BATTLE:025【準決勝戦の行方・前編】
今回は、味神ユウキさんがご投稿して下さった【ギガントトライブ】が登場します!
攻撃的なオーガトライブとは対照的に防御的なトライブとなりました。
ノーカットのつもりで執筆していたのですが、話がとても長くなってしまうので、前編と後編に分けました。
――えーん、えーん――
あれはいつだっただろうか。
あまりにも昔の出来事で、忘れてしまっていたのか。
あの時も、アイツは泣いていた。
誰にも涙を見せないように、誰にも心配されないように、いつも通りの『元気なナミちゃん』として振る舞うために。
アイツを見つけたのは偶然だった。
神社の祠から聞こえてきた泣き声に、好奇心旺盛だった俺は……祠の扉を開けた。
するとさ、いつも笑顔を浮かべてバカみたいに騒がしいアイツが、泣いていたんだ。
初めて、アイツの泣き顔を……見たんだ。
「……ナミ」
中堅戦が終わり、すぐに姿を消したナミ。
イクサが探し回った結果、隠れていたのは食堂の倉庫だった。
案の定、体育館座りで顔を俯かせていた。
表情は見えないが、きっと泣いているのだろう。
「ナミ、帰るよ」
「………ほっといてよ」
「ほっとくわけないだろ、幼馴染みなんだからさ」
「いつも迷惑そうにしてる癖に……」
「ま、迷惑だからね」
「………慰めに来たの? それとも貶しに来たの?」
「どっちでもない。連れ戻しに来ただけだ」
そう言って、イクサはナミの隣に腰かける。
「何をさ、そんなに悲しんでるの?」
「だって、……だって、相手は私と同じアイドルトライブで……アイドルトライブなら、私の方が上手く使える自信があったのに……それなのに……っ!!」
「うっ…っく……」と、すすり泣く声が聞こえる。
「私……何もできなかった……何も……させてもらえなかった……。戦宮くんに、ストレート勝ちするって……言ったのに。私は、それが情けなくて……しかも中途半端で…役立たずで……そんな私が、許せない……!」
「………」
イクサの中で色々と慰めの言葉はポンポンと思い浮かぶ……が、そのどれもがナミの前では意味を成さないだろう。
だからイクサは、ナミの頭にとりあえずチョップをかました。
「……なに?」
いきなりチョップをかまされて、ナミは少し挙動不審な反応をする。
「ナミがどんなに自分を卑下しようが俺には関係ないけど、これだけは言わせてくれ」
「……?」
「お前は役立たずなんかじゃない。少なくとも、俺なんかよりは」
「ど……どうして?」
「考えてもみろ。俺はまだ1回しかバトルしてないんだ。そんな俺より何戦もこなしてバトルに勝利してきたお前の方が、よっぽどチームに貢献してるよ」
「………」
「準決勝までに戦った10試合……。俺のバトル回数は1回、東條部長は4回、リンナ副部長は5回、カイトは6回……そして、お前は8回だ。しかも全部のバトルで勝ってる」
「……数えて、たの?」
「暇だったからな」
イクサは息を吸い、静かに吐く。
「だから、誰もお前のことを責めないし、情けないとも中途半端とも……ましてや、役立たずだなんて、絶対に思わない……絶対に」
「……そう、かな?」
「そうだよ」
「………」
「……。そういえば、ここにもモニターがあるな」
モニターの電源を点ける。
モニターの画面には、予選ブロックの試合映像が映し出されている。
「しばらく、ここで次の大将戦を見てろよ。気分が落ち着いてから、選手控え室に戻って来ればいいから」
「え……?」
イクサはそのまま立ち上がり、最後に背を向けたまま、ナミに言う。
「さっさといつもの『スーパーグレートポンコツバカ女』に戻ってよ、調子狂うから」
「ぽ、ポンコツでもバカでもないし、ウルトラ抜けてるし!!」
後ろで、小さく笑いながら涙を拭っている様子が伺える。
「私は、スーパーウルトラグレートアルティメット美少女だよ!!」
「はいはい」
そうして、イクサは大将戦に臨むのだった。
〈さあ、白熱したバトルが繰り広げられているここ予選大会東京ブロック! これまでの予選大会では全て白星しか付けなかった阿久麻学園に初の黒星を付けたのは、なんと! 今年初出場のルーキー校・東栄学園だ! 先鋒戦は互いに一歩も譲らぬ激しい攻防戦、続く中堅戦では“1キルの女王”の無限ループコンボが炸裂! さあ、いよいよ決着の大将戦、今度は一体どんなバトルを見せてくれるのか……両校の選手が入場だ!!〉
――うおぉぉぉ!!
観客の声で沸き上がる会場。
対峙する二人のカードマスター。
〈さあ、期待大の大将戦を戦うのは、この二人だ! 東栄学園・未知なるトライブを使う今大会のダークホース『聖野イクサ』選手! 阿久麻学園・曲者揃いのメンバーをまとめ上げる巨人の司令塔『極道前 ギンカク』選手!〉
「おや? 東條さんではないのですか?」
「ええ。でも、このバトル……負ける気無いんで」
「そうですか。ですが、俺達には強豪校としてのブランドとプライドがあるので、負ける気がないのはこちらも同じです」
互いに礼をし、各々の配置に着く。
機械によるデッキシャッフル、さらに手札交換。
準備完了だ。
〈いよいよ予選大会準決大将戦スタートだ! ダァァァイス……〉
「「セット!!」」
「俺の先攻、メインデッキからドロー!」
先攻は、ギンカクからだ。
「フォースチャージし、さらに追加ドロー!!」
ドローしたカードを手札に加え、切る。
「フォースを1枚消費し、アタックガーディアン【ギガント・トーレス】を召喚!」
【ギガント・トーレス】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ギガント】
DG【0】
LP【2500】
「なっ、SF【1】なのにLPが2500?!」
イクサの驚愕の声に対して、ギンカクは冷静に答える。
「それが、鉄壁の巨人種族であるギガントトライブの特徴です。俺はこれでターンエンド」
「俺のターン、メインデッキからドロー!」
続いてイクサのターン。
手札にカードを加え、フォースチャージするカードを選択する。
「フォースチャージして、追加ドロー!!」
ギガントトライブ……一体どんな能力を秘めているのか。
イクサはそれを頭に留めながら、カードを選択する。
「手札から、【カオス・ベビーナイト】のポテンシャルアビリティ発動!」
【カオス・ベビーナイト】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗相手フィールド上のアタックゾーンにガーディアンカードがあるなら、このカードはSF【0】として扱う。
「よって、ベビーナイトをノーコストで召喚!!」
【カオス・ベビーナイト】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1500】
「さらに、フォースを1枚消費し、アシストガーディアン【カオス・キャノン】を召喚!!」
【カオス・キャノン】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【600】
「カオス・キャノンのアシストアビリティ発動!」
【カオス・キャノン】
【アシストアビリティ】
【自】(セットフェイズ終了時)
┗このターン、あなたはダイスステップをスキップしてバトルフェイズを開始する。相手のアタックガーディアンにXダメージ与える。(Xは、あなたの【カオストライブ】のアタックガーディアンのSF×500)
「バトルフェイズを開始して、ギガント・トーレスに500のダメージを与える!」
「いいでしょう。その攻撃、甘んじて受けましょう」
【ギガント・トーレス】
DG【0→500】
LP【2500→2000】
「これで俺のターンは終了だ」
「なら、俺のターンですね。サイドデッキからドローし、フォースチャージ」
手札にカードを加え、ギンカクはイクサのガーディアンを見つめる。
「カオストライブ……確かに、見たことも聞いたこともないトライブですね。ですが、それでも俺が負けることはない! アシストゾーンにガーディアンを沈黙召喚!!」
アシストゾーンに鉄塔が出現する。
「ギガントトライブは長期戦向けのトライブです。今は時が熟すのを静かに待つのみ。ダイスステップ!」
ギンカクはサイコロを振った。
目の数は、4。
【ギガント・トーレス】
【4】……相手の山札のカードを4枚、ジャンクゾーンに送る。バトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかった時、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
【6】……相手の手札を1枚選択し、ジャンクゾーンに送る。バトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかった時、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
「おっ、これは運がいい。バトルフェイズですね」
ギンカクはフォースを1枚消費し、バトルフェイズを開始する。
「デッキから4枚、ジャンクゾーンに送ってもらいましょうか」
「……」
イクサはデッキのカードを4枚、ジャンクゾーンに送った。
「カウンター効果が発動されなかったので、1ドロー。俺のターンはこれで終了です」
「なら、俺のターン。メインデッキからドロー! フォースチャージして、さらにドロー!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「……ギガントトライブ、か」
観客席にて、フジミは小さく言葉を漏らした。
それに対し、ダイナは首を傾げながら隣のフジミに話しかける。
「ボス、どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない。このバトル、恐らくキーカードとなるのは、俺を倒す布石になった“あのカード”だと思っただけだ」
「え……?」
「……それが引き当てられないのなら、この勝負……聖野イクサに勝ち目は無いだろうな」
「おや? そこにいるのは、鹿羽フジミくんかな?」
「っ……」
すると、突如フジミに声をかける者が現れた。
フジミはダイナとの会話を中断し、声の主の方に顔を向ける。
「アンタは……孤高アイズか」
孤高アイズ……孤高センリの父にして、バトル・ガーディアンズを生み出した大企業“孤高グループ”の現総帥である。
その容姿は、どこか気品に溢れ、一種のセクシーさを醸し出しているナイスミドルだ。
アイズはフジミにフレンドリーに話しかける。
「鹿羽くんがこんな所に来るなんて珍しいね」
「そういうアンタこそ……こんな所に何の用だ?」
対して、フジミはどこか敵愾心を剥き出しにしてアイズに応対する。
しかし、アイズはそんなフジミの態度を気にせず、あくまで親しげに話し続ける。
「大事な一人息子の試合だからね。応援に来たというわけさ」
「なにっ?! 孤高センリが、東京の予選大会に出場しているというのか!?」
「うん、そうだよ。まあ、試合自体は別ブロックなんだけど。この試合で勝ったところと決勝戦らしいから、ちょっとした偵察に、ね?」
アイズは「どれどれ?」と試合を眺める。
「ほー、ここの準決勝は東栄学園と阿久麻学園か。……なるほど、鹿羽くんは東栄学園の応援に来た……というところかな?」
「そんなんじゃない。……それより、どういうことだ?」
「なにがだい?」
「孤高センリのことだ。アイツは、本来なら千葉予選に出場しているはずだ。なのになんで東京予選に!!」
「んー。それはね、センリがどうしても東京予選に出場したいって言うもんだからさ。滅多に我が儘を言わない可愛い一人息子の折角の願いを叶えてあげたいじゃないか、父親として」
「……俺の親父は、ことごとく俺の願いを潰すけどな」
「あー、彼は不器用だからね。仕方ないよ」
「………不器用なんて、そんな生易しいものじゃない………」
フジミが俯いてしまい、会話が途切れた。
「「…………」」
空気が重くなり、そばで二人の会話を聞いていたダイナとゴウキも口をつぐんでしまった。
アイズは地雷を踏んだことに気づいたのか、どうにかして場を盛り上げるために、試合状況を見る。
「え、えーと…………ん?」
そこで、アイズはイクサの使用するトライブに注目した。
「カオス……トライブ?」
次の瞬間、アイズは誰にも気づかれないように目を薄く開けて小さく笑った。
「……なるほど。道理で、センリが我が儘を言うわけだ。……嬉しい、誤算だね」
◇◇◇◇◇◇
イクサはカードを選択する。
「フォースを1枚消費し、アシストガーディアン【カオス・チャージャー】を召喚!!」
【カオス・チャージャー】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1000】
「カオス・チャージャーのトライブアビリティ発動! 魂の継承!!」
【カオス・チャージャー】
【トライブアビリティ】
【永】
┗【カオストライブ】のガーディアンを召喚した時、前のガーディアンはアピアステップ時にアンダーカードとなり、このガーディアンの下に置かれる。このガーディアンは、アンダーカードの効果を全て受け継ぐ。
「よって、チャージャーはキャノンの効果を受け継ぐ!」
「ほう、それがカオストライブのトライブアビリティですか。中々、面白いですね」
「このトライブの本領は、ここからだ! キャノンから受け継いだアシストアビリティ発動! 先程同様、バトルフェイズを開始してギガント・トーレスに500のダメージを与える!」
「ならば、フォースを1枚消費して、カウンターカード【強制退化―フォースダウン―】を発動!!」
【強制退化―フォースダウン―】
FORCE【1】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗あなたは自分のガーディアンを1枚まで選び、そのガーディアンを【弱体化】させる。そうしたら、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
「よって、ギガント・トーレスは弱体化する。そして1ドロー!」
【ギガント・トーレス】
【弱体化】
「なっ?! どうしてわざわざ弱体化に……」
「すぐに分かりますよ。弱体化したことで、トーレスのトライブアビリティ発動!! 【鉄壁防御】!!」
「っ!?」
【ギガント・トーレス】
【トライブアビリティ】
【自】(このカードがダメージ効果の対象となった時)
┗この効果は、このカードが【弱体化】している場合にのみ発動できる。このターン、このカードが受けるダメージ量は半分になり、このカードが受けたダメージ量の分だけ相手のアタックガーディアンにもダメージを与える。
「よって弱体化していることにより、本来なら1000ダメージを受ける。だが、トライブアビリティによってトーレスが受けるダメージは500となり、そのダメージをカオス・ベビーナイトにも与えます!」
「くっ!!」
【ギガント・トーレス】
DG【500→1000】
LP【2000→1500】
【カオス・ベビーナイト】
DG【0→500】
LP【1500→1000】
――――――――――――――――――
「マズイ……」
選手控え室にて、ユキヒコは焦りを感じていた。
「どうしたんですか、部長?」
そこへ、カイトがユキヒコに尋ねた。
ユキヒコはそれに答える。
「この勝負、聖野くんには非常に不利だ」
「え……? ど、どうしてですか?」
「今の二人の状況をよく見てごらん。DGの値だけ見れば、ギガント・トーレスは1000、カオス・ベビーナイトは500。一見、聖野くんの方が有利に見えるが、LPの値を見れば、ギガント・トーレスは1500、カオス・ベビーナイトは1000だ」
「DGの値は上回っているのに、ライフ差が500も下回ってる……って、まさか……」
カイトはユキヒコが何を言いたいのかをある程度を察した。
ユキヒコは頷く。
「ギガントトライブは、自身と相手に同値ダメージを与える能力を持つ種族だ。そうなれば、最早DGの優劣は関係なく、重要になってくるのはLPの方。同じダメージを受けるのなら、当然LPの高い方が有利だ」
「……で、でも…カオストライブだってLPは高い方ですし……勝つ方法なら、いくらでも」
「問題は、勝つ方法ではなく、勝ち方だ。俺達が勝つためには、この試合で聖野くんが先に相手のガーディアンのLPを0にしなければならない。でも、阿久麻学園はそうじゃない」
「そ、それは一体……」
「阿久麻学園には、2パターンの勝ち方がある。1つは、俺達と同様の勝ち方。もう1つは……」
――――――――――――――――
「引き分けに持ち込む、という勝ち方があるな」
観客席。
ゴウキは腕を組みながら試合を傍観していた。
「どういうこと?」
ダイナの問いに、ゴウキは答える。
「東栄学園と阿久麻学園は、ここまで1勝1敗。ギガントトライブの能力で両者のガーディアンのLPが同時に0になった場合、1勝1敗1分けの事実上の引き分けとなる。大会の規定上、そうなった場合の対応は【去年の大会実績の優秀な方を勝利とする】と決められている」
「えっ……」
「東栄学園は今年が初出場、去年の大会実績など皆無だ」
「じゃあ、めっちゃ不利じゃん!!」
「ああ。恐らく、東栄学園でギガントトライブとまともに戦えるのは園生リンナのプラントトライブぐらいだろう。ぶつける相手を誤ったな」
「ほー。とてもよく試合状況を見ているね」
すると、アイズが会話に入っている。
ゴウキは軽く会釈する。
「恐縮です」
「フフ……でも、彼もこのまま黙ってるつもりは無いみたいだねぇ」
試合をしているイクサの表情に諦めの感情は無く、突破口を探しているのが伺える。
「さてさて、カオストライブに選ばれた彼は一体、どんな巻き返しをするのやら」
「そういえば、孤高アイズ……」
フジミが声をかけた。
「カオストライブとは、一体何なんだ?」
「どうして、そんな事を聞くんだい?」
「あれはただのトライブじゃない。直接アイツとバトルした奴なら、誰だってそう思うはずだ」
フジミの言葉に、ダイナとゴウキも頷く。
アイズは三人の顔をひと通り見渡すと、小さく息を吐く。
「……知りたいかい?」
「ああ」
フジミの返答に、アイズは観念したかのように笑う。
「…フフッ。そうだねぇ……その話をする前に、1つキミに聞きたいんだけれど」
「あ?」
アイズはニコやかに笑いつつも、真面目な声音で言葉を紡ぐ。
「キミは、ドラグニティ・ファンタジアが実在すると思うかい?」
ドラグニティ・ファンタジア――バトル・ガーディアンズに登場する多種多様なガーディアン達が暮らす異世界のことだ。
フジミは鼻で笑う。
「馬鹿馬鹿しい。そんな想像の産物が実在するわけがない」
「そうとも、限らないのだよ」
「は?」
「私はね、イギリスのとある書庫である重要文献を発見したんだ。かれこれ10年以上前にね」
「重要文献?」
「そう。私は、ずっと探し求めていた……失った命を取り戻す手段をね」
「………」
「そして、その答えこそがバトル・ガーディアンズだ。あのカードゲームには、運命を塗り替える力がある」
「そんな馬鹿な」
「信じられないかもしれないがね、紛れもない事実さ」
「………」
フジミは暫く無言になった。
しかし、不意に「ククク……」と笑い出す。
「ずいぶんと面白い話だが、生憎俺はそういうオカルトは信じない主義なんだよ」
「それならそれで構わないよ。でも、キミはそのオカルト染みた現象に遭遇したことがあるんじゃないかい?」
アイズは、イクサとギンカクの試合に目を向ける。
「守護龍のカードは最初からデッキに入っているわけじゃない。持ち主に選ばれることで、初めてデッキに投入される。いつの間にかに、ね」
「……っ」
フジミも思わず試合に目を向け、イクサとユキヒコを見つめる。
「それは……」
「守護龍のカードによって、運命は変わる。キミも、キミの知り合いも」
「……確かに、アイツに負けてから俺の運命は変わったのかもな」
「そうさ。なんてったってこのゲームは、人の命によって生まれたのだから」
「っ?!」
―――――――――――――――――
「俺のターンです。メインデッキからドローし、フォースチャージ。さらにドロー!」
ギンカクのターンである。
「フォースを2枚消費し、【ギガント・ガードナー】を召喚!!」
【ギガント・ガードナー】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ギガント】
DG【1000】
LP【3500→2500】
「ダイスステップ! サイコロを振る!!」
ギンカクが振ったサイコロの目は、1。
【ギガント・ガードナー】
【1】………互いのプレイヤーは自分のガーディアンを1体まで選び、LPを1000リペアする。
【6】………互いのプレイヤーは自分の山札からカードを3枚ドローする。
「おっ、運が良いですね。俺はガードナーのLPを1000回復するが、キミはどうする?」
「……。俺も、ベビーナイトのLPを回復します」
【ギガント・ガードナー】
DG【1000→0】
LP【2500→3500】
【カオス・ベビーナイト】
DG【500→-500】
LP【1000→2000】
「これでターンエンドです」
「俺のターン。メインデッキからドロー、フォースチャージして更にドロー!!」
イクサのターン。
カードを手札に加え、ギガントトライブへの明確な対抗策を考える。
(……くっ、ダメだ。今の手札じゃ、ギガントトライブの防御力は超えられない……)
そして、手札を切る。
(今は耐えるしかない、か!)
「手札から、【カオス・ロアー】のポテンシャルアビリティを発動!!」
【カオス・ロアー】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗自分フィールド上のアタックゾーンに【カオストライブ】のカードがあるなら、このカードをSF【1】として扱う。
「フォースを1枚消費して、カオス・ロアーを召喚!」
【カオス・ロアー】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【-500】
LP【2500→3000】
「さらに、フォースを2枚消費してアシストガーディアン【カオス・巫女・ナイト】を召喚!!」
【カオス・巫女・ナイト】
SF【2】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1700】
「アタックゾーンとアシストゾーンで、それぞれ魂の継承発動!!」
カオス・ベビーナイトの能力がカオス・ロアーに、カオス・キャノンの能力がカオス・巫女・ナイトに受け継がれる。
「巫女ナイトに受け継がれたカオス・キャノンの能力を発動! カオス・ロアーのSFは2なので、ギガント・ガードナーに1000ダメージを与える!」
「勇ましいですね。その攻撃、受けましょう」
【ギガント・ガードナー】
DG【0→1000】
LP【3500→2500】
「よし、ライフ差が逆転した!」
「フフッ。あまり受かれてると、痛い目を見ますよ?」
「ええ。もちろん、覚悟の上ですよ」
イクサは手札をギンカクに突きつけ、宣言する。
「たとえ相手が強豪校だろうと関係ない……。このバトル、絶対に負けません!!」
その宣言にギンカクは小さく笑う。
「良い面構えですね。なら、格の違いというものを教えて差し上げましょうか……」
◇◇◇◇◇
「ほぉ、今度は彼が優勢になったか」
アイズは、まるで少年のような眼差しで試合を観戦していた。
「おい……さっきの言葉、どういう意味だ?」
「ん? 一体何の話かな?」
フジミはアイズを睨み付けながら言う。
「とぼけるな。人の命によって生まれたカードゲームとは何だ?」
「おー、怖い怖い。そんなに年寄りを苛めるものじゃないよ」
アイズはニッコリ微笑む。
「言葉のアヤさ。あのカードゲームは、私の人生を掛けて創り上げたゲームという意味だよ」
「………」
「バトル・ガーディアンズは運命を塗り替えるカードゲーム……カオストライブは、その鍵となる種族だ」
アイズは話を続ける。
「バトル・ガーディアンズの背景ストーリーに、破壊神という存在が出てくるだろう?」
破壊神……それは、ドラグニティ・ファンタジアを滅ぼしかけた破壊の力を司る神のことだ。
「カオストライブは、その封印を解くための大事なピースの1つなのさ」
【次回予告】
圧倒的な防御力を発揮するギガントトライブに懸命に喰らいついていくイクサ。
鹿羽フジミが言ったように、勝つためには“あのカード”を引くしかない!
波乱に波乱を呼ぶ準決勝戦、ついに決着!!
次回、【準決勝戦の行方・後編】
作者からフジミに一言。
アイズさんは、かなり年上なんだからタメ口は駄目でしょうが……(汗




