BATTLE:030【神託の天使】
どうも。
今回はあすぎめむいさんが投稿して下さったトライブ【エンジェリックトライブ】が登場します。
あと、今回の話には注意事項が1つだけあります。
とても長いです。
夢中で書いてたら2万文字軽く行っちゃいました。
分割してもよかったんですが、ちょっと歯切れが悪くなってしまうので、一気にまとめました。
内容が色々とギュウギュウ詰めですが、温かい目で見て下さると大変嬉しいです。
では、どうぞ。
〈全国大会東京予選! 制したのは、やはり王者・孤高学園! しかし、東栄学園の面々もよく頑張った! 皆さん、両校の選手たちに温かな拍手を!!〉
会場中から溢れんばかりの歓声と拍手。
だが、そのどれもがイクサ達にとっては虚しく響くだけだった。
彼らが負けたことに変わりはない。
(俺達の全国大会は……終わったんだ)
◇◇◇◇◇◇
――ジリリリ!!
「うっ……」
朝、目覚まし時計の音によってイクサは起床した。
部屋の外から、イクサの母親が声をかける。
「イクサ。今日、終業式でしょ? もう朝御飯できてるから、早く着替えて食べなさいよ!」
「分かってるよ……」
イクサは久々の制服に身を包む。
今日は夏休み前の最後の登校日だ。
鞄には筆箱……あと、一応デッキケースも入れておく。
もしかしたら、カードバトル部の部活があるかもしれないからだ。
身支度を終え、軽く朝食を摂る。
顔を洗って歯を磨く。
鞄の中身をもう一度確認する。
定期入れと財布を持ったことも確認し、ポケットに入れる。
部屋に戻り、バトル・ガーディアンズのオフィシャルサイトを開いてパック情報などをチェックする。すると、【News!】と書かれた項目が新たに追加されていた。そこにカーソルを合わせてクリックする。
【全国大会用のマスターズルールがついに公式化! それに伴うルール変更をお知らせします】
「ルール変更?」
イクサはルール変更の項目を見る。
フォースチャージでの追加ドローに加えて手札からの追加チャージ、ライフカウンターの導入など、カウンターカードの明確な裁定など、かなりの変更点が目立つ。
数分後、新ルールを覚えたイクサは鞄を肩にかけた。
「……よし、行くか」
準備が完了したイクサは、学校に向かうために家を後にした。
◇◇◇◇◇◇
約30分の後、学校に到着。
途中、ナミと会うことなくスムーズに進めた。
教室の中には久々に顔を合わすクラスメートの顔がちらほらと確認できる。
「よ、イクサ」
「カイト……」
登校してきたイクサに真っ先に声をかけてきたのはカイトだった。
あの決勝戦で一番悔しい思いをしたのは、他でもないカイトだ。
システムの不具合さえなければ、勝てたかもしれないバトルだったのだから。
それにも関わらず、今のカイトの表情はいつもと変わりなく笑顔だ。
その事に、イクサは違和感を感じる。
「ねえ、カイト……」
「ほーら、HRを始めっぞ!」
イクサがカイトに話しかけようとした瞬間、担任の先生がやってきた。
「おっと、先生が来たか。すまん、イクサ。あとでいいか?」
「え、あ……うん」
カイトが自分の席に戻っていく様を、イクサはただ眺めることしかできなかった。
◇◇◇◇◇◇
その後も、終業式は滞りなく進んだ。
学園長からの有り難く長い話。
各事務局員からの夏休み中の学園の利用の伝達。
終わったのは、大体昼頃。
担任の先生から解散の言葉を聞き、生徒達が教室で駄弁っている中、カイトがイクサに声をかけてきた。
「朝、俺になんか話しかけようとしてたけど、何か用でもあったか?」
「え? あー、うん…いや、やっぱりなんでもないや」
「おいおい、そういうのが一番気になるんだぜ?」
「本当に何でもないよ。というか、今のカイトを見てたら何を言いたかったのか忘れちゃったし」
「えぇ~、益々気になるけど……忘れちまったんなら仕方ないな。ま、俺これから行く所があるし、特に用が無いんなら先に帰らせてもらうぜ」
「うん……ごめん、変なこと言っちゃって」
「別にいいよ、じゃあなイクサ」
「じゃあね、カイト」
カイトが立ち去り、イクサも鞄に手をかける。
その時、鞄の中でイクサは自分のデッキケースを発見する。
そして、手に取る。
「一応、カードバトル部の部室に行ってみようかな。もしかしたら、東條部長がいるかもしれないし」
鞄を肩にかけて、イクサは教室を後にした。
歩くこと数分。
しかし、カードバトル部の部室に到着したイクサは嘆息することになる。
「誰も……いない」
辺りを見渡す。
数週間ぶりに訪れたカードバトル部の部室の内装は、特に変化は見受けられない。
少しソファなどが埃を被っている。
イクサは軽く埃を払い、ソファに腰かける。
そしてデッキケースからデッキを取り出し、カードをテーブルに広げる。
「……」
カードを1枚1枚チェックする。
もしあの時、東條部長じゃなくて俺が戦っていたら……どうなっていただろうか?
そんなことを思いながら、カードを見つめる。
「いや……それでも無理か」
イクサはグッタリした様子でソファにもたれる。
「アンリミテッドガーディアン……あんな規格外な存在にどうやって立ち向かえばいい?」
アンリミテッドガーディアンの効果適用を誘発しないようにするためには、手札を5枚以上に保つ必要がある。
だが、アクセルトライブのトライブアビリティの都合上、5枚以上に保つためにはドローソースが必要不可欠。
イクサは頭を振る。
「そうだ……。手札の問題より、もっと重要視すべきことがあったんだった」
イクサが最も危険視している点、それは……
「LPが∞……」
LPが∞ということは、いくらダメージ効果でDGの値を蓄積しても、まったくLPが変動しないということを意味する。
ドローソースをデッキに組み込めば、アンリミテッドアビリティは免れるかもしれない。
だが今度は、ドローした分こっちが先にデッキアウトしてしまう。
それだけではない。アンリミテッドガーディアンがもしアタックアビリティを備えていたら?
向こうのLPが無限であろうと、こちらのLPは有限なのだ。
そこまで考えたイクサは、少し絶望にも似た感情に囚われる。
俺にもアンリミテッドガーディアンがあれば……思わず、そう思ってしまうほどに。
ふと、テーブルの上に置かれているカオス・ナイトのカードが視界に映る。
そのカードを手に取る。
カオス・ナイトは、センリがイクサに突きつけた挑戦状のようなもの。
このカードを使った時、イクサはセンリの挑戦を受け入れた。
しかし、それを後悔している自分が、心のどこかにいる。
今まで、どんな強者と戦おうとも、いつも心にはワクワク感があった。
その戦いの結果が勝利であろうと敗北であろうと。
(だけど、怖い……)
しかし今、イクサは恐怖している。楽しいはずのカードゲームで恐怖している。
センリの圧倒的な力の前に崩れ落ちた時、果たして自分は、これまで通りカードバトルを楽しむことができるだろうか?
明確な対抗策も思い浮かばず、悪足掻きすら許容しないアンリミテッドガーディアン……そんな強敵を相手に、自分は諦めずに戦えるだろうか?
もしかしたら、バトル・ガーディアンズをやめてしまうかもしれない。
だが、それは……
(カオストライブを……捨てるということ)
そんなこと、イクサにはできない。
どんなことがあっても一緒にいると決めたんだ。
「……こんなに、誰かとバトルするのが嫌になるなんてね」
最悪の未来を振り払うように、イクサはカードをまとめてデッキケースに仕舞う。
そこでふと、定期入れに手をかける。
定期入れから、ワールド・バトル・ボードのライセンスカードを取り出す。
「気晴らしに、ゲームセンターにでも行こうかな。今まで行ったことないけど」
そう言って、鞄を肩にかけて部室を後にした。
約30分後。
イクサは町田にあるゲームセンターに到着した。
町田にある東栄学園から少し離れた位置にある台西という名前のゲームセンターだ。
そこに入店し、2階に設置されているワールド・バトル・ボードの前に立つ。
現在、対戦可能なユーザーの名前をチェックする。
「ッ!!」
そこでイクサは、思わず目を見開いた。
ワールド・バトル・ボードの画面に映っているユーザーネームの一覧の一番上に
【孤高 センリ】
センリの名前があったのだ。使用するトライブもアクセルトライブと記載されているので、センリで間違いないだろう。
イクサは無意識の内にワールド・バトル・ボードに百円を投入し、ライセンスカードを読み込ませた。
そんな自分の流れるような動作に、自分でも戸惑う。
「……っ、でも、やるしかないよね」
イクサは意を決してセンリに対戦を申し込んだ。
☆☆☆☆☆
「センリ様」
「なんだ?」
孤高グループの本社の一室にて、センリのボディーガードも兼任しているチサメがセンリに声をかけた。
「ネットにて、センリ様に対戦を申し込んだカードマスターが1名居ります、ニンニン」
「申し込みを拒否してくれ。野良マスターに構っているほど、僕は暇じゃない」
「……ですが、申し込みをしたのは、あの聖野イクサにございまする」
「……なに?」
今までチサメに背を向けてセンリが、初めて向き直った。
「それは本当か?」
「こちらにございまする」
チサメはセンリにPCを手渡す。
手渡されたPCには確かに【聖野イクサ】という表示がある。
センリは思わず笑う。
「アンリミテッドガーディアンの力を見ても尚、この僕に挑んでくるとはな」
小さく「面白い」と呟く。
「そうでなくては張り合いが無いぞ、聖野イクサ!」
センリは【了承】の項目にカーソルを合わせ、クリックした。イクサからの対戦申込みを受け入れたのだ。
☆☆☆☆☆
―――試合開始から30分後。
【イクサのフィールド】
【アタックガーディアン】
【カオス・ナイト】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【3500】
LP【6000→2500】
【センリのフィールド】
【アクセル・メテオ】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【アクセル】
DG【1700】
LP【5000→3300】
「くっ」
バトル開始から約6ターン、戦況はイクサの方が若干不利だ。
【イクサのターンです】
ワールド・バトル・ボードの画面にイクサのターンを伝える表示が出される。
「このターンで、決めるしかない! 俺のターン、サイドデッキからドローし、フォースチャージ! さらに追加ドロー!!」
センリのチャージゾーンにはフォースが9枚、早ければ次のターンでアンリミテッドガーディアンが出てくるだろう。
「俺は、手札のアームドガーディアン【カオス・アームド・ブレイヴ】を召喚!」
【カオス・アームド・ブレイヴ】
SF【0】
GT【アームド/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【100】
「アームドアビリティ発動!」
【カオス・アームド・ブレイヴ】
【アームドアビリティ】
【起】(COST:このカードをアンダーカードとしてアタックガーディアンの下に置く)
┗あなたのアタックゾーンに【カオストライブ】のカードが存在する場合に発動できる。そのカードを素体とし、手札から【ブレイヴ】と名の付くクロスガーディアンをフォースを消費せずに召喚する。
「アタックゾーンの【カオス・ナイト】とアシストゾーンの【カオス・アームド・ブレイヴ】で、装着転成! 現れろ、クロスガーディアン【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】!!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
SF【6】
GT【クロス/アタック】
Tr【カオス】
DG【3500】
LP【7500→4000】
【サモンコンディション】
┗このカードはフォースを消費して手札から召喚できない。【カオス・ナイト】と名の付くカードを素体とし、【カオス・アームド・ブレイヴ】のアームドアビリティの効果でのみ手札からフォースを消費せずに召喚できる。素体となったカードはこのカードのアンダーカードとなる。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードが、あなたのアタックゾーンに存在する限り、あなたは自分のターンのエンドフェイズ時に、あなたのフォースを全て裏状態にしなければならない。
「トライブアビリティ発動! 魂の継承!!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
【トライブアビリティ】
【永】
┗このカードは、全てのアンダーカードの能力を受け継ぐ。
【自】(セットフェイズ終了時)
┗このターンのダイスステップをスキップし、フォースを消費しないでバトルフェイズに移行する。相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xは、このカードのアンダーカードの枚数とあなたのチャージゾーンに表状態で存在するフォースの枚数の合計×500)
「アンダーカードの枚数は8枚、フォースの枚数は7枚。よって、合計枚数は15枚! よって、アクセル・メテオに7500のダメージを与える!」
アクセル・メテオの残りLPは3300、このままいけばイクサの勝利である。
☆☆☆☆☆
「クロスガーディアン。なるほど、それが貴様が見出だしたカードか。中々良いカードだ、だが……僕を倒すには遠く及ばない」
センリは自分の手札からカードを選択する。
「プリベントアビリティ、発動!」
【アクセル・リフレクター】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードを含めた3枚の手札のカードをジャンクゾーンに送り、このターンのバトルフェイズ中に発生したダメージ効果1つの数値を0にする。
「この効果により、カオス・ナイト・ブレイヴのダメージ効果は0となる」
バトルフェイズが終了し、そのままエンドフェイズに移行。イクサのフォースが全て裏状態になる。
【センリのターンです】
「僕のターン、ドロー」
ドローしたカードを見て、思わずニヤリと笑う。
「フォースチャージして、追加ドロー。さあ、僕に見せてくれ……貴様の足掻きを」
召喚するカードを手札から選択する。
「フォースを9枚消費し、極限召喚! 極限を超えし大いなる龍【極限龍 アクセル・ドライブ・ドラゴン】!!」
【極限龍 アクセル・ドライブ・ドラゴン】
SF【9】
GT【アンリミテッド/アタック】
Tr【アクセル】
DG【1700】
LP【∞→∞】
「僕はこれでターンエンドだ。さあ、どう来る聖野イクサ?」
センリはイクサがどのような戦術でアクセル・ドライブ・ドラゴンを迎え撃つのか、期待にも似た感情を抱く。
【イクサのターンです】
ターンがイクサのターンに移行する。
センリはイクサの行動を待つ。
………………………………………。
………………………………………………。
…………………………………………………………。
しかし、待てども待てども、イクサの行動が無い。
イクサのターンになってから、10分ほど経つ。
「………」
センリの顔は、先程と打って変わってとても冷めた表情になっていた。
☆☆☆☆☆
「……駄目だ、打開策が、見つからない」
イクサは項垂れ、思わずサレンダーのボタンを見つめる。
あのボタンを押せば、楽になれる。そう思いながら。
気づけば、体が勝手にサレンダーボタンに手を伸ばしていた。
あと少しで届くかという距離になった瞬間、
【センリが席を外しました。これよりNPCによるプレイとなります】
突如表示されたメッセージに、イクサの顔が青くなる。
見透かされたのだ、イクサの抱いた感情全てに。自分から申し込んだセンリとのバトルを自分で放棄したことに。
自分がしでかしたカードマスターとして最低な行為に、イクサは嗚咽を漏らす。
イクサは、バトルを続けた。さっきの自分の行動を悔いるかのように。
結果として、勝ったのはイクサだった。
だがそれは、実力でもぎ取ったものではない。
センリのバトルを引き継いだAIはアクセル・ドライブ・ドラゴンのアンリミテッドアビリティによって付加された特殊敗北条件を邪魔だと認識したのか、新たなアタックガーディアンを召喚してアクセル・ドライブ・ドラゴンを戦場から追い出したのだ。あとは再びカオス・ナイト・ブレイヴのトライブアビリティを再度発動させたイクサの勝ちである。
当然この結果に、イクサは満足しない。
「俺は、最低だ……何が、孤高センリの宣戦布告を受け取る、だ……」
初めてカオス・ナイトを召喚した時、イクサはセンリからの宣戦布告を受け取ると心に誓った。
だが、今の体たらくにイクサは己が恥ずかしくて仕方ない。
「何が、全国大会優勝、だ……」
今のままでは何にも手が届かない。自分は全く成長していないことを、イクサは痛感した。
イクサはゲームセンターを後にし、近くのカードショップでカードパックを購入してから、トボトボ歩いて帰宅していた。
そんな時だ。
―――マスター―――
巫女ナイトの声がイクサの脳内に響いた。
「どうしたの、巫女ナイト?」
―――マスターに、会っていただきたい人がいます―――
「俺に、会っていただきたい人?」
―――はい、こちらです―――
巫女ナイトに案内され、イクサはそれに従って歩き出す。
暫くしてたどり着いたのは、園生カンナの墓がある神代霊園だった。
薄暗い霊園に微かな光が灯っており、ちょっとした薄気味悪さがある。
「ここ……なの?」
―――はい、ここです―――
「……」
イクサは意を決して、霊園に足を踏み入れる。
ここを訪れるのは、ユキヒコの後を追って来た時以来である。
数分ほど歩くと、カンナの墓石の前に、巫女服を身に纏った女性が立っていた。
遠目から見ると、まるで幽霊のようにも見える。
イクサは「ごくり」と唾を飲んで、恐る恐る女性に近づく。どうか人間でありますように。
イクサの気配に気づいたのか、女性がイクサに視線を移す。
「おや? この時間に墓参りとは珍しいですね」
「いや……墓参りに来たわけじゃなく……」
「そうなのですか? てっきり、この方に会いに来たのかと」
そう言うと、女性はカンナの墓石を撫でる。
「ですが、残念なことですよね」
「え……?」
「この墓の中には、肉体も無ければ魂も無いのです。肉体は別の場所に安置され、魂は別の世界に守護者として存在しています」
女性は今度はしっかりとイクサを視界に入れる。
「ですから、この墓石は……単なる飾りにしか過ぎないのです」
「は、はあ……」
「それで、墓参りでなければ何用でここを訪れたのでしょうか?」
「いや、その……俺は、案内されただけであって」
「案内……?」
女性はイクサの手にあるデッキケースに視線を移した。
「すみません。デッキケースのカードを拝見してもよろしいでしょうか?」
「は、はい……」
イクサは女性にデッキを手渡す。
「……」
デッキを受け取った女性はデッキのカードをめくって、1枚1枚確認していく。
巫女ナイトのカードをめくった時、女性の手が止まった。
数秒の間、巫女ナイトを見つめる。
「……なるほど。そういうことですか」
女性は何度も頷き、イクサに笑顔を浮かべてデッキを返す。
「事情は理解しました。お返しします」
「ど、どうも……」
「では早速……カードバトルをすることにしましょうか」
「……はい?」
女性は巫女服の袖の中からデッキを取り出した。
「あ、あの……なぜいきなりカードバトルを?」
「貴方はカードバトルに恐怖し、その恐怖故に、カードマスターとして一番大事なモノが見えなくなっています。それを見つめ直すためには言葉による説明より、カードバトルをすることが一番適していると私は考えました」
「一番大事なモノ……」
巫女ナイトと同じ事を言う女性。
イクサは何か運命のようなモノを感じ、自身のデッキを構える。
「分かりました。そのバトル、受けて立ちます!」
「はい。私が本当の強さというものを教えて差し上げます」
女性もまた、自分のデッキを構える。
バトルをする前に、女性はイクサに話しかける。
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。私の名前は【神代ツクヨミ】。この神代霊園の管理人です。貴方は?」
「俺は聖野イクサです」
「では、聖野さん。ルールは最新のマスターズルールで構いませんね?」
「はい。ルールは覚えてます」
「では……バトル・ワールドを展開します!」
そう言って、ツクヨミは手元からスイッチを取り出して押した。
すると、辺り一帯が透明なドームのようなもので覆われる。
さらに、ツクヨミとイクサの前にテーブルが出現した。
「これは……」
イクサは辺りを見渡す。
「一体、なにが……?」
「これは、バトル・ワールド。カードバトルをよりスリリングなものにするために作られた世界です」
ツクヨミはテーブルのデッキゾーンにデッキを置く。
「先攻は貴方に譲ります」
「は、はい……」
イクサもデッキゾーンにデッキを置く。
最初に召喚するカードを手元にキープしておき、デッキをシャッフル。
4枚ドローして、マリガンをする。
手札入れ換えが完了し、手元にキープしておいたカードを含めた5枚の手札が揃う。
だが、
(SF【2】とSF【3】のガーディアンが無い……)
手札はあまりよろしくないようだ。
「どうしたんですか、貴方の先攻ですよ?」
「え…ええ……。俺の先攻、ドロー!」
カードを確認する。カウンターカードだった。
(これも違う)
イクサはそのカードをチャージゾーンに置く。
「フォースチャージ! そして、追加ドロー!!」
再び、ドローしたカードを確認する。
SF【4】のカードだった。
(これも、違う……)
手札にカードを加える。
そして、カードの効果を発動させる。
「フォースを1枚消費し、手札からこのカードを召喚!!」
【カオス・ベビーナイト】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1500】
バトル・ワールドのシステムによって、カオス・ベビーナイトが実体化する。
3Dビジョンではない。
「ガーディアンが、実体化した……」
イクサは目を見張るが、すぐに手札に視線を戻す。
先攻は最初、バトルフェイズを行えない。
今、表状態で使われていないフォースは1枚。
「さらに、俺は手札からアシストガーディアン【カオス・サポーター】を召喚!!」
【カオス・サポーター】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【200】
「サポーターのアシストアビリティを発動する!」
【カオス・サポーター】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:このカードとフォース1枚をジャンクゾーンに置く)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたは自分の山札からカードを2枚、チャージゾーンに表状態で置く。
「サポーターと裏状態のフォースをジャンクゾーンに送り、メインデッキのカードを2枚チャージゾーンに置く! さらに!!」
イクサは手札のカードを選択する。
「フォースを2枚消費し、アシストガーディアン【カオス・巫女・ナイト】を召喚!」
【カオス・巫女・ナイト】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1700】
「俺はこれでターンエンド!」
「では、私のターン。メインドローし、フォースチャージ。さらに手札のカードをさらにチャージします」
マスターズルールにおけるビギナーズルールとの大きな違い、それはメインデッキからドローしてフォースチャージした場合、追加でドローするか手札のカードを追加でチャージするか選べる。
よって、ツクヨミの手札のカードをさらにチャージゾーンに置き、現在フォースが2枚ある。
「私は手札からアタックガーディアン【エンジェリック・ビギナー】を召喚!」
【エンジェリック・ビギナー】
SF【0】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンジェリック】
DG【0】
LP【500】
両手に拳銃を持ち背中から翼が映えた美少年が現れた。
「ビギナーのポテンシャルアビリティを発動します!」
【エンジェリック・ビギナー】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札の上から2枚のカードをマテリアルカードとしてこのカードの下に置く。その後、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
「よって、デッキトップのカードを2枚、マテリアルセット。そしてドロー!」
エンジェリック・ビギナーの下に、裏向きでカードが置かれる。
「さらに、手札からアシストガーディアン【エンジェリック・ダイバー】を召喚!」
【エンジェリック・ダイバー】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【エンジェリック】
DG【0】
LP【200】
「ダイバーのアシストアビリティを発動します!」
【エンジェリック・ダイバー】
【アシストアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分の山札の一番上のカードをめくって公開する。そのカードが【エンジェリックトライブ】のガーディアンカードならば、そのカードを手札に加え、このカードをマテリアルカードとしてあなたのアタックガーディアンの下に置く。【エンジェリックトライブ】のガーディアンカードでないなら、そのカードをジャンクゾーンに送る。
「デッキトップのカードを公開」
【エンジェリック・バトラー】
Tr【エンジェリック】
「エンジェリック・バトラーはエンジェリックトライブのカードです。よって、このカードを手札に加えて、エンジェリック・ダイバーをマテリアルセット!」
エンジェリック・ダイバーを裏向きにして、エンジェリック・ビギナーの下に置かれる。
「これで、ビギナーの下に置かれたマテリアルカードは3枚です」
「マテリアルカード……」
マテリアルカードとは、バーストアビリティを発動するための使い捨てのコストとしてアタックガーディアンの下に裏向きで置かれるカードの総称である。
「そして、ビギナーのバーストアビリティを発動します!!」
「バーストアビリティ……っ!!」
【エンジェリック・ビギナー】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード3枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の上から5枚を閲覧し、好きな順番に並べかえ山札の上から順に置く。
「5枚を閲覧。このカード達を好きな順番に並べかえます。そして、デッキに戻します」
「……それ、何の意味があるんですか?」
イクサは内心拍子抜けしていた。
バーストアビリティは、使い捨てのマテリアルカードをコストにしているため、強力な効果を秘めている。故に、山札のカードを好きな順番に並べかえる効果に違和感を感じる。
「貴方は、エンジェリックトライブのトライブアビリティを知らないのですね」
「エンジェリックトライブの、トライブアビリティ?」
「では、見せてあげます! エンジェリックトライブのトライブアビリティを発動! 【天使達の降臨】!!」
【エンジェリック・ビギナー】
【トライブアビリティ】
【自】(セットフェイズ終了時)
┗あなたはガーディアンカードの名前を1つ宣言して、自分の山札の一番上のカードをめくって公開する。公開したカードが宣言したカード名だった場合、そのカードをマテリアルカードとしてこのカードの下に置き、相手のアタックガーディアンにX00ダメージを与える。(Xの値は、公開したカードのSF) また、公開したカードが宣言したカードでなかった場合、そのカードを自分の山札の一番下に置く。この効果は、1ターンに3回まで発動できる。
「私は、【エンジェリック・バスター】を宣言します。デッキトップを公開!」
【エンジェリック・バスター】
SF【3】
公開したカードは、宣言した通りのカード名だった。
「よって、このカードをマテリアルセット! そして、相手のアタックガーディアンに300ダメージを与えます!!」
「くっ……!!」
【カオス・ベビーナイト】
DG【0→300】
LP【1500→1200】
「まだです。この効果は1ターンに3回使えます。よって、あと2回発動可能です。私が次に宣言するのは、【エンジェリック・セイバー】。デッキトップを公開します」
【エンジェリック・セイバー】
SF【5】
「このカードをマテリアルセットし、500ダメージをあなたのアタックガーディアンに与えます!」
「くっ、さすがにLPが1000を切るのはマズイ! 巫女ナイトのカウンターアビリティを発動する!!」
【カオス・巫女・ナイト】
【カウンターアビリティ】
【自】(カウンターステップ時)
┗1ターンに一度、自分のアタックガーディアンに与えられるダメージ効果をこのカードに変更できる。ただし、ダメージ効果の対象がこのカードであら場合、この効果は発動できない。
「よって、ダメージ対象を巫女ナイトに変更する!」
〈下がっててください!〉
〈は、はい!〉
巫女ナイトはベビーナイトの前に立ち、ベビーナイトに後方に下がるよう命令する。
巫女ナイトは攻撃を受けた。
〈きゃあ!!〉
【カオス・巫女・ナイト】
DG【0→500】
LP【1700→1200】
「まだ、あと1回あります。私は、【星天使 ミカエル】を宣言します! デッキトップを公開!」
【星天使 ミカエル】
SF【2】
「宣言した通りのカードなので、マテリアルセットして、200ダメージを与えます!」
今度はベビーナイトが攻撃を受ける。
〈うぐっ!〉
【カオス・ベビーナイト】
DG【300→500】
LP【1200→1000】
これで、やっとエンジェリックトライブのトライブアビリティの効果処理が終了した。
イクサは一息つく。
しかし、ツクヨミは自身のサイコロを手に持つ。
「安心しているところ申し訳ありませんが、忘れていませんよね? 私にはまだ、ダイスステップがあります」
「っ?!」
ツクヨミはサイコロをテーブルに落とす。
落ちたサイコロはコロコロと回転し、目が確定する。
サイコロの目は、【3】
【エンジェリック・ビギナー】
【1】【2】【3】……相手のアタックガーディアンに150ダメージ与える。
【4】【5】【6】……相手の山札の上からカードを3枚、ジャンクゾーンに送る。
「確定した効果により、ベビーナイトに150ダメージを与えます!!」
エンジェリック・ビギナーが持つ銃から放たれた銃弾がベビーナイトを貫く。
【カオス・ベビーナイト】
DG【500→650】
LP【1000→850】
「私はこれでターンエンドです」
「俺のターン、ドロー! フォースチャージしてドローを選択! さらに追加ドロー!!」
カードを確認。
いずれも、SF【2】とSF【3】ではない。
イクサは苦虫を噛み締めた表情を浮かべながらカードを手札に加える。
「セットフェイズ時、俺はライフカウンターを2つ消費し、メインデッキからカードを2枚ドローします!!」
【聖野イクサ】
LC【4→2】
イクサのライフカウンターが2つ消費された。
イクサはドローした2枚のカードを確認する。
やはり、欲しいカードが来ない。
「求めるカードは来ないようですね」
「……」
「なぜデッキが貴方に応えないか……分かりますか?」
「デッキが、俺に応えない……?」
「そうです。貴方の手元に貴方が求めるカードが来ないのは、単に貴方の引きが悪いのではなく、彼らが貴方に力を貸すのを拒んでいるからです」
「そんな……カードが、拒んでる?」
「はい。なぜだと思いますか?」
「っ……」
「分かりませんよね? 分からないからこそ、貴方は今、ここで私とカードバトルをしているのですから」
ツクヨミは、イクサを指差す。
「貴方が心に抱く恐怖心……絶対的な力に敗北する圧倒的恐怖、それに囚われているが故に……今の貴方は自分のカードを、デッキを一切信じていないのですよ」
「っ?!」
イクサは自分の手札のカード、そしてデッキに視線を移す。
「俺が、カオストライブを……信じていない?」
「信じていないからこそ、敗北する恐怖に拘束されるのです。そして信じていないからこそ、カードも貴方の求めには決して応えない」
「う、嘘です! 俺は、自分のデッキを信じています!!」
「では、なぜ貴方は、恐怖しているのですか?」
「そ、それは……」
「カードを信じ、デッキを信じる人は決して、敗北に恐怖しません。むしろ、揺るぎない勝利への強い確信を持つものです」
「そ、それは……」
「聖野イクサさん。貴方にとって、弱さとは何ですか?」
「え……?」
弱さ……ツクヨミが問いかけてくるその言葉の意味を、イクサは考える。
ツクヨミは構わず、イクサに問いを投げ掛ける。
「弱さとは、恥ですか? 枷ですか? 醜さですか? 悪ですか? 貴方にとって、貴方の中に存在する“弱さ”とは一体……何ですか?」
「弱さは……俺の中の弱さは……」
イクサの中で現れては消えていく感情。
イクサは、センリの持つ圧倒的な力……アンリミテッドガーディアンに恐怖した。
恐怖心を拭うためにデッキ構築に励んでも、頭に浮かぶのは自分の敗北。
心のどこかで決めつけていた。
カオストライブのカードでは勝てない、このデッキでは勝てない、と。
自分もアンリミテッドガーディアンを手に入れない限り、センリには勝てない、と。
そう。イクサは、共に戦ってきた仲間ではなく、ポッと出の強大な力を……信じてしまったのだ。
それこそが、イクサの弱さ。そして、その弱さに見て見ぬフリをしていた自分。
認めてしまえば、自覚してしまえば、なんてことはない。
情けない。そして不甲斐ない。
そんな想いが沸き上がってくる。
このデッキと共に、このトライブと共に、最後まで戦い抜く。そう決めたはずなのに……
なぜ自分は、簡単に自分の信念を曲げてしまったのか。
センリのアンリミテッドガーディアンには、それほどの魔力があるということか。いや、これは言い訳に過ぎない。
自分は、屈してしまったんだ。
自分の中の弱い自分が、強い力に屈服してしまったんだ。
でも、屈服したままではいられない。
「俺の弱さは……」
イクサは、自分の意思をツクヨミに伝える。
「俺の中の弱さは、敗北から逃げたこと」
弱さから目を反らしてはいけない。
「それは、弱い自分を拒む虚栄に満ちた自分……」
弱さを否定してはいけない。
「だからこそ、それを受け入れなきゃいけない。自覚しなきゃいけない」
強さと弱さは1枚のカードのようなもの。決して切り離せない表裏一体の概念。
弱さを認めずして、真の強さは手に入れられない。
「そうだ、俺は……まだまだ弱い」
最後に叫ぶように……吐き出すように言い放つ。
「俺は、強くなりたい! そのために、弱い自分を受け入れて、強さの糧にする!!」
「それが、貴方が見つけた……自分を見つめ直した貴方が掴んだ答えですか?」
「はい!」
イクサは再び、手札のカードを見る。
もう二度と、自分や仲間を裏切ったりしない。
そう強く思った時、カードが一瞬、輝いた気がした。
「俺は、これでターンエンド!」
「なら、私のターン。メインドローし、フォースチャージ。チャージを選択し、さらにチャージ!」
ツクヨミのチャージゾーンには、カードが4枚置かれている。
「手札の【エンジェリック・ナックラー】のポテンシャルアビリティを発動!」
【エンジェリック・ナックラー】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗あなたの自分フィールド上のアタックゾーンに存在するガーディアンの持つマテリアルカードが3枚以上の時、手札のこのカードは召喚制限を受けずに召喚できる。
「よって、私はフォースを3枚消費し、召喚制限を無視して手札からアタックガーディアン【エンジェリック・ナックラー】を召喚!!」
【エンジェリック・ナックラー】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンジェリック】
DG【0】
LP【3000】
エンジェリック・ナックラーが召喚された瞬間、イクサのサイドデッキが一際強く輝いた。
「これは……」
イクサは手を伸ばし、光を掴む。
光が集束し、カードとなる。
カードを見て、イクサは小さく「ありがとう……」と呟く。
そして、カードを掲げる。
「我が思いに応えし、混沌の仲間よ! 戦場を駆け抜けろ!! 神速召喚! 【神速銃使い カオス・シューター】!!」
【神速銃使い カオス・シューター】
SF【3】
GT【スピード/アタック】
Tr【カオス】
DG【650】
LP【3500→2850】
【サモンコンディション】
┗このカードは相手がSF【3】以上のガーディアンを召喚した時、手札またはサイドデッキからフォースを消費せずに召喚できる。
「トライブアビリティ発動! 魂の継承!!」
【神速銃使い カオス・シューター】
【トライブアビリティ】
【永】
┗【カオストライブ】のガーディアンを召喚したアピアステップ時、前のガーディアンはアンダーカードとして、このカードの下に置かれる。このガーディアンは下に置かれたアンダーカードの能力を全て受け継ぐ。
「さらに、ポテンシャルアビリティを発動する!」
【神速銃使い カオス・シューター】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(アピアステップ時)
┗このカードを召喚したターン、相手はバトルフェイズを行うことはできない。このターンのエンドフェイズ時に、あなたは自分のサイドデッキからカードを1枚ドローし、ジャンクゾーンから【カオストライブ】のカードを1枚まで選択してこのカードのアンダーカードにする。
「カオス・シューターの効果により、貴女はバトルフェイズを行うことはできない!」
「なるほど、スピードガーディアンですか。では、エンジェリック・ナックラーのバーストアビリティを発動させます!」
【エンジェリック・ナックラー】
【バーストアビリティ】
【起】(マテリアルカード2枚をジャンクゾーンに送る)
┗相手のアシストゾーンに存在するアシストガーディアンを1体まで選び、ジャンクゾーンに送る。その後、あなたは自分の山札の上から2枚のカードをこのカードの下にマテリアルカードとして置く。
「マテリアルカードを2枚消費し、貴方のカオス・巫女・ナイトをジャンクゾーンに送ります!」
エンジェリック・ナックラーのパンチが、巫女ナイトの腹部を抉る。
〈ぐっ?!〉
巫女ナイトはそのままジャンクゾーンにへと送られた。
発動条件を満たしていないため、巫女ナイトのアシストアビリティは発動しない。
「新たにメインデッキからマテリアルカードを2枚補充し、ターンエンドです」
「エンドフェイズ時! 俺はカオス・シューターの効果によって、サイドデッキからカードを1枚ドローする! そして、ジャンクゾーンのカオス・サポーターをアンダーカードにする!」
サイドデッキからカードをドローし、手札に加える。
そのままイクサのターンになる。
「俺のターン。メインドローし、フォースチャージ! チャージを選択し、さらに手札のカードをチャージする!!」
これで、チャージゾーンに置かれたフォースの枚数は4枚。
イクサは、カオス・シューターの効果でドローしたカードを掲げる。
「俺は手札のこのカードを、沈黙召喚する!」
アシストゾーンに、カードを裏向きのまま召喚する。
「沈黙召喚……スピードガーディアンの次はライズガーディアンですか」
「ええ。沈黙召喚中は、俺はアシストガーディアンを召喚することはできません。これでターンエンドです!」
「では、私のターン。メインドローし、フォースチャージ。チャージを選択、さらにチャージします!」
一方のツクヨミのチャージゾーンには、フォースが6枚ある。
「セットフェイズ時、私もライフカウンターを2つ消費します」
【神代ツクヨミ】
LC【4→2】
「よって、メインデッキからカードを2枚ドローします!」
ドローした2枚のカードを手札に加える。
チャージフェイズ中に、フォースチャージした後にチャージを選択し続けたツクヨミ。
よって、手札が3枚という状況だったが、この2ドローによって一気に手札が5枚となった。
「私はフォースを5枚消費して、手札からアタックガーディアン【星天使 セラフィム】を召喚します!」
【星天使 セラフィム】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンジェリック】
DG【0】
LP【5000】
〈星に導かれし我らの力、今ここに解放する!〉
ビーム砲を2つほど腰にセットした、美形の大天使が降臨した。
「セラフィムのポテンシャルアビリティを発動します!」
【星天使 セラフィム】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗このカードの前のアタックガーディアンはジャンクゾーンに送られず、マテリアルカードとしてこのカードの下に置かれる。その後、相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。この効果を発動したターン、あなたはバトルフェイズを行えない。(Xは、このカードが持つマテリアルカードの枚数×800)
「セラフィムが持つマテリアルカードの枚数は4枚です」
セラフィムの周りに、4つの光の結晶が浮かび、ビーム砲に装填されていく。
「よって、貴方のアタックガーディアンに3200のダメージを与えます!」
「ッ?!」
カオス・シューターのLPは2850。
このままでは、イクサの敗北となってしまう。
イクサはフォースを1枚裏返す。
「フォースを1枚消費し、手札からカウンターカード【ハーフダメージ】を発動!」
【ハーフダメージ】
FORCE【1】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ)
┗あなたは自分のガーディアンを1体まで選び、そのカードが受けるダメージ1つの数値を半分にする。
「よって、カオス・シューターが受けるダメージは1600となる!」
【神速銃使い カオス・シューター】
DG【650→2250】
LP【2850→1250】
「なんとか、耐えられた……」
「なにを安心しているんですか?」
「え……?」
「まだ私のセットフェイズは終了していません。バーストアビリティを発動します!」
「っ?!」
【星天使 セラフィム】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード3枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札のカードを上から10枚めくって閲覧し、あなたの好きな順番に並び替える。その後、並び替えたカードを山札の上に戻す。この効果を発動したターンのエンドフェイズ時に、山札の上から2枚のカードをマテリアルカードとしてこのカードの下に置く。
「マテリアルカードを3枚消費し、メインデッキから10枚をめくって閲覧し、好きな順番に並び替えて山札の上に戻す。そして、トライブアビリティを発動します! 天使達の降臨!!」
【星天使 セラフィム】
【トライブアビリティ】
【自】(セットフェイズ終了時)
┗あなたはカード名を5つ宣言し、山札の上からカードを5枚めくって公開する。その中に含まれている宣言したカードと同名のカードの枚数に応じて、以下の効果を選択して発動する。
【0】:めくって公開した5枚のカードを全てジャンクゾーンに送り、このターンのエンドフェイズを開始する。
【1〜2】:めくって公開した5枚のカードを全てジャンクゾーンに送り、あなたは相手の手札のカードを3枚まで選んでジャンクゾーンに送る。
【3〜4】:めくって公開した5枚のカードを全てジャンクゾーンに送り、あなたは相手の山札のカードを10枚、ジャンクゾーンに送る。
【5】:めくって公開した5枚のカード全てをマテリアルカードとしてこのカードの下に置き、相手のアタックガーディアンのLPを半分にダウンする。
「私が宣言する5枚のカードは、【ハーフダメージ】、【エンジェリック・コマンダー】、【停戦契約】、【星天使 ケルディム】、【真実の鏡】! カードをめくって、公開します」
5枚のカードが公開される。
【ハーフダメージ】
【エンジェリック・コマンダー】
【停戦契約】
【星天使 ケルディム】
【真実の鏡】
全て、宣言したとおりのカードである。
「よって、この5枚のカードを全てマテリアルセットし、貴方のアタックガーディアンのLPを半分にダウンさせます!」
「っ?!」
【神速銃使い カオス・シューター】
DG【2250→2250】
LP【1250→625】
「そんな……カオス・シューターのLPが、たったの625に!?」
「エンドフェイズ時、バーストアビリティの効果によって、さらにメインデッキの2枚のカードがマテリアルセットされます」
セラフィムの下に2枚のカードがマテリアルカードとして置かれる。
現在、下に置かれたマテリアルカードの合計枚数は8枚である。
「これで、ターンエンドです」
「俺のターン、メインドロー! フォースチャージして、さらにチャージ!! チャージゾーンのカードが5枚以上になったことで、このカードの沈黙を解放する! 覚醒降臨!! 現れろ、【覚醒斧使い カオス・スマッシャー】!!」
【覚醒斧使い カオス・スマッシャー】
【サモンコンディション】
┗このカードは手札から召喚する場合、裏状態であなたのアシストゾーンに召喚される。あなたのチャージゾーンのカードが5枚以上になった時、このカードを表状態にしてあなたのアタックゾーンにフォースを消費しないで召喚する。
「よって、アシストゾーンに存在するこのカードをアタックゾーンに召喚させる!」
【覚醒斧使い カオス・スマッシャー】
SF【5】
GT【ライズ/アタック】
Tr【カオス】
DG【2250】
LP【6500→4250】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗あなたは自分のジャンクゾーンに存在するカードを1枚まで選らんでこのカードのアンダーカードにする。
「ポテンシャルアビリティにより、ジャンクゾーンに存在するハーフダメージをカオス・スマッシャーのアンダーカードにする。そして、カオス・スマッシャーのトライブアビリティを発動! 魂の継承!!」
【覚醒斧使い カオス・スマッシャー】
【トライブアビリティ】
【永】
┗このカードがアタックゾーンに召喚されたアピアステップ時、前のアタックガーディアンはアンダーカードとなり、このカードの下に置かれる。このカードは、アンダーカードの能力を全て受け継ぐ。
【自】(このカードがアタックゾーンに召喚されたアピアステップ時)
┗1ターンに一度、あなたは自分のジャンクゾーンからSF【2】以下のアシストガーディアンをアシストゾーンにフォースを消費せずに召喚できる。この効果を発動したターン、セットフェイズを終了してダイスステップをスキップし、フォースを消費せずにバトルフェイズに移行する。相手のアタックガーディアンに4000ダメージを与える。
「よって、俺はジャンクゾーンから【カオス・巫女・ナイト】をノーコストで召喚する! 再び戦場に舞い戻れ、巫女ナイト!!」
【カオス・巫女・ナイト】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1700】
「そして、スマッシャーの効果により、4000ダメージを与える!!」
「ならば、私は手札からカウンターカード【聖竜騎士の誓い】を発動します!」
【聖竜騎士の誓い】
FORCE【0】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたはカード名を宣言する。そうしたら、自分の山札の一番上のカードを1枚めくって公開し、そのカードが宣言したカード名と同名ならば、そのカードをあなたの手札に加え、違った場合はジャンクゾーンに送る。このサイクルを3回行い、3回ともめくったカードが宣言したカードと同名だった場合、このターンにあなたのアタックガーディアンが受けるダメージは全て0になる。
「私は、【エンジェリック・マイスター】を宣言し、デッキトップを公開!」
【エンジェリック・マイスター】
「宣言したカード名と同名なので、このカードを手札に加えます。そして、私は次に【ハーフダメージ】を宣言し、デッキトップを公開します!」
【ハーフダメージ】
「先程と同様、手札に加えます! 3回目、私は【エンジェリック・フォール】を宣言します! デッキトップを公開!」
【エンジェリック・フォール】
「手札に加えます。よって、3回とも宣言したとおりのカードだったので、セラフィムが受けるダメージは0になります!!」
「くっ……」
【星天使 セラフィム】
DG【0→0】
LP【5000→5000】
「俺は、これでターンエンドです」
「では、私のターンですね。メインドロー! フォースチャージし、さらにチャージ!!」
これで、ツクヨミのチャージゾーンに置かれたカードは8枚。
「フォースを6枚消費し、手札からアタックガーディアン【エンジェリック・バスターロード】を召喚!」
【エンジェリック・バスターロード】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンジェリック】
DG【0】
LP【6000】
「バーストアビリティを使いたいところですが、今は発動させません。ダイスステップです!」
サイコロを振り、目が確定する。
ツクヨミのサイコロの目は、5。
【エンジェリック・バスターロード】
【1】【2】【3】……相手の手札をランダムに1枚まで選び、ジャンクゾーンに送る。そうしたら、あなたの山札の一番上のカードをマテリアルカードとしてこのカードの下に置く。
【4】【5】【6】……相手のアタックガーディアンに3500ダメージを与える。そうしたら、あなたの山札の一番上のカードをマテリアルカードとしてこのカードの下に置く。
「よって、カオス・スマッシャーに3500のダメージを与えます」
「巫女ナイトのカウンターアビリティを発動!」
【カオス・巫女・ナイト】
【カウンターアビリティ】
【自】(カウンターステップ時)
┗1ターンに一度、自分のアタックガーディアンに与えられるダメージ効果をこのカードに変更できる。ただし、ダメージ効果の対象がこのカードである場合、この効果は発動できない。
「巫女ナイト、頼む!」
〈はい、マスター!〉
巫女ナイトはカオス・スマッシャーの前に出て、バスターロードの攻撃を代わりに受ける。
〈ハアァァァァ!!〉
〈くっ…きゃあ!!〉
【カオス・巫女・ナイト】
DG【0→3500】
LP【1700→0】
LPが0になったことで、巫女ナイトはジャンクゾーンに送られる。
現在、イクサのチャージゾーンにはフォースが6枚ある。
条件を満たしているので、巫女ナイトのアシストアビリティを発動することが可能である。
「巫女ナイトのアシストアビリティを発動する!」
【カオス・巫女・ナイト】
【アシストアビリティ】
【自】(このカードがアシストゾーンからジャンクゾーンに送られた時)
┗この効果は、あなたのチャージゾーンのフォースが5枚以上なら発動できる。フォースを2枚消費し、あなたの山札から【カオス・ナイト】をフォースを消費せずに召喚する。
「フォースを2枚消費し、メインデッキから【カオス・ナイト】を召喚!」
【カオス・ナイト】
SF【5】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【2250】
LP【6000→3750】
「そして、巫女ナイトの効果で召喚された時、ポテンシャルアビリティが発動する!」
【カオス・ナイト】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードが【カオス・巫女・ナイト】の効果によって召喚された時)
┗相手のガーディアンを1体まで選択し、2000のダメージを与える。
「よって、バスターロードに2000ダメージを与える!」
「……っ!」
【エンジェリック・バスターロード】
DG【0→2000】
LP【6000→4000】
ツクヨミはカオス・ナイトのカードを見た後、イクサの方を見て小さく微笑む。
「ふふ。たとえ離れたとしても、魂はいずれ……再び巡り会えるのですね」
「え……?」
「いえ、ただの独り言です。私はこれでターンエンドです」
「なら、俺ターン、メインドロー! そしてフォースチャージし、さらにチャージ!!」
イクサは手札のカードとフィールドを確認する。
「トライブアビリティによって、カオス・ナイトは仲間の魂を全て受け継ぐ! 魂の継承!!」
【カオス・ナイト】
【トライブアビリティ】
【永】
┗このカードを召喚したアピアステップ時、前のガーディアンはこのカードのアンダーカードとなる。このカードは全てのアンダーカードの能力を受け継ぐ。
【起】(COST:フォースを1枚消費する)
┗あなたは自分の手札からカードを1枚選択してこのカードのアンダーカードにできる。
「フォースを1枚消費して、手札のカードを1枚選んでカオス・ナイトの下に置く!」
カオス・ナイトに、下に置かれたカードの能力が受け継がれる。
場にはカオス・ナイトがおり、手札にはとあるカードがある。
あとは、サイドデッキから“あのカード”を引けばよい。
「手札からアシストガーディアン【カオス・チャージメント】を召喚!」
【カオス・チャージメント】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【150】
「チャージメントの効果発動!」
【カオス・チャージメント】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:このカードと手札1枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたは自分のサイドデッキからカードを2枚ドローする。
チャージメントの効果により、イクサはサイドデッキからカードを2枚ドローした。
ドローしたカードを見て、「よし」と小さく呟く。
「俺は手札から、アームドガーディアン【カオス・アームド・ブレイヴ】を召喚する!」
【カオス・アームド・ブレイヴ】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【100】
「アームドガーディアン……ということは」
「はい、アームドアビリティを発動します!」
【カオス・アームド・ブレイヴ】
【アームドアビリティ】
【起】(COST:このカードをアンダーカードとしてアタックガーディアンの下に置く)
┗あなたのアタックゾーンに【カオストライブ】のカードが存在する場合に発動できる。そのカードを素体とし、このカードを素体となるカードの下に置く。手札から【ブレイヴ】と名の付くガーディアンをフォースを消費せずに召喚する。
「俺は、アタックゾーンの【カオス・ナイト】とアシストゾーンの【カオス・アームド・ブレイヴ】で、装着転成!! 混沌騎士が勇気を秘めし鎧を纏う時、新たな希望が生まれる! 爆誕せよ、【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】!!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
SF【6】
GT【クロス/アタック】
Tr【カオス】
DG【2250】
LP【7500→5250】
【サモンコンディション】
┗このカードはフォースを消費して手札から召喚できない。【カオス・ナイト】と名の付くカードを素体とし、【カオス・アームド・ブレイヴ】のアームドアビリティの効果でのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。素体となったカードはこのカードのアンダーカードとなる。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードがあなたのアタックゾーンに存在する限り、あなたは自分のターンのエンドフェイズ時に、あなたのフォースを全て裏状態にしなければならない。
「そして、カオス・ナイト・ブレイヴのトライブアビリティを発動! 魂の継承!!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
【トライブアビリティ】
【永】
┗このカードは、全てのアンダーカードの能力を受け継ぐ。
【自】(セットフェイズ終了時)
┗このターンのダイスステップをスキップし、フォースを消費しないでバトルフェイズを開始する。相手にXダメージを与える。(Xは、このカードの下に置かれたカードの枚数とあなたのチャージゾーンに表状態で存在するカードの枚数の合計×500)
「カオス・ナイト・ブレイヴの下に置かれているカードの枚数とチャージゾーンに表状態で存在しているカード枚数は共に8枚! よって、8000ダメージをバスターロードに与える!!」
「なら、私は手札からカウンターカード【ハーフダメージ】を発動します。このカードの効果により、バスターロードが受けるダメージは半分になります。さらに、手札からプリベントアビリティを発動!」
【エンジェリック・アローズ】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。
【エンジェリック・バスターロード】
DG【2000→-1000】
LP【4000→7000】
【エンジェリック・バスターロード】
DG【-1000→3000】
LP【7000→3000】
「くっ……ターンエンド。エンドフェイズ時、俺のフォースは全て裏状態になる」
これで次のターン、イクサはハーフダメージなどの防御用のカウンターカードは使えない。
「私のターンですね。メインドローし、フォースチャージ! メインデッキからドローします!!」
ドローしたカードを横目で確認し、笑う。
「来ましたね。私のエースカードが」
「エース……カード?」
「はい。バスターロードのバーストアビリティを使わなかったのは、全てはこのカードの能力を使うためです」
チャージゾーンのカードが7枚、裏返る。
「フォースを7枚消費し、手札からアタックガーディアン【守護龍 エンジェリック・ドラゴン】を召喚!!」
【守護龍 エンジェリック・ドラゴン】
SF【7】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【エンジェリック】
DG【3000】
LP【7000→4000】
天使のような翼を8つ携えた巨大な白き龍が現れた。
「守護龍の、カード……」
「エンジェリック・ドラゴンのポテンシャルアビリティを発動します!」
【守護龍 エンジェリック・ドラゴン】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードのアピアステップ時)
┗前のガーディアンはジャンクゾーンに送られず、このカードの下にマテリアルカードとして置く。
「よって、バスターロードはマテリアルセットされます! そしてこれで……エンジェリック・ドラゴンが持つマテリアルカードの枚数が10枚になりました。バーストアビリティを発動します!」
【守護龍 エンジェリック・ドラゴン】
【バーストアビリティ】
【起】(COST:マテリアルカード10枚をジャンクゾーンに送る)
┗あなたは自分の山札の全てのカードを閲覧し、好きな順番に並べ替えてメインデッキゾーンに戻す。
「これにより、デッキのカードを全て閲覧し、好きな順番に並べ替えます」
ツクヨミはカードの並び替え、メインデッキゾーンにメインデッキを戻す。
「続いて、トライブアビリティを発動します! 天使達の降臨!!」
【守護龍 エンジェリック・ドラゴン】
【トライブアビリティ】
【自】(セットフェイズ終了時)
┗このターン、ダイスステップをスキップしてフォースを消費せずにバトルフェイズを開始する。あなたはカード名を宣言し、自分の山札の一番上のカードをめくって公開し、ジャンクゾーンに送る。公開したカードが宣言したカード名と同名だった場合、相手にXダメージを与える。(Xは、この効果で公開したカードのSF×850)。この効果は、1ターンに3回まで発動できる。
「私が宣言するのは、【エンジェリック・ナックラー】! デッキトップを公開します!」
【エンジェリック・ナックラー】
SF【3】
「宣言したカード名と同じなので、カオス・ナイト・ブレイヴに2550ダメージを与えます!」
「なら、俺は手札からプリベントアビリティを発動する!」
【カオス・ガードウイング】
【プリベントアビリティ】
【自】(ダメージ効果が発動された時)
┗手札のこのカードをジャンクゾーンに送り、あなたのガーディアンをこのカードのLPの値だけリペアする。
「よって、カオス・ナイト・ブレイヴのLPは3000回復します!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
DG【2250→-750】
LP【5250→8250】
エンジェリック・ドラゴンの攻撃が、カオス・ナイト・ブレイヴに直撃する。
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
DG【-750→1800】
LP【8250→5700】
「……っ」
「この効果は、あと2回発動できます! 私が宣言するのは【エンジェリック・スナイプ】です。再びデッキトップを公開します!」
【エンジェリック・スナイプ】
SF【4】
「宣言したカードと同じなので、3400ダメージを与えます!」
「くっ!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
DG【1800→5200】
LP【5700→2300】
「うっ…」
「これで、終わりです!! 私が宣言するのは、【エンジェリック・アローズ】! デッキトップを公開します!」
【エンジェリック・アローズ】
SF【3】
「そんな……!!」
「よって2550ダメージを与えます!」
エンジェリック・ドラゴンの第三の咆哮が、カオス・ナイト・ブレイヴに迫る。
「まだだ! カウンターアビリティを発動します!」
「カウンターアビリティ?!」
「ええ。カオス・ナイト・ブレイヴに受け継がれたカオス・リフレクターのカウンターアビリティを発動します!」
【カオス・リフレクター】
【カウンターアビリティ】
【自】(カウンターステップ時)
┗1ターン一度、このカードが受けるダメージ効果1つを半分にできる。
「よって、カオス・ナイト・ブレイヴが受けるダメージは半分になる!」
【装着騎士 カオス・ナイト・ブレイヴ】
DG【5200→6475】
LP【2300→1025】
「カオス・リフレクター……なるほど、貴方が先程カオス・ナイトのトライブアビリティでアンダーカードしたカードがそれだったのですね」
「ええ」
「さすがです。やはり、貴方は選ばれしカオスの使い手なのですね。私は、これでターンエンドです」
「俺のターン、ドロー!」
イクサはドローしたカードを見て目を見開く。
(このタイミングでこのカードか!)
「俺はフォースチャージし、ドローを選択! メインデッキからさらにドローします!」
そして、6枚のフォースを裏返す。
「フォースを6枚消費し、手札からアタックガーディアン【守護龍 カオス・ドラゴン】を召喚!!」
【守護龍 カオス・ドラゴン】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【6475】
LP【7000→525】
カオス・ドラゴンの残りLPは525。
このターンで決めなければ、イクサにはもう後がない。
チャージメントの効果でサイドデッキからカードを2枚ドローした時、イクサが引いたのはカオス・ナイト・ブレイヴともう1枚のガーディアンカード。
それは……
「激情化! 起動!!」
――レイジングガーディアン
赤いオーラを放つカードを、イクサはカオス・ドラゴンに重ねる。
【激情龍 カオス・ドラゴン・LIBERATION】
SF【8】
GT【レイジング/アタック】
Tr【カオス】
DG【6475】
LP【9000→2525】
【サモンコンディション】
┗このカードは、あなたのアタックゾーンにLPが2000以下の【守護龍 カオス・ドラゴン】が存在し、尚且つあなたのチャージゾーンにカードが8枚以上ある場合にのみ、手札からフォースを消費せずに召喚できる。また、前のガーディアンはこのカードのアピアステップ時にアンダーカードとなる。あなたのエンドフェイズ時に、アンダーカード・手札・山札・ジャンクゾーンから【守護龍カオス・ドラゴン】を1体選び、フォースを消費せずに召喚する。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗このカードがジャンクゾーンに送られる場合、ジャンクゾーンに送られる代わりにこのカードをサイドデッキに戻す。その後、サイドデッキをシャッフルする。
「カオス・ドラゴン・LIBERATIONのトライブアビリティを発動! 魂の継承!!」
【激情龍 カオス・ドラゴン・LIBERATION】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:自分のフォースを全て裏状態にする)
┗このターン、ダイスステップをスキップしてフォースを消費せずにバトルフェイズに移行する。相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xは、このカードの下に置かれているカードの枚数×1500)
「チャージゾーンのカードを全て裏状態にする! カオス・ドラゴン・LIBERATIONの下に置かれているカードは10枚なので、15000ダメージを与える! これで、ゲームエンドだ!!」
「それは、詰めが甘いですよ。私は手札から、カウンターカード【天使の契約】を発動させます!」
「なっ!?」
【天使の契約】
FORCE【0】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたはカード名を宣言する。そうしたら、自分の山札の一番上のカードをめくって公開してジャンクゾーンに送り、それが宣言したカードと同名ならば、この効果を発動させたターンのバトルフェイズを終了させて、発生したダメージ効果は全て無効となる。めくって公開したカードが宣言したカード名でなかった場合、このカードの効果は無効になる。
「私が宣言するのは【エンジェリック・アローズ】! デッキトップを公開します!」
ツクヨミは、メインデッキのデッキトップのカードをめくって公開する。
【エンジェリック・アローズ】
「よって、バトルフェイズを終了させ、ダメージ効果は無効化されます!」
「くっ……」
「これで、貴方のターンは終わりです」
「俺は……まだ……」
イクサは口を閉ざす。しかし、もう策が無いのは事実だ。
エンドフェイズに入ろうとしたその時
「っ?!」
サイドデッキが再び、光を放った。
デッキを信じ、勝利を諦めない心に――カードはきっと応えてくれる。
イクサは恐る恐るカードに手を伸ばして掴む。
カードの情報が脳内に流れ込んでくる。
「この……カードは……」
そのまま、ドローする。
「これが俺の、逆転だ!! エクストラフェイズ! エクストラドロー!!」
ドローしたカードを見る。
そして、掲げる。
「次元の力を体得した混沌の王よ、俺に……力を貸してくれ! 次元召喚! 【次元皇帝 カオス・エンペラー・ロード】!!」
【次元皇帝 カオス・エンペラー・ロード】
SF【10】
GT【エクストラ/アタック】
Tr【カオス】
DG【6475】
LP【12000→5525】
【サモンコンディション】
┗このカードはエクストラフェイズでのみ手札から召喚できる。
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗あなたのアタックゾーンに【カオストライブ】のカードがあり、尚且つそのカードのアンダーカードが10枚以上の場合にのみ、このカードの召喚にフォースを消費しなくてよい。
「トライブアビリティによって、カオス・エンペラー・ロードは下に置かれた仲間の能力を全て受け継ぐ!」
カオス・エンペラー・ロードに、仲間の魂が継承される。
「そんな……エクストラガーディアンまでもが……」
「今度こそ、これで終わりです! エクストラアビリティを発動!!」
【次元皇帝 カオス・エンペラー・ロード】
【エクストラアビリティ】
【自】(エクストラフェイズ終了時)
┗あなたのエクストラフェイズに以下の効果を1つ選び、一度だけ発動できる。
・相手のアタックガーディアンのLPをこのガーディアンと同じにする。この効果によって、DGの値は変動しない。
・相手のアタックガーディアンにXダメージを与える。(Xの値は、このカードのアンダーカードの枚数×500)
「俺はダメージ効果を選択する! よって、エンジェリック・ドラゴンに5500ダメージを与える!」
【守護龍 エンジェリック・ドラゴン】
DG【3000→8500】
LP【4000→0】
カオス・エンペラー・ロードの大剣が、エンジェリック・ドラゴンを貫いた。
カードバトルが終了したことで、バトル・ワールドの機能が停止する。
「ふぅ」
ツクヨミは一息吐いて、にこやかに笑う。
「私の負けですね」
「いえ……見失ってたものに気づかせてくれて、ありがとうございました」
「もう、決して忘れてはいけませんよ?」
「は、はい……!」
イクサはビシッと敬礼をする。
その姿に、ツクヨミは「フフッ」と笑い、1枚のカードを差し出してくる。
「では、このカードを貴方に託します」
「え……?」
手渡されたカードは、イクサとのバトル中にツクヨミが使用したカウンターカード【聖竜騎士の誓い】だった。
☆☆☆☆
「聖竜騎士の誓い、か………」
自宅に帰ったイクサは、ツクヨミから譲り受けたカウンターカードに目を向ける。
今のところ、カオストライブのデッキと何もシナジーが無いため、デッキに投入するかはかなり微妙なカードだ。
―――ピロリロリ♪―――
すると、イクサの携帯が突如鳴り出した。イクサはすぐに通話ボタンを押す。
「はい、もしもし」
〈おお、イクサ。おれおれ、カイト〉
「カイト? どうしたの、急に?」
〈お前の分のショップ大会の受付を済ましたっていう報告〉
「え、はあ?! ショップ大会の受付?!」
〈おう。んじゃあ、明日の1時にカードタウンで待ち合わせな。詳しい話はその時で!〉
「ちょ、ちょっとカイト?!」
ブツッと電話が切られ、イクサは首を傾げる。
「今度は一体何なんだ?」
今、運命の第二部が静かに動き始めようとしていた。
ということで、今回の話はどうだったでしょうか?
一応、【今までのおさらい】というテーマで書きました。
学園内の描写、巫女ナイトとの対話描写、特殊な召喚方法など。
特に、バトル描写は、第1章初期のイクサの戦い方を意識して書きました。あと、なんと言っても召喚方法!
主人公が5つの特殊召喚方法を一気にやったのは、我ながらごり押しだったと思ってます。
あと、エラッタのお知らせですが、今まで、【スピードサモン】は『最速召喚』と表記していましたが、今話から『神速召喚』に表記を変更します。
理由は、友人からのアドバイスで「こっちの方がカッコいいと思う」と言われたので。
ルールも結構変更してる部分があるので、ルール概要をチェックしてみて下さい。
では、次回予告!
【次回予告】
カイトに呼び出されたイクサはカードタウンにへと向かう。そこでイクサは、カイトからまだ全国大会出場のチャンスがあることを知る。
もう一度センリと戦うために、イクサはカイトと共にショップ大会に出場する。
次回、【ショップ大会開幕! VS風雷コンビ!】
お楽しみに!




