BATTLE:043【認めたくない真実/偽典の龍】
今回、かなり長くなりました。ご了承下さい。
どっかで切ろうにも中途半端になると思ったので、こうなりました。
「まあ、ゆっくり考えてほしいね」
そう言うと、アイズはイクサの肩を2回ほど叩いてその場を去った。
イクサは何も言えず、その場に立ち尽くしていた。
自分が孤高アイズの息子? 意味が分からない。そんなはずがない。
そう否定したいのに、否定しきれない。
――あれ、そういえばこのアルバム、赤ちゃんの写真が1枚も無いね?――
全国大会本選出場の祝賀会、ユキヒコがアルバムを見ながら言った一言。
そして10年前以降の記憶が無い自分。
赤ん坊から五歳までの空白期間、それが自分の中に存在する。恐らく、その空白期間にこそ自分の真実が凝縮されているのだろう。
それらの要素が、イクサがアイズの息子であることを否定させてくれない。
「イクサくん……」
すると、カズノリがイクサの前に現れた。その表情は、イクサの身を案じるようでいて、少し複雑そうな何とも言えない様子だった。
「前田店長……」
イクサの力の無い声に、カズノリは拳を強く握り締める。
「……どうやら、アイズさんに会ったみたいだね」
「……はい。前田店長は、孤高アイズさんについて、何か知ってますか?」
「まあ、大体のことは」
「だったら、聞きたいんですけど……孤高アイズさんの息子は、一人息子である孤高センリだけなんですよね?」
「…………ああ、そうだよ」
「もう1人、息子がいるなんてこと、無いですよね?」
「……血の繋がった息子は、1人だけだ」
「……」
カズノリの言葉に、イクサは顔が青くなる。
そればかりか、少し寒気すら感じる。カズノリは他に息子がいることを否定しなかった。
そのことが、イクサを不安にする。
「なんで、他に息子がいないって、言ってくれないんですか?」
「僕はキミ達に、全ての真実を話すことはできない。ならせめて、話せる範囲での真実は話そうと思っている。それがきっと、僕にとっての罪滅ぼしだから」
カズノリはフゥと息を吐き、イクサに向き直る。その口元には少しだけ力が入っている。
「少しばかり昔の話をしよう。キミに言ったように、僕はカードショップの店長だけでなく、西園寺家の執事も務めている。そんな僕の昔話さ。当時の僕はまだ見習い執事だった」
◇◇◇◇◇◇◇
ある女性がいた。
彼女は孤高家に仕える侍女だった。
ある出来事が起きてアイズさんが軍事市場から撤退し、すっかり意気消沈していた時、彼女は持ち前の明るさでアイズさんを支えていた。
自分には孤高家全体を支えられるだけの度量は無いが、せめてできる範囲でアイズさんを支えたい。そんなことをいつも言っていた。
そんな従者としての在るべき姿を貫く彼女に、僕は惹かれていた。
だが、彼女の中での僕は西園寺家と孤高家をそれぞれ支える者同士。あくまで友人に過ぎなかった。
それでも諦めきれなかった僕は、彼女に思いきって告白をした。
でも、それは受け入れられなかった。
「私には、支えるべき人がいます。あの方の笑顔を見るまでは、私は孤高家から離れません」
彼女は力強くこう言ったんだ。
「孤高家は絶対に、私が守ってみせます」
彼女は本当に、意思の強い人間だったんだ。諦めざるを、得ない程に。
その後、孤高アイズがバトル・ガーディアンズというカードゲームを造り上げ、それを普及させるために――いや、少しでも彼女の助けになればと、俺は最初のカードマスターとしてバトル・ガーディアンズのイベントの開催並びに運営に努めた。
そうやって世界各国を巡り、やがて一段落着いた僕は彼女に会うために日本にへと訪れた。
だが、彼女には、会えなかった。
妊娠していたんだ、孤高アイズの子供を。
電話越しに涙ぐみながら彼女は僕に言った。ごめんなさい、ごめんなさい、と。
あとで調べて分かったんだが、当時のアイズさんにはどうしても自身の子供が必要だったらしい。
彼女は、その生け贄に選ばれただけに過ぎない。
彼女が子を産み、少し遅れる形で西園寺の奥様もアンジェお嬢様をお産みになった。
アンジェお嬢様は彼女を大層気に入っていた、お姉さまと呼び慕うほどに。
僕も、彼女を孤高家の奥様として敬い、以前までのように友人として振る舞うことをやめた。彼女が僕に浮かべる悲しい瞳も、見ないフリをした。
そんな時、アイズさんは僕に言った。
「一目見た時から分かったよ、キミは私と同じタイプの人間だ。故に、キミは幸せになってはならない、そういう運命なんだ」
正直言って、吐き気がした。
なぜ彼女が孤高アイズの生け贄に選ばれたのか、それは奴が、僕が彼女に告白する場面を見ていたから。そう、たったそれだけの事で、彼女は生け贄にさせられた。
僕が彼女に告白なんてしなければ、いや、彼女を早々に諦めてさえいれば、彼女は生け贄になんてならなかったのに。
それが僕にとっての、認めたくない真実だ。
彼女は泣いていたよ。こんなことは望んでいなかったと。憎しみを抱いてしまった自分ではもう孤高アイズを笑顔にはできないと。
どうやら彼女の子供は、孤高アイズが行う実験のモルモットにされているようだった。
子供を救うために、彼女は僕に助けを求めた。孤高から抜け出すための手助けをして欲しいと。
孤高アイズに悟られないように、西園寺の力を一部借りて彼女を連れ出し、奴にバレないように情報を書き換え、彼女が平穏に暮らせるようにした。
その後は、もう彼女を孤高家に巻き込まないために接触は一切しなかった。
でも、それが仇になったのかもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇
「キミがカイトくんに連れられて僕のカードショップに来たとき、成長したキミに全く気づけませんでした。そう、“現在”のキミはあまりにも“過去”のキミと違いすぎたんだ」
カズノリはイクサに向かって手を突き出す。
「キミにはバトル・ガーディアンズをしてほしくありません。そのカオスデッキも、僕に渡してほしい」
「えっ……」
カズノリの言葉に、イクサは言葉を失う。
「今日、アイズさんに会って確信しました。キミはこれ以上バトル・ガーディアンズに……孤高アイズに関わるべきじゃない。奴はキミを迎えに来たと言ったかもしれませんが、それはキミ自身をモルモットにすることとカオストライブの回収が目的なんです」
「……できません」
「っ、イクサくん!!」
「それだけは、できません! だってカオストライブは、俺にとって、かけがえのない存在なんです! 彼らがいたから俺は色んな人達に出会えた、たくさんの友人を得られた! なにより……」
――手放さないと決めたのなら、それ相応の覚悟を決めることじゃ――
ナミの祖父であるタカミネの言葉が脳裏に過る。
「俺は、覚悟を決めたんです」
「……」
「ここまで来れたんです、あともう少しで、東條部長とカンナさんとの約束が――」
「園生カンナちゃんを殺したのがカオストライブであってもですか?」
「――え」
「園生カンナちゃんは、カオストライブに殺されたんです」
カズノリの冷徹な声音に、イクサは固まる。
やがて声を荒げる。
「う、嘘を言わないで下さい!」
「嘘じゃありませんし、こんなこと、冗談でも言いませんよ。本当は、キミも薄々感じているんじゃないですか?」
「なにを……」
「キミが僕の店にカイトくんと共に特殊パックを買いにきた日。キミはとても苦しそうでした。まるで、命を吸われたかのように」
「そ、それは……」
「キミには彼女と一緒に穏やかに暮らしてほしいんです。それが僕の、偽り無い思い。それに、キミがカオストライブを持っている限り、アイズさんはキミを狙い続けますよ。奴の誘いを断るようなら、きっとキミの周りが今度は餌食になる。キミが奴の誘いを断れないように」
「俺のせいで、皆が……?」
「アイズさんの中では、優先度はカオストライブの方が大きいはずです。だから僕にカオストライブを渡してくれれば、奴の狙いをキミから一時的に反らすことができるでしょう」
「……」
イクサは押し黙り、カオストライブのデッキが収納されたデッキケースを握る。
「さあ、イクサくん。それをこっちに」
カズノリが差し出す手に、イクサはデッキケースを置こうとする。
だが、寸でのところでそれを止め、デッキケースを手元に引き寄せる。
「やっぱり、できません」
「……どうして」
「だってそんなことしたら、前田店長が孤高アイズに狙われるじゃないですか」
「僕は構いません。キミがカオストライブを持つ覚悟ができてるように、僕もまたその覚悟はできています」
「俺は前田店長を犠牲にしてまで、バトル・ガーディアンズをやめたくない!」
「いい加減にしろ!」
カズノリは一気にイクサに詰め寄り、胸ぐらを掴む。
「既に犠牲は出ているんだ! カイリちゃんが奴の餌食になった。孤高アイズは、今度は別の人間を実験台にしますよ! それは誰です? ユキヒコくんか、それともリンナちゃんか、もしかしたらナミちゃんかもしれませんよ?!」
「え、カイリちゃん……が?」
「ええ、そうです。もしかしたら手遅れかもしれないが、今頃は病院で検査を受けてるでしょう」
「そんな……」
イクサは力無く俯く。自分のせいで犠牲が出ている。どうしたらいいのか、突然の出来事で頭が働かない。
カオストライブを手放せば全て解決するのか? しかし、手放したくない。カオストライブとの、巫女ナイトとの約束があるのだ。それがある限り、手放すことはできない。
答えを出せないでいるイクサを見て、カズノリは業を煮やしたように言う。
「だったら……答えを出せないのなら、ここはカードマスターらしく、カードバトルで決着を着けますか」
「え……」
「僕が勝ったら、大人しくカオストライブのデッキを僕に渡す。もしイクサくんが勝てば、その時はカオストライブを諦めます。どうですか?」
「……分かりました」
「なら、カードバトルができる場所へ移動しましょう」
カズノリはそう言うと、近くの公園へ歩き始めた。イクサもその後を追う。
「ここで良いですかね」
公園に設置されたテーブルに手を着き、イクサに確認を取る。イクサは頷く。
カズノリは「それでは」と呟いて自身のデッキをテーブルの上に置く。
「このデッキ、覚えていますか?」
「デッキ……?」
「ええ。このデッキは、キミが初めて使ったエンシェントトライブのデッキですよ。まあ、現在のカードプールに合わせていくらか改良していますがね」
「俺があの時使った、前田店長のデッキ……」
「仕方ないことですが、あの時のイクサくんはこのデッキのコンセプトを1つも理解していない。このデッキの本当の恐ろしさを教えてあげましょう」
「っ!」
カズノリの身体から漏れ出る闘志に、イクサは目を見開く。
カズノリは小さく笑ってデッキを入念にシャッフルし、準備を整える。
「行くよ、イクサくん」
「はい!」
「「ダイス・セット!!」」
「先攻は僕が頂く。僕のターン、ドロー! フォースチャージして、追加ドロー!」
前田カズノリ:手札【6】
:フォース【▽】
「フォースを1枚消費し、手札からアタックガーディアン【古代兵器 オールド】を召喚!」
【古代兵器 オールド】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【0】
LP【1000】
前田カズノリ:手札【5】
:フォース【▼】
「オールドの出現時、ポテンシャルアビリティを発動!」
【古代兵器 オールド】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札の上からカードを3枚まで閲覧し、その中から【エンシェントトライブ】のガーディアンカードを1枚まで選んで手札に加え、残りのカードを好きな順番に並び替えて山札の上に戻す。
「デッキトップからカードを3枚見る。僕はエンシェントトライブのガーディアンカードを1枚手札に加えて、残りのカードを好きな順番でデッキトップに戻します」
前田カズノリ:手札【6】
「そして、手札からアシストガーディアン【バトラー・オブ・パスト】を召喚!」
【バトラー・オブ・パスト】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【アシスト】
DG【0】
LP【300】
前田カズノリ:手札【5】
「さらにセットフェイズ開始時、バトラー・オブ・パストのアシストアビリティ発動!」
【バトラー・オブ・パスト】
【アシストアビリティ】
【自】(セットフェイズ開始時)
┗自分のターンに一度、あなたは自分のアタックガーディアンのLPを100リペアできる。
「よって、オールドのライフを100回復する!」
【古代兵器 オールド】
DG【0→-100】
LP【1000→1100】
「さらに、オールドのトライブアビリティ発動! 【超越した古の技術】!!」
「エンシェントトライブの……トライブアビリティ」
【古代兵器 オールド】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードを公開し、そのカードがSF【2】以下のアタックガーディアンならば、フォースを消費せずに召喚できる(召喚しない場合はジャンクゾーンに送る)。SF【2】以下のアタックガーディアンでなかった場合、そのカードを手札に加え、あなたは自分の手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る。
前田カズノリ:手札【4】
「手札を1枚捨てて、デッキトップを公開!」
【サイクロプス・アーリー】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
「SF【2】のアタックガーディアンだから、このカードをノーコストで召喚する! 現れろ、【サイクロプス・アーリー】!!」
【サイクロプス・アーリー】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【-100】
LP【2000→2100】
「さらに、サイクロプス・アーリーのトライブアビリティ発動! 超越した古の技術!!」
【サイクロプス・アーリー】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードを公開する。そのカードがSF【2】以下のアシストガーディアンである場合、フォースを消費せずに召喚する。SF【2】以下のアシストガーディアンでなかった場合、そのカードを手札に加える。
前田カズノリ:手札【3】
カズノリは再びデッキトップのカードを公開する。
【メイド・オブ・パスト】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
「条件を満たすカードなので、これをそのままノーコストで召喚! 出でよ、【メイド・オブ・パスト】!!」
【メイド・オブ・パスト】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【エンシェント】
DG【0】
LP【1000】
「メイド・オブ・パストのアシストアビリティ発動!」
【メイド・オブ・パスト】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:無し)
┗この効果は1ターンに一度しか発動できない。あなたは自分の山札の上からカードをX枚まで閲覧し、その中から【エンシェントトライブ】のガーディアンカードを1枚まで選んで手札に加えることができる。残りのカードは好きな順番に並び替えて山札の上に戻す。(Xは、あなたの手札の枚数)
「よって、デッキトップからカードを3枚閲覧する」
デッキトップからカードを3枚閲覧し、その中からカードを1枚選んでイクサに公開する。
「僕が手札に加えるのはこのカードです」
「えっ……」
イクサは思わず目を見開く。
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
Tr【エンシェント】
「エンシェントトライブの…守護龍のカード……」
「そうです。今更言うことではありませんが、僕は本気でキミを倒します」
「っ!」
カズノリから放たれるオーラがより一層強くなるのを、イクサは感じた。思わず逃げ出したくなってしまうくらいの凄みがイクサに迫る。
カズノリはエンシェント・ドラゴンのカードを手札に加え、エンドフェイズに移行する。
前田カズノリ:手札【4】
「僕のターンはこれで終了です」
「……俺のターン、ドロー。フォースチャージして、追加ドロー!」
聖野イクサ:手札【6】
:フォース【▽】
「俺は、手札からポテンシャルアビリティを発動します!」
【カオス・ディーラー】
【ポテンシャルアビリティ】
【起】(COST:手札のこのカードを相手に公開し、山札の一番上のカードをジャンクゾーンに送る)
┗この効果のコストでジャンクゾーンに送られたカードが【カオストライブ】のガーディアンカードである場合、この効果を発動したターンのエンドフェイズまで、あなたの手札のガーディアンカードのSFは全て1つ下がる。
「デッキトップのカードをジャンクゾーンに送る」
イクサはデッキトップのカードをめくり、目を見開く。
「あ……」
めくったカードはカオス・ナイトのカードだった。苦い表情を浮かべ、カオス・ナイトのカードをジャンクゾーンに送る。
カズノリは小さく笑う。
「どうやら、切り札のカードが捨て札になったようですね」
「……それでも、負けるつもりはありません。カオス・ディーラーのコストでジャンクゾーンに送られたカードはカオストライブのガーディアンなので、エンドフェイズまで俺の手札に存在する全てのカードのSFが1つ下がります。俺はノーコストでアタックガーディアン【カオス・シューター】を召喚!!」
【カオス・シューター】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1500】
聖野イクサ:手札【5】
「そして、ノーコストでアシストガーディアン【カオス・チャージャー】を召喚!」
【カオス・チャージャー】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1000】
聖野イクサ:手札【4】
「さらにフォースを1枚消費して、手札からアシストガーディアン【カオス・巫女・ナイト】を召喚!!」
【カオス・巫女・ナイト】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1700】
聖野イクサ:手札【3】
:フォース【▼】
「巫女ナイトのトライブアビリティを発動! 魂の継承!!」
【カオス・巫女・ナイト】
【トライブアビリティ】
【永】
┗【カオストライブ】のガーディアンを召喚したアピアステップ時、前のガーディアンはアンダーカードとして、このガーディアンの下に置く。このガーディアンは下に置かれたアンダーカードの効果を全て受け継ぐ。
「カオス・巫女・ナイトはカオス・チャージャーの能力を受け継ぐ!」
「魂の継承……」
カズノリは複雑そうな表情を浮かべ、やがて苦笑する。
イクサは首を傾げる。
「どうしました?」
「……いえ、なんでもありません。続きをどうぞ」
「は、はい……」
カズノリにそう言われ、自分のプレイングに戻る。
「カオス・シューターのポテンシャルアビリティを発動!」
【カオス・シューター】
【ポテンシャルアビリティ】
【起】(COST:手札1枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札から【守護龍 カオス・ドラゴン】を1枚まで選んで自分の手札に加え、その山札をシャッフルする。
「よって、俺は手札のカードを1枚ジャンクゾーンに送って、デッキからカオス・ドラゴンのカードを1枚手札に加える! これでターンエンドです!」
「なるほど、それがカオストライブの守護龍ですか……。僕のターン、ドロー!」
カズノリは自分の山札からカードをドローし、手札に加える。
「それにしても、理解できませんね。なぜ、そんなにカオストライブに執着するんですか? バトル・ガーディアンズには、カオストライブ以外にもたくさんのトライブがあります。それではダメなんですか?」
「俺、約束したんです。必ず彼らのマスターになるって……だから、俺のトライブはカオストライブ以外ありえません!!」
「そう、ですか……残念です」
カズノリは深く息を吐いてチャージフェイズに移行する。
「フォースチャージして、追加ドロー」
前田カズノリ:手札【5】
:フォース【▽▽】
「アシストゾーンのメイド・オブ・パストのアシストアビリティを発動! その効果により、僕はデッキトップからカードを5枚閲覧し、その中からエンシェントトライブのガーディアンカードを手札に加え、残りの4枚をデッキトップに好きな順番で戻します」
カズノリはデッキトップからカードを5枚閲覧する。5枚目のカードを見た瞬間、目を見開いて自分の手札を見る。
「悪いですが、イクサくん。どうやら、守護龍を使うまでも無かったようです」
「え……」
「デッキからエンシェントトライブのガーディアンカードを手札に加え、残りのカードを戻します」
前田カズノリ:手札【6】
「フォースを2枚消費し、手札からアタックガーディアン【古代兵器 アンティーク】を召喚!」
【古代兵器 アンティーク】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【-100】
LP【2000→2100】
前田カズノリ:手札【5】
:フォース【▼▼】
「フォースを全て使いきった?!」
「問題ありません。アンティークのトライブアビリティ発動! 超越した古の技術!!」
【古代兵器 アンティーク】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札1枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードを公開する。そのカードがSF【3】以上の【古代兵器】と名の付くアタックガーディアンならば、そのカードをフォースを消費せずに召喚できる。そうでなかった場合、そのカードを山札の一番下に置く。
前田カズノリ:手札【4】
「デッキトップを公開」
【古代兵器 エンシェント】
SF【4】
公開されたカードに、イクサは目を見開く。
「なっ、SF【4】のカード?!」
「手札からの召喚ではないので、当然召喚制限はありません。これが、古代の種族であるエンシェントトライブの能力。デッキトップのカードを場に展開し、速やかにバトルを終わらす。エンシェントをノーコストで召喚!」
【古代兵器 エンシェント】
SF【4】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【-100】
LP【4000→4100】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードがアタックゾーンに存在している場合、あなたがアタックガーディアンを手札から召喚する場合、消費するフォースを1つ少なくできる。
「ポテンシャルアビリティ発動!」
【古代兵器 エンシェント】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(カード効果によって召喚されたこのカードのアピアステップ時)
┗このカードのSFの数値とあなたのフォースの枚数の差だけ、あなたは自分の山札の上から表状態でチャージゾーンに置く。
「エンシェントのSFは4、僕のフォースの枚数は2枚、その差は2なので僕はデッキトップからカードを2枚チャージします」
前田カズノリ:フォース【▽▽▼▼】
「フォースが、4枚も……」
「ダイスステップです」
カズノリはサイコロを振る。
サイコロの目は2だった。
【古代兵器 エンシェント】
【1】【4】【5】……あなたは自分の山札のカードを公開してジャンクゾーンに送る。そのカードがガーディアンカードならば、そのSFの数値だけ、相手の山札からカードをジャンクゾーンに送る。
【2】【3】【6】……相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。このターンのバトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかった場合、相手は自分の手札を1枚選んでジャンクゾーンに送る。(Xの数値は、あなたの手札×500)
「フォースを1枚消費して、バトルフェイズ! 僕の手札は4枚、よって、カオス・シューターに2000ダメージを与えます!」
前田カズノリ:フォース【▽▼▼▼】
「っ、巫女ナイトのカウンターアビリティ発動!」
イクサはカオス・巫女・ナイトのカウンターアビリティの発動を宣言した。
【カオス・巫女・ナイト】
【カウンターアビリティ】
【自】(カウンターステップ時)
┗1ターンに一度、自分のアタックガーディアンに与えられるダメージ効果をこのカードに変更できる。ただし、ダメージ効果の対象がこのカードである場合、この効果は発動できない。
【カオス・巫女・ナイト】
DG【0→2000】
LP【1700→0】
ライフが0になったことで、カオス・巫女・ナイトとカオス・チャージャーがジャンクゾーンに送られる。
「チャージャーのポテンシャルアビリティ発動!」
【カオス・チャージャー】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードがジャンクゾーンに送られた時)
┗あなたは自分の山札から【カオストライブ】のカードを2枚まで選び、表状態でチャージゾーンに置く。その後、その山札をシャッフルする。
「よって、デッキからカオストライブのカードを2枚選んでチャージゾーンに置きます」
聖野イクサ:フォース【▽▽▼】
「なんとか耐えましたか」
カズノリは1拍置いて話し出す。
「イクサくん、なぜバトル・ガーディアンズには召喚制限があると思います?」
「え?」
カズノリの質問の意図が分からず、イクサは首を傾げる。
「どういう……」
「当初、バトル・ガーディアンズには手札からの召喚制限というルールはありませんでした。どうしてこのようなルールが追加されたのかと言いますと、それはトライブ間におけるゲームスピードの調整のためです」
「だから、何なんですか?」
「もし召喚制限が無ければ、このゲームに勝利するための一番合理的な戦い方は只1つ。フォースを早い段階で増やし、相手より先に強力なガーディアンを出して圧倒的火力で相手の準備が整う前に殴り倒せばいいだけです。今のこの状況のように」
「……」
「そういうこともあって、昔はオーガトライブのような展開の速いトライブ一強の時代で、反対に展開力に欠けるプラントトライブのようなトライブはユーザーから敬遠されていたのです。だから、ルールが改訂された、ゲーム展開に制限をかける形で」
カズノリは小さく笑い、拳を強く握り締める。
「そんな動乱の世で戦い抜き、一時期はトップの座に着いたこともある僕の攻撃を凌ぎ圧倒的戦力で僕を完膚なきまでに叩き潰す。それぐらいの覚悟を以て挑んで下さいね。僕のターンはこれでエンドです」
「……俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードを見て、それをチャージゾーンに置く。
「フォースチャージして、追加ドロー!」
聖野イクサ:手札【4】
:フォース【▽▽▽▽】
「チャージゾーンに置いたカオス・リーカーのポテンシャルアビリティを発動!」
【カオス・リーカー】
【ポテンシャルアビリティ】
【起】(COST:チャージゾーンに存在する表状態のこのカードを裏状態にする)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードをめくって公開する。そのカードがガーディアンカードだった場合、そのカードをあなたのアタックガーディアンのアンダーカードにできる。ガーディアンカードでなかった場合、そのカードを山札に戻してあなたは自分の山札から【カオストライブ】のガーディアンカードを2枚まで選んであなたのアタックガーディアンのアンダーカードにし、その後、その山札をシャッフルする。
聖野イクサ:フォース【▽▽▽▼】
「自身を裏状態にし、デッキトップを公開」
【カオス・ミラクルドロー】
公開したカードはスペルカードであり、ガーディアンカードではない。
「カオス・ミラクルドローはスペルカード、よってこのカードをデッキに戻して、俺はデッキからカオス・リフレクターとカオス・エンペラーロードをアンダーカードにする!」
カオス・シューターの下に2体のガーディアンが置かれ、トライブアビリティによって能力が受け継がれる。
「さらにフォースを3枚消費して手札からアタックガーディアン【カオス・リジェクター】を召喚!」
【カオス・リジェクター】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【4000】
聖野イクサ:手札【3】
:フォース【▼▼▼▼】
「カオス・リジェクターのポテンシャルアビリティを発動!」
【カオス・リジェクター】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードを公開し、そのカードが【カオストライブ】のガーディアンカードの場合はこのカードのアンダーカードにし、そうでなかった場合は公開したカードをチャージゾーンに表状態で置く。
「デッキトップを公開!」
【フィールド・クリエイト】
公開したカードはスペルカードの【フィールド・クリエイト】である。
「よって、このカードをチャージゾーンに置きます」
聖野イクサ:【▽▼▼▼▼】
カードをチャージゾーンに置き、カオス・リジェクターに目を向ける。
「さらにトライブアビリティ発動! 魂の継承!!」
カオス・リジェクターに仲間達の能力が受け継がれる。
イクサはカズノリのフィールドを見る。。
(エンペラーロードのダメージ効果はフォースの都合上、発動することはできない。そして、今厄介なのはアシストガーディアンのメイド・オブ・パスト……あれのせいで手札が増える上にデッキトップの内容を調整されてしまう……)
続いて手札のカードにも目を向ける。
(手札には互いのガーディアンに2000ダメージを与えるスペルカード【メテオ・インパクト】がある。これなら、効果を無効にされなければメイド・オブ・パストを除去することができる。さらに、もしカウンターステップ時に前田店長がスペルカードを捨てなければ、受け継いだカオス・リフレクターのカウンターアビリティでダメージを半減することもできる)
そこまで考え、イクサは手札からスペルカードを選択する。
「俺は手札からスペルカード【メテオ・インパクト】を発動!」
【メテオ・インパクト】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分と相手のガーディアンをそれぞれ1体ずつ選び、2000ダメージを与える。
「手札からスペルカードを捨てて効果を無効にしますか?」
「……いいえ」
「だったら、メイド・オブ・パストとカオス・リジェクターに2000ダメージを――」
「ですが、カウンターステップ時にフォースを1枚消費して手札からカウンターカード【真実の鏡】を発動します」
「――えっ?!」
前田カズノリ:手札【3】
:フォース【▼▼▼▼】
【真実の鏡】
FORCE【1】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは相手のダメージ効果の対象を変更し、半分のダメージを変更したカードに与えることができる。
「よって、僕はメイド・オブ・パストに向けられた2000ダメージの半分……つまり1000ダメージをカオス・リジェクターに与えます」
「くっ!!」
カオス・リフレクターのカウンターアビリティを使用してダメージを軽減したいが、既にカウンターステップ時に真実の鏡が発動されたことで使用できない。
「真実の鏡の効果とメテオ・インパクトの効果……カオス・リジェクターが受けるのは合わせて3000ダメージです」
「そんな!!」
【カオス・リジェクター】
DG【0→3000】
LP【4000→1000】
「……」
「策士、策に溺れる、とは……まさにこのことですね。僕のチャージゾーンには表状態のフォースが1枚あったんですから、もう少し警戒すべきでしたね」
「……ターン、エンドです」
「僕のターン、ドロー!」
カズノリはドローしたカードを横目で確認する。
(エンシェントトライブのデッキトップ操作は確かに便利ですが、自分の読みが外れればこの状況に不要なカードが手元に来てしまうリスクもある。表状態のフォースを裏状態に変更するカードをデッキトップに来るように調整すべきでしたかね……)
イクサのチャージゾーンに目を向ける。
(イクサくんのチャージゾーンには表状態のフォースが1枚、そして手札は3枚。3枚の手札の内、2枚は序盤の段階でカオス・ディーラーとカオス・ドラゴンであることは判明している。……ならば、残りの1枚はカウンターカードでしょうか?)
カズノリはさらにイクサの行動を分析する。
(そもそもさっきのターン、イクサくんがカオス・リジェクターを召喚しなければ、それだけでゲームエンドになっていた。リジェクターの効果でフォースを増やしたのも、もしかすると防がれることを見越していた……? だとすると、あのカードはやはりカウンターカード?)
そこまで考えると、やがて首を振った。
(いや、それは無いですね。リジェクターの効果でもし公開されたカードがガーディアンカードだったなら、フォースにはならずにアンダーカードになっていた。それでも仮に防がれることを見越していたとするなら、3枚目の手札はリジェクターの効果に関わらず使用できる防御カードとなる。つまり、あのフォースはただのブラフであり、3枚目の手札はプリベントアビリティの可能性がある)
カズノリは手札からカードを1枚選んでチャージゾーンに置く。
「フォースチャージして、追加チャージ!」
前田カズノリ:手札【2】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
「さらにライフカウンターを2つ消費してデッキからカードを2枚ドローする」
前田カズノリ:ライフカウンター【4→2】
:手札【4】
ライフカウンターを消費して追加でドローしたカードを手札に加えた瞬間、カズノリの脳裏に「いや、待て」という声が木霊する。
(そもそも、なぜイクサくんはあの時にライフカウンターを使ってダメージを軽減しなかったのでしょうか。まさか、こちらの攻撃を誘うため?)
カズノリはあらゆる状況を予想し、イクサのフィールドのカード・手札・ジャンクゾーンのあらゆるカードを自分の記憶を頼りに脳内で確認していく。
イクサは何かコンボを狙っているのか、こちらの攻撃を誘うということはやはり手札にはカウンターカードがあるのか。
カズノリはイクサの意図が読めない。
本来、カードプレイヤーは相手ターンに備えて自分のターンに罠を何重にもかけて張り、相手の行動に合わせて必要な罠を使い分けるという思考を持つものだ。
だが、その何種類とも言える罠も、突き詰めればたった2種類にまで絞ることができる。
1つは汎用性。あらゆる状況に対応しうるため、構築の枠が余っていればほぼ全てのプレイヤーがデッキに投入する。故に、この状況ではこのカードが発動される所謂『お決まりのパターン』が存在するため、比較的に読みやすい。
だが問題なのは2つ目だ。トライブ専用のカード。これは単純に知識として相手のトライブのカードプールを把握できなければ相手の行動が一切読めない。
カズノリにとってカオストライブは未知のトライブ。バトル・ガーディアンズの公式ホームページにもそのカードの詳細が記載されていない以上、対策のしようが無い。
もしかすると、イクサの手札にはこの状況を覆し得るカオストライブ専用の防御カードなのではとカズノリは思考する。
果たして、勝負に出るべきか否か。
数秒の沈黙の後、カズノリは動く。
「僕はメイド・オブ・パストのアシストアビリティを発動します。その効果によって、僕はデッキトップからカードを4枚閲覧して、その中からエンシェントトライブのカードを手札に加え、残りの3枚を好きな順番で山札の上に戻します」
前田カズノリ:手札【5】
「そして、手札からスペルカード発動!」
前田カズノリ:手札【4】
【改竄技術-ERROR DATA-】
SP【0】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードを公開してジャンクゾーンに送る。この効果でジャンクゾーンに送ったカードがガーディアンカードである場合、あなたは相手フィールド上のガーディアンを1枚選んでそのカードのSFをこのターンのエンドフェイズまでX増やす。(Xはこの効果でジャンクゾーンに送ったガーディアンカードのSF)
「デッキトップを公開」
【アンティーク・ジャイアント】
SF【5】
「よって、僕はイクサくんのカオス・リジェクターのSFを5増やします」
【カオス・リジェクター】
SF【3→8】
SFが8となったカオス・リジェクターを見て、イクサは目を見開く。
「ま、まさか……」
「キミの場にはSF【8】となったアタックガーディアンが1体、よって僕はこのターン、手札からSF【9】以下のアタックガーディアンを手札から召喚できます。さらに古代兵器エンシェントの永続効果により、フォースを6枚消費します!」
そう言って、カズノリは手札からカードを手に取ってフォースを6枚消費する。
「キミがどんな策を講じようと、このカードの前では無意味です。召喚! 【守護龍 エンシェント・ドラゴン】!!」
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
SF【7】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【-100】
LP【7000→7100】
前田カズノリ:手札【3】
:フォース【▼▼▼▼▼▼】
「エンシェント・ドラゴンのポテンシャルアビリティ発動!」
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札の一番上を公開し、それがSF【3】以下のガーディアンカードである場合、あなたは自分フィールドのアシストガーディアンをジャンクゾーンに送って公開したカードを表状態でチャージゾーンに置く。そうでなかった場合、公開したカードはジャンクゾーンに送る。
「効果によりデッキトップを公開します」
【バトラー・オブ・パスト】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
「バトラー・オブ・パストはSF【3】以下のアシストガーディアンなので、フィールドのメイド・オブ・パストをジャンクゾーンに送ってこのカードを表状態でチャージゾーンに置きます」
前田カズノリ:フォース【▽▼▼▼▼▼▼】
「ダイスステップ!」
カズノリは自分のサイコロを手に取り、勢いよく宙に飛ばす。
天高く飛び上がったサイコロは地面に着地すると暫くは回転し、やがて止まった。
【6】
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
【1】【3】【6】……あなたは自分の山札の上からカードを7枚まで閲覧し、その中からカードを5枚まで選んで好きな順番に並び替えて山札の上に戻し、残りのカードはジャンクゾーンに送る。
【2】【4】【6】……あなたは自分の山札からカードを5枚公開してジャンクゾーンに送り、相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの数値は、この効果で公開したカードの中に含まれているガーディアンカードのSFの合計値×500)
「サイコロの目は6なので、2つの効果を発動! まずはデッキトップからカードを7枚閲覧する方です」
デッキトップからカードを7枚手に取り、カズノリは閲覧する。
その中からカードを5枚選んでデッキに戻し、残りの2枚のカードをジャンクゾーンに送る。
そして、1つ目の効果処理を終えて2つ目の効果処理を開始する。
「行きますよ、デッキトップ5枚オープン!!」
【エンシェント・トライフォース】
SF【6】
【エンシェント・ガーディアン】
SF【3】
【古代兵器 モアイヘッド】
SF【4】
【古代兵器 ナスカ・ウイング】
SF【2】
【オールドスナイパー】
SF【1】
公開してジャンクゾーンに送られたカードは全てガーディアンカードだ。
イクサは表情を固くする。
「SFの合計値は16、よって8000ダメージを与えます!!」
「……」
イクサは一度手札を見る。
大火力を叩き出すことに成功したカズノリだが、内心焦っていた。
一体、3枚目の手札は何なのか。ハーフダメージ等でダメージを半減しても防ぎきれないし、真実の鏡のようなダメージ効果対象を変更しても問題ない、当然プリベントアビリティ1枚ではこの攻撃は絶対に防ぐことはできない。
現状、これがカズノリにとっての最善手である。
イクサは手札のカードに手をかけた。
「フォースを1枚消費して手札からカウンターカード【混沌の集結】発動!!」
「なっ?!」
カウンターカード、それもトライブ専用のである。カズノリは思わず顔を歪める。
【混沌の集結】
Force【1】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗この効果はあなたのターン中に発動できない。あなたのアタックガーディアンのアンダーカードの枚数だけ、あなたは自分の山札から【カオストライブ】のガーディアンカードを選んで手札に加えてその山札をシャッフルする。この効果を発動したターンのエンドフェイズまで、あなたのジャンクゾーンに送られたカードは全てあなたのアタックガーディアンのアンダーカードとなる。
聖野イクサ:手札【2】
:フォース【▼▼▼▼▼】
「俺のカオス・リジェクターのアンダーカードは3枚、よってこの効果により、俺はデッキから【カオス・ガードウイング】を3枚手札に加えます! そして、プリベントアビリティを3つ発動させます!!」
「くっ!!」
聖野イクサ:手札【5】
【カオス・ガードウイング】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。
聖野イクサ:手札【2】
【カオス・リジェクター】
DG【3000→0】
LP【1000→4000】
【カオス・リジェクター】
DG【0→-3000】
LP【4000→7000】
【カオス・リジェクター】
DG【-3000→-6000】
LP【7000→10000】
カオス・リジェクターにエンシェント・ドラゴンの攻撃が命中する。
「そして、混沌の集結によって3枚のカオス・ガードウイングはジャンクゾーンに送られた後にアンダーカードとなります」
【カオス・リジェクター】
DG【-6000→2000】
LP【10000→2000】
「……防がれましたか。僕のターンはこれで終了です」
「俺のターン、ドロー!」
イクサはドローしたカードを横目で確認し、チャージゾーンに置く。
「フォースチャージして、追加ドロー!」
聖野イクサ:手札【3】
:フォース【▽▽▽▽▽▽】
「そして、手札からアシストガーディアン【カオス・サポーター】を召喚!」
【カオス・サポーター】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【200】
聖野イクサ:手札【2】
「カオス・サポーターのアシストアビリティを発動!」
【カオス・サポーター】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:このカードとフォース1枚をジャンクゾーンに置く)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたは自分の山札からカードを2枚、チャージゾーンに表状態で置く。
「よってこのカードとフォース1枚をジャンクゾーンに送って、デッキトップからカードを2枚チャージゾーンに置きます」
聖野イクサ:フォース【▽▽▽▽▽▽▽】
「さらに、フォースを6枚消費して召喚! 現れろ、混沌の龍! 【守護龍 カオス・ドラゴン】!!」
【守護龍 カオス・ドラゴン】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【2000】
LP【7000→5000】
聖野イクサ:手札【1】
:フォース【▽▼▼▼▼▼▼】
「ライフカウンターを2つ消費してデッキからカードを2枚ドローします!」
聖野イクサ:ライフカウンター【4→2】
:手札【3】
「そしてトライブアビリティによって、カオス・ドラゴンはアンダーカードとなった全ての仲間の能力を得ます。カオス・エンペラーロードから受け継いだトライブアビリティ発動! 魂の継承!」
【カオス・エンペラー・ロード】
【トライブアビリティ】
【永】
┗このカードのアピアステップ時、前のガーディアンはアンダーカードとして、このカードの下に置かれる。
【起】(COST:フォースを1枚消費する)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたのジャンクゾーンに存在する【カオストライブ】のガーディアンカードを3枚まで選び、このカードの下にアンダーカードとして置いてこのターンのダイスステップをスキップし、バトルフェイズに移行する。相手のアタックガーディアンにXのダメージを与える。(Xは、このカードのアンダーカードの【カオストライブ】の枚数×800)
「よって、ジャンクゾーンに存在するカオス・ナイト、カオス・巫女・ナイト、カオス・チャージャーをアンダーカードにしてバトルフェイズ。これでカオス・ドラゴンの持つアンダーカードの枚数は10枚、よってエンシェント・ドラゴンに8000ダメージを与えます!」
「………」
カズノリは少し顔を俯かせ、「なるほど」と笑う。
「仲間の力を借り、立ちはだかる者を殲滅する。確かに、キミにぴったりのトライブでしょうね。……でも」
手札のカードを1枚公開する。
「僕はまだまだ負けるつもりはありません」
【九死に一生】
Force【0】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードを公開してジャンクゾーンに送る。そのカードがガーディアンカードである場合、あなたは自分フィールド上のガーディアンを1体まで選んでX000リペアする。(Xの数値は、この効果で公開したカードのSF)
前田カズノリ:手札【2】
「なっ?!」
カズノリが発動したカウンターカード、それは博打に等しいカードだった。
エンシェント・ドラゴンの効果によって閲覧して調整したカードは全てジャンクゾーンに送られたので、カズノリは現在のデッキトップのカードを知らない。
イクサは思わず言葉を溢す。
「そんな運任せな……」
「カードゲームとは、本来そういうものですよ。勿論プレイヤースキルも問われますが結局のところは、最後にモノを言うのは運なんです。そして、それは人生もまた同じです」
少し自嘲気味にカズノリは話す。
「運というのは天からの贈り物です。故に、人為的なものには決して影響されない。……圧倒的な権限を持つ奴の思惑を妨害するには、運を味方に着けるしか無いんです」
カズノリの拳を黄金のオーラが覆い、デッキトップのカードに触れる。
「勝利の一手!!」
オーラがカードに移り、勢いよくドローする。オーラは瞬く間に辺りに霧散し、カズノリはドローしたカードを見て公開する。
【オールドスナイパー】
SF【1】
「オールドスナイパーのSFは1、よってエンシェント・ドラゴンのライフは1000回復します!」
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
DG【-100→-1100】
LP【7100→8100】
「そんな……前田店長が勝利の一手を使うなんて」
カオス・ドラゴンの一撃がエンシェント・ドラゴンに命中する。
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
DG【-1100→6900】
LP【8100→100】
「ギリギリですね……バトラー・オブ・パストのアシストアビリティで回復しておいて良かったです」
「……ターンエンドです」
「なら、僕のターンです。ドロー! フォースチャージして追加ドロー!」
前田カズノリ:手札【3】
:フォース【▽▽▽▽▽▽▽▽】
カズノリはサイドデッキからカードをドローし、そのカードを手札に加えてフォースチャージした後にメインデッキから追加ドローした。サイドデッキからドローしたカードが赤く脈打つ。
「サモンフェイズ! 激情化 起動!!」
「っ?!」
エンシェント・ドラゴンに重ねるように、カズノリはカードをアタックゾーンに置く。
「これこそが、僕の激情を象徴する古代の龍皇です! 【激情龍皇 エンシェント・ドラゴン・LAST-RAGE】!!」
【激情龍皇 エンシェント・ドラゴン・LAST-RAGE】
SF【11】
GT【レイジング/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【6900】
LP【8500→1600】
【サモンコンディション】
┗このカードは、あなたのアタックゾーンにLPが1000以下の【守護龍 エンシェント・ドラゴン】が存在する場合にのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。また、前のガーディアンはこのカードのアピアステップ時にアンダーカードとなる。あなたのエンドフェイズ時に、アンダーカード・手札・山札・ジャンクゾーンから【守護龍 エンシェント・ドラゴン】を1体選び、フォースを消費せずに召喚する。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードがジャンクゾーンに送られる場合、ジャンクゾーンに送られる代わりにサイドデッキに戻す。その後、サイドデッキをシャッフルする。
前田カズノリ:手札【2】
「ポテンシャルアビリティ発動!」
【激情龍皇 エンシェント・ドラゴン・LAST-RAGE】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札のカードを全て閲覧し、ガーディアンカード以外のカードを全てジャンクゾーンに送る。その後、その山札をシャッフルする。
「効果により僕はデッキからガーディアン以外のカードを全て捨て札にする!」
「ガーディアンカード以外の全カードをジャンクゾーンに……それに、激情龍皇?!」
「そうです、激情龍の頂点に君臨するレイジングガーディアン。エンシェント・ドラゴン・LAST-RAGEのトライブアビリティ発動! 超越した古の技術!!」
【激情龍皇 エンシェント・ドラゴン・LAST-RAGE】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:手札1枚とフォース4枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分のダイスステップをスキップしてフォースを消費せずにバトルフェイズを開始する。自分の山札の上からカードを5枚公開してジャンクゾーンに送り、相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの数値は、この効果でジャンクゾーンに送ったガーディアンカードのSFの合計値×1500)
前田カズノリ:手札【1】
:フォース【▽▽▽▽】
「コストを支払い、デッキトップからカードを5枚オープン!」
【エンシェント・リトルウィッチ】
SF【0】
【古代兵器 アステカ・ハンズ】
SF【3】
【古代兵器 ジャイアント・ビッグフッツ】
SF【1】
【古代兵器 クリスタル・ボディー】
SF【5】
【アンティーク・プログラマー】
SF【1】
「SFの合計値は10、よってダメージは15000!!」
「い、15000……」
「これが、僕の全力だ! 防げるものなら防いでみろ!!」
「っ!」
イクサは自分の手札からカードを公開する。
「手札からプリベントアビリティ発動!!」
「な?!」
【カオス・キャンセラー】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードを含めた3枚の手札のカードをジャンクゾーンに送り、このターンのバトルフェイズ中に発生したダメージ効果1つの数値を0にする。
聖野イクサ:手札【0】
「リペア効果ではなく、ダメージ量変更の方のプリベントアビリティですか!」
「俺は手札3枚全てを捨てて、エンシェント・ドラゴン・LAST-RAGEの15000ダメージを0にします!」
1つのデッキにプリベントアビリティを持ったカードは6枚まで投入できる。
そしてプリベントアビリティにはガーディアンのライフを回復するものとダメージを0にするものの2種類が存在する。
【守護龍 カオス・ドラゴン】
DG【2000→2000】
LP【5000→5000】
「さらに、手札からジャンクゾーンに送られた【カオス・レスキュー】のポテンシャルアビリティを発動!」
【カオス・レスキュー】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードがカード効果によってジャンクゾーンに送られた時)
┗あなたはジャンクゾーンから【カオス・レスキュー】以外の【カオストライブ】のガーディアンカードを2枚まで選んで手札に加える。
「効果により、ジャンクゾーンから【カオス・ディーラー】と【カオス・アームド・ブレイヴ】を手札に加えます!」
聖野イクサ:手札【2】
「カオス・アームド・ブレイヴ……キミがあの時に当てたカードですね」
「……はい」
自分が渡したパックでイクサが当てたカード。
カズノリは「ふむ」と呟いて思案する。
(僕の記憶が正しければ、あのパックにはカオストライブのカードは収録されていなかったはず。あのパック以降、カオストライブのカードが当たったという報告は無かった。僕が仕入れたボックスの中にカオス・アームド・ブレイヴのカードを仕込んだのはアイズさんに間違いないでしょう。ですが、あの何千というパックの中から彼が当てたというのなら……それはもしかすると)
そこまで考えて、小さく笑ってからエンドフェイズに移る。
「……ターンエンドです。エンドフェイズ時、レイジングガーディアンの効果によって、エンシェント・ドラゴンを召喚します」
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
SF【7】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンシェント】
DG【6900】
LP【100】
「俺のターン……」
イクサがデッキからドローする際、再び頭の中に鼓動が鳴り響く。
そう、イクサがサクヤとカードバトルをした時に感じた違和感だ。
自分の中に存在する自分の知らない自分自身に見つめられるようなあの違和感。
――すると、辺りが灰色に染まり、時間が停止する。
「っ?!」
イクサは慌てて周りを見渡す。
一体目の前で何が起きているのか混乱していると、背後から声をかけられる。
あの闇の底から響いてくるような不気味な声だ。
〈中々苦戦しているようだな、小僧〉
「……カオス…ドラゴン、なのか?」
震えながら声のする方に振り返ると、そこには5歳くらいの黒髪の少年が佇んでいた。
その容姿は、まるでイクサを小さくしたかのように見える。
「なっ……お、俺…?」
〈さあな。貴様と面と向かって対話しようとした時、なぜかこの姿になってしまったのでな。だがまあいい〉
小さなイクサの姿をしているカオス・ドラゴンはカズノリの元に歩くと手札を覗き見る。
すると「くくく」と笑う。
〈なるほど、この男、中々抜け目が無いな。聞け、小僧。このままでは貴様……負けるぞ?〉
「なっ、相手の手札を覗き見るなんて……」
〈そう大層なことを言っている場合か? このままでは貴様は我らを失うことになるのだぞ?〉
「っ……」
カオス・ドラゴンの言葉にイクサは複雑な表情を浮かべる。
そんなイクサに対してカオス・ドラゴンは諭すように言う。
〈良いか、小僧。奴の最後の手札はカウンターカードの【パーフェクト・バリアー】だ〉
「パーフェクト・バリアー……」
パーフェクト・バリアーとは、以前イクサも使用したことのあるカウンターカードだ。その効果はフォースを2枚消費することでカウンターステップを発生させた相手のカード効果を無効にするカウンターカードである。
〈我の残りライフは5000、奴のように激情化は起動できない。たとえエンペラーロードのトライブアビリティでダメージを与えようにもパーフェクト・バリアーによって確実に防がれる〉
「………」
〈……クク、流石の貴様でもこの状況は苦しいか〉
「いや、まだだ……エクストラドローでエクストラガーディアンのエンペラーロードを引ければ……」
〈引ければ……な〉
カオス・ドラゴンの含みのある言い方に、イクサは苦しい表情を浮かべる。
「引けないって、言うの?」
〈ああ。奴が発動した勝利の一手……その余波は貴様のデッキにまで及んでいる〉
「どういう意味?」
〈勝利の一手は単にデッキから逆転のカードを引き当てる能力ではない。相手のデッキに干渉し、相手が逆転のカードを引く確率を下げる……エクストラフェイズでエクストラドローして、エクストラガーディアンを引き当てられなければその時点で貴様の負けだ〉
「く……」
〈フッ、だが……〉
カオス・ドラゴンは言葉を続ける。
〈我が力を貸そう〉
「え…」
イクサは思わずカオス・ドラゴンの――幼い自分の顔を見る。
その表情は不気味に笑いながらも、ほんの少しだけ温かなものが存在する。
〈勝利の一手の干渉範囲は“発動時点”での互いのデッキのカードだ。つまり、発動時点ではデッキに存在しないカードはその影響を受けない〉
「………」
〈どうだ、我が力を借りる気はあるか? それとも“それは不正だ”と大層なことでも宣うか?〉
「……俺は、覚悟を決めたんだ。デッキの呪いで死に直面した時も、デッキを手放さなかったのは、絶対にこのデッキを使い続けると決めてたから」
〈……〉
「だから――」
イクサは、幼い自分自身の姿のカオス・ドラゴンに向かって手を差し出す。
「――たとえ卑怯者と呼ばれようとも、俺はカオストライブを選ぶ」
〈……そうか、ならば受け取れマスター。我が、永遠なる力を!!〉
イクサが差し出した手をカオス・ドラゴンは力強く握り締める。
その瞬間、カオス・ドラゴンの姿は光に包まれ1枚のカードとなる。
「このカードは……」
「どうしましたか? イクサくんのターンですよ」
「えっ?! ……あ、はい」
気がつけば、辺りの様子も元に戻っている。イクサは再びカードを見つめる。
「あの……俺」
イクサの戸惑うような声にカズノリは首を傾げる。
「どうしたんですか、ドローフェイズを終えて、次はチャージフェイズでしょう?」
「は、はい……」
イクサはカオス・ドラゴンから受け取ったカードを手札に加える。
聖野イクサ:手札【3】
「チャージフェイズをスキップしてセットフェイズ、手札からカオス・ディーラーのポテンシャルアビリティを発動! コストとして、デッキトップからカードをジャンクゾーンに送って効果を発動します!」
【カオス・ミクロナイト】
Tr【カオス】
デッキトップからジャンクゾーンに送ったカードはカオストライブのカオス・ミクロナイトだった。
「カオストライブのガーディアンカードがジャンクゾーンに送られたので、俺の手札のカードは全てSFが1つ下がる。さらに!」
イクサは手札のカード1枚をカズノリに公開する。
「手札からポテンシャルアビリティを発動!」
【邪偽装龍 カオス・カイザー・ウロヴォロス】
【ポテンシャルアビリティ】
【起】(COST:手札のこのカードを相手に公開する)
┗あなたは自分のサイドデッキからこのカードと同じSFを持つクロスガーディアンを1枚選んでジャンクゾーンに送り、そのサイドデッキをシャッフルする。このターンのエンドフェイズまで、手札のこのカードはこの効果でジャンクゾーンに送ったカードの名称を得る。
イクサが公開したカードを見て、カズノリは目を見開く。
「な、なんですかそのカードはっ?!」
「……これが、俺の選択なんです。カオス・カイザー・ウロヴォロスの本来のSFは7ですが、今はカオス・ディーラーの効果で1つ下がって6なので、俺はサイドデッキからSF【6】のクロスガーディアンである【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】をジャンクゾーンに送って、カオス・カイザー・ウロヴォロスはカオス・ナイト・ブレイヴの名前を得る。そして手札からアシストガーディアン【カオス・アームド・ブレイヴ】を召喚!!」
【カオス・アームド・ブレイヴ】
SF【0】
GT【アームド/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【100】
聖野イクサ:手札【2】
「アームドアビリティ発動!」
【カオス・アームド・ブレイヴ】
【アームドアビリティ】
【起】(COST:このカードをアンダーカードとしてアタックガーディアンの下に置く)
┗あなたのアタックゾーンに【カオストライブ】のカードが存在する場合に発動できる。そのカードを素体とし、手札から【ブレイヴ】と名の付くクロスガーディアンをフォースを消費せずに召喚する。
「カオス・ドラゴンを素体としカオス・アームド・ブレイヴの効果で、カオス・ナイト・ブレイヴの名前を得たカオス・カイザー・ウロヴォロスを装着転成!!」
イクサはカオス・カイザー・ウロヴォロスのカードを場に出す。
「その名、その力、その姿に偽りあれど、その魂は永遠にして不滅……故に偽り無し! 【邪偽装龍 カオス・カイザー・ウロヴォロス】!!!」
【邪偽装龍 カオス・カイザー・ウロヴォロス】
SF【7】
GT【クロス/アタック】
Tr【カオス】
DG【2000】
LP【8500→6500】
【サモンコンディション】
┗このカードはフォースを消費して手札から召喚できない。【カオス・ナイト】か【カオス・ドラゴン】と名の付くカードを素体とし、アームドガーディアンのアームドアビリティの効果でのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。素体となったカードはこのカードのアンダーカードとなる。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードがあなたのアタックゾーンに存在する限り、あなたは自分のターンのエンドフェイズ時に、あなたのフォースを全て裏状態にしなければならない。
【永】
┗このカードがアタックゾーンに存在し、あなたのアタックガーディアンのアンダーカードが6枚以上である場合、互いのダイスステップで出たサイコロの目は6になる。
【永】
┗このカードはアタックゾーンに存在している限り、素体となったカードが【カオス・ドラゴン】と名の付くカードである場合は【守護龍 カオス・ドラゴン】としても扱い、素体となったカードが【カオス・ナイト】と名の付くカードである場合は【カオス・ナイト】としても扱う。
聖野イクサ:手札【1】
「こ、これは一体……」
カズノリは開いた口が塞がらない。このガーディアンは一体何なのか。こんなガーディアンが果たして存在していいのか。
本来クロスガーディアンには素体となるガーディアンとアームドガーディアンがそれぞれ1種類ずつ指定されている。
それなのにカオス・カイザー・ウロヴォロスの素体には【カオス・ナイト】か【カオス・ドラゴン】のいずれか1枚が指定され、アームドガーディアンの指定が無い。
これは本当にクロスガーディアンなのかという疑問が浮かび上がる。
「トライブアビリティ発動! 魂の継承!!」
【邪偽装龍 カオス・カイザー・ウロヴォロス】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:全てのプレイヤーは自分の山札の一番上のカードを公開して山札の一番下に置く)
┗この効果のコストとして公開したカードのSFの数値だけ、そのプレイヤーは自分の山札からカードをジャンクゾーンに送る。この効果は1ターンに3回までしか発動できず、またこの効果を発動したターンにあなたはこの効果以外の起動効果を発動できない。(ガーディアンカード以外のカードはSF【0】のカードとして扱う)
「これにより、互いのデッキトップのカードを公開してデッキボトムに置きます」
「公開したカードのSFの数値だけデッキからカードをジャンクゾーンに送る……なるほど、これでデッキキルを狙っているんですね」
「はい。ガーディアンカード以外のカードをジャンクゾーンに送ったのが仇になりましたね」
「確かに……そうですね」
カズノリは手札のカードを見る。
(参りましたね、これではこのカードの効果も意味が無い)
ここは自分のデッキを信じるしかない。3回の効果発動で公開したデッキトップのカードによってはデッキキルを免れることも可能。
そうなれば、イクサに残されるのはバトルフェイズ中のアタックアビリティであり、その効果に対してパーフェクト・バリアーを使えばこのターンを凌ぐことができるのだ。
現在、カズノリの山札の枚数は16枚である。カズノリのデッキのカードを考えると、3回の効果で16枚に到達するためにはSF【5】、SF【5】、SF【6】の組み合わせしかない。
「互いのデッキトップを公開!」
「……いいでしょう」
聖野イクサ:【カオス・インパルス】
:SF【5】
前田カズノリ:【アンティーク・ジャイアント】
:SF【5】
「っ!!」
公開したカードにカズノリは顔を歪める。
「よって、公開したカードをデッキボトムに置いて互いにデッキからカードを5枚、ジャンクゾーンに送ります」
カズノリの山札の枚数は残り11枚。
イクサは手を強く握り締める。
(まだだ、まだ……あと2回ある…)
「カオス・カイザー・ウロヴォロスのトライブアビリティを再度発動!」
再びイクサとカズノリはデッキトップのカードを公開する。
聖野イクサ:【カオス・ロアー】
:SF【2】
前田カズノリ:【エンシェント・スナイプシーカー】
:SF【6】
公開したカードをデッキボトムに置き、イクサは2枚、カズノリは6枚、それぞれデッキからカードをジャンクゾーンに送った。
カズノリの山札はいよいよ残り5枚である。
「……どうしてですか」
カズノリはポツリと呟く。
「キミはまだ子供なんです、覚悟なんて、する必要性が無い。一体、誰に唆されたんですか」
「……俺にカオストライブを使うことへの覚悟を促したのは、ナミのお爺さんです」
「そう、ですか……タカミネさん、なのですか」
「ナミのお爺さんを知っているんですか?」
「ええ……ちょっとした知り合いですよ。でも、そうですか……」
カズノリは俯いたまま、イクサに言う。
「どうぞ、イクサくん。カオス・カイザー・ウロヴォロスの3回目の起動効果を発動して下さい」
「は、はい……カオス・カイザー・ウロヴォロスの効果発動!」
互いにデッキトップのカードを公開する。
聖野イクサ:【カオス・キャノン】
:SF【1】
前田カズノリ:【古代兵器 アステカハンズ】
:SF【3】
「っ……」
イクサは苦い表情を浮かべる。一方でカズノリは公開したカードをデッキボトムに置いてデッキからカードを3枚ジャンクゾーンに送る。
カズノリの山札の残り枚数は2枚。デッキキルは失敗である。
しかしイクサは悲観することなく自身のサイコロを握る。
「まだ、まだダイスステップがあります!」
イクサの瞳には決して諦めの感情は無い。
そのことに、カズノリは思わず呟く。
「――どうして……」
「っ?!」
カズノリの唸るような声に、イクサは思わず後ずさる。
「どうしてなんですか……どうして、どうして……」
「……」
沈黙するイクサに対し、カズノリは自分の手札のカード1枚を突きつける。
「その様子ならもう分かっているかもしれませんが、僕の手札はキミの攻撃を完全に防ぐカードです。……キミは僕には勝てない」
「……それでも、俺は足掻き続けます」
「だから、どうして!!」
イクサはフッと笑う。
「だって俺、彼等のこと大好きですから。彼等は俺が初めて手にした、俺だけのトライブなんです」
そう笑顔で断言するイクサに、カズノリは「え…」と漏らして目を見開く。
予想外の答えに、思わず尋ねる。
「そんな……カオストライブのせいで、皆に危害が加わるかもしれないんですよ? それでも――」
「その時は、俺が絶対に皆を守ってみせます」
「っ?!」
イクサの力強い言葉に、今度こそ言葉を失う。
若き日に、イクサの母親であるサオリから言われた言葉が脳裏に過る。
――絶対に、私が守ってみせます――
思わず笑いが込み上げてくる。
「……全く、キミ達親子は」
「え?」
首を傾げるイクサに、カズノリは「いや」と言う。
「さあ、来て下さい。イクサくんのダイスステップでしょう?」
「はい!!」
イクサのダイスステップ時、サイコロを振る。
サイコロの目は【4】である。
「カオス・カイザー・ウロヴォロスの永続効果により、アンダーカードが6枚以上なのでサイコロの目は【6】になります!」
【邪偽装龍 カオス・カイザー・ウロヴォロス】
【1】……相手のアタックガーディアンに400ダメージを与える。
【3】……あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚ジャンクゾーンに送る。
【3】……あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚ジャンクゾーンに送る。
【3】……あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚ジャンクゾーンに送る。
【4】……相手の山札からカードを5枚、ジャンクゾーンに送る。
【5】……あなたの山札からカードを2枚、このカードのアンダーカードにする。
【6】……相手のアタックガーディアンにXのダメージを与える(Xの値は自分のジャンクゾーンに存在するカオストライブのカード×500)
「フォースを消費してバトルフェイズ!」
聖野イクサ:フォース【▼▽▽▽▽▽▽】
「俺のジャンクゾーンにはカオストライブのカードが12枚あるので、6000ダメージを与えます!」
「……」
カズノリは自分の手札のカードを見つめる。
カウンターカード【パーフェクト・バリアー】。このカードの効果ならば、6000ダメージを防ぐことができる。
だが、
「……ふふ」
カズノリは、自分に向かってくるイクサの姿にサオリの姿を重ねる。
(そうでしたね。彼は、キミの息子でしたもんね……僕の言葉ぐらいじゃ、きっと止まらない)
そのままパーフェクト・バリアーのカードをテーブルに置いた。
「……僕の負けです」
【守護龍 エンシェント・ドラゴン】
DG【6900→12900】
LP【100→0】
カードバトルは、イクサの勝利に終わった。
◇◇◇◇◇◇
「はあ…はあ…っ!!」
カズノリとのカードバトルの後、イクサは走っていた。
――カイトくんはカイリちゃんの付き添いで近くの病院に向かいました。
カズノリからそのことを聞き、イクサは病院にへと向かう。
「カイト!!」
ナースからカイリの病室を聞き、飛び込むようにして入ると、
「……あ、イクサ」
ベッドで眠り続けているカイリの手を握っているカイトがいた。
「お前、どうしてここに……」
「前田店長に聞いたんだよ……それで、カイリちゃんの容態は?」
「……」
カイトは首を横に振る。
「どこにも異常は無いはずなのに、なぜか目を覚まさないんだ」
「そんな……」
「……一体、カイリはどうしちまったんだろうな」
「っ……」
カイトにかけるべき言葉が見つからない。
沈黙が支配する病室に響いたのは、意外な人物の声だった。
「おやおや、これはこれは……なんか予想外な御人に会ってもうたなぁ」
「っ?!」
病室の入口から顔を覗かすようにイクサ達に声をかけたのは、孤高学園の雲永ミコトだった。
そして、ミコトの声に真っ先に反応したのはカイトだった。
「雲永…ミコト……っ!!」
「ずいぶんと久しぶりやな、カイトくん。確か……一年ぶりぐらいやったっけ?」
「……」
そう、ミコトはカイトに天才と凡人のトラウマを植え付けた張本人でもあるのだ。
カイトは思わず拳を強く握り締める。
「どうしてお前がここに……」
「いやぁ、実はこう見てもオレは病弱でなぁ、時々お医者様のお世話になってるんや。そしたら、懐かしい声が聞こえてきたんでついな」
「……」
「それにしても、その子、たぶん普通の治療法じゃ治らへんで」
ミコトの言うその子とはカイリのことだろう。
カイトはミコトに詰め寄る。
「それはどういう意味だ!?」
「どういうって……そのまんまの意味やで。実を言うとその子みたいな状態になった子をオレは知っとる。そして、現状それをなんとかできるんは孤高アイズだけやと言うこともな」
「孤高…アイズ……」
イクサは思わず声に出してしまう。
ミコトは「ふふ……」と妖しく笑う。
「アイズさんは孤高グループの総帥、オレらみたいなパンピーじゃ中々会えへん御人や。事実、孤高学園に所属してるオレでさえ滅多に会えへんしな。でもまあ……全国大会本選の決勝まで勝ち上がれば会えるんとちゃうんかな。あの人、そういうイベント事には直々顔を出すからな」
ミコトは「ま、そゆことで」と言ってイクサ達に手を振りながら背を向ける。
「全国大会で会うのを楽しみにしてるで、東栄学園さん?」
そのままミコトは病室を去り、再び沈黙が訪れる。
「ねえ、カイト」
先に声をかけたのはイクサだった。
「全国大会、絶対に勝ち抜こう」
「……ああ、勿論だ」
互いに顔を見合わせ、二人は固く決意した。
◇◇◇◇◇◇◇
「ふふん……これは中々オモロイことになりそうやわ」
「聖野イクサを連行しなくて良かったの?」
病院から出てミコトが一言漏らすと、病院前で待機していたココロがミコトに話しかけてきた。
「別にええよ。それに、少し気になるやないか」
ミコトは愉快そうに病院の外からイクサ達のいる病室を見上げながら呟く。
「本物と偽物、果たしてどっちがアイズさんの計画に相応しいか、それを見定めるのも一興やと思うで?」
【作者の解説】
Q.邪偽装龍の【スーディピグラファ】って何?
A.【偽典】って意味です。
【次回予告】
ついに開催される全国大会本選。
第1回戦、それはまさかの迷宮戦!!
新たなバトルデバイス【マスターズギア】を手にしたカードマスター達は己の相棒と共に迷宮突破を目指す。
だが、迷宮には強力な罠が仕掛けられていた。
「東栄学園、東條ユキヒコ! 貴様の相手は私だ!」
ユキヒコに迫り来るトリックトライブの手練れ! 果たして東栄学園は1回戦を突破することはできるのか!!
次回、【迷宮の罠・トリックトライブ】




