BATTLE:041【サイバートライブの侵蝕】
皆様、新年明けましておめでとうございます。2016年も、よろしくお願いします。
さて、新年一発目の話は中々不穏ですがわ悪しからず。
今回の話は以前投稿していた戦宮兄妹戦の内容を書き直したものです。話の繋がりや、一部の台詞が変更している点を除けば、カードバトルの展開は以前とほぼ同じです。
――約1年前。
「なあ、カイリ」
「んー?」
お母さんにデッキが見つかってから数日が経ちました。
あの時はお兄ちゃんのおかげで難を逃れることができました。
でも、私はもうカードゲームはできないかもです。
携帯電話のGPS機能によって私の行動は両親に監視されることになったので。
お兄ちゃんが私に話しかけてきたのは、そんな時でした。
お兄ちゃんは私のデッキを持ちながら、私に尋ねてきたのです。
「このカードゲーム、そんなに面白いのか?」
「うん、面白いよ。それがどうしたの?」
「いや……お前が父さんと母さんに黙ってやってたカードゲームだろ? ……少し、興味が湧いてさ。俺も、やってみたいから、ルールを教えてくれないか?」
一瞬、お兄ちゃんの言葉に驚いて目を見開いてしまいました。
私達兄妹は、仲が悪いというわけではないのですが、性別も異なりさらに共通の話題も無いので、ここ数年あまり会話をしたことがありません。
この時、私の心に浮かび上がったのは、嬉しさでした。
「うん、いいよ! じゃあ、1つ1つ説明するからカード貸して!」
「お、おう!」
ルールの説明、カードの説明。その1つ1つに一喜一憂するお兄ちゃん。
お兄ちゃんと一緒に考えるデッキ構築も楽しかったです。
カードゲームはできなくなったけど、その分……いや、それ以上に大切なお兄ちゃんとの絆を手に入れることができたような気がしたのです。
そう、かけがえのない大切な絆。
「なあ、カイリ」
「なーに、お兄ちゃん?」
「お前のお気に入りのカードって、どれだ?」
「もちろん、この【ヴァルキリー・ディヴァイン】! このガーディアンはね、ディヴァイン・ナイトをサポートする女性騎士なんだよ!」
「へぇ。なんか、カイリに雰囲気が似てるな」
「そうかな? あ、でも、お兄ちゃんのサポートをしてる点では、似てるのかな?」
「かもな」
「そっかー。……うん、それでいいかも」
「それでいいって?」
「ううん。なんでもない。お兄ちゃんとこうやってカードゲームできて、私は幸せだなぁ、ってね」
「なんだそりゃ」
「だって、バトル・ガーディアンズって凄く楽しいカードゲームなんだもん!」
たとえ表舞台に立てなくても、お兄ちゃんと私のデッキがある限り……私がお兄ちゃんの力になる限り、私はきっと頑張れるって……そう思ってた。
でも、私は……
「キミにこのデッキをあげよう。このデッキを使えば、キミはキミの一番欲するモノを手にすることができるだろう」
私が本当に欲しかったモノは何だったのか。
それさえ見失ってしまうような深い闇が、私の中にあったのです。
◇◇◇◇◇◇◇
「どうしてお前は、ここにいるんだ?」
そう言ってしまった瞬間、カイリはそれまで掴んでいた手を放し、カイトに背を向けたまま微動だにしない。
それがより一層不気味さを増させる。
「か、カイリ……?」
カイトが恐る恐る声をかけると、「あーぁ」というカイリの声が辺りに響く。
気づけば、周りは薄暗く、人の気配が全く感じられない。その異常性に気づき、カイリの肩を掴もうとした次の瞬間。
「なんで思い出しちゃうかなぁ」
カイリはカイトに向かって振り向いた。その瞳は、人間的な感情が抜け落ちてしまったかのように冷たい。
「ねえ、お兄ちゃん。なんで忘れたままでいてくれないの?」
そう尋ねながら、一歩、カイトとの距離を詰める。
「そうすれば、皆幸せでいられたのに」
その悲しそうな声に、カイトは胸が痛くなる。
「カイリ……父さん達に、何をしたんだ……」
「少し大人しくしてもらっただけだよ」
「大人しく……?」
「そう。そして、お兄ちゃんにももう一度黙ってもらうよ」
「っ!!」
カイトは反射的にデッキを構える。自分自身、どうしてそんな行動を取ったのか理解できない。
だが、そうするべきだと本能が告げる。
カイトの行動にカイリは「くくく」と笑って、同じくデッキを構える。
「お兄ちゃんも懲りないねぇ。また私に負けたいの?」
「また……?」
カイトの記憶に、カイリとカードバトルをした覚えは無い。
カイリは「あれぇ?」と首を傾げる。
「もしかして、お兄ちゃん。完全に記憶が戻ってないの?」
「俺が、カイリと……バトルを?」
「ふーん。あーあ、失敗したなぁ。余計なこと言っちゃったよ」
「俺が、カイリと……」
次の瞬間、カイトの頭に痛みが走る。
「ぐっ…なんだ、この痛みは!」
――カイリ、もうやめろ!!
――だったら、私に勝ってみなよ!!
頭の中で、カイリが何かガーディアンを召喚する映像が流れる。
――なんだ、このガーディアンは!!
――これが私のトライブ、私のガーディアン!!
脳の処理が追い付かないぐらいに、断片的に映像が現れては消える。
「カイリ…お前、は……」
「このまま全部思い出されると面倒だなぁ。そうだ、また消しちゃえばいいんだ」
「っ?!」
カイリの言葉にカイトは慌てて距離を取る。
「カイリ……」
どうすればいい。どうすればこの場を凌げるのか。それがカイトの頭の中を駆け巡る。
そもそも、どうしてカイリがこんなことをするのか、一体カイリの身に何が起きたのか。
そして
「そのデッキは、何なんだ?」
カイリの手に収まっている禍々しいオーラを放つデッキを指差す。カイリは両親にデッキが見つかって以降、カードバトルはできなくなってしまったはずだ。それなのに、なぜカイリはデッキを所持しているのか。
カイリは不気味に微笑む。
「貰ったんだよ。あの日……お兄ちゃん達が孤高学園に負けた予選大会の日に、“あの人”から」
「予選大会……」
「さあ、お喋りはおしまいだよ」
禍々しいオーラがカイリを覆う。
「また全部忘れちゃいな」
「ま、待て!!」
カイトは慌ててカイリを制止する。カイリは不快げに顔を歪める。
「何なの?」
「カイリ……俺とバトルしろ」
「私とお兄ちゃんが、バトル?」
「ああ」
カイリがおかしくなってしまった原因、それがあの奇妙なデッキであることは一目瞭然である。
「俺が勝ったら、そのデッキをすぐに捨てろ! そのデッキは、持ってちゃいけないものだ!!」
「だから何? それに、お兄ちゃんとバトルなんてする必要がない。だって、お兄ちゃんは一度私に負けてるんだもん!」
「そんなの知るか! たった一度のバトルで全てが決まるほど、バトル・ガーディアンズは単純じゃない! 俺を屈服させたいなら、もう一度俺に勝ってみやがれ!!」
「……分かったよ」
デッキが纏うオーラが、さらに増す。
「また勝って、今度は二度と欠片すら思い出せないくらいに、記憶を封印してあげるから!」
突如、地面からバトルテーブルが出現する。
「これは……」
「ほら、お兄ちゃん。さっさと準備しなよ!」
「あ、ああ」
カイトは言われるがまま、カードバトルのための準備を整える。
最初のターンに召喚するためのガーディアンカードを1枚選択して手元にキープし、デッキをシャッフルしてカードを4枚ドローして初期手札を見る。いらないカードをデッキに戻して再度シャッフル。戻した枚数だけドローしてマリガンを終える。
カードバトルの体制に入った二人は同時に叫ぶ。
「「ダイス・セット!!」」
「先攻は俺がもらう! メインデッキからカードをドローし、フォースチャージ! チャージを選択、追加チャージ!!」
チャージゾーンにカードが2枚置かれる。
戦宮カイト:手札【4】
:フォース【▽▽】
「俺はフォースを1枚消費し、手札からアタックガーディアン【スパーク・ディヴァイン】を召喚!!」
【スパーク・ディヴァイン】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【1000】
戦宮カイト:手札【3】
:フォース【▼▽】
スパーク・ディヴァインが実体化し、カイトの前に出現する。
「スパーク・ディヴァインが、実体化した……」
この状況がどれだけ異常か理解しつつも、今は目の前のバトルに集中する。
「俺は、スパーク・ディヴァインのポテンシャルアビリティを発動する!」
【スパーク・ディヴァイン】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(セットフェイズ開始時)
┗この効果は1ターンに一度しか発動できない。あなたは自分の山札からカードを2枚ドローし、手札からカードを1枚選択してジャンクゾーンに送る。
「よって、デッキからカードを2枚ドローして手札から1枚捨てる」
戦宮カイト:手札【4】
「さらに手札からスペルカード【手札交換技術】発動!」
戦宮カイト:手札【3】
【手札交換技術】
SP【1】
【ノーマルスペル】
【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札からカードを3枚ドローし、手札からカードを3枚選んでジャンクゾーンに送る。
「この効果により、俺はメインデッキからカードを3枚ドローし、手札から3枚選んで捨てる。さらにセットフェイズ時、ライフカウンターを2つ消費してメインデッキからカードを2枚ドローする!」
戦宮カイト:ライフカウンター【4→2】
ライフカウンターが2つ消費され、カイトはメインデッキからカードを2枚ドローした。
戦宮カイト:手札【5】
「俺は、これでターンエンドだ」
「私のターン……メインドロー。そして、手札を1枚フォースチャージして、追加ドローする!」
ドローフェイズ時にメインデッキからカードをドローし、チャージフェイズでフォースチャージした後、ドローを選択してメインデッキからカードを1枚ドローした。
戦宮カイリ:手札【6】
:フォース【▽】
「手札からポテンシャルアビリティ発動!」
【CA ライト・ハンド】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗相手のジャンクゾーンにカードが2枚以上存在する場合、手札のこのカードはSF【0】となる。
「よって私は、手札からアタックガーディアン【CA ライト・ハンド】をフォースを消費せずに召喚!」
【CA ライト・ハンド】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【サイバー】
DG【0】
LP【1000】
戦宮カイリ:手札【5】
ロボットの右腕のようなガーディアンが出現した。
その奇怪すぎる容姿に、カイトは目を剥く。
「な、なんだ……このガーディアン。それに、サイバートライブだと?! ……うぐっ!!」
すると、再びカイトの頭に痛みが走る。
――サイバートライブだと? なんだ、このガーディアンは?!
(俺は、知っている? ……そうだ、俺は、このトライブに負けたのか!!)
「フフフ。そういえば今のお兄ちゃんはサイバートライブを知らないよね。じゃあ、見せてあげるよ! サイバートライブの力を!!」
カイリの身体を取り巻く黒い闇のオーラ。
それが一際強くなる。
「トライブアビリティ発動! 魂の略奪!!」
【CA ライト・ハンド】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手のジャンクゾーンからガーディアンカードを1枚まで選んでこのカードのアンダーカードにする)
┗この効果は1ターンに一度発動できる。この効果を発動したターン、このカードはアンダーカードのアタックアビリティを全て得る。このターンのエンドフェイズ時に、このカードの下に置かれた全てのアンダーカードを元々の持ち主の山札に戻し、その山札をシャッフルする。
「お兄ちゃんのジャンクゾーンに眠るガーディアンカードを吸収し、ライト・ハンドはそのアタックアビリティを得る!!」
「なにっ?!」
ライト・ハンドは手を伸ばし、カイトのジャンクゾーンからガーディアンカードを1枚選んで手に取り、カードをギュッと握り締める。
次の瞬間、ライト・ハンドの姿が変わる。
その姿は……
「う、嘘だろ……?」
体色が銀色という点を除けば、その姿はまさしく、ディヴァインの戦士そのものであった。ライト・ハンドは吸収したカードの姿に変容したのだ。
「これがサイバートライブの能力。相手の能力を吸収し、それを自身に再現するんだよ!」
「そんな型破りなトライブが……いや、俺は1つだけ知ってるな」
イクサの持つカオストライブ。仲間の能力を受け継ぐ魂の継承。
別のカードの能力を得るという点では、似ている。
だが、その働きは全く異なるようにカイトには感じられた。
「フフフ……さらに私は、アシストガーディアン【サイバー・ワーム】を召喚するよ!」
【サイバー・ワーム】
SF【0】
Tr【サイバー】
DG【0】
LP【200】
戦宮カイリ:手札【4】
「さあ、ダイスステップに入るよ」
カイリは自身のサイコロを手に持ち、そのまま振った。
サイコロの目は、3に確定した。
【CA ライト・ハンド】
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンに150ダメージを与える。この攻撃が成功した時、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
【2】【4】【6】……相手の山札からカードを3枚ジャンクゾーンに送る。
「バトルフェイズ。よって、スパーク・ディヴァインに150ダメージを与えるよ!」
「くっ」
戦宮カイリ:フォース【▼】
【スパーク・ディヴァイン】
DG【0→150】
LP【1000→850】
「カウンター効果が発動されなかったから、1ドロー。そしてエンドフェイズ時、ライト・ハンドが吸収したお兄ちゃんのカードは、お兄ちゃんのデッキに戻るよ」
戦宮カイリ:手札【5】
ライト・ハンドの体内からカードが排出され、カイトのデッキ帰還した。
「私はこれでターンエンド」
「俺のターン、メインドロー! フォースチャージ、さらにチャージする!!」
戦宮カイト:手札【4】
:フォース【▽▽▽▽】
カイトのチャージゾーンに置かれたフォースの枚数は、4枚。
「俺はフォースを2枚消費して、手札からアタックガーディアン【ディヴァイン・グローブ】を召喚!」
【ディヴァイン・グローブ】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【150】
LP【2000→1850】
戦宮カイト:手札【3】
:フォース【▽▽▼▼】
「さらに、フォースを1枚消費して、アシストガーディアン【閃光騎士 ライジング】を召喚!!」
【閃光騎士 ライジング】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【300】
戦宮カイト:手札【2】
:フォース【▽▼▼▼】
「ライジングのアシストアビリティを発動させる!」
【閃光騎士 ライジング】
【アシストアビリティ】
【自】(セットフェイズ開始時)
┗この効果は1ターンに一度しか発動できない。あなたは自分のジャンクゾーンに存在するカードを2枚まで選び、自分の手札に加える。そして、あなたのアタックガーディアンをXリペアする。(Xは、あなたの手札枚数×100)
「よって、ジャンクゾーンのカードを2枚手札に加える。俺の手札枚数は4枚! よって、グローブのLPは400回復する!」
戦宮カイト:手札【4】
【ディヴァイン・グローブ】
DG【150→-250】
LP【1850→2250】
「ダイスステップだ!」
カイトはサイコロを手に取り、振った。
サイコロの目は、4。
【ディヴァイン・グローブ】
【1】【3】【5】……相手の手札を1枚まで選んでジャンクゾーンに送る。そのカードがガーディアンカードだった場合、あなたは自分の山札からカードをX枚ドローする。(Xの値は、この効果でジャンクゾーンに送られたカードのSF)
【2】【4】【6】……相手のアタックガーディアンに100ダメージを与える。このバトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかった場合、あなたは自分の山札からカードを2枚ドローする。
「フォースを1枚消費してバトルフェイズ! グローブのアタックアビリティが発動するぜ! 100ダメージを与える!」
「ディヴァイン・グローブは攻撃成功時に、デッキからカードを2枚ドローする。さらに、トライブアビリティも攻撃成功時に発動する厄介なカード……なら!」
カイリは、自身のアシストガーディアンであるサイバー・ワームに手をかざす。
「サイバー・ワームのカウンターアビリティを発動するよ!」
【サイバー・ワーム】
【カウンターアビリティ】
【自】(カウンターステップ時)
┗この効果は、相手がダメージ効果を発動した時に発動できる。あなたは自分の手札を2枚選び、選んだカード2枚とこのカードをジャンクゾーンに送る。そうしたら、このターンのバトルフェイズを強制的に終了させ、バトルフェイズ中に発生したダメージ効果を全て無効にする。ただし、相手のアタックガーディアンは【弱体化】しない。
戦宮カイリ:手札【3】
「手札2枚とこのカードをジャンクゾーンに送り、ダメージ効果を全て無効にし、バトルフェイズを強制的に終了させる!」
「なにっ?!」
「攻撃は失敗。よって、ドローはできないよ!」
「くっ……」
「それと、ジャンクゾーンに送られたサイバー・ワームのアシストアビリティを発動させる!」
【サイバー・ワーム】
【アシストアビリティ】
【自】(このカードがアシストゾーンからジャンクゾーンに送られた時)
┗このカードをあなたの山札の一番下に置く。そうしたら、相手は自分のデッキからカードを5種類選択し、選択したカードと同名のカードを全てジャンクゾーンに送る。この効果で相手がジャンクゾーンに送ったカード枚数が15枚未満の場合、効果処理を適切に行ったかを確認するために、相手は自分の山札の内容を公開しなければならない。【サイバー・ワーム】のアシストアビリティは、1ゲーム中に一度しか発動できない。
「さあ、サイバー・ワーム! お兄ちゃんのデッキを喰い荒らしな!!」
「ッ?!」
電脳蟲がカイトのメインデッキの中に入り、デッキのカードを喰らう。
メインデッキから、カード達の悲痛な叫び声が聞こえる。
「くっ……」
カイトはカードを5種類選択し、それぞれの同名カード計15枚をジャンクゾーンに送った。
これによって、カイトのデッキ枚数は残り32枚となってしまった。
「カイリ……お前、どうして……っ!!」
カイトは、悲しさを帯びた声でカイリに問う。
「これは、このデッキは、俺達で作り上げた絆のデッキじゃないか! なのに、どうして躊躇なくカードを破壊できるんだ!!」
「絆の……デッキ? フフ、フハハハ!!」
カイトの言葉に対し、カイリは腹を抱えて笑い、やがて忌々しそうに言う。
「それはお兄ちゃんのデッキでしょ? 私は関係ない。私のデッキは、今使ってるこのサイバーデッキのみなんだから!!」
「違う! 相手のカードを奪うそんなトライブは、お前らしくない!!」
「私らしいって、何よ……。私がどんな思いを抱いてたか、お兄ちゃんは知らない癖に……勝手なこと言わないでよ!!」
「えっ……」
「私が作ったディヴァインデッキが、どんどんお兄ちゃんの戦い方に馴染んでいく度に、どんな思いだったか理解できる? できないよね?! そりゃあ、そうだよ……そのデッキはお兄ちゃんが扱いやすいように本来のデッキコンセプトを変えちゃってるんだから……。そのデッキは、もう私が作りたかったディヴァインデッキなんかじゃない! 私のデッキなんかじゃない!!」
「……っ!!」
カイリの歪んだ表情。そして、瞳から流れる一筋の涙。
カイトは、自分の行動がカイリを傷つけていたことを知った。
「そ、そんな……俺、そんなつもりじゃ……」
「いいよ、別に。私は、この力で失ったモノ全部を取り戻すんだから!!」
「失ったモノ……?」
「そう。お兄ちゃんは良いよね、自由でさ。バトル・ガーディアンズもできて、イクサさん達みたいなお友達もできて、お父さんやお母さんに許可を貰わなくても好きな場所に行けて! なのに、私は、あんな塾に入れられて! いつもいつも思ってた、なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだって!!」
「か、カイリ……」
カイリはカイトを指差す。
「さあ、まだお兄ちゃんのターンだよ! どうするの? ターンエンド?」
「俺は……ターンエンドだ」
「なら私のターン、ドロー! フォースチャージし、追加チャージ!!」
戦宮カイリ:手札【2】
:フォース【▽▽▽】
チャージゾーンのカードは全部で3枚。
その内の2枚を裏返す。
「フォースを2枚消費して、手札からアタックガーディアン【CA ライト・レッグ】召喚!!」
【CA ライト・レッグ】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【サイバー】
DG【0】
LP【2000】
戦宮カイリ:手札【1】
:フォース【▽▼▼】
今度は、ロボットの右足のような容姿のガーディアンだ。
「セットフェイズ時、ライフカウンターを2つ消費し、メインデッキからカードを2枚ドローするよ!」
戦宮カイリ:ライフカウンター【4→2】
:手札【3】
ドローした2枚を手札に加え、ライト・レッグのカードに手をかざす。
「ライト・レッグのポテンシャルアビリティを発動!!」
【CA ライト・レッグ】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(セットフェイズ開始時)
┗1ターンに一度、あなたは自分の手札とジャンクゾーンのカードを1枚ずつ選んで、このカードの下にマテリアルカードとして置くことができる。この効果でマテリアルカードとして置かれたカードはカード効果の対象にはならない。
「よって、私は手札の【CA レフト・ハンド】と、ジャンクゾーンの【CA ライト・ハンド】をライト・レッグにマテリアルセットする!」
戦宮カイリ:手札【2】
2枚のカードがライト・レッグの下にマテリアルカードとして置かれた。
「さらに、私はドメインカード【サイバー・ラボラトリ】を発動!」
戦宮カイリ:手札【1】
【サイバー・ラボラトリ】
【永】
┗1ターンに一度、相手のガーディアンのLPが変動した時、あなたは自分の山札から【サイバートライブ】のガーディアンカードを1枚まで手札に加えることができる。その後、その山札をシャッフルする。
「ライト・レッグのトライブアビリティを発動! 魂の略奪!!」
【CA ライト・レッグ】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:相手のジャンクゾーンに存在するカードを1枚選んでこのカードのアンダーカードにする)
┗この効果は1ターンに一度発動できる。この効果を発動したターン、このカードはアンダーカードのアタックアビリティを得る。このターンのエンドフェイズ時に、このカードの下に置かれた全てのアンダーカードを元々の持ち主の山札に戻し、その山札をシャッフルする。
「よって、お兄ちゃんのジャンクゾーンからカードを1枚奪い、その攻撃能力を吸収!」
ライト・レッグは、見る見る内にその姿をディヴァインの戦士に変えていく。
「くっ……」
「ダイスステップに入るよ!」
カイリが振ったサイコロの目は、3。
【CA ライト・レッグ】
【1】【2】【5】……相手の手札を3枚まで選んで、ジャンクゾーンに送る。
【3】【4】【6】……相手のアタックガーディアンに1000ダメージを与える。
戦宮カイリ:フォース【▼▼▼】
「バトルフェイズ、アタックアビリティ発動! グローブに1000ダメージを与える!!」
「っ!!」
【ディヴァイン・グローブ】
DG【-250→750】
LP【2250→1250】
「ディヴァイン・グローブのLPが変動したことにより、サイバー・ラボラトリの永続効果によって、私はメインデッキからサイバートライブのガーディアンカードを1枚手札に加える! エンドフェイズ時に、吸収したカードをお兄ちゃんのデッキに戻してターンエンドだよ!」
戦宮カイリ:手札【2】
「俺のターン、メインドローし、フォースチャージ。さらにドローする!」
戦宮カイト:手札【5】
:フォース【▽▽▽▽▽】
チャージゾーンのフォースと手札枚数は共に5枚。
「俺は、ライジングのアシストアビリティを発動する!」
ジャンクゾーンのカードを2枚選択して、手札に加える。
戦宮カイト:手札【7】
「俺はこの2枚のカードを選択して手札に加える。俺の手札は7枚なので、グローブのLPは700回復する!」
【ディヴァイン・グローブ】
DG【550→-150】
LP【1450→2150】
「そして、フォースを4枚消費し、手札からアタックガーディアン【ディヴァイン・ワルキューレ】を召喚!!」
【ディヴァイン・ワルキューレ】
SF【4】
Tr【ディヴァイン】
DG【-350】
LP【4000→4350】
戦宮カイト:手札【6】
:フォース【▽▼▼▼▼】
「ワルキューレのポテンシャルアビリティを発動する!」
【ディヴァイン・ワルキューレ】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の手札からカードを1枚選んでジャンクゾーンに送り、自分の山札から【ヴァルキリー・ディヴァイン】を1枚まで選んで自分の手札に加える。その後、その山札をシャッフルする。
「俺は手札のカードを1枚捨てて、メインデッキからヴァルキリー・ディヴァインを1枚手札に加える!」
加えられたヴァルキリー・ディヴァインを見て、カイトは俯く。
「なあ、カイリ……」
「ん?」
俯きながら、カイリに問う。
「確かに、このデッキはもうお前のデッキとは言えないかもしれない。……でもさ、俺達2人で作り上げたことには、変わりないよな?」
「なにが、言いたいの?」
カイリの反応に対して、カイトは手札のヴァルキリー・ディヴァインをカイリに見せる。
まるで、このカードが答えだとでも言いたいかのように。
「このカード……ヴァルキリー・ディヴァインは、お前のお気に入りのカードだ。だから俺は、このカードだけは必ずデッキに入れるようにしていた」
「だから……なんだって言うのよ…」
「……あの時、お前は俺とカードゲームができて幸せだって言ったよな?」
「……それが?」
「今、お前は幸せか? バトル・ガーディアンズができて……認めたくはないが、自分のデッキでカードバトルできて、今のお前は、本当に幸せか?」
「幸せ、だよ」
カイリはクックッと笑う。
「あれほど憎かったお兄ちゃんを潰せるこのバトル、とても幸せだよ!!」
「そっか……なら、良かった」
「……あ?」
カイトはフッと笑い、優しい表情を浮かべる。
その表情に、カイリの中で苛立ちが生まれる。なぜお前が笑うんだ。なぜ悲しそうにしないんだ。その言葉で心が満ちる。
「なんなの、その顔。マジきもいんだけど」
「ひっでえな。俺ほど、妹想いな兄は中々いないと思うぜ? 妹が幸せなら、このバトル……負けてもいいとさえ、思ってんだから」
「ハァ? 負けたらお兄ちゃん、また私に記憶を奪われちゃうんだよ? それでもいいの?」
「ああ。それでホントにお前が自由になるってんなら、全部忘れて、お前が望む“俺”を演じてやるよ」
「あ…あはは、なに? 頭バカになっちゃったわけ?」
「俺の頭は、元からバカだぜ。バカだから、俺には逃げるしか解決策を見つけられなかった。お前を父さん達の生け贄として、差し出すことで、俺は全てから逃げたんだ」
「くっ」
カイリは憎しみを籠めた瞳でカイトを睨む。
「そうだよ……全部、全部お兄ちゃんのせいだよ! 私が行きたくもない塾に通わされて、進みたい未来を潰されて、窮屈な箱庭に押し込まれたのも……何もかも!! お兄ちゃんが私を見捨てたんだ!!」
「だから、俺はもう逃げない!! お前と、真っ正面からぶつかってやる!!」
「っ?!」
カイトは拳を強く握り締める。堅い意思を籠めて、カイリと向き合う。
カイリの変貌は、自分のせいだ。自分が向けられていた両親からの期待を全て妹に押し付けた。その癖、両親の期待に応える妹に煩わしさすら感じていた。
自分の中に存在する醜く歪んだ本性が、カイリを歪めてしまったのだ。
だがカードバトルを通じて、カイトはたくさんの人々と出会い、その度に知ったことがある。
カードゲームには、人を変える力がある。
どんなに仲が悪くても、カードゲームをすれば笑顔になれる。
強さを認めて、認められて、そうすることで、人はきっと変わることができる。分かり合えることができる。
自分の嫉妬心から一度はギクシャクしてしまったイクサと和解できたように。
また、かつては互いに無関心だった兄妹が、今はこうして互いの感情をぶつけ合えるように。たとえそれが酷く歪であろうとも。
バトル・ガーディアンズというカードゲームには、それだけの力がある。
だから、
「バトル・ガーディアンズは楽しいカードゲーム……なんだもんな!」
カイトは信じている。
このカードバトルによってカイリとの絆を取り戻すことを。きっとこのバトルの先に、幸せな結末があることを。
長くなるので、一旦区切ります。
【次回予告】
己の想いをぶつけ合う戦宮兄妹。そのバトルの果てに、2人が辿る意外な結末とは。
ついに決着。
そして。
「アイズさん、一体何しに来たんですか?」
「蒔いた種がどのように育ったのか、少し見てみたくなってね」
カイトがカイリとカードバトルをする中、カズノリの前に姿を現す孤高アイズ。
アイズはイクサに対して“ある提案”を持ちかける。
「キミを我が校にスカウトしたい……どうかな、“イクサ”?」
「っ!!」
アイズとの出会いにより、イクサの中で何かが変わる。
次回、【兄妹の慟哭】




