の効果をこのターンのエンドフェイズまで付与する。
【アタックアビリティ】
・相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの値は、このカードのトライブアビリティのコストとなったガーディアンのSFの数値×50)
松本シュウスケ:手札【4】
「俺がコストとしたのは、SF【5】のガーディアンだ。よって、追加で250ダメージを与えることになる!」
「あーら、お熱いこと」
「俺からの、麗しい貴女への熱い想いですよ」
「麗しいだなんて、随分と嬉しいことを言ってくれるじゃない。高くつくわよ?」
「ええ、勿論。貴女を口説くのにそれ相応の覚悟を持ってますよ」
「なら、私の行きたい所に一緒について来てくれるのかしら……どこまででも」
「それはもう、地獄の果てまでご一緒する所存ですよ!」
「ふーん……地獄、ねぇ」
シュウスケの言葉にマヤカはクスクス笑う。シュウスケは「中々の好感触。さすが俺」と思いながらダイスステップに移行する。
「ダイスステップ!」
マスターズギアが数字を1つ、ランダムに決める。
【5】
【ヴォルケーノ・ライダー】
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンに250ダメージを与える。
【2】【4】【6】……相手の山札からカードを5枚、ジャンクゾーンに送る。
松本シュウスケ:フォース【▼】
「フォースを消費してバトル! 初期の魔女レインに計500ダメージを与える!」
「あらら、これは凄いわね。レインのライフは500……これでは私の負けね」
肩を竦めてみせるマヤカはマスターズギアを操作する。
「でも、タダで負けるつもりは無いわ。……そうでしょう、ギンカク?」
ニヤリと笑って、液晶に表示されたカードをタッチした。
「ワンダー・ウィザードのカウンターアビリティを発動」
「えっ?!」
【ワンダー・ウィザード】
【カウンターアビリティ】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは自分の手札からスペルカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る。この効果でジャンクゾーンに送ったスペルカードがジャンクゾーンに2枚以上存在する場合、そのスペルカードの効果を発動する。
「私はこの効果により、手札のスペルカード【メテオ・インパクト】をジャンクゾーンに送る」
鬼桜マヤカ:手札【3】
マヤカはシュウスケに微笑みかける。
「ねえ、地獄の果てまでご一緒してくれるんでしょう? なら……」
【メテオ・インパクト】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分と相手のガーディアンをそれぞれ1体ずつ選び、2000ダメージを与える。
「大人しく私と一緒に負けてくれないかしら」
「え……。い、いやいやいや! スペルカードの効果を発動するためにはジャンクゾーンにそのカードが2枚以上存在しないといけないんだぜ?! 発動できるはずが――」
「可能よ。だって、レインのポテンシャルアビリティで私は手札を1枚ジャンクゾーンに送ったでしょ?」
「そ、そんな……あの時送ったカードが」
「そう、スペルカードのメテオ・インパクトというわけ」
マヤカはマスターズギアを操作する。一方でシュウスケは苦虫を噛み締めた表情を浮かべつつも、同様にマスターズギアの液晶を触れる。
「悪いっすけど、親友に“任せろ”って言っちまったんですよね、俺!! 手札からプリベントアビリティを発動!!」
「あらら、これは予想外ね」
目を見開いたマヤカはマスターズギアの操作をやめる。
【ヴォルケーノ・ウォーラー】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。
【初期の魔女 レイン】
DG【0→2000】
LP【500→0】
【初期の魔女 レイン】
DG【2000→2500】
LP【0→0】
【ヴォルケーノ・ライダー】
DG【0→-3000】
LP【500→3500】
【ヴォルケーノ・ライダー】
DG【-3000→-1000】
LP【3500→1500】
レインのライフのみが尽き、勝負はあっさりとシュウスケの勝利となった。
〈第2回戦! 勝者は吹雪学園のエース、松本シュウスケ選手だ!!〉
「……って、え? そ、そんな……俺のバトル、こんなので終わり…?」
「ふふふ、ごめんなさいね」
勝ちは勝ちだがいまいち納得できずに意気消沈してその場に項垂れるシュウスケを横目で見つつ、マヤカは選手控え席に戻る。
「……どういうつもりだ?」
戻ってからのギンカクの第一声に、ニッコリと笑顔を浮かべる。
「そんな恐い顔してると幸せが逃げちゃうわよ」
「茶化さずに真面目に答えろ。あれは、一体どういうつもりだ。お前の手札にもプリベントアビリティのカードがあったはずだ、なぜ使わなかった」
「バトル前にも言ったでしょ、私。東條フブキと決着、着けたいわよね、って。キシンがアンタのために意地を貫いたんだから、アンタだってそれに応えるべきじゃないかしら。なんてったって、今のアンタはBG部を率いる“巨人の司令塔”なんだから」
「……俺は――」
「ま、こうなっちゃった以上はしっかり勝ちなさいよね。本選は予選と違って引き分けの場合はトータルでの大会成績を見るんだから。ここ1年半は大会に参加してなくとも、トータルで見れば吹雪学園の方が大会成績は上よ」
「お前は、俺に引き分けという選択肢さえ与えてくれないんだな」
「当たり前でしょ。引き分けじゃ、決着を着けたことにはならないわ」
「そう……だな。分かった、俺も腹を決めよう」
「頑張んなさいよ」
マヤカはギンカクの背中を強く叩いて送り出した。バトル会場に向かうギンカクの後ろ姿を見て小さく笑う。
「……全く、ホント面倒くさい生き物よね、男って」
そう言うと、選手控え席には行かずに大会会場を後にする。
「鬼桜さん!」
すると、ナミがマヤカを呼び止めた。ナミの姿にマヤカは目を見開く。
「貴女、早乙女ナミ……? どうしてここに?」
「さっきのバトル、一体何なの?! アンタが相手とわざわざ心中するような真似をするはずがない、本当は手札にプリベントアビリティを持ったガーディアンがあったんじゃないの?!」
「なんだ、そんなこと。仮にそうだったとして、貴女に何の関係があるのかしら」
「関係あるよ、大有りだよ!!」
ナミの勢いのある返答にマヤカは溜め息を漏らす。
「貴女とはたった一度しかカードバトルをしたことが無いのだけれど。それぐらいの接点しか無い貴女が私と何の関係があるというの」
「たった一度バトルしただけで十分だよ!」
「……じゃあ結局、貴女は私に何が言いたいわけ? もっと真面目に私とバトルしろとでも言いたいの?」
「ううん、それは違うよ」
即座に首を横に振るナミに、いよいよ基本的に笑顔を絶やさないマヤカのこめかみにも青筋が浮かび上がる。
「だったら私に何の用なの? わざわざ呼び止めたんだから、それ相応の用件があるんでしょうね?」
「うん、あるよ」
ナミは懐からデッキケースを掲げてニンマリ笑う。
「私とバトルしようよ!」
「……は?」
予想の斜め上を行くナミの言葉に、思わず言葉を失うマヤカ。その言葉を理解した瞬間、マヤカは腹を抱えて「あははははは!!」と笑いだした。
「な、なによそれ! く、くふふ……貴女、どんだけカードバトル脳なのよ」
「あんな手抜きなバトルを見せられたら、決着を着けたくなるってものでしょ?」
「決着、ねぇ。いいわよ、“私達”の決着を着けましょうか。為す術無く敗れた貴女があれからどれだけ成長したのか、見てあげるわ」
「望むところ!」
ナミとマヤカは互いのマスターズギアを構える。
一方、試合会場では、フブキとギンカクが対峙していた。
〈さーて、それではいよいよ大詰め、全てを決める大将戦だぁぁぁぁぁ!! さて、ここで大将戦を盛り上げようと思う。両者共に液晶画面の【C】をタッチしてみてくれ!〉
「「……」」
フブキとギンカクはマスターズギアの液晶画面の【C】をタッチする。
【Climax-Mode】
東條フブキ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
極道前ギンカク:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
「なっ?!」
「フォースがいきなり6枚も?!」
〈そう! 本大会の大将戦は全てがこの特殊ルール、その名もクライマックスバトル! クライマックスバトルではチャージフェイズでチャージすることはできない、だが代わりに手札をデッキボトムに置くことで追加ドローできる。さらに、消費できるフォースの合計枚数は手札枚数と同じだ〉
「チャージフェイズでは手札1枚をデッキボトムに置くことで1枚追加ドローできるのか。つまり、デッキをシャッフルしない限り、デッキボトムに置いたカードはこのゲームでは使用できなくなる」
「そして、使用できるフォースの枚数は手札枚数と同義。手札枚数が0枚になった瞬間、バトルすらできなくなる。手札コストを要求するカードを使う際も考える必要があるのか」
〈さあて、ルールを理解したのなら早速始めよう! ダァァァイス!〉
「「セット!!」」
先攻はフブキである。
「私のターン、ドロー!」
フブキは手札のカードを確認する。
「……私は手札を1枚デッキボトムに沈めて、追加ドロー!」
東條フブキ:手札【6】
「私はフォースを1枚消費し、手札からアタックガーディアン【雪姫武将 アラレ】を召喚!!」
【雪姫武将 アラレ】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ブリザード】
DG【0】
LP【1000】
東條フブキ:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▼】
「そして、アラレのトライブアビリティ発動! 絶対零度の凍結!!」
【雪姫武将 アラレ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札のカウンターカード1枚を選んでジャンクゾーンに送る)
┗この効果は相手のアシストゾーンにカードが存在しない場合にのみコストを支払うことで発動できる。あなたは相手の手札からカードをランダムに1枚選び、それを裏状態で相手のアシストゾーンに置く。この効果で裏状態で置かれたカードがアシストゾーンに存在する限り、相手はアシストガーディアンをアシストゾーンに召喚できない。相手のエンドフェイズ時にこの効果で相手のアシストゾーンに裏状態で置かれたカードを相手の手札に加える。
東條フブキ:手札【4】
「手札からカウンターカードを1枚ジャンクゾーンに送り、ギンカクの手札からカードをランダムに1枚選んでそれを裏状態でアシストゾーンに置かせてもらう」
「っ!!」
極道前ギンカク:手札【4】
ギンカクの手札1枚が凍り付き、それと同時にアシストゾーンも凍結する。
「雪姫武将、手札のカウンターカードを犠牲にすることで相手の手札とアシストゾーンを封じるブリザードトライブのシリーズカード。相変わらず、厄介な戦術を愛用しているんですね」
「それはこっちの台詞だ。そういうお前は、相手ターンに動くカウンター戦術じゃないか。ターンエンド」
「ならお互い様ということで。俺のターン、ドロー!」
ギンカクはドローしたカードを確認してデッキボトムに置くカードを選択する。
「俺は手札1枚をデッキボトムに置き、追加ドロー!」
極道前ギンカク:手札【5】
5枚の手札を見た後、アシストゾーンに置かれたカードを見る。
(裏状態で置かれたのがSF【0】のアタックガーディアンでなくて良かった。もし置かれていれば、俺はアタックガーディアンを召喚することはできず、そのままルールによって敗北していた。だが、そんなくだらない決着を迎えるつもりは無い!!)
「俺は手札からアタックガーディアン【巨人 ネフィリム】を召喚!」
【巨人 ネフィリム】
SF【0】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ギガント】
DG【0】
LP【2000】
極道前ギンカク:手札【4】
「俺はネフィリムのポテンシャルアビリティを発動!」
【巨人 ネフィリム】
【ポテンシャルアビリティ】
【起】(COST:フォースを1枚選んで消費し、このカードを【弱体化】する)
┗あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚ジャンクゾーンに送る。
「フォース1枚とネフィリムの弱体化をコストに、デッキからカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚ジャンクゾーンに送る」
【巨人 ネフィリム】
【弱体化】
極道前ギンカク:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽▼】
「仕込みは万全というわけか」
「ええ。ダイスステップ!」
マスターズギアが1から6までの数字の中からランダムに1つ決定する。
【5】
【巨人 ネフィリム】
【1】【3】【5】……このガーディアンは100ダメージを受ける。
「フォースを1枚消費してバトルフェイズ」
極道前ギンカク:フォース【▽▽▽▽▼▼】
フブキは愉快そうに微笑む。
「なるほど、中々面白い効果だな」
「ネフィリムは弱体化しているので、200ダメージを受けることになります。ですが」
ギンカクはマスターズギアを操作して、ネフィリムのカードにタッチする。
「ネフィリムのトライブアビリティ発動! 鉄壁防御!!」
【巨人 ネフィリム】
【トライブアビリティ】
【自】(このカードがダメージ効果の対象となった時)
┗この効果はこのカードが【弱体化】している場合にのみ発動できる。このターン、このカードが受けたダメージ量の分だけ相手のアタックガーディアンにもダメージを与える。その後、この効果によって発生したカウンターステップ時に互いのプレイヤーがカウンター効果を発動しなかった場合、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
「さあ、どうします?」
「カウンター効果は発動させないさ」
「なら、ネフィリムとアラレは共に200ダメージを受けてもらいます。そして俺はデッキからカードを1枚ドローします」
極道前ギンカク:手札【6】
【巨人 ネフィリム】
DG【0→200】
LP【2000→1800】
【雪姫武将 アラレ】
DG【0→200】
LP【1000→800】
「ギガントトライブの巨人シリーズは自分のターンにも動けるシリーズカードです。お忘れではないですよね?」
「ああ、そうだな。確かに、少し失念していたかもしれない」
フブキは「だがな」と続ける。
「私が勝つことに変わりは無い」
「随分と強気ですね。エンドフェイズ時、アラレのトライブアビリティでアシストゾーンに封じられていたカードが俺の手札に戻ります」
極道前ギンカク:手札【7】
「私のターンだ、ドロー! 手札を1枚デッキボトムに沈め、追加ドロー!」
東條フブキ:手札【5】
「私は手札からドメインカード【手札制限地区:レベル5】をドメインゾーンにセットする!」
東條フブキ:手札【4】
【手札制限地区:レベル5】
【ドメイン】
【永】
┗このカードがドメインゾーンに存在する限り、互いのプレイヤーの手札枚数の上限は5枚となる。手札が6枚以上ある場合、そのプレイヤーは手札枚数が5枚になるようにカードをジャンクゾーンに送らなければならない。
「お前の7枚の手札の中からカードを2枚捨ててもらおうか」
「……なるほど」
ギンカクは手札からカードを2枚選び、ジャンクゾーンに送って苦笑する。
「その戦術は少々、俺のカウンター戦術より厭らしくないですか?」
「さあ、どうだかな。私はフォースを2枚消費して手札からアシストガーディアン【雪姫武将 シグレ】を召喚!」
【雪姫武将 シグレ】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ブリザード】
DG【0】
LP【1400】
東條フブキ:手札【3】
:フォース【▽▽▽▽▼▼】
「シグレのアシストアビリティを発動!」
【雪姫武将 シグレ】
【アシストアビリティ】
【起】(フォース1枚を選んで消費し、手札1枚を選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、それを公開してから手札に加える。公開したカードの中にカウンターカードがある場合、ジャンクゾーンに存在するカウンターカードを1枚まで選んで手札に加える。
東條フブキ:手札【2】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
フブキはデッキからドローしたカード2枚を公開する。
【雪姫武将 コナユキ】
【真実の鏡】
公開したカードの中にカウンターカードの真実の鏡が含まれている。
「カウンターカードがあるから、ジャンクゾーンのカウンターカードを手札に加えさせてもらう」
東條フブキ:手札【5】
「そしてアラレのトライブアビリティを発動! 絶対零度の凍結! 手札のカウンターカードを1枚捨て、お前の手札からカードをランダムに1枚選び、アシストゾーンに裏状態で再び置かせてもらう」
「くっ……」
東條フブキ:手札【4】
極道前ギンカク:手札【4】
「行くぞ、ダイスステップだ!」
マスターズギアが数字を1つ決定する。【3】
【雪姫武将 アラレ】
【1】【4】【6】……相手の山札からカードを4枚、ジャンクゾーンに送る。
【2】【3】【5】……相手の山札の一番上のカードを閲覧し、それを山札の一番上か一番下に置くか選ぶ。
東條フブキ:フォース【▽▽▼▼▼▼】
フブキはギンカクのデッキトップのカードを閲覧し、それをデッキボトムに置く。
「ターンエンドだ」
「俺のターンです、ドロー! 手札を1枚デッキボトムに置いて追加ドロー!」
極道前ギンカク:手札【5】
ギンカクは手札のカードとフォースを見つめる。
(手札制限が5枚になっている現状、手札枚数がそのままフォースの消費量になる以上、6枚あるフォースの内の5枚しか消費できない。だが――)
フブキの手札枚数と消費したフォースの枚数は共に同じ。つまり、フブキはこのターン、フォースを消費することはできない。
ギンカクはそこに目を付けた。
(動くならこのターンか……)
そのままネフィリムのポテンシャルアビリティを発動させる。
「ネフィリムのポテンシャルアビリティを発動。フォース1枚とネフィリムの弱体化をコストに、デッキからカードを2枚ドローして――」
ギンカクがデッキからカードを2枚ドローし、手札枚数が7枚になった瞬間、フブキは声高々に宣言する。
「たとえ効果処理中であろうとも、条件を満たせば永続効果は適用される。手札制限地区の永続効果により、手札を2枚捨ててもらう」
「っ?!」
ギンカクは永続効果の適用を失念していたことに苦虫を噛み締めた表情を浮かべ、手札からカードを2枚ジャンクゾーンに送った後、効果処理によるジャンクゾーンに送るカードを1枚選ぶ。
「2枚カードをジャンクゾーンに送り、さらに効果処理により手札からカードを1枚ジャンクゾーンに送る」
【巨人 ネフィリム】
【弱体化】
極道前ギンカク:手札【4】
:フォース【▽▽▽▽▽▼】
次に繋げるためとは言え、逆に手札が少なくなってしまったことにギンカクは苦しい感情に苛まれる。
「俺は、手札からポテンシャルアビリティを発動!」
【巨人兵 タイタン・ソルジャー】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗あなたのアタックゾーンに【弱体化】しているアタックガーディアンが存在する場合、手札のこのカードはSF【2】となる。
「よって、フォースを2枚消費してアタックガーディアン【巨人兵 タイタン・ソルジャー】を召喚!」
【巨人兵 タイタン・ソルジャー】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ギガント】
DG【200】
LP【4500→4300】
極道前ギンカク:手札【3】
:フォース【▽▽▽▼▼▼】
「消費したフォースの合計枚数は3枚、手札は3枚だから現時点ではもう消費できませんね」
これではバトルすらできない。フブキがドメインゾーンにセットした手札制限地区:レベル5の永続効果がこのクライマックスバトルのルールでは見事にギンカクの行動を抑制している。
「そしてエンドフェイズ時、アシストゾーンに置かれていたカードを手札に戻します」
極道前ギンカク:手札【4】
「私のターンだ、ドロー! カードを1枚デッキボトムに沈め、追加ドロー!」
東條フブキ:手札【5】
フブキはギンカクのフォースと手札を見つめる。
(ギンカクの消費したフォースの合計枚数は3枚、手札は4枚。つまり、あと1枚のフォースを消費することが現状では可能。ならば、このターンでカウンターカードによる反撃を行うつもりか)
手札制限地区:レベル5は確実にギンカクの行動を抑制しているが、それでいてフブキ自身も大きく動くことはできない。
いくら雪姫武将シリーズが手札コストを要求するシリーズカードであり手札枚数を5枚以下に調整できると言っても、ドローソースを使いづらくなるのは中々に苦しいところだ。
(だが、ギンカクのガーディアンは弱体化していない。仕掛けるのなら今だ!)
フブキは自身のフォースを4枚消費する。
「フォースを4枚消費し、手札からアタックガーディアン【雪姫武将 ユキカゼ】を召喚!」
【雪姫武将 ユキカゼ】
SF【4】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ブリザード】
DG【200】
LP【4000→3800】
東條フブキ:手札【4】
:フォース【▽▽▼▼▼▼】
「ユキカゼのトライブアビリティを発動! 絶対零度の凍結!!」
【雪姫武将 ユキカゼ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:あなたは自分の手札からカウンターカードを2枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗この効果は相手のアシストゾーンにカードが存在しない場合にのみ、コストを支払うことで発動できる。あなたは相手の山札の一番上のカードを裏状態で相手のアシストゾーンに置き、相手の手札からカードをランダムに1枚選んでジャンクゾーンに送る。この効果で裏状態で置かれたカードがアシストゾーンに存在する限り、相手はアシストガーディアンをアシストゾーンに召喚できない。相手のエンドフェイズ時に、この効果でアシストゾーンに裏状態で置かれたカードを相手の山札の一番上に戻す。
「コストとして、私は手札から2枚のカウンターカードをジャンクゾーンに送る。そしてお前のデッキトップのカードをアシストゾーンに裏状態で置いて、お前の手札からカードを1枚ランダムに捨てる」
「……」
東條フブキ:手札【2】
極道前ギンカク:手札【3】
「ですが、貴女の手札は残り2枚のみ。消費したフォースは4枚ですから、貴女の手札が5枚以上無ければこのターンはバトルをすることはできませんよ」
「理論上ではな。私は手札からアシストガーディアン【雪姫武将 コナユキ】を召喚!」
【雪姫武将 コナユキ】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ブリザード】
DG【0】
LP【100】
東條フブキ:手札【1】
「コナユキのアシストアビリティを発動!」
【雪姫武将 コナユキ】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:手札からカウンターカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からカードを2枚ドローする。また、この効果でドローした2枚のカードを公開しそれが全てカウンターカードである場合、このカードをジャンクゾーンに送ってあなたは自分の山札からカードを1枚ドローできる。
「よって、私は手札からカウンターカードを1枚ジャンクゾーンに送ってデッキからカードを2枚ドローする!」
東條フブキ:手札【2】
フブキはマスターズギアの液晶からドローして追加された2枚をタッチする。
「ドローした2枚のカードを全て公開する」
【雪化粧の舞い】
【停戦契約】
公開したカードは2枚ともカウンターカードである。
「よって、コナユキをジャンクゾーンに送り、さらにデッキからカードを1枚ドローする!」
東條フブキ:手札【3】
「さらに、私はライフカウンターを2つ消費して2ドロー!」
東條フブキ:ライフカウンター【4→2】
:手札【5】
1枚のみだった手札から一気に手札を4枚増やした。これには阿久麻学園の選手控え席に座って見守っていたキシンも目を見開く。
「おいおい……マジかよ。あの状況からバトル可能にまで持って行きやがった」
そんなキシンの言葉が聞こえているのか、ギンカクは思わず手に汗握る。
(今の俺のタイタン・ソルジャーは弱体化していない。つまり、このまま行けばダメージは免れない)
そう身構えていると、フブキはセットフェイズを終了してダイスステップに移行する。
「ダイスステップだ!」
マスターズギアにダイスの数字が表示される。【3】
【雪姫武将 ユキカゼ】
【1】【3】【5】……あなたは自分の手札からカウンターカードを1枚選んでジャンクゾーンに送り、その効果をフォースを消費せずに発動できる。このバトルフェイズ中、相手がカウンター効果を発動しなかった場合、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
【2】【4】【6】……あなたは自分のジャンクゾーンからカウンターカードを1枚まで選んで、そのカードを自分の手札に加える。
「フォースを1枚消費してバトルフェイズ! アタックアビリティにより手札からカウンターカード1枚をジャンクゾーンに送り、その効果を発動する!」
東條フブキ:手札【4】
:フォース【▽▼▼▼▼▼】
「私がジャンクゾーンに送ったのはカウンターカード【雪化粧の舞い】!」
【雪化粧の舞い】
Force【2】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは自分のドメインゾーンに置かれているカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る。そうしたら、相手のアタックガーディアンに1000ダメージを与える。相手のドメインゾーンにカードが存在しない場合、相手は自分の手札からカードを1枚選んで裏状態でドメインゾーンに置く。この効果で裏状態で置かれたカードがドメインゾーンに存在する限り、相手はドメインゾーンにカードを置くことができない。相手のエンドフェイズ時に、この効果で裏状態で置かれたカードを相手の手札に加える。
「私は手札制限地区:レベル5をジャンクゾーンに送ってお前のタイタン・ソルジャーに1000ダメージを与える。そして、お前は手札からカードを1枚選んで裏状態でドメインゾーンに置くんだ」
「くっ、これは中々にキツいですね」
【タイタン・ソルジャー】
DG【200→1200】
LP【4300→3300】
ギンカクは自分の手札からカードを1枚選んで裏状態でドメインゾーンに置いた。これでギンカクのアシストゾーンとドメインゾーンは自分のエンドフェイズまで、使用できなくなった。
「バトルフェイズ中にお前がカウンター効果を発動しなかったので、私はカードを1枚ドローさせてもらう」
東條フブキ:手札【5】
極道前ギンカク:手札【2】
「これでお前のアシストゾーンとドメインゾーンは凍結したぞ、ギンカク」
「ええ、分かってますよ」
「なら、私のターンはこれで終了だ」
「俺の……ターン、ドロー! デッキボトムに1枚置いて追加ドロー!」
極道前ギンカク:【3】
ギンカクの手札は3枚のみ。そしてアシストゾーンとドメインゾーンが使用不可のため、双方からのサポートも得られないまさに孤立無援の状態とも言える。
だが、唯一の希望はギンカクの行動を妨害していたフブキの手札制限地区:レベル5が無くなったことだ。
とは言え、このままではどうにもならない。
ギンカクはマスターズギアの液晶に映る己の手札を見て目を見開く。
「これは……」
確信する。まだチャンスはある、と。このバトル、負けるわけにはいかない。
そう、ギンカクは負けられない。吹雪学園を去ったのには理由がある。
その理由はフブキだ。彼にとって、フブキは自身の憧れの存在であった。
(ユキマルさんがご存命の時の貴女は輝いていた。強者に挑みそれを超えるために。でも、ユキマルさんがいなくなってからの貴女はすっかり覇気を無くしてしまった。そんな姿、俺は見たくなかった)
そして自分の目の前に立っているフブキを見て、少しだけ満足そうに微笑む。
これだと。自分が相対したかったのは、このフブキだと。
相手の戦術を凍結させて容赦なく拘束し、自分のペースに引き込む絶対的圧力、己の信念を曲げない力強さ。
吹雪学園にいた頃の自分はただ、フブキの背中しか見なかった。
だが今は共にそれぞれのチームを引っ張るリーダーとして、互いに正面からぶつかり合っている。やっと、同じ土俵に立ったのだ。
「想い出を振り切り、ようやく理想にへと至った」
そのまま手札のカードを選んでタッチする。
「スペルカード【起死回生!】発動!!」
【起死回生!】
SP【2】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の手札からカードを1枚選んで自分の山札に戻してシャッフルする。その後、その山札からカード1枚ドローして公開し、そのカードがガーディアンカードである場合、フォースを消費せずに召喚できる。
「俺は自分の手札からカードを1枚選んで山札に戻す。そして……」
極道前ギンカク:手札【1】
まさにこれは起死回生の一手。このターンでフブキを倒すために必要なSF【5】以上のガーディアンを召喚するためには、このカードしかない。
「ドロー!!!」
ドローしたカードを見て、ギンカクは「来たか」と呟く。
そしてドローしたカードを公開する。
【守護龍 ギガント・ドラゴン】
GT【ノーマル/アタック】
「俺が引き当てたのは守護龍ギガント・ドラゴン。スペルカードの効果によってこのガーディアンをノーコストで召喚する!」
【守護龍 ギガント・ドラゴン】
SF【7】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ギガント】
DG【1200】
LP【8500→7300】
会場を覆うような巨体に、さすがのフブキも思わず後退る。
「これが、ギンカクの守護龍……」
「貴女を倒すのに、これ程相応しいガーディアンはいません。ギガント・ドラゴンのトライブアビリティを発動! 鉄壁防御!!」
【守護龍 ギガント・ドラゴン】
【トライブアビリティ】
┗1ターンに一度、以下の2つの効果の中から1つを選んで発動できる。
【起】(COST:フォースを1枚消費する):このカードと相手のアタックガーディアン1体を【弱体化】する。その後、フィールド上の【弱体化】しているガーディアン2体につき、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
【自】(バトルフェイズ開始時):このターンのバトルフェイズ中にこのカードが受けるダメージ効果の合計値はダメージステップ時に1000となる。
極道前ギンカク:フォース【▽▽▽▽▽▼】
「俺はコストを支払い、弱体化する方を選択、よってギガント・ドラゴンとユキカゼは共に弱体化する! そしてカードを1枚ドロー!」
極同前ギンカク:手札【2】
「っ!!」
【守護龍 ギガント・ドラゴン】
【弱体化】
【雪姫武将 ユキカゼ】
【弱体化】
「ダイスステップだ!」
マスターズギアが定めたサイコロの目は【6】。
【守護龍 ギガント・ドラゴン】
【1】【2】【3】【4】【5】【6】……相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの値は、フィールドの【弱体化】しているガーディアンのSFの合計値×500)
極道前ギンカク:フォース【▽▽▽▽▼▼】
「フォースを1枚消費してバトル! フィールドで弱体化しているのは俺のギガント・ドラゴンとフブキさんのユキカゼの2体。そしてそのSFの合計値は11なので、5500ダメージ――ですが、今のユキカゼは弱体化しているので2倍の11000ダメージを与える!」
「11000ダメージ……!」
アタックアビリティの域を超えたダメージ量にフブキは目を剥く。
そしてマスターズギアの液晶をタッチする。
「カウンターカード【停戦契約】発動!」
【停戦契約】
FORCE【0】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたと相手は互いに自分の山札からカードを1枚ドローし、山札の一番上のカードをチャージゾーンに表状態で置く。そうしたら、この効果を発動させたターンのバトルフェイズを強制的に終了させてエンドフェイズを開始させる。バトルフェイズ時に発動されたアタックアビリティは全て無効となるが、【弱体化】はしない。
東條フブキ:手札【4】
「よって、互いに1チャージと1ドローをして、このバトルフェイズを強制終了させる!」
「逃げられましたか!」
極道前ギンカク:手札【3】
:フォース【▽▽▽▽▽▼▼】
東條フブキ:手札【5】
:フォース【▽▽▼▼▼▼▼】
「まだまだ甘いな、ギンカク」
「そうですね。ですが、この状況、果たして貴女には崩せますかね」
「っ……」
苦虫を噛み締める表情を浮かべるフブキに対して、ギンカクは余裕の表情を浮かべる。
「ふふ、ターンエンドです。エンドフェイズ時、ドメインゾーンとアシストゾーンに裏状態で置かれていたカードをそれぞれ手札とデッキトップに戻します」
極道前ギンカク:手札【4】
「私のターン、ドロー!」
フブキはドローしたカードを見て眉間に皺を寄せ、ギガント・ドラゴンを睨む。
(あのガーディアンのトライブアビリティは相手と自分のアタックガーディアンを弱体化させる効果と自分が受ける合計ダメージを1000にする効果。後者はバトルフェイズ開始時に発動する自動効果で、どんな火力を出そうにも受けるダメージを1000にされてしまい、このままではジリ貧になるばかりだ)
自身のサイドデッキにも目を向けるが、ギガント・ドラゴンの効果をすり抜けて倒せるような特殊ガーディアンは存在しない。
メインデッキに眠るカードを信じるしかない。
「手札を1枚デッキに沈めて――」
ドクン
その時、デッキから脈動が伝わってきた。
それだけではない。
――フブキ……
「え…」
フブキの脳内にユキマルの声が響いた。
そしてなぜだか、ユキマルが自分の傍にいるかのような感覚に囚われる。
「ユキ兄……?」
「フブキ姉さん」
観客席。フブキとギンカクのバトルを見守っているユキヒコ。
すると、ユキヒコのデッキケースが光り始めた。
「こ、これは……」
デッキケースを開くと、光を発していたのはブリザード・ドラゴンのカードだった。
ブリザード・ドラゴンのカードを手に取ると、まるで砂のようにカードが崩れ落ち、瞬く間に消滅してしまった。
「な!? 一体何が……」
一方で、フブキの右手を水色のオーラが覆い始めた。
その様子にギンカクは目を見開く。
「まさか、フブキさん。貴女は……」
「これが私の――勝利の一手だ!!」
ドローしたカードを見て、フブキもまた目を見開く。そのカードは本来ならフブキのデッキに入っている筈の無いものだったからだ。
しかし、このカードならばギンカクのギガント・ドラゴンに対抗可能である。
東條フブキ:手札【6】
「私は手札からスペルカード【雪道の回路】を発動!」
【雪道の回路】
SP【1】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からカウンターカードを3枚選んでジャンクゾーンに送り、その山札をシャッフルする。そうした場合、相手のアタックガーディアンのSFと同じ数値のSFを持つガーディアンを手札から1枚、フォースを消費せずに召喚できる。
東條フブキ:手札【5】
「私はデッキからカウンターカードを3枚選んでジャンクゾーンに送り、ギガント・ドラゴンと同じSF【7】のガーディアンを召喚! 来い、【守護龍 ブリザード・ドラゴン】!!」
【守護龍 ブリザード・ドラゴン】
SF【7】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ブリザード】
DG【200】
LP【7000→6800】
東條フブキ:手札【4】
『なっ?!』
これには会場中の多くのカードマスター達は揃って驚愕の声を出した。
ブリザード・ドラゴンは本来ならユキヒコの使用するカード。それをなぜフブキが使用しているのか。
考えられることはただ1つ。守護龍が所有者をユキヒコからフブキに変えたということ。
「ブリザード・ドラゴンのトライブアビリティ発動! 絶対零度の凍結!!」
【守護龍 ブリザード・ドラゴン】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:自分の手札のカウンターカードを3枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗このターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、このターン中、互いのプレイヤーはFORCE【2】以上のカウンターカード以外の効果を発動できない。ただし、このカードのアタックアビリティは発動できる。
東條フブキ:手札【1】
「手札からカウンターカードを3枚捨てる。これでギガント・ドラゴンのトライブアビリティは発動できない!」
「くっ!」
「ダイスステップだ!!」
マスターズギアの表示は、5。
【守護龍 ブリザード・ドラゴン】
【1】【2】【3】……相手は次のターン、バトルフェイズを行うことはできない。
【4】【5】【6】……相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの値は、あなたのジャンクゾーンにあるカウンターカードの枚数×500)
東條フブキ:フォース【▽▽▽▽▽▽▼】
「私のジャンクゾーンにはカウンターカードが12枚、よって合計ダメージは6000だが、ギガント・ドラゴンは弱体化しているので2倍の12000となる!」
「……完敗です」
【守護龍 ギガント・ドラゴン】
DG【1200→13200】
LP【7300→0】
〈決まったぁぁぁ!! 全国大会本選第2回戦! 勝者は返り咲いた強豪校、吹雪学園だ!!!〉
バトルマスター・レツの声によって吹雪学園の勝利が会場中に響き渡った。
フブキはブリザード・ドラゴンのカードを見つめる。そして、このカードにはユキマルの想いが宿っているような、そんな気がしたのだった。
「驚いたな」
イクサと共に試合をモニターから眺めていたセンリはただただそう呟いた。
「守護龍が所有者を変えるとは、なるほど――そういうこともあるのだな」
何か理由を知っているような口ぶりのセンリにイクサは尋ねる。
「一体、あれはどういうことなの? どうして部長の守護龍がフブキさんの元に」
「簡単な話だ。東條ユキヒコよりも東條フブキの方が所有者として相応しいと守護龍が判断した。ただそれだけだ」
「そんな……」
しかし、センリは「だが」と続ける。
「ただ、東條フブキに寄り添いたかっただけかもしれないがな」
「え?」
「いや、気にするな。それよりも次はお前たち東栄学園と炉模工業高校との一戦だな。早くチームメンバーと合流するがいい」
「え、あ……うん」
そう言ってイクサは立ち去ろうとするが、ふとセンリに振り返る。
「あの時は助けてくれてありがとう」
「ありがとう、だと?」
「うん。1回戦の時と2回戦発表の時。まだお礼を言えてなかったから」
前者はミツエとのバトルを中断してくれたこと、後者はイクサたちに対して逆恨みしたカードマスターたちを蹴散らしてくれたことである。
センリは「フン」と言って吐き捨てる。
「勘違いするな、あれはただの尻拭いだ。どちらも王ミツエ絡みの案件だったからな」
「王さんの…?」
「そうだ。2回戦発表の際にお前たちに難癖をつけてきた連中は全員、王ミツエによってチームメンバーを倒されたことによって敗退した奴等だ。今大会の2回戦がたったの7チームになったのも奴の企みによるもの、お前たちはそれに巻き込まれた被害者に過ぎない」
「なんのために」
「余計な邪魔者を排除するためだ。獲物を捕らえるのなら、少ないに越したことは無いのだろう」
「獲物って、まさか……」
センリの言わんとしていることを理解し俯くイクサに、センリは黙って立ち去る。
「安心しろ、僕がいる限りお前には手出しはさせない。何よりも……」
拳を強く握り締める。
「王ミツエは僕が倒す、絶対に」
己の神経をどこまでも逆撫でするミツエに対する闘争本能を、センリはひたすらに高めていた。
【次回予告】
続く対決カードは東栄学園と炉模工業高校。その裏で、アカネは自分の過去の因縁と相対していた。
鹿羽フジミ、過去に東栄学園に所属していた自分を追い詰めた相手に、アカネは真っ向からカードバトルを挑む。
次回、【アカネの過去・前編】




