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TCG バトル・ガーディアンズ  作者: あんころもちDX
第2章・全国大会編
59/66

BATTLE:046【鬼神の意地】

※2018年1月14日追記

:シナリオの見直しに伴い、王ミツエの使用カードを変更しました。

〈さーて! 現時刻を以って第1回戦は終了だぁぁぁ!!〉


 全国大会本選が始まってから3時間。ゴール地点にて、バトルマスター・レツの声が会場に響き渡る。

 イクサは周りを見渡して東栄学園の面々の姿を探す。

 すると、少し目眩を起こして倒れそうになるがなんとか踏み留まって耐える。


「今のは、一体……」


〈マスター…〉


 巫女ナイトの声が脳内で木霊する。


〈今のマスターは極めて危険な状態です。カードバトルができるのも、今日はもうあと1回が限界でしょう。孤高センリが中断したおかげですね〉


「……孤高、センリ」


 イクサは1時間ほど前の出来事を思い出す。


◇◇◇◇◇◇◇


 1時間前。



〈マスター……来ます!〉


「えっ…」



〈グオオオオオオオォォォォォォッッッッ!!!〉


 ミツエが召喚した守護龍が空から舞い降り、イクサとカオス・ナイトを睨み付ける。


「さあ、行くよ。クレイジー・ドラゴン……」




「そうはいかない」


「「っ?!」」


 イクサとミツエがカードバトルを始めようとした時、センリが2人の前に現れた。


「孤高、センリ……」


「あらら、もう来ちゃったんだ」


 孤高アイズの息子である孤高センリ、その存在にイクサは複雑な感情を抱かざるを得ない。

 センリはイクサを一瞥した後、ミツエを睨み付ける。


「コレと戦うのは僕だ。余計な手出しをしないでもらおうか」


「あらあら。余計な手出しって聞こえが悪いなぁ。私はただ、この大会のルールに則って彼とカードバトルをしようとしただけだよ?」


「ならば、こうするまでだ」


 そう言うと、ミツエの軽口をスルーしつつマスターズギアを操作する。


【Survival-Mode】


「「っ?!」」


 ミツエとイクサは目を見開いて各々のマスターズギアを食い入るように見る。

 彼らのマスターズギアが途端にバトルモードからサバイバルモードにへと移行したのだ。

 センリは腕を組んでミツエとイクサに言う。


「このバトル、僕の権限によって中断させてもらった」


 センリの物言いに、流石のミツエも文句を言う。


「ちょ、ちょっと……いくら孤高アイズのご子息だからってこれは横暴じゃないかな!」


「ここでは僕がルールだ」


 お気に入りの玩具を取り上げられた子供のように喚くミツエ。一方でセンリはイクサの方を向く。


「さっさと行け。最後の1回は、僕のために取っておいてもらうぞ」


「え……あ、うん」


 イクサはセンリの言葉をよく理解していなかったが、ここはゴールを優先し、ゴールに向かって一目散に走り去る。


「ありがとう、孤高!」


「礼など不要だ」


 イクサの後ろ姿を眺めた後、ミツエに向き直る。

 ミツエはイヤホン型の通信デバイスを通してサイカと連絡を取っていた。



「サイカ、潮時だよ。さっさと離脱してゴールしなよ」


〈っ!? ……ミツエ、もう少しで終わる。私にやらせろ〉


 サイカの懇願に眉間に皺を寄せ、センリを睨み付けながら忌々しそうに言い捨てる。


「いいや、ダメだ。それ以上続けるのなら、処分対象と見なす」


〈……了解〉


 サイカからの通信が切れ、ミツエは溜め息を吐きながら肩を竦める。


「あーあ、まさか貴方に邪魔されるとはね」


 声は飄々としていたが、その表情からはセンリに対する殺意が漏れておりミツエ自身もそれを隠す気が無いらしい。

 センリもセンリでミツエを喰い殺そうとする戦闘本能を一切隠さない。

 そして互いに思う。


<ああ>


<僕は/私は>


<コイツを>


<潰したい/壊したい>


 2人の取り囲む空間だけ、あからさまな禍々しさに包まれていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……」


〈マスター?〉


 巫女ナイトの呼び掛けにイクサはハッとして意識を今に戻す。


「ご、ごめん。うん、あと1回なのは理解してるつもりだよ」


〈そうだと、良いのですが〉


 どこか心ここにあらずなイクサの様子に、巫女ナイトは一抹の不安を抱きながらもイクサの言葉を信じて大人しく引き下がる。

 イクサは気を取り直してカイト達の姿を再び探す。



「おーい、イクサー!」


 すると、カイトの声が辺りに響く。声の方を見るとカイトを含めた東栄学園の面々が揃っていた。

 そちらに小走りで向かい、イクサはカイト達と合流した。


「良かった。皆、ゴールできたみたいだね」


「ああ! これでまずは1回戦突破だな」


 そう、全国出場50校全てを巻き込んだ激戦を終えながらも、まだ全国大会は始まったばかり。イクサは気を引き締めて周りを見渡す。

 周りにはメンバーが揃わなかったのか、泣き崩れている者がチラホラ見受けられる。


「そういえば、一体何校が1回戦を突破したんだろ?」


「俺達を含めた7校らしいよ」


 ユキヒコの返答にイクサは目を剥く。


「え、たった7校だけ?!」


「うん。メンバー5人の内、3人か4人はゴールできても残りのメンバーが制限時間内にゴールが出来なかった、もしくは迷宮内で敗北してしまったチームが多いみたいだ」


「……」


 1回戦を突破したのはたったの7校のみ。一体どんなチームが残ったのだろうか。そう考えがぐるぐるループしていると、バトルマスター・レツのアナウンスが流れる。


〈さーて! これより第2回戦の組み合わせを発表する! 全員、モニターに注目だ!!〉


『っ?!』


 全員がモニターに目を向ける。



【吹雪学園vs阿久麻学園 】

【東栄学園vs炉模工業高校】

【孤高学園vs界演学園  】

【シード:八聖高校   】



「うわー、私達、いきなり炉模工業高校と戦うんだ」


 ナミの言葉にイクサは手を強く握り締める。残り1回しか戦えない以上、アカネとのリベンジができないからだ。

 イクサの様子にカイトは首を傾げる。


「イクサ、どうしたんだ? リベンジできるのに嬉しくないのか?」


「え、あ……いや、その」


 何と答えたらいいのか目が泳ぎ、イクサは動揺する。


「……」


 ナミはイクサから何か感じ取ったのか、「ムフフ」と笑ってイクサとカイトの間に割って入る。


「戦宮くん、悪いけどイクサのリベンジマッチは私に預からせてもらうよ!」


「「え?」」


 目を見開いて唖然とする2人に、ナミは無い胸を張って宣言する。


「前回の練習試合、私はデッキ調整不足を理由にイクサに大将戦を譲ったよ。でも今は違う、だから今回は私に任せるがよろしい!」


「な、なんか凄い乱暴な理論……」


 カイトがたじろいだ瞬間、ナミは小声でイクサに耳打ちする。


「これで良かった?」


「う、うん。助かったよ、ナミ……でもよく俺が困ってるって分かったな」


「幼馴染みなんだからそれぐらい分かるよ。そ・れ・よ・り・も、イクサ、もしかして私に何か隠してない?」


 イクサは一度口をつぐみ、なるべく声が震えないように答える。


「……別に何も隠してないよ」


「嘘だね」


「嘘じゃない」


「絶対嘘だもん。今だってフラフラしてるし、この前戦宮くんが『死にそうなぐらい具合が悪かった』って言ってた時から、イクサはなんかバトル回数に神経質になってるような気がするし」


「……お前はエスパーか」


「女の子は皆、エスパーなのだよ」


「なんだそれ」


 勘の鋭いナミの指摘にたじろぎながらも、イクサはナミとの会話で思わず笑ってしまう。そして尚更、1日4回のカードバトル制限に関して話せなくなった。

 ナミに余計な心配をかけさせたくない。話してしまえばナミはイクサを心配するのに気を取られて本来の実力を発揮できなくなるかもしれないし、何よりこのナミの笑顔が曇るのを見たくなかったのだ。

 だが、この時ナミに話さないにしても、せめてナミの祖父であるタカミネにだけは相談しておくべきだったと、イクサは後悔することになる。

 

 すると、東栄学園の面々の後方から「納得できるか!」という声が会場に木霊する。

 イクサ達が声のした方向に顔を向けると、予選敗退したチーム代表格の青年がイクサ達に般若のような表情を浮かべていた。


「なんで、なんで本選初出場の…しかも予選敗退校のお前らが突破できて、毎年出場校の俺達がこんなところで敗退しなきゃならないんだ!!」


 激しく睨み付けてイクサ達に憎悪をぶつけながら指を差す。


「東京予選の時みたいに、何かセコイ手でも使ったんじゃないのか!」


 その青年の言葉に、他の敗退チームの面々が「また東栄が」「アイツらやっぱり」と口々に言ってイクサ達を取り囲む。

 ユキヒコは周りを見ながら苦虫を噛み締めた表情を浮かべる。


「これは、マズイな。話し合いでどうにかなる人数じゃない」


 今にも暴徒となりそうな周囲の状況、圧倒的な数の量にイクサ達は戦慄する。


「おい、キミたち」


「見苦しいにも程があるぞ」


 しかし、そこへギンカクとフブキが現れ、イクサ達を取り囲む敗退チームの面々を睨み付ける。

 敗退チーム代表格の青年は「ぐぐ」と声が詰まる。


「お、お前達は1回戦を突破できたから分からないんだ! 俺達は毎年本選に出場しているんだそ、こんな初出場で敗者復活戦獲得した奴等と違って対策は完璧なんだ! コイツらとは、積み重ねてきた努力の量が違うんだ!!」


 するとギンカクは「ほう」と声を漏らして青年を睨む。


「それは聞き捨てならないな。敗者復活で1回戦を突破したのは我々も同じだが? それだけじゃない、東栄学園は東京予選で我ら阿久麻学園を破った猛者だ、1回戦突破も道理じゃないか」


「そ、それは……こ、コイツらのことだ! きっと何かインチキをしてたんだ! インチキな手を使ったツケが回って、予選決勝で機械にエラーが出たんだ!」


 青年の言葉に今度はフブキが口を出す。


「あれは運営側の整備不良による誤作動だという公式見解がある、それなのにインチキと騒ぎ続けるとは女々しいぞ」


「な、なんだとこの(アマ)ぁ!」


 青年がフブキに殴り掛かろうとした時、ギンカクが青年の腕を掴んで捻り上げる。


「ぐっ、がぁぁ……!」


「女性に手を出そうとした時点で、キミ達が積み重ねてきた努力の量というのも、たかが知れてる」


「な、なにぃ?!」




「そこまでだ」


 すると、背後に大量のSPを引き連れたセンリが現れた。

 さすがの青年並びに敗退チームの面々も顔を青くする。


「ここは強者だけが集う神聖な場だ。敗者はさっさと失せるがいい!」


「そ、そんな……こ、孤高さん、俺達にチャンスを。俺達はこんな所で終わるような――」


 センリに手を伸ばそうとする青年の腕を振り払い、センリは吐き捨てるように大量のSPに指示を出す。


「くどい!! お前達、さっさとこの目障りな敗者(ものごい)共を連れて行け」


『はっ! 了解しました、センリ様!』


 黒服に黒いサングラスに身を包んだSPが敗退チームの面々を拘束し、会場から追い出す。


「くっ、俺は…俺達は、こんなところで終わらないんだー!!!」


 暴れ続ける敗退チームの叫び声は誰にも通じることなく、会場の扉の「ガタン!」という閉鎖音と共にかき消えるのだった。

 残ったのは、2回戦以降に進んだ7チームのみ。

 センリは「フッ」と軽く笑ってユキヒコ・ギンカク・フブキの3人に向き直る。


「騒がせたな。2回戦のスケジュールを告げに来た」


 そのまま、パチンと指を鳴らすとモニターの表示が切り替わる。


【吹雪学園vs阿久麻学園  13:10開始】

【東栄学園vs炉模工業高校 14:45開始】

【孤高学園vs界演学園   16:20開始】


「最初は吹雪学園と阿久麻学園の試合だ。昼休憩後、時間までに集合するように」


 「では」と言って去る際、センリはユキヒコの前で止まって1個のUSBメモリを渡す。

 ユキヒコは首を傾げてセンリから手渡されたUSBメモリを見つめる。


「……これは?」


「お前が欲しがってるものだ。以前貴様に言っただろ、“何か思い出した時、今度は僕の方から話す”と」


「っ?! まさか、これは……」


「僕は忙しいから詳しく話してる暇は無い。僕が調べられる範囲でまとめたものをこれに入れておいた」


「……ありがとう」


「礼を言われる筋合いは無い。用件は以上だ」


 センリは多数のSPを引き連れてイクサ達の前から去った。

 後に残されたユキヒコ・ギンカク・フブキの3人は互いの顔を見合って互いに複雑な表情を浮かべる。

 ギンカクはユキヒコの方を向く。


「“東條”という名字でもしやと思ってましたが、キミはやはり……」


 ユキヒコは頷く。


「ええ、俺は東條ユキマルの弟ですよ」


「……なるほど、次にバトルするのが今からとても楽しみです」



「ずいぶんと言ってくれるな」


 すると、フブキがギンカクを睨む。


「まるで、私達が負けるのは当たり前だとでも言いたいのか?」


「いえ、そういうわけでは――」



「そんなの当たり前だろうが!!」


 ギンカクがフブキに話しかけようとした瞬間、どこからともなくキシンが飛び出してきた。

 キシンは威嚇するようにフブキに対して唸る。


「部長が見捨てちまうようなお前らが、俺達に勝てるわけねぇつうの!!」


「っ……」


 キシンの言葉にフブキが顔を歪める。それを見てギンカクはキシンを戒める。


「キシン、口を慎め」


「だけど――」


「慎めと言っている」


 尚も言葉を続けようとするキシンの胸ぐらを掴んで黙らせる。


「ぶ、部長……」


「あーあ、キシン怒らせちゃった」


 そこにマヤカも加わり、ギンカクに寄りかかる。


「ギンカク、落ち着きなって。そろそろブリーフィングの時間よ」


「……悪い、少々熱くなりすぎた」


 ギンカクはキシンの胸ぐらから手を放し、フブキに頭を下げる。


「フブキさん、度々の無礼、申し訳ない」


「……いや、お前が阿久麻学園で手に入れた力、存分に見せてもらうぞ」


「はい、勿論。それでは、我々はこれで」


 そのままギンカクとマヤカは立ち去り、キシンもそれに慌てて続く形で走り去った。



「吹雪学園とのバトル、楽しみねギンカク」


「……ああ」


「浮かない表情ね。やっぱり自分が捨てた古巣とのバトルは気が進まないのかしら」


「……マヤカ」


 ギンカクは立ち止まってマヤカを睨む。


「フブキさん達は強敵だ。甘く見るなよ」


「……ふふ、了解」


 マヤカはギンカクに微笑みつつ、必死に二人に追い付こうと走ってるキシンを横目で見る。


「先に行ってて、ギンカク。少し、アイツと話したいことがあるから」


「分かった、あまり遅くなるなよ」


「勿論」


 ギンカクが阿久麻学園のブリーフィングルームへ向かうのを笑顔で見送り、キシンが合流するのを待つ。


「はあ…はぁ……二人とも歩くの速ぇって!!」


「アンタが遅すぎるのよ」


「んだと!!」


「……甘く見るな、ですってよ」


「はぇ?」


 首を傾げるキシンに溜め息を吐き、「ギンカクの言葉よ」と呟く。


「部長が?」


「そう。吹雪学園の面々は強い、だから甘く見るな……ということらしいわ。アンタはどう思うの、キシン?」


「決まってるさ。ぜってー、負けない。部長は俺達を拾ってくれた、学園で鼻つまみ者だった俺達に居場所をくれた。だから、部長が見捨てた連中なんかに、負けるわけにはいかねぇんだよ」


 感情を籠めるキシンの言葉に、マヤカは「ふーん」と返答する。

 その返答にキシンはムッとした表情を浮かべる。


「なんだよ、マヤカ! お前は部長に感謝してねえのかよ!」


「感謝ならしてるわよ、勿論。ただ、負けるわけにはいかないのは相手も一緒。……知ってる、キシン? 吹雪学園のレギュラーメンバーの中に初等科の生徒が3人もいるらしいわ」


「はあ? そんなんでよく全国大会まで勝ち上がれたな」


「はぁ……」


 マヤカは再び溜め息を漏らし、キシンを咎めるようにキシンの額に人差し指付ける。


「違うでしょ。初等科の生徒で全国大会レベルなのだから、高等科の主将である東條フブキはさらに強敵のはず、カードバトルに年齢は関係ないことはアンタでも知ってるでしょうが」


「ぐ、それは……」


「敵を甘く見るアンタのそういう所、そろそろ直したら?」


「で、でもよ」


「アンタ、そうやって甘く見て、戦宮カイトにも負けたんじゃないの?」


「っ?!」


「事前にワールド・バトル・ボードで勝ってたか知らないけど、そうやって相手を下に見て油断して、アンタが最初から全力で戦っていれば勝ってたのはアンタだったはずよ」


「……」


「負けられない意地が、あるんでしょ。なら、それを出し惜しみせずぶつけるしかないじゃない」


「ああ、分かってるよ。……大丈夫だ、今度は手を抜くようなことはしないって」


「それを聞いて安心したわ、ブリーフィングルームへ向かいましょう」


 そう言うと、マヤカとキシンの2人はブリーフィングルームを目指して再び歩き始めた。




◇◇◇◇◇◇◇◇


 時刻、13:10。

 全国大会本選第2回戦開始の時間となり、両チームが試合会場に入場する。


〈さあーって、ついに第2回戦の始まりだぁ! 対戦カードは、全国大会本選出場校である阿久麻学園と2年ぶりの本選出場を果たした吹雪学園の対決だ!! 因みに、実況は毎度お馴染み、この俺バトルマスター・レツがお送りするぞ!〉


 バトルマスター・レツの声が会場中に響き渡り、観客や他の出場チームはこの2校の対決に注目する。


〈さて、最初の先鋒戦はこの2人だ。阿久麻学園からは鬼神の異名を持つ鬼塚キシン! 対する吹雪学園は新鋭ルーキーの新倉ツトム!〉


 レツに名前を呼ばれ、2人は各々の試合配置場所に立ってマスターズギアの調整と初期手札決定の手順を行う。

 ツトムはキシンの姿を見た後に、阿久麻学園の選手控え席に座るマヤカをチラッと見て露骨にガックリと項垂れる。


「ハァ~~……俺、マヤカさんとバトルしたかったなぁ」


「あ?」


 ツトムの言葉にキシンは眉間に皺を寄せて睨み付ける。


「俺じゃ不服ってか?」


「そりゃそうだろうが。どうせバトルするなら美少女に越したことは無いからな」


「お前、目でも腐ってるんじゃないか。マヤカが美少女? 俺から言わせりゃ、アイツは土蜘蛛みたいな化け物女だぜ」


 そうツトムを馬鹿にした表情を浮かべるキシンに対し、選手控え席に座るマヤカはニッコリと笑いながら黒いオーラを全身から溢れ出す。


「……キシン、殺す」


 マヤカの呪詛にキシンは肩を震わせ、恐る恐る背後のマヤカを見た後に勢いよくツトムの方を向く。


「おい、お前! あんなおっかないのとバトルしたいかぁ!?」


「いや、今のは単にお前が悪いんじゃ……」


〈さーて、漫才はそこまでだ! 時間も押してるからさっさと始めよう! ダーイス、セット!!〉


 レツの言葉によってキシンとツトムのカードバトルが始まり、2人は自身のマスターズギアを見つめる。

 ツトムのマスターズギアの液晶に【Your-Turn】という表示が浮かぶ。

 ツトムは思わず「良し!」とガッツポーズする。


「先攻は俺だぜ。俺のターン、ドロー!」


新倉ツトム:手札【6】


「フォースチャージして、追加ドロー!」


新倉ツトム:手札【6】

     :フォース【▽】


「俺はフォースを1枚消費して手札からアタックガーディアン【スプラッシュ・コア】を召喚(サモン)!」


【スプラッシュ・コア】

SF【1】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【スプラッシュ】

DG【0】

LP【1000】


新倉ツトム:手札【5】

     :フォース【▼】


「スプラッシュ・コアのポテンシャルアビリティを発動!」


【スプラッシュ・コア】

【ポテンシャルアビリティ】

【自】(このカードのアピアステップ時)

 ┗あなたは自分の山札の上から3枚のカードを公開する。相手はその中から1枚を選び、あなたは相手が選んだカードを自分の手札に加え、残りのカードをジャンクゾーンに送る。



「さぁって、デッキトップから公開する3枚のカードはこれだ!」


【ハーフダメージ】

【スプラッシュ・スライム】

【激流札】


「さあ、どれを選ぶ?」


「……【激流札】だ」


「はいよ」


新倉ツトム:手札【6】


 ツトムは激流札を手札に加えて残りの2枚のカードがジャンクゾーンに送られる。


「俺はこれでターンエンドだ」


「俺のターン、ドロー! フォースチャージして追加ドローだ!!」


鬼塚キシン:手札【6】

     :フォース【▽】


 阿久麻学園の選手控え席にて、ギンカクとマヤカはツトムの使用するスプラッシュトライブに目を向ける。


「スプラッシュトライブか……」


「オーガトライブからしたら厄介な相手ね」


「だが、決して勝てない相手じゃない。アイツが冷静に対処できればの話だが」


「どうかしらね、キシンは良くも悪くも単純だから」


 ギンカクとマヤカは言いたいことをそれだけに留め、キシンのバトルに注目する。

 一方のキシンは手札を見ながら考える。


(スプラッシュトライブ……オーガトライブと相性が悪いから対策してないわけじゃない。だが、このカード選びでこれからのバトルの行方が大きく変わるんだ)


 そうやって思案しているキシンを見て、ツトムはニヤリと口元を歪める。


「それにしても、やっぱ阿久麻学園の生徒は可愛いよな」


 唐突にそのようなことをキシンに呟いた。キシンは眉間に皺を寄せてカード選びを一時中止する。


「いきなり何だ?」


「いやぁ、やっぱレベルが高いなぁってさ。ほら」


 ツトムは阿久麻学園の選手控え席を顎で指す。

 選手控え席にいるのは、ギンカクの他はマヤカを含めた女生徒3人が腰かけている。

 マヤカを除く女生徒2人はマヤカに水筒を手渡したり、うちわで仰いだりとまるでマヤカの付き人のように伺える。


「あーあ、本当に美少女とカードバトルできなかったことが悔やまれるぜ。あわよくば連絡先の交換と今夜のディナーにお誘いしたかったなぁ」


「……お前」


 ツトムの物言いにキシンは拳を強く握り締める。


「バトル・ガーディアンズはナンパの道具じゃねえぞ。ナメてんのか?」


「まさかまさか。ナンパの道具じゃねえって、キッカケではあるけど」


「変わらねえだろうが!!」


 ツトムはやれやれと肩を竦める。


「お前、中々頭が固いなぁ。やっぱ東京のエリート様校に通うだけあって面白味がねぇな」


「てめえみたいな……頭がスカスカな奴とは違えんだよ!!」


 キシンは激情に身を任せて手札からガーディアンを召喚する。


【オーガ・スラッシャー】

SF【0】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【オーガ】

DG【0】

LP【500】


鬼塚キシン:手札【5】


「オーガ・スラッシャーのトライブアビリティ発動! 涙の怒り(ティアーズ・レイジ)!!」


【オーガ・スラッシャー】

【トライブアビリティ】

【起】(COST:無し)

 ┗この効果は1ターンに一度しか発動できない。あなたのターンのバトルフェイズに発生するダメージ量を2倍にする。その後、エンドフェイズ時にこのガーディアンは弱体化する。



「手札からスペルカード【バーン・ブレイク】発動!!」


【バーン・ブレイク】

SP【2】

【ノーマルスペル】

【起】(手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)

 ┗このターンのバトルフェイズ中、あなたのアタックガーディアンが発動したダメージ効果量は3倍になる。その後、あなたのアタックガーディアンはエンドフェイズに【弱体化】して自分の手札からカードを2枚選んでジャンクゾーンに送る。


鬼塚キシン:手札【4】



「げっ、2倍からの3倍って……計6倍?!」


「このターンで終わらせてやるよ、ダイスステップ!!」


 頭に血が昇ってるキシンに対し、ギンカクとマヤカは「あのバカ……」と頭を悩ます。


 キシンはサイコロを振った。

 サイコロの目は、5。



【オーガ・スラッシャー】

【1】【2】【3】……相手のアタックガーディアンに150のダメージを与える。

【4】【5】【6】……相手のアタックガーディアンに300のダメージを与える。


鬼塚キシン:フォース【▼】


「バトルフェイズだ! 合計ダメージは1800だ!!」


「な、スプラッシュ・コアのライフは1000だから、このままじゃ負ける?!」


 ツトムは「お助け~」と言いながら身を竦めて震えるが、それを見かねたヒョウザンは選手控え席で溜め息を漏らす。


「真面目にやれ、ツトム」


「えぇ~? もうちょっと遊ばせて下さいよ、ヒョウザンさん」


「茶番は不要だ。いいから、真面目に、やれ! これで負けるようならバリカンだからな」


「……ちぇー、せっかくの晴れ舞台なのに」


 ツトムは肩を竦めてマスターズギアを操作する。


「頭丸めたくないからちょっと本気出すよ! スプラッシュ・コアのトライブアビリティ発動! 【激流の衝動(ハイドロ・ストリーム)】!!」


「なっ?!」


【スプラッシュ・コア】

【トライブアビリティ】

【自】(このカードがダメージ効果の対象となった時)

 ┗あなたは自分の手札からガーディアンカードを任意の枚数選び、そのSFの合計値が相手のアタックガーディアンのSFと同じになるようにジャンクゾーンに送り、ダメージ効果1つのダメージ量を0にする。


新倉ツトム:手札【5】


「俺は手札からSF【0】の【スプラッシュ・イーター】をジャンクゾーンに送り、オーガ・スラッシャーの300ダメージを0にする。いくらダメージ量が6倍になろうとも、元々のダメージ量が0なら意味無いぜ」


「くっ……!」


 オーガ・スラッシャーの斬撃をスプラッシュ・コアは喰らうが、液体状の身体はその斬撃を受け流した。


【スプラッシュ・コア】

DG【0→0】

LP【1000→1000】


 バトルフェイズが終了してエンドフェイズに移行し、オーガ・スラッシャーは弱体化する。


【オーガ・スラッシャー】

【弱体化】


「……っ」


 それだけではない。スペルカード【バーン・ブレイク】の効果により2枚の手札がジャンクゾーンに送られる。


鬼塚キシン:手札【2】


「ターン、エンドだ」


「んじゃ、俺のターンだな。ドロー! フォースチャージして追加ドロー!」


新倉ツトム:手札【6】

     :フォース【▽▽】


「俺は手札からドメインカード【スプラッシュ・アトランティカ】をドメインゾーンにセットする!」


【スプラッシュ・アトランティカ】

【永】

 ┗相手のターン中、あなたの手札にある全てのガーディアンカードのSFは1つ上がり、あなたのターン中、あなたの手札にある全ての【スプラッシュトライブ】のガーディアンカードのSFは1つ下がる。


「この永続効果により、俺はこのカードをノーコストで召喚する。【スプラッシュ・スライム】を召喚(サモン)!」


【スプラッシュ・スライム】

SF【1】

GT【ノーマル/アシスト】

Tr【スプラッシュ】

DG【0】

LP【200】


新倉ツトム:手札【5】


「さらに、手札からスペルカード【激流札】を発動!」


【激流札】

SP【0】

【ノーマルスペル】

【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送ってフォースを1枚消費する)

 ┗自分の山札の上から6枚のカードをジャンクゾーンに送り、その中に含まれている【スプラッシュトライブ】のガーディアンカードの枚数2枚につき、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。



新倉ツトム:手札【4】

     :フォース【▽▼】


「さあ、どうする? 無効にするか?」


「……」


 キシンは自分のマスターズギアを見つめて苦虫を噛み締めるような表情を浮かべてから首を横に振る。


「いいや、無効にはしない」


「ふーん」


 ツトムはキシンの持つ2枚の手札を思案する。


(あの表情、無効にしたいのに手札にスペルカードが無くて悔しい! ……っていうのじゃないな。恐らく手札にスペルカードはある、だが使ってしまえば起死回生のチャンスさえ失ってしまう……だから使えない、といったところか)


 ニヤリと笑う。


(どんな起死回生のスペルカードか知らないけど、それでも俺のスペルカードは無効にするべきだったな。なんてったって激流札はドローソースと墓地リソースを同時に稼ぎながらデッキスピードを速めるパワーカードだ)


 ツトムは激流札の効果処理を行う。

 デッキトップから6枚のカードがジャンクゾーンに送られる。


【激流札】

【ヒドロ・アクター】

【スプラッシュ・サーファー】

【スプラッシュ・スライム】

【停戦契約】

酸素人形(オキシドール) ゲイン】


「この中に含まれるスプラッシュトライブのガーディアンは4枚、よってデッキからカードを2枚ドローする!」


新倉ツトム:手札【6】


「……くくく」


 キシンは静かに笑う。ツトムは首を傾げる。


「どうしたんだ?」


「……いや、こんなところで終わるわけにはいかねえって、そう思っただけさ」


「?」


「まあ、見ておけよ。“次のターンの快進撃でお前の間抜け面を拝めると思うと、顔がニヤけちまうのさ”……そう言って俺の猛攻を防いだアイツみたいに、俺だって喰らいついていくさ」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 イクサは本選会場の廊下の自販機前に取り付けられたモニターでキシンとツトムのバトルを観戦していた。


「今の言葉は、カイトの……」


「鬼塚キシン、所詮はこの程度のカードマスターか」


 すると、センリがやってきた。イクサは目を見開く。


「孤高、どうして……」


「僕だって飲み物ぐらい買うさ。それより、貴様はこのバトル、どう見る?」


「……俺は、鬼塚さんが勝つと思う」


「なぜだ? 新倉ツトムはこのターンで決めきるだろう、しかも鬼塚キシンのアタックガーディアンは弱体化している。ライフ500など削りきるのは容易い。それ以前に、たとえこのターンを凌げたとしてもスプラッシュトライブはオーガトライブにとって天敵だ。トライブ同士の有利不利が覆ることは無い」


「それでも、鬼塚さんは負けない」


「その根拠は何だ?」


「今の鬼塚さんには何か秘策がある。俺には、そう感じられる」


「……そうか」


 イクサとセンリはモニターを見つめる。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「いくら喰らいつこうが、このターンで終わらせてやるよぉ! アシストゾーンのスプラッシュ・スライムのアシストアビリティ発動!」


【スプラッシュ・スライム】

【アシストアビリティ】

【起】(COST:手札1枚とフォースを1枚をそれぞれ選んでジャンクゾーンに送る)

 ┗アシストゾーンに存在するこのカードを表状態でチャージゾーンに置く。また、ジャンクゾーンに存在する【スプラッシュ・スライム】を2枚まで表状態でチャージゾーンに置くことができる。


「俺は手札1枚と裏状態のフォース1枚をジャンクゾーンに送り、アシストゾーンとジャンクゾーンの計3体のスプラッシュ・スライムをチャージゾーンに表状態で置く!」


「なっ!?」


新倉ツトム:手札【5】

     :フォース【▽▽▽▽】


「フォースが一気に4枚に……」


「さらに、フォースを1枚消費して手札から【スプラッシュ・サーファー】を召喚(サモン)!」


【スプラッシュ・サーファー】

SF【2】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【スプラッシュ】

DG【0】

LP【2000】


新倉ツトム:手札【4】

     :フォース【▽▽▽▼】


「スプラッシュ・アトランティカの永続効果により、手札でのスプラッシュ・サーファーのSFは1に下がっている。よって、召喚制限でも問題なく召喚できる。そして、スプラッシュ・サーファーのポテンシャルアビリティを発動!」


【スプラッシュ・サーファー】

【ポテンシャルアビリティ】

【起】(COST:フォースを1枚消費する)

 ┗あなたは自分のデッキからカードを1枚ドローする。


「俺はこの効果を二度発動し、合計2枚ドローする!」


「……」


新倉ツトム:手札【6】

     :フォース【▽▼▼▼】


「あっという間に手札を6枚に戻しやがった……」


「スプラッシュトライブはその特性上、手札を消費しやすいからな。ドローソースは重要なんだ」


「ドローソースか……ますますアイツを思い出すぜ」


「アイツ? まあ、いいや。ダイスステップだ!」


 ツトムがマスターズギアを操作するとシステムがランダムに1つ数字を決める。


【3】


【スプラッシュ・サーファー】

【1】【4】……相手のデッキからカードを5枚、ジャンクゾーンに送る。

【3】【6】……相手のアタックガーディアンに300ダメージを与える。


新倉ツトム:フォース【▼▼▼▼】


「フォースを1枚消費して、バトルフェイズ! オーガ・スラッシャーは弱体化しているから、2倍の600ダメージを与える!」


「……まさか、俺がこのカードを使うことになるとはな」


 キシンは小さく笑いながら液晶に映されたカードをタッチする。


「手札からカウンターカード【カウンター・リサイクル】発動!」


【カウンター・リサイクル】

FORCE【0】

【カウンター】

【自】(カウンターステップ時)

 ┗あなたは相手のジャンクゾーンに存在するカウンターカードを1枚まで選び、そのカードの効果をフォースを消費せずに発動できる。


「なっ?!」


「俺がお前のジャンクゾーンから選択するのは、【停戦契約】だ」


「くそ!」


「無駄に捨て札を肥やしたのが仇になったな」


【停戦契約】

FORCE【0】

【カウンター】

【自】(カウンターステップ時)

 ┗あなたと相手は互いに自分の山札からカードを1枚ドローし、山札の一番上のカードをチャージゾーンに表状態で置く。そうしたら、この効果を発動させたターンのバトルフェイズを強制的に終了させてエンドフェイズを開始させる。バトルフェイズ時に発動されたアタックアビリティは全て無効となるが、【弱体化】はしない。


「よって、互いに1ドローと1チャージして、アタックアビリティは無効になる」


【オーガ・スラッシャー】

DG【0→0】

LP【500→500】


鬼塚キシン:手札【2】

     :フォース【▽▼】


新倉ツトム:手札【7】

     :フォース【▽▼▼▼▼】


「だ、だが、おかげで手札は7枚にフォースは5枚だぜ」


「ああ、分かっているさ。次のターン、見てろよ」


 キシンはゆっくり深呼吸して気持ちを落ち着かせる。そして自分のバトルを見守っているギンカクを横目で見る。


(部長、俺はアンタに感謝している。アンタがいなかったら、俺はただただ腐って社会に埋もれてた)


 キシンは過去を思い浮かべる。

 キシンの家は鹿羽一族には及ばずとも、それなりに力を持った一族だ。

 だからこそ、阿久麻学園という高級な檻に入れられた。キシンの意向など全て無視して。

 それに耐えられなかったキシンは反抗し、気に入らない者は生徒だろうが教師だろうが関係なく暴力でねじ伏せた。その行動を咎められて何度か指導室という名の独房に拘束されたことあったが、キシンは決して態度を変えなかった。

 そんなキシンが阿久麻学園から追放されなかったのは、(ひとえ)に彼のバックに控える鬼塚一族の圧力と、何よりも彼自身の優秀さが原因だった。

 学力は授業をサボっているためそこまで高くないが、それは決して彼の頭脳まで否定していい要因ではなかった。彼は1を知って100を知るほどの理解力を持っている。ただし記憶力は高くないので、反復する必要があるが。

 それでも、生かさず殺さずという状況を強いられていた彼にとって、毎日の日常は常に灰色の日々だった。

 だが、そんな日々に色が初めて着いたのは、ギンカクと出会った日。いつものように授業をサボって喧嘩に明け暮れてた日に、突如現れたギンカクは相手とキシンの両方をあっという間に捻り倒して言った。


――「お前達、その元気をカードバトルで発散させてみないか?」――


 最初は何を言ってるんだと思った。しかしギンカクはキシン達の言葉を全く話を聞かず、予め立ち上げておいた(バトル)(ガーディアンズ)部の部室に彼らを連れて行き、マヤカと共に一からバトル・ガーディアンズのルールをキシン達に教え込んだ。

 最初は戸惑いつつも、いつの間にか彼らはバトル・ガーディアンズを楽しみ、気づいた時にはBG部の部室が彼らの居場所となったのだ。


 キシンは意識を現在に戻してツトムを睨み付ける。



「そうさ、トライブ同士の有利不利が何だ。そんなもの、俺の意地が粉砕してやるぜ!!」


 そう、キシンは負けられない。

 自分達に居場所を与えてくれたギンカクを失望させた相手に、負けるわけにはいかないのだ。

 ギンカクの恩義に報いるためにも、負けられない意地があるのだ。

【次回予告】


 激戦を繰り広げるキシンとツトム。

 パワーで突っ走るオーガトライブとそのパワーを受け流すスプラッシュトライブ。

 キシンに負けられない意地があるように、ツトムにも負けられない意地があった。

 互いの意地と意地のぶつかり合い。果たしてこのバトルを制すのはどちらになるのか。


 次回、【意地の果てに】

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