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TCG バトル・ガーディアンズ  作者: あんころもちDX
第2章・全国大会編
53/66

BATTLE:040【合宿最終日 VSフローラス・プラント】

 今年もいよいよ終わりですね。皆さん、良いお年を!

 来年もよろしくお願いします!

「……」


 全員が寝静まった夜、ユキユメ旅館にて。

 カイリは外に出て夜空を見上げていた。


「私はやっと、自由になれた。そう、自由に……」



「……なるほど、この嫌な感じはキミだったんだね」


 物影からセカイが現れ、カイリの背後に立つ。カイリはそれを意に返さずに夜空を見上げたままだ。

 セカイはふふと笑って「ねえ」と声をかける。


「孤高アイズから何かされたの?」


「……別に」


「じゃあそのデッキは、奴からの贈り物?」


 カイリの腰に装着されているデッキケースを指差す。

 カイリはデッキケースを隠すように左手で覆う。


「なに、私とバトルでもしたいの?」


 デッキケースからまるで瘴気のような紫色のオーラが漏れる。その光景は万物を呑み込むブラックホールを彷彿とさせる。

 セカイの目が藍色の光を放つ。


「ウチは弱いものイジメをするほど、性格悪くないよ」


「……」


「ふふ、そう身構えないでよ。キミの相手をするのはきっとウチじゃないから。ウチはね、別にバトルをしにきたわけじゃない。少し話をしたいと思ってね」


「話?」


「そう、教えてくれないかな。人外の力の一端を手にした気分がどういうものなのか。優越感なのか、絶望感なのか、それとも……ただの虚無感か」


「敢えて言うなら、達成感かな」


「達成感?」


「私はずっと自由になりたかった。そして、それをやっと手に入れられた」


「……そう、なるほどね」


 セカイは手を振って背を向けて歩き出した。


「貴重な話をありがと。それじゃあね、戦宮カイリちゃん。お兄さんによろしく言っといてよ」


「……」


 ゆっくりと、ゆっくりと歩いていく。背中にカイリの視線を感じても構うことなく、一度も振り返ることなく、セカイはただゆっくりとした足取りでその場を去る。



「結局、人間(ヒト)っていうイキモノは、どうしたって隣の芝が青く見えてしまう種族(トライブ)なんだねぇ」



◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、東栄学園の面々は砂浜での肉体トレーニングを行っていた。

 全国大会本選は“サバイバルスタイル”という種目があり、迷路状のアスレチックフィールドを駆け巡りって制限時間内にチームメンバー全員でゴールしなければならない。

 これに勝ち抜くためにはまず必要なのが体力であるため、彼らは反復横飛びから長距離走などを繰り返していた。特に砂浜では足への負担が大きくなるため、足腰を鍛えるのに最適である。

 それが終わると今度は海に入って泳ぎ、肺活量の強化を行う。


 その様子をカイリはボーッと眺め、全員のためのスポーツドリンクを作っているカズノリに話しかける。


「ねえ、前田店長。なんでカードゲーマーなのに体鍛えなきゃいけないの?」


「んー、それはね、バトル・ガーディアンズは日本に普及する前――つまり海外では元々軍人さん向けのカードゲームだったからだよ。今はバトル・ガーディアンズを販売するのを専門的にシフトしたけど、孤高グループは元々軍事企業。バトル・ガーディアンズの売り文句も最初は“戦いの中の束の間の癒し”でね。ただ、やっぱりずっと頭を使ってると軍人さん達も飽きちゃうらしくてね、彼らなりにバトル・ガーディアンズをよりスリリングに楽しもうとしたのが“サバイバルスタイル”、体を使いつつ頭も使う特別ルールだ」


「へえー……」


「これがまた軍人さん達の間で大好評でね、正式に公式ルールとして協会側も認定しているんだ」


「ふーん…」


 改めてトレーニングに励んでいるイクサ達に視線を向ける。


「でも、それって軍人に好評だっただけで一般ユーザーからも好評とは限らないんじゃ……」


 それは言ってはいけないお約束である。

 そうやって朝の8時から特訓を始めている彼らのトレーニングも、もう少しで4時間に達しようとしていた。

 まず最初に根をあげたのは、ナミだった。


「うぅ~、もう無理ぃ…」


 ばたんきゅぅ、と言いながら砂浜に倒れ込む。

 ナミに続く形でイクサとカイトも倒れた。


「吐きそう……うっ」


「俺は三途リバーが見えたぜ……」


 一方、海ではリンナがうつ伏せの状態でぷかぷかと浮かんでいる。

 ブクブクと水泡が音を立てる。


「ぶべばろぼでんばばみでぃ~」


「っ?! ……リンナ!!」


 ユキヒコはひどく狼狽した様子でリンナを助け出した。

 リンナは口から「ぴゅー」と水を噴き出すと、目をぐるぐる回していた。


「むふぅ、お花畑が満開なのだー」


「おい、リンナ! 目を覚ませ、戻ってこい!!」


 どこか撹乱したような瞳を浮かべながら、ユキヒコはリンナの頬をペチペチと思いっきり叩く。




「う~……ほっぺがヒリヒリするのだー」


 一旦トレーニングを中断し、休憩タイムである昼食。

 リンナが涙目で赤く腫れた左右の頬を両手で押さえていると、ユキヒコは土下座して謝罪する。


「リンナ、本当にごめん……」


「ユキヒコひどいのだー」


 リンナは、ただでさえ腫れているのに、さらにぷくぅと頬を膨らます。

 その様子を見てイクサとカイトが仲裁に入る。


「まあまあ、一応無事だったわけですし!」


「そうそう、リンナ副部長もそう怒らずに!」


 この怒りが原因で裏リンナになられるととてつもなく面倒くさいし話の収拾が着かなくなる。

 イクサとカイトがそう思って慌てて仲裁に入ると、今度はナミとカイリから不満の声があがる。


「えー、でも顔は女の命だよ。ね、カイリちゃん?」


「そうです! リンナさん、ここは徹底抗戦ですよ!」


 カイリの言葉にリンナが「なのだー!」と頷くと、カイトはカイリに耳打ちする。


(おい、カイリ! なに問題を拡大させてんだ!)


(お兄ちゃんの方こそなに言ってんの。いくら救命行為とはいえ、普通ほっぺたは叩かないでしょ?!)


(東條部長だってどうしていいか混乱してたんだよ、それぐらい察しろよ!)


(デリカシーの欠片もないお兄ちゃんに言われたくないね!)


(んだと?!)


(文句ある?!)


 カイトとカイリは火花を散らし、互いに「ふん!」と言って顔を背けた。

 リンナは顔を膨らませたまま、「なーのーだー!」と駄々っ子のように両腕を振り回す。


「おーなーかーすーいーたーのーだー。フランクフルトとカレーが食べたいのーだー!!」


「……今すぐ買ってくるよ」


 ユキヒコはひどく落ち込んだ様子で立ち上がると、そのまま浜辺にある海の家へと向かった。


「あ、待ってください!」


「俺達も手伝います!」


 イクサとカイトも立ち上がり、ユキヒコについていく。


 ユキヒコは相変わらず暗い表情で俯きながら歩いている。

 イクサはユキヒコに声をかける。


「あの、東條部長。……大丈夫ですよ、リンナ副部長だって東條部長が一生懸命だったことは本当は分かってると思いますよ」


「いや、そういうことじゃないんだ。……ちょっとカンナのことを思い出しちゃってね」


 ユキヒコの言葉にカイトは首を傾げる。


「カンナって、誰ですか?」


「……」


 ユキヒコは押し黙り、そのまま歩いていく。


「あれ、俺……なんかマズイこと言っちゃった?」


「まあ、その……うん」


 イクサはコメントに困って曖昧な笑みを浮かべる。

 カイトはますます首を傾げるばかりだった。



「じゃあ、俺は買ってくるから、キミ達はここで待っててくれ」


 そう言うと、ユキヒコは海の家に入って行った。

 外で待つことになった2人。

 ユキヒコは詮索するなと言ったが、カンナに関して他言無用だとは言われていない。

 イクサは意を決してカイトに話す。


「カンナさんは、リンナ副部長の双子のお姉さんだよ」


 リンナの姉であるカンナ。そのカンナが亡くなり、それによって裏人格のリンナが形成されたこと。

 ユキヒコとリンナにとって、カンナという存在はとてつもなく大きかったということ。

 共に全国大会を勝ち抜くと誓い、結局果たせなかったこと。

 そしてその死に、何か陰謀めいたものが絡んでいるということ。


 カイトは俯き、思わず乾いた笑いを出す。


「……はは、俺、最悪だな。好奇心で面白半分に詮索して」


「それは俺も同じだよ」


「……なあ。全国大会、マジで負けられねえじゃん」


「元々、負けるつもり無いでしょ」


「まーな」


 互いに顔を見合わせて笑う。

 すると、イクサは「そういえば」と呟いてカイトに尋ねる。


「ねえ、カイリちゃんも普通に合宿について来てるけど、親御さんからの許可は出てるの?」


「え……?」


 カイトは目を見開いて言葉を失う。

 イクサは首を傾げる。


「カイト、どうしたの?」


「……カイリは、っ?!」


 次の瞬間、カイトの中で映像がフラッシュバックのように現れては消える。


――やめてカイリ!


 悲鳴をあげる母親の声。


――ゆ、許してくれ!


 苦悶の表情を浮かべる父親の声。

 そして


――どうしちまったんだよ、カイリ!


 倒れながらも、カイリを睨み付ける自分の姿。



〈お兄ちゃんの、負けだよ〉


 勝ったのはカイリ、負けたのは――自分。



「大丈夫?! カイト!!」


「っはぁ…!」


 まるで過呼吸のように、カイトは「はーはー」と息を乱す。


「わ、悪い。……うん、カイリは頑張ったからな。だからきっと、親父達も許したんだろ」


「そ、そうなんだ」


「……すまん、ちょっと固定電話探しに行く」


「う、うん」


 そのまま鬼気迫る勢いでその場を離れるカイト。イクサは呼び止められず、ただただ見送るしかなかった。


「お待たせ――ってあれ、戦宮くんは?」


 すると、ちょうど戻ってきたユキヒコは、カイトの姿が見えないことに首を傾げる。

 イクサはユキヒコに事情を説明する。

 突然いなくなってしまったカイトに、ユキヒコは一抹の不安を感じるが、きっと大丈夫だと自身に言い聞かせてイクサに向き直る。


「何か戦宮くんには考えがあるんだろう。俺達は構わず戻るとしよう」


「……はい」


 イクサは渋々頷くと、リンナ達の元へと向かった。



「おーそーいーのーだー」


 戻ってくると、リンナは恨めしそうにユキヒコを見つめる。

 ユキヒコは再度謝り、リンナに頼まれたものを手渡す。


「ほんとにごめん。ほら、ちゃんと買ってきたから」


「う~……なら、許すのだー」


 リンナは、にぱぁと笑ってユキヒコから受け取る。

 その様子にユキヒコはホッと撫で下ろす。


「良かった……裏の方のリンナが出てこなくて」


 ユキヒコが小声で呟いた言葉に、イクサは思わずゾッとした。

 確かに、このままリンナの機嫌が直らなければ裏人格が出ていた可能性がある。

 そうなったら話の収拾が着かず、かなり大変なことになっていただろう。

 思わずイクサもホッと撫で下ろしてしまった。

 一方でカイトがいないことにナミとカイリは首を傾げた。


「あれ、戦宮くんがいないね」


「お兄ちゃんはどこですか?」


 二人の疑問にイクサは答える。


「えっと、なんか電話を探しに行っちゃったけど」


「電話………。全く、仕方ないなぁお兄ちゃんは」


 カイリは一瞬だけ暗い表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻してカイトを探しに行く。


「私が探しに行きますね」


「う、うん」


 イクサはカイリを見送る。しかし、何か嫌な予感がする。心に何かが引っかかるような感覚が体全体に駆け巡る。

 しかしそれが何なのか言葉にできず、カイリを呼び止められなかった。


 カイリがこの場を離れ、ユキヒコは「さて」とイクサ、ナミ、リンナに声をかける。


「肉体強化はもう程々にして、後半はカードバトルをしようか。人数は丁度4人だし」


「あ、それいいですね! ………もう体動かしたくないし」


 ユキヒコの提案にナミがまず最初に食いついた。


「じゃあ相手を決めようか。さて、誰か、何か希望ある?」


「んー」


 リンナは食べながら手を挙げた。

 ごくんとご飯を飲み込む。


「はい、リンナ」


「そういえば、イクサはリンナと一度もバトルしたことないのだー。1回でいいから戦ってみたいのだー」


 リンナの言葉にイクサは目を見開く。


「俺が、リンナ副部長と?」


「そうなのだー」


「……」


 確かに、イクサはカードバトル部に入部してから数週間。一度もリンナとバトルをしたことがない。

 リンナの操るトライブは長期戦向けのプラントトライブ、同じく長期戦向けのギガントトライブとはまた違った戦術を持っている。

 イクサは頷く。


「分かりました、よろしくお願いしますリンナ副部長」


「なのだー!」


 イクサとリンナの対決が決まると、ナミは「うげぇ」と声をあげる。


「ということは、私は部長とかぁ」


「あれ、早乙女さん、俺じゃ不満かい?」


「だって、私のアイドルトライブと部長のブリザードトライブって相性最悪じゃないですかー」


「あはは、そんなに不貞腐れないでよ。たとえ相性が悪くても、勝負は時の運。何が起こるか分からないよ。それに、早乙女さんはバトルをする前から諦めるのかい?」


「っ!! 諦めたりなんか、しません!」


「よーし。じゃあ、それぞれ始めようか!」


 イクサとナミとリンナは力強く返事をする。


「「はい!」」


「なのだー」


 4人はデッキを取り出して準備を整える。

 その様子を見ていたカズノリは小さく笑いつつ、カイリが去った方向を見つめる。



「……何事もなければいいのですが」




◇◇◇◇◇◇◇



「行きますよ、リンナ副部長!」


「勿論なのだー」


 手札交換を終え、準備を整える。


「ダイス!」


「セット! なのだー」


聖野イクサ:手札【5】

     :ライフカウンター【4】


園生リンナ:手札【5】

     :ライフカウンター【4】


 先攻はイクサである。


「俺のターン、ドロー! フォースチャージし、追加ドロー!」


聖野イクサ:手札【6】

     :フォース【▽】


「手札からミクロナイトのポテンシャルアビリティを発動!」


【カオス・ミクロナイト】

【ポテンシャルアビリティ】

【永】

 ┗あなたのアタックゾーンに【カオストライブ】のガーディアンがいないなら、手札のこのカードはSF【0】として扱う。


「よって、カオス・ミクロナイトをノーコストで召喚(サモン)!」


【カオス・ミクロナイト】

SF【1】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【カオス】

DG【0】

LP【1500】


聖野イクサ:手札【5】


「さらに、手札からアシストガーディアン【カオス・サポーター】を召喚(サモン)!」


【カオス・サポーター】

SF【0】

GT【ノーマル/アシスト】

Tr【カオス】

DG【0】

LP【200】


聖野イクサ:手札【4】


「サポーターのアシストアビリティを発動!」


【カオス・サポーター】

【アシストアビリティ】

【起】(COST:このカードとフォース1枚をジャンクゾーンに置く)

 ┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたは自分の山札からカードを2枚、チャージゾーンに表状態で置く。


聖野イクサ:フォース【▽▽】


「サポーターとフォースをジャンクゾーンに送り、メインデッキのカードを2枚チャージゾーンに置いて、フォースを2枚消費し、アシストガーディアン【カオス・巫女・ナイト】を召喚(サモン)!」


【カオス・巫女・ナイト】

SF【2】

GT【ノーマル/アシスト】

Tr【カオス】

DG【0】

LP【1700】


聖野イクサ:手札【3】

     :フォース【▼▼】


「俺はこれでターンエンドです」


「わーぉ、なんかすっごい飛ばしてるのだー。リンナのターン、ドローなのだー」


 リンナはドローしたカードを手札に加え、手札全体を見つめる。

 カードを1枚選んでチャージゾーンに置く。


「フォースチャージして、追加ドローなのだー」


園生リンナ:手札【6】

     :フォース【▽】


「手札からアタックガーディアン【プラント・シード】を召喚(サモン)なのだー」


【プラント・シード】

SF【0】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【プラント】

DG【0】

LP【500】


園生リンナ:手札【5】


「手札からドメインカード【慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノ】をセットなのだー」


慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノ


園生リンナ:手札【4】


「そして、プラント・シードのポテンシャルアビリティを発動なのだー」


【プラント・シード】

【ポテンシャルアビリティ】

【起】(COST:手札1枚をジャンクゾーンに送る)

 ┗このターン、あなたはコストを支払うことで発動できる。そうしたら、このカードのLPを500リペアする。この効果は一度しか使えない。


「手札を1枚捨てて効果発動なのだー」


園生リンナ:手札【3】


【プラント・シード】

DG【0→-500】

LP【500→1000】


「この瞬間、慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノの永続効果発動なのだ」


慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノ

【永】

 ┗このカードがあなたのドメインゾーンに存在する限り、自分フィールド上のガーディアンのLPがリペアした場合、その数値の半分だけ相手のガーディアン1体を選んでダメージを与える。


「プラント・シードがリペアした数値は500、よってその半分の数値の250ダメージをミクロナイトに与えるのだー」


「なっ!?」


【カオス・ミクロナイト】

DG【0→250】

LP【1500→1250】


「リペアした時にダメージを与えるドメインカード……」


「むふふー、プラントトライブと相性抜群のカードなのだー」


「っ! プラント・シードのトライブアビリティ…!」


 リンナはプラント・シードに手を翳す。


「ふふ、トライブアビリティ【植物の再生ヴェジタブル・リフォメーション】発動なのだー」


【プラント・シード】

【トライブアビリティ】

【自】(セットフェイズ開始時)

 ┗あなたは自分のジャンクゾーンに存在する【プラントトライブ】のガーディアンを1枚まで選択し、あなたの山札に戻す。そうしたら、あなたのアタックガーディアンのLPをX00リペアする。(Xはあなたの山札に戻したガーディアンのSF)



「リンナがジャンクゾーンに捨てたカードのSFは4、400リペアするなのだー」


【プラント・シード】

DG【-500→-900】

LP【1000→1400】


 リペアしたということは、その半分の数値がミクロナイトへのダメージとなる。


【カオス・ミクロナイト】

DG【250→450】

LP【1250→1050】


 バトルフェイズに入る前の段階で既に450ダメージ。

 これから起こるであろプラントトライブ特有のリペア効果の度にダメージを受けるのは中々きつい。

 リンナはサイコロを手に持つ。


「サイコロを振るのだー」


 リンナはサイコロを振った。

 サイコロの目は、3。


【プラント・シード】

【2】【4】【6】……相手のアタックガーディアンに100のダメージを与える。

【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンに150のダメージを与える。


園生リンナ:フォース【▼】


「フォースを1枚消費してバトルなのだ! ミクロナイトに150ダメージを与えるのだー」


【カオス・ミクロナイト】

DG【450→600】

LP【1050→900】


「1ターンで、600ダメージ……」


「ターンエンドなのだー」


「っ、俺のターン、ドロー! フォースチャージして、追加ドロー!」


聖野イクサ:手札【4】

     :フォース【▽▽▽】


「フォースを2枚消費して、アタックガーディアン【カオス・ライナー】を召喚(サモン)!」


【カオス・ライナー】

SF【2】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【カオス】

DG【600】

LP【3000→2400】


聖野イクサ:手札【3】

     :フォース【▽▼▼】


「トライブアビリティ発動! 魂の継承(ソウルサクシード)!!」


【カオス・ライナー】

【トライブアビリティ】

【永】

 ┗【カオストライブ】のガーディアンを召喚したアピアステップ時、前のガーディアンはアンダーカードとして、このガーディアンの下に置く。このガーディアンは下に置かれたアンダーカードの効果を全て受け継ぐ。


「よって、カオス・ライナーはカオス・ミクロナイトの能力を全て受け継ぐ! そして、カオス・ライナーのポテンシャルアビリティを発動!」


【カオス・ライナー】

【ポテンシャルアビリティ】

【起】(COST:フォースを1枚消費する)

 ┗あなたは自分の山札のカードを上から2枚まで閲覧する。その中からカードを1枚まで選んで自分の手札に加え、残りのカードを山札の一番下に置く。


聖野イクサ:フォース【▼▼▼】


 イクサはデッキトップからカードを2枚閲覧する。


【カオス・ナイト】

【カオス・チャージャー】


 イクサはカオス・チャージャーのカードを手札に加え、カオス・ナイトのカードをデッキボトムに沈めた。


聖野イクサ:手札【4】


「……ターン、エンド」


「リンナのターンなのだー、ドロー!」


園生リンナ:手札【4】


「フォースチャージして、追加チャージなのだー!」


園生リンナ:手札【2】

     :フォース【▽▽▽】


「フォースを2枚消費して、アタックガーディアン【プラント・スプロート】を召喚(サモン)なのだー!」


【プラント・スプロート】

SF【2】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【プラント】

DG【-900】

LP【2000→2900】


園生リンナ:手札【1】

     :フォース【▽▼▼】


「スプロートのポテンシャルアビリティを発動するのだー」


【プラント・スプロート】

【ポテンシャルアビリティ】

【起】(COST:手札1枚をジャンクゾーンに送る)

 ┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたの山札からカードを1枚、ドローする。



「手札を1枚捨てて、ドローなのだー。そして、植物の再生ヴェジタブル・リフォメーション!」



【プラント・スプロート】

【トライブアビリティ】

【自】(セットフェイズ開始時)

 ┗あなたは自分のジャンクゾーンに存在する【プラントトライブ】のカードを1枚選び、あなたの山札に戻す。そうしたら、あなたのアタックガーディアンのLPをXの値だけリペアする。(Xはあなたの山札に戻したカードのSF×300)


「リンナが山札に戻したカードは、SF【5】だから、1500リペアなのだー」


【プラント・スプロート】

DG【-900→-2400】

LP【2900→4400】


 慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノの永続効果により、カオス・ライナーに750ダメージが与えられる。


【カオス・ライナー】

DG【600→1350】

LP【2400→1650】


 じわりじわりとライフが削られていく。そのことに、イクサの精神も蝕まれていく。


「バトルするのだー」


 サイコロの目は、2。


【プラント・スプロート】

【2】【5】【6】……相手の山札からカードを4枚、ジャンクゾーンに送る。

【1】【3】【4】……相手のアタックガーディアンに、500のダメージを与える。


園生リンナ:フォース【▼▼▼】


 イクサのデッキからカードが4枚、ジャンクゾーンに送られる。

 ダメージ効果で無くて良かったと安心すべきだろうか。


「ターンエンドなのだー」


「……俺のターン、ドロー!」


 イクサはドローしたカードを見つめる。ドローしたカードはスペルカードの【カオス・ミラクルドロー】。自分のジャンクゾーンにカードが存在せず、尚且つフィールドにカオストライブのカードが存在する場合にデッキからカードを3枚ドローして手札から1枚をデッキに戻すスペルカードだ。

 しかし、プラント・スプロートのアタックアビリティによってジャンクゾーンにカードが送られたことで、このカードは効果を発動できない――所謂“腐った”状態となってしまった。

 イクサはカオス・ミラクルドローのカードをチャージゾーンに置き、追加ドローする。


「フォースチャージし、追加ドロー!」


聖野イクサ:手札【5】

     :フォース【▽▽▽▽】


「俺は、フォースを3枚消費してアタックガーディアン【カオス・スチール】を召喚(サモン)!」


【カオス・スチール】

SF【3】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【カオス】

DG【1350】

LP【4000→2650】


聖野イクサ:手札【4】

     :フォース【▽▼▼▼】


「さらに、フォースを1枚消費してアシストガーディアン【カオス・チャージャー】を召喚(サモン)!」


【カオス・チャージャー】

SF【1】

GT【ノーマル/アシスト】

Tr【カオス】

DG【0】

LP【1000】


聖野イクサ:手札【3】

     :フォース【▼▼▼▼】


「俺はこれでターンエンド」


「それじゃあ、リンナのターンなのだー」


 リンナのドローフェイズとなり、カードをデッキからドローする。


「ドローフェイズ、ドローなのだー。フォースチャージして、追加ドローするのだー」


園生リンナ:手札【2】

     :フォース【▽▽▽▽】


「手札からスペルカード【飢饉からの年末大収穫祭】を発動するのだー」


【飢饉からの年末大収穫祭】

SP【3】

【ノーマルスペル】

【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)

 ┗この効果は、このカードの効果発動時にあなたの手札が1枚のみの場合に発動できる。あなたは自分の山札からカードを5枚まで閲覧して好きな順番に並び替えて山札の上に戻す。この効果を発動したターンのエンドフェイズ時に、あなたは自分の山札の上からカードを3枚ドローし、さらに2枚を表状態をチャージゾーンに置く。


園生リンナ:手札【1】


「リンナの手札はこれ1枚ぽっきりなのだ。よってデッキトップからカードを5枚見て、好きな順番に並び替えるのだー」


 イクサの手札にはSP【3】のスペルカードの効果を無効にするカードは無い。

 リンナは鼻唄を紡ぎながらデッキトップの5枚のカードを見る。


「ここをこうしてこうするのだー」


 好きな順番に並び替え、再び山札の上に戻した。これでこのターンのエンドフェイズ時に3枚ドローと2枚チャージが約束された。

 リンナはプラント・スプロートの起動効果を発動させる。


【プラント・スプロート】

【ポテンシャルアビリティ】

【起】(COST:手札1枚をジャンクゾーンに送る)

 ┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたの山札からカードを1枚、ドローする。


「手札のカード1枚をジャンクゾーンに送って、ドローするのだー。キーカードが5枚の中にあってよかったのだー」


「っ!」


 飢饉からの年末大収穫祭の効果でデッキトップを好きな順番に並び替えたことで、リンナはこの戦況に相応しいカードをスプロートの効果でドローしたのだ。

 リンナはフォースを2枚消費する。


「フォースを2枚消費して、アシストガーディアン【グローイング・シード】を召喚(サモン)するのだー」


【グローイング・シード】

SF【2】

GT【ノーマル/アシスト】

Tr【プラント】

DG【0】

LP【1400】


園生リンナ:手札【0】

     :フォース【▽▽▼▼】


「グローイング・シードのアシストアビリティを発動するのだー」


【グローイング・シード】

【アシストアビリティ】

【起】(COST:アシストゾーンに存在するこのカードをジャンクゾーンに送る)

 ┗あなたは自分の山札の一番上のカードをめくって公開する。そのカードが【プラントトライブ】のガーディアンカードである場合、そのカードをフォースを消費せずに召喚できる。


「グローイング・シードをジャンクゾーンに送って、デッキトップを公開するのだー」


 リンナは終始ニコニコしながらデッキトップのカードをめくって公開した。


【フローラス・プラント】

Tr【プラント】


 プラントトライブのガーディアンカードだった。


「フローラス・プラントをノーコストで召喚するのだー」


【フローラス・プラント】

SF【6】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【プラント】

DG【-2400】

LP【6400→8800】


「手札からの召喚じゃないから、召喚制限は受けないのだー」


「これも、飢饉からの年末大収穫祭の効果のおかげ、ということですか」


「そうなのだー。でもこのコンボ、中々成功しないのだー」


 そう易々と成功されてたまるか、とイクサは思わず口に出てしまいそうなのをぐっと堪える。


「リンナ副部長の場にSF【6】のガーディアンが召喚された時、サイドデッキからガーディアンを呼び出す! 神速召喚(スピードサモン)!!」


「あ、フローラス・プラントの効果処理の方が先だから待ってほしいのだ」


「え、あ……はい」


 マイペースなリンナの言動にイクサは「なんか調子狂うなぁ」と溢しながらスピードガーディアンの召喚を中断する。


「んーと、フローラス・プラントの召喚時の効果なのだー」


【フローラス・プラント】

【ポテンシャルアビリティ】

【自】(このカードのアピアステップ時)

 ┗この効果はあなたと相手のアタックガーディアンのDGの数値の差が3000以上の時に発動できる。あなたは自分の山札からカードを2枚ドローする。


「イクサのカオス・スチールのDGは1350、リンナのフローラス・プラントの-2400、その差は3750なのだー。よって、2枚ドローするのだー」


園生リンナ:手札【2】


「はい、イクサ。さっきの続きどうぞなのだー」


「え、はい。じゃあ改めまして、神速召喚(スピードサモン)! 来い、【神速銃使いスピーディー・ガンマン カオス・シューター】!!」


神速銃使いスピーディー・ガンマン カオス・シューター】

SF【3】

GT【スピード/アタック】

Tr【カオス】

DG【1350】

LP【3500→2150】

【サモンコンディション】

 ┗このカードは相手がSF【3】以上のガーディアンを召喚した時、手札またはサイドデッキからフォースを消費せずに召喚できる。


「トライブアビリティ発動! 魂の継承(ソウルサクシード)!!」


神速銃使いスピーディー・ガンマン カオス・シューター】

【トライブアビリティ】

【永】

 ┗【カオストライブ】のガーディアンを召喚したアピアステップ時、前のガーディアンはアンダーカードとして、このカードの下に置かれる。このガーディアンは下に置かれたアンダーカードの能力を全て受け継ぐ。



「ポテンシャルアビリティを発動!!」


神速銃使いスピーディー・ガンマン カオス・シューター】

【ポテンシャルアビリティ】

【自】(アピアステップ時)

 ┗このカードを召喚したターン、相手はバトルフェイズを行うことはできない。このターンのエンドフェイズ時に、あなたは自分のサイドデッキからカードを1枚ドローし、ジャンクゾーンから【カオストライブ】のカードを1枚まで選択してこのカードのアンダーカードにする。


「サイドデッキからカードを1枚ドロー、さらにジャンクゾーンからカオス・サポーターをアンダーカードにする」


聖野イクサ:手札【4】


「そしてこのターン、リンナ副部長はバトルフェイズを行えません」


「んー、それは困ったのだー」


 リンナは「なはは」と笑いながら、アタックゾーンのフローラス・プラントに視線を向ける。

 その様子にイクサは首を傾げる。


「フローラス・プラントのトライブアビリティ発動なのだー。植物の再生ヴェジタブル・リフォメーション!!」


「トライブアビリティ……っ!」


【フローラス・プラント】

【トライブアビリティ】

【起】(COST:手札1枚をジャンクゾーンに送る)

 ┗山札の上からカードを3枚めくってジャンクに送り、その中に含まれているガーディアンカードの枚数1枚につき、このカードを1000リペアする。


園生リンナ:手札【1】


「まさか、この効果も……」


「なははー、飢饉からの年末大収穫祭のおかげで調整済みなのだー」


【プラント・スプロート】

【プラント・ブランチ】

【フラワー・プラント】


「よって、フローラスのライフが3000リペアするのだー」


【フローラス・プラント】

DG【-2400→-5400】

LP【8800→11800】


「ライフ10000越え……」


「そして、慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノの永続効果でカオス・シューターに1500ダメージを与えるのだー」


神速銃使いスピーディー・ガンマン カオス・シューター】

DG【1350→2850】

LP【2150→650】


「バトルフェイズは封じたのに、残りライフはたったの650…!!」


「本当は厄介なアシストガーディアンにダメージを与えたかったけど、そうしたら何かもっと厄介なことになりそうだと感じたのだー」


「っ…リンナ副部長、勘良すぎでしょ」


 イクサは「あはは」と乾いた笑い声をあげる。


(もし、リンナ副部長がカオス・チャージャーにダメージを与えてたなら、チャージャーの効果で2枚チャージ、そして巫女ナイトの効果でカオス・ナイトを召喚しつつ、2000ダメージを与えられたのに)


 カオス・ナイト召喚までの流れを勘だけで察知して回避した。

 因みに、リンナは基本的に他人の試合中は寝ているのでイクサのカオス・ナイト召喚のためのコンボは知らない。


「ターンエンドなのだー。この瞬間、3枚ドローして2枚チャージするのだー」


園生リンナ:手札【4】

     :フォース【▽▽▽▽▼▼】


「俺のターン、ドロー!」


 イクサはドローしたカードを見る。相手フィールドにはSF【6】のフローラス・プラントが存在している、よって召喚制限によりSF【7】以下のガーディアンを召喚できる。

 だが、


(コスパを考えるなら、カオス・ナイトを召喚した方が断然良い。その方が、使用できるフォースも多いし。だったら、ドローフェイズでドローしたこのカードをチャージゾーンに置こう)


 そう考え、手札のカードを選択していく。


「俺は、フォースチャージして追加ドローします!」


聖野イクサ:手札【5】

     :フォース【▽▽▽▽▽】


 追加ドローしたカードを見て目を見開く。


(このターンで決めるしかない!)


「俺は手札からスペルカード【混沌の儀式術法】を発動します!」


【混沌の儀式術法】

SP【2】

【ノーマルスペル】

【起】(COST:手札のこのカードをジャンクゾーンに送る)

 ┗あなたは自分のアシストゾーンのガーディアンを1体まで選んでジャンクゾーンに送る。そうしたら、そのガーディアンのSFの数値だけあなたは自分の山札からカードをドローし、自分フィールドのアタックガーディアンのLPをX00リペアする。(Xの値はあなたの手札の枚数+2)


「よって、俺はアシストゾーンに存在するカオス・チャージャーをジャンクゾーンに送る。カオス・チャージャーのSFは1だから、デッキからカードを1枚ドローします!」


聖野イクサ:手札【5】


「さらに手札が5枚なので、カオス・シューターのライフが700リペアする!」


神速銃使いスピーディー・ガンマン カオス・シューター】

DG【2850→2150】

LP【650→1350】


「そして、カオス・チャージャーのポテンシャルアビリティ発動!」


【カオス・チャージャー】

【ポテンシャルアビリティ】

【自】(このカードがジャンクゾーンに送られた時)

 ┗あなたは自分の山札から【カオストライブ】のカードを2枚まで選び、表状態でチャージゾーンに置く。


聖野イクサ:フォース【▽▽▽▽▽▽▽】


 イクサは自分のデッキからカードを2枚選択し、チャージゾーンに表状態で置く。

 そして、更なるカード効果を発動させる。


「続いて、巫女ナイトのアシストアビリティを発動!」


【カオス・巫女・ナイト】

【アシストアビリティ】

【自】(このカードがアシストゾーンからジャンクゾーンに送られた時)

 ┗この効果は、あなたのチャージゾーンのフォースが5枚以上なら発動できる。フォースを2枚消費し、あなたは自分の山札から【カオス・ナイト】をフォースを消費せずに召喚する。


聖野イクサ:フォース【▽▽▽▽▽▼▼】


「フォースを2枚消費し、デッキから【カオス・ナイト】をノーコストで召喚(サモン)!!」


【カオス・ナイト】

SF【5】

GT【ノーマル/アタック】

Tr【カオス】

DG【2150】

LP【6000→3850】


「カオス・ナイトのポテンシャルアビリティ発動!」


【カオス・ナイト】

【ポテンシャルアビリティ】

【自】(このカードが【カオス・巫女・ナイト】の効果によって召喚された時)

 ┗相手のガーディアンを1体まで選択し、2000ダメージを与える。


「よって、フローラス・プラントに2000ダメージを与える!」


「んー……ライフカウンターを2つ消費して2000ダメージを無効にするのだー」


「え?!」


園生リンナ:ライフカウンター【4→2】


【フローラス・プラント】

DG【-5400→-5400】

LP【11800→11800】


「そんな、どうして……」


「ライフカウンターはドローのためだけに使うわけではないのだー。1000以上のダメージ効果が発動された時、そのダメージ量1000につき、ライフカウンターを1つ消費することで無効にできるのだー」


「ライフカウンターに、そんな使い道があったなんて……」


「イクサは勉強不足なのだー」


「ぐっ…」


 リンナはニコニコしながらイクサにライフカウンターの使い方を説明し、一方でイクサは少し恥ずかしい気持ちになる。

 本選開幕までの日数が迫っているというのに、まだまだこのカードゲームのルールを把握しきれていない己の不甲斐なさを痛感する。


「……俺は、手札からアームドガーディアン【カオス・アームド・ブレイヴ】を召喚(サモン)!」


【カオス・アームド・ブレイヴ】

SF【0】

GT【アームド/アシスト】

Tr【カオス】

DG【0】

LP【100】


聖野イクサ:手札【4】


「そして、カオス・ナイトのトライブアビリティを発動!」


【カオス・ナイト】

【トライブアビリティ】

【永】

 ┗このカードを召喚したアピアステップ時、前のガーディアンはこのカードのアンダーカードとなる。このカードは全てのアンダーカードの能力を受け継ぐ。

【起】(COST:フォースを1枚消費する)

 ┗あなたは自分の手札からガーディアンカードを1枚選択してこのカードのアンダーカードにできる。


「よって、フォースを1枚消費して手札のカードを1枚、カオス・ナイトのアンダーカードにする」


聖野イクサ:手札【3】

     :フォース【▽▽▽▽▼▼▼】


【カオス・アームド・ブレイヴ】

【アームドアビリティ】

【起】(COST:このカードをアンダーカードとしてアタックガーディアンの下に置く)

 ┗あなたのアタックゾーンに【カオストライブ】のカードが存在する場合に発動できる。そのカードを素体とし、このカードを素体となるカードの下に置く。手札から【ブレイヴ】と名の付くガーディアンをフォースを消費せずに召喚する。


「アームドアビリティにより、俺はアタックゾーンの【カオス・ナイト】とアシストゾーンの【カオス・アームド・ブレイヴ】で装着転成(アームド・クロス)します! 混沌騎士が勇気を秘めし鎧を纏う時、新たな希望が生まれる! 爆誕せよ、【装着騎士(アームド・パラディン) カオス・ナイト・ブレイヴ】!!」


装着騎士(アームド・パラディン) カオス・ナイト・ブレイヴ】

SF【6】

GT【クロス/アタック】

Tr【カオス】

DG【2150】

LP【7500→5350】

【サモンコンディション】

 ┗このカードはフォースを消費して手札から召喚できない。【カオス・ナイト】と名の付くカードを素体とし、【カオス・アームド・ブレイヴ】のアームドアビリティの効果でのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。素体となったカードはこのカードのアンダーカードとなる。

【ポテンシャルアビリティ】

【永】

 ┗このカードがあなたのアタックゾーンに存在する限り、あなたは自分のターンのエンドフェイズ時に、あなたのフォースを全て裏状態にしなければならない。


「そしてセットフェイズ終了時、カオス・ナイト・ブレイヴのトライブアビリティを発動! 魂の継承(ソウルサクシード)!!」


装着騎士(アームド・パラディン) カオス・ナイト・ブレイヴ】

【トライブアビリティ】

【永】

 ┗このカードは、全てのアンダーカードの能力を受け継ぐ。

【自】(セットフェイズ終了時)

 ┗このターンのダイスステップをスキップし、フォースを消費しないでバトルフェイズを開始する。相手にXダメージを与える。(Xは、このカードの下に置かれたカードの枚数とあなたのチャージゾーンに表状態で存在するカードの枚数の合計×500)


「俺のチャージゾーンには表状態のフォースは4枚、そしてカオス・ナイト・ブレイヴの下に置かれたカードは8枚、その合計は12枚、よってフローラス・プラントに6000ダメージを与えます。さあ、リンナ副部長、カウンター効果を発動させますか?」


「うーん、リンナのフローラス・プラントのライフは11800なのだー。カウンター効果は使わないのだー」


「なら、このカウンターステップ、俺が使います!」


「なのだー?」


 イクサは手札からカウンターカードの効果を発動する。


「フォースを3枚消費して、手札からカウンターカード【クリティカル・ヒット!】を発動!」


【クリティカル・ヒット!】

Force【3】

【カウンター】

【自】(カウンターステップ時)

 ┗この効果を発動したバトルフェイズ中、あなたのガーディアンが発動したダメージ効果のダメージ量は2倍になる。


聖野イクサ:フォース【▽▼▼▼▼▼▼】


「よって、フローラス・プラントが受けるダメージは2倍の12000となる!」


「おー。凄いのだー」


 リンナはパチパチと手を叩き、手札のカードをジャンクゾーンに送る。


「でも大人しく喰らうつもりはないのだー。手札からプリベントアビリティ発動なのだー」


園生リンナ:手札【3】


【ハード・プラント】

【プリベントアビリティ】

【自】(ダメージ効果が発動された時)

 ┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。


「よって、フローラス・プラントのライフが3000リペアするのだー」


「くっ、そんな!」


【フローラス・プラント】

DG【-5400→-8400】

LP【11800→14800】


 そして、カオス・ナイト・ブレイヴの12000ダメージがフローラス・プラントに命中する。


【フローラス・プラント】

DG【-8400→3600】

LP【14800→2800】


「倒し、きれなかった!」


「イクサー、何か忘れてないのだー?」


「え……?」


「フローラス・プラントが3000リペアしたことで、慰薔薇地獄リ・ローズ・インフェルノの永続効果で1500ダメージを受けてもらうのだー」


「っ! しまった!!」


装着騎士(アームド・パラディン) カオス・ナイト・ブレイヴ】

DG【2150→3650】

LP【5350→3850】


「……ターン、エンド」


 エンドフェイズ時、クロスガーディアンの共通効果として、フォースが全て裏状態となる。


聖野イクサ:フォース【▼▼▼▼▼▼▼】


 ターンがリンナにへと移行する。


「それじゃあ、リンナのターンなのだー。ドローフェイズ、ドロー! フォースチャージして追加ドローなのだー」


園生リンナ:手札【4】

     :フォース【▽▽▽▽▽▽▽】


 リンナは意気揚々とカードを選択する。


「うーん、さっきは耐えれたけどリンナもジリープアーなのだー」


 リンナの言動から、恐らく勝負を仕掛けてくることが伺える。


「ダイスステップに入るのだー」


 リンナは自分のサイコロを手に取り、「そーいなのだー!」と叫んで振った。

 サイコロの目は4。


【フローラス・プラント】

【1】【3】……このカードのライフを2000リペアする。

【2】【4】……あなたは自分の手札のカードとフォースを任意の枚数を選んでジャンクゾーンに送る。相手のガーディアンを1体まで選んでXダメージを与える。(Xの値は、この効果でジャンクゾーンに送ったカード枚数×700)


「フォースを1枚消費してバトルフェイズなのだー」


園生リンナ:フォース【▽▽▽▽▽▽▼】


「リンナは4枚の手札と7枚のフォースを全てジャンクゾーンに送るのだー。よって、合計枚数は11枚、つまり合計ダメージは7700なのだー」


「っ?!」


園生リンナ:手札【0】

     :フォース【―】


 リンナの捨て身の攻撃にイクサは手を強く握り締める。

 先程のイクサのターン、カオス・ナイトのトライブアビリティでアンダーカードにしたのは、1ターンに1度、相手から受けるダメージを半分にするカオス・リフレクターだ。

 しかし、今のカオス・ナイト・ブレイヴのライフは3850。7700ダメージを半分にしたところで受けるダメージはジャスト3850。このままでは耐えられない。

 ならばどうする? 手札には防御用のカウンターカードもあるがクロスガーディアンの共通効果でコストとなるフォースは全て裏状態となっており、使用することはできない。


(どうしたら良い? どうしたら、この状況を打破できる?)


 考えろ、考えるんだ。頭の中がその言葉で埋め尽くされる。僅か数秒の時間が、今はとてつもなく長く感じる。

 そんな時だ。イクサの中で、今ここにはいないカイトの後ろ姿がフラッシュバックする。


――苦しい時は、周りをよく見ろ――


 以前、カイトがイクサに言った言葉であり、イクサ自身、何度もこの言葉に助けられてきた。

 イクサは周りを見回すと、自身のライフカウンターを見た。


――ライフカウンターはドローのためだけに使うわけではないのだー――


 今度はリンナの言葉が頭を過る。

 その瞬間、イクサの中で電流のような閃きが全身を駆け巡る。


(これだ!!)


 イクサはすぐに行動に出る。


「カオス・ナイト・ブレイヴが受け継いだカオス・リフレクターのカウンターアビリティ発動!」


【カオス・リフレクター】

【カウンターアビリティ】

【自】(カウンターステップ時)

 ┗1ターン一度、このカードが受けるダメージ効果1つを半分にできる。


「よって、フローラス・プラントから受けるダメージは半分の3850となる!」


 リンナは首を傾げる。


「でも、カオス・ナイト・ブレイヴのライフも3850なのだー」


 その言葉に、イクサはニヤリと笑う。


「ええ。このままだと、確かにカオス・ナイト・ブレイヴのライフは0になります。ですが、これならどうです?」


 イクサは自分のライフカウンターに手をかける。


「リンナ副部長から教えてもらったこと、早速活かしたいと思います。俺はライフカウンターを3つ消費して、3850ダメージを無効にします!」


 ダメージ量1000毎にライフカウンターを1つ消費するので、3850ダメージを無効にするためにイクサはライフカウンターを3つ消費したのだ。


聖野イクサ:ライフカウンター【4→1】


装着騎士(アームド・パラディン) カオス・ナイト・ブレイヴ】

DG【3650→3650】

LP【3850→3850】


 ギリギリ、フローラス・プラントの攻撃を回避した。

 リンナは「むぅ」と頬を膨らませる。


「リンナ渾身の一撃が防がれたのだー」


 リンナの手札とフォースは共に0。どう足掻いても次のイクサの攻撃を防ぐことはできない。

 リンナは両手を挙げる。


「うぅ……………降参なのだー」


 リンナは凄く、それはもう凄く不本意且つ屈辱的だと言わんばかりに顔を歪めて言い放った。

 こうして、このカードバトルはリンナのサレンダーによって幕を下ろした


 のだが、


「よし、勝てた!」


 イクサが感極まってガッツポーズを取ると、ガシッと肩を掴まれる。イクサは思わず「え」と呟いて自身の肩を掴む手を見つめる。

 イクサの肩を掴んでいるのはリンナだ。だが、その様子は少しおかしい。


「……次は、“あたし”とバトルしな」


「え………ぁ」


 裏リンナが降臨した。

 ニコォと不敵な笑みを浮かべる裏リンナに、イクサは顔を青く染めた。


◇◇◇◇◇◇◇



〈現在、電話に出ることができません〉


「くそ、なんでだ! 今日は父さんも母さんも家にいるはずなのに!!」


 電話ボックスの中、実家に電話をかけているカイト。しかし、彼の両親は一向に電話に出る様子がない。

 カイトの中で、何かがおかしいという疑念が増していく。

 一体、自分の身の回りで何が起きているのか。

 なぜ、カイリがカードバトル部の合宿に来ているのか。カイリは本来、ここにはいないはずなのだから。

 なぜなら、


「だってカイリは、夏期の強化ゼミに参加してるはずなんだ……」


 そう、本来ならカイリは今頃、カイトの両親が申し込んだ塾の夏期強化ゼミに参加し、勉強してるはずなのだから。

 カイリが通う塾にも連絡したが、「戦宮カイリさんは申し込んでおりません」という返答しか返って来なかった。

 カイトは受話器を戻し、一度電話ボックスから出る。



「……お兄ちゃん」


 すると、カイリがカイトの目の前に現れた。

 カイトは表情が固くなる。

 それに気づいているのか、それともいないのか、カイリは笑顔を浮かべてカイトに駆け寄る。


「もうお兄ちゃん、随分と探したんだよ! ほら、皆のもとにもどるよ!」


「……」


 カイリに引っ張られ、カイトは為す術なくそれに従う。

 カイリの様子はいつも通りだ。どこもおかしなところは無い。もしかしたら自分の思い違いかもしれない。

 そう思って自分の疑念に蓋をしようとすればするほど、カイトはカイリに尋ねたくなってしまう。

 尋ねては駄目だ、きっと後悔する。心の中で自分自身がそう叫ぶ。

 だが、それでも


「なあ、カイリ」


 カイトはカイリに尋ねる。



「どうしてお前は、ここにいるんだ?」




カードゲーマーが体を鍛える理由を聞くとか、意気揚々と召喚口上を言おうとする時に「効果処理が入るんで待って下さい」と言って中断させたりだとか、とにかくそういうネタを入れたかったのです。


【次回予告】


カイトとカイリ。兄と妹は激突する。

絆のデッキは果たして、2人を救うことができるのだろうか。


次回、【サイバートライブの侵蝕】

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