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TCG バトル・ガーディアンズ  作者: あんころもちDX
第2章・全国大会編
31/66

BATTLE:018【東條ユキヒコの誓い・新たな変化】

今回、バトル描写は無いです。

――神代霊園――


 そこは、ここ一帯の地主【神代 ツクヨミ】が管理している霊園だ。

 そこに入っていったユキヒコ。

 花束を持っていたことから、誰かの墓参りだろうか。

 いくつもの墓石。

 ユキヒコはどこだろうか。

 イクサが辺りを見渡していると、不意に背後から声をかけられた。


「聖野くん、ここで何してるんだい?」


「えっ?!」


 ユキヒコの声がし、イクサは慌てて後ろを見る。

 ユキヒコが笑顔でイクサを見下ろしていた。


「い、いや……東條部長を見かけたので、どこに行くのかなぁ……と」


「………。まあ、ついてきてしまったのなら、しょうがないね。他に誰かと一緒かい?」


「いえ、俺だけです」


「そうか……。なら、話してもいいかな」


「なにをですか?」


「まずは、ついてきて」


 ユキヒコは花束を持ったまま、歩き始めた。

 イクサはそのあとに続く。


「聖野くん、キミは炉模工業高校に着いた時、こう言っていたよね。カードバトル部には、戦宮くんが入部する前に存在した……三人目がいるのでは、と」


「はい」


 ユキヒコに口止めされ、すぐにその話題はやめた。

 だが、イクサ自身はそれでもずっと気になっていた。


「結論から言えば、キミの予想は正しい。確かに、カードバトル部には俺とリンナ以外にもう一人、部員が存在した」


「その人は今どこに……?」


 イクサがそう言った時、ユキヒコは不意に歩みを止めた。

 イクサも歩みを止めて、周りを見渡す。

 ユキヒコは、並んでいる墓石の内の1つに触れる。


「三人目は、ここだよ」


 イクサは、ユキヒコが触れている墓を見る。


――園生カンナ之墓――



「園生……カンナ…?」


 園生……それは、リンナと同じ名字だ。


「カンナはね、リンナの双子の姉だよ」


「リンナ副部長の?!」


「不慮の事故でね。もう2年前になるかな」


 ユキヒコはどこか悲しげな笑顔を浮かべ、墓石に持ってきた花を添える。


「カンナはとても優秀なカードマスターだった。もし生きていれば、俺じゃなくて彼女が部長だったと思うよ。ホントに、惜しい人を亡くした……」


「そ、そんな……」


「でも、彼女の死を最も嘆いたのは、リンナだ。カンナの死は自分のせいだと、リンナはひたすらに嘆き悲しんだ」


「自分のせいって……ど、どうして?」


「それは、さすがに言えないかな。これは、カードバトル部を立ち上げた三人だけの話だからね」


 それを聞き、自分が如何に踏み込んではならない話題に首を突っ込もうとしていたか。

 その詮索が、どれほどユキヒコにとって不快だったか。

 イクサは思わず殴り飛ばしたくなるほどの後悔の念を抱いた。


「……っ、首を突っ込んで、すみませんでした」


「いや、別に構わない。いずれ誰かが三人目の存在に気づくと思っていたから。……そうだ、事故当時の話はできないけれど、代わりにカードバトル部の誕生秘話でも話そうか」


「え……? カードバトル部の誕生秘話?」


「うん。良い機会だしね」



―◇―◇―◇―◇―◇―



 あれは、2年前の春。

 当時、まだ高1になったばかりのユキヒコが、中3だった彼女達と出会ったのは、中等部と高等部の間にある広場だった。

 あの頃のユキヒコはまだバトル・ガーディアンズに出会ってなく、いつも通り、広場のベンチで読書をしていた。


「はあ、退屈ですね……」


 特にやることもなく、中等部からエスカレーター式に高等部に上がったユキヒコにとって、環境の変化など0に等しく、中学時代からの怠惰な感情を抱いて生活を続けていた。

 変わらないクラスメート、教師、勉学。

 趣味である読書ですら、心が満たされることはなかった。

 そんな時、元気な少女達の声が聞こえてきたのだ。


「プラント・ウーデンでアタックなのだー!」


「なんの、カウンターカード【ハーフダメージ】発動だ!」


 それは、ユキヒコが知っている女子の声とは、全く毛色が違った。

 ユキヒコが知っている女子という存在は、全員、化粧や服、俳優の話題ばかりを話していた。

 だからこそ、今、目の前の彼女達が何をしているのか、とても興味を抱いた。


「失礼、何をしているの?」


 すると、声をかけてきたユキヒコに対し、少女達の片割れ――リンナが快く笑顔でカードを見せてきた。


「バトル・ガーディアンズなのだー!」


 リンナが見せてきたカードを手に取ったユキヒコは、途端に落胆した。


(なんだ、ただのカードゲームか……)


 たかがカードゲーム、所詮は子供のお遊びだと…当時のユキヒコは軽く考えていた。


「おい、お前……」


 そんなユキヒコの気持ちが表情に出ていたのか、もう1人の片割れ――カンナがユキヒコに話しかけてきたのだ。眉間に皺を寄せて、不満そうに。


「なんだその、残念なモノでも見てる目は!? これをただのカードゲームだと思ってんじゃねえぞ!」


「……俺にはただのカードゲームにしか見えないけど?」


 少女とは思えないほどの乱暴な口調と態度、最初は少々面食らったユキヒコだが、改めて確信する。

 やはりカードゲームなど、このようなガサツな者がやる他愛ない遊びだと。


「っ……だったらデッキを貸してやるから、お前もやってみろ! このゲーム、最近のカードゲームだけど、すっげえ面白いんだかんな!?」


「俺が、これを?」


(カードゲームか。まあ、退屈しのぎにはなるか)


「分かったよ。少しだけね」


 ユキヒコは渋々、カンナの貸出用のデッキホルダーからデッキを借りた。


(ブリザードトライブ……? なんか色々と効果が書かれてるな)


「じゃあ、この私が直々にルールを教えてやるから、覚悟しろよな!」


「お手柔らかに」


 だが、ユキヒコは、退屈凌ぎになると思ったことを後悔することになる。



 数十分後。


「これでトドメだ!!」


「………」


 ユキヒコは、ことごとく負けた。

 ルールへの理解不足は無い。きちんと理解し記憶した。

 ボードゲームへの理解力が高いとも自負している。

 少なくとも、カンナに負けることはないと、ユキヒコは慢心していた。


「今のは、なにが悪かったんだ……?」

「カウンターカード用にフォースを残しておかなかったのがアンタの敗因だよ」


「でも、カウンターカード用にフォースを残すと、強力なガーディアンが召喚できないけど……」


「強力なガーディアンを出せば勝てるわけじゃないよ。まあ、そういうとこがこのカードゲームの面白味なんだけれど」


「そうなのか……」


「どうだ? 面白いだろ!」


 ユキヒコはカンナの笑顔に思わず、頷いた。

 別に負けず嫌いというわけでもない。

 だけど、生まれて初めて勝ちたいと思った。


「うんうん、ちゃんと理解してくれたみたいだ。じゃあそのデッキはお前にやるよ」


「え……?」


「なにアホ面出してんだ? せっかくデッキに馴染んできたんだし、なによりお前ならそいつらを大切にしてくれそうだ」


「……。ありがとう」


 ユキヒコは貸してもらったブリザードトライブのデッキで彼女達とバトルする内に、どんどんバトル・ガーディアンズの世界にのめり込んでいった。


――聖野くん、キミのようにね

――ただ、キミと違うのは……俺の周りには強敵と呼べる相手が園生姉妹以外いなかった。

――2年前は、バトル・ガーディアンズがまだ普及し始めた頃だからね。あまりやってる人がいなかったんだ。

――カードショップに行っても、大体の人達は他のカードゲームをやっていた。

――たまにバトル・ガーディアンズをやっている奴にも巡り会えたが、誰と戦っても心が満たされなかった。

――熱くたぎった情熱も、再び熱を失い始めた。



「ブリザード・ジャイアントでアタックだ!!」


「うぐっ?! ……ま、参りました」


(こんなんじゃ駄目だ……。もっと、もっと強い奴と戦いたいんだ、俺は!!)


 あの頃のユキヒコは、戦いに飢えた修羅だった。

 退屈を満たす手段を一度得てしまったユキヒコの欲求は、バトルをすればするほど増していった。


「………」


 それから一週間ほど経ち、ユキヒコは再びあの広場に訪れていた。

 ユキヒコの運命を変えてくれた少女二人と出会えた聖地。

 そこに行けば、何かしらの答えが得られると思ったのだ。


「うーん、あと1人必要なのだー」


「中々見つからないもんだな」


 すると、園生姉妹の声が聞こえてきた。


「ど、どうしたの?」


 ユキヒコは思わず声をかけていた。

 ユキヒコの存在に気づいた2人は目を輝かせた。


「見つけたのだー、三人目!」


「確保ぉー!!」


「うぇ? えぇ?!」


 そのまま2人に捕獲され、事情を聞いてみると、どうやら2人はカードバトルの部活を作ろうとしたらしいが、部として作るには最低五人を必要とし、一方で同好会なら最低3人必要ということで、それならと同好会を立ち上げるべく3人目を探していたところに、タイミングよくユキヒコが現れたとのこと。


「同好会に入ったとして、なにか俺にメリットがあるの?」


「噂に聞いたぞ〜、アンタ、ここら辺一帯のカードマスターをことごとく倒してるらしいじゃん」


「……」


「ここら辺はまだそこまでバトル・ガーディアンズが浸透してないから、あまり強い奴はいないけど、同好会で3人チームとして大会に出場すれば、もっと強い奴らと戦えるよ」


「っ?! それは本当!?」


「もっちろん。どう? 入る気になった?」


「ああ、もちろんだよ!」


 ユキヒコはまだ見ぬ強敵達との戦いに、心が震えた。



―◇―◇―◇―◇―◇―



「とまあ、これがカードバトル部誕生の話の一部」


「これでまだ一部なんですか?」


「うん。同好会の申請で生徒会と争ったり、そのせいで旧校舎に追いやられたりと……とにかく色々あった」


「部室が旧校舎なのは、そういう理由ですか」


「うん。鹿羽達とは、その頃からの因縁なんだよ」


「そうだったんですか……」


 ユキヒコは笑いながら、昔の事を語る。

 恐らく、3人で過ごした記憶がユキヒコの中で最も充実した日々だったのだろう。

 しかし、カンナが不慮の事故でこの世を去ったことで、その日々は終わりを告げたのだろう。

 それにしても、とイクサは思う。

 ユキヒコの話に登場するカンナの口調、態度、それらはある人物と似ていた。

 ユキヒコが楽しそうに話している様子に、イクサは思わず口を滑らせてしまった。


「なんか、裏人格のリンナ副部長みたいですね。カンナさんって」


「っ!?」


 イクサの言葉を聞いて、ユキヒコは目を見開いた。


 地雷を、踏んだ。


 イクサは自分の言葉に後悔し、慌てて弁解しようとする。


「え、いや、あの……」


「あはは…。聖野くんは本当に…鋭いね」


 ユキヒコは、小さく笑って、涙を流していた。

 ただ静かに、涙を流しながらカンナの墓石を見下ろす。


「いや、すまない。少し、カンナの事を思い出してしまってね」


 ユキヒコは涙を拭い、イクサに話し始めた。


「今から話すことは、キミの胸の内にだけ留めてくれ」


「……はい」


「リンナの裏人格は、言ってしまえば確かにカンナの写し身だ。リンナ自身が作り出した、紛れもないカンナの幻影」


「どうして……」


「さっきも言ったけど、リンナはカンナの死が自分のせいだと自責した。一時期は、それで家から一歩も出なくなってしまったほどに。でも、ある時……」


「ある時?」


「うん。なんの前触れもなく、リンナは俺の前に姿を出した。そして、笑顔でこう言った」


――カンナお姉ちゃんが、帰ってきたのだー!――


「ってね」


「それって、まさか……」


「リンナが言ったカンナは……あくまでリンナの別人格だ。だけど、俺は目を疑った。そこにいるのが、まるで本当にカンナのようだったから」


「……でも、どうして裏人格が…」


「これはあくまで俺の憶測だけど、自責の念に囚われたリンナが導き出した“自分という存在を保つための究極の答え”……それが、裏人格の形成だったのかもしれない」


「え……?」


「リンナにとって、カンナの死はとても受け入れられる現実ではなかった。そんな時だ、もしかしたら鏡でも見たのかもしれない。鏡に映るのはあくまで自分だが、リンナとカンナは双子。リンナは試しに姉の物真似をした……鏡に映る自分は、きっと本物の姉のように見えたことだろう。物真似を繰り返す内に、やがてそれは、リンナの中にカンナという特性を得た人格を形成することになった。これは、あくまでも俺の憶測、推論だ。事実はもしかしたら違うかもしれない」


「………」


 イクサはなにも言えなかった。

 なにも、言えない。


「リンナの中では、まだ…カンナは生きているんだ。その点だと俺は少し、リンナのことを妬ましく思う。俺は、ただ認めることしかできなかったから」


「東條部長……」


「俺の愚痴に付き合わせてしまってすまない。できれば忘れてくれ」


「……」


「……カンナが亡くなったのは、7月14日の今日。あの時も、結局3人での大会出場は果たせなかった。大会規定の変更で、出場参加人数も最低5人になってしまい、俺達の中でますます大会出場が遠ざかった。そして、俺にとって高校生活最後のこの年に、ついにメンバーが5人揃った。今日はその事を、カンナに告げにきたんだ」


「………」


「キミ達には、まだまだ伸び代がある。だからこそ、このメンバーのベストな状態で、大会を迎えたい。優勝を、勝ち取りたいんだ」


 その言葉は、イクサに対しての言葉というより、カンナへの、ユキヒコの強い決意のような感じがした。

 あの時果たせなかった誓いを今度こそ果たす。

 そんな、強い思いを、イクサは感じた。




◇◇◇◇◇



 あの後、イクサはユキヒコと共にカンナの墓石に手を合わせ、そのまま別々に帰ることになった。


「東條部長の全国大会に対する強い思い。それには、こんな事情があったのか……」


 戦う理由は、人それぞれだ。

 勝つために戦う人や、楽しむために戦う人、もしくはユキヒコのように、誓いを果たすために戦う人。

 人は、たかがカードゲームでとバカにするかもしれない。

 だが、そこに命をかける人だっている。

 全力を注ぐ人がいる。

 そんな人達をバカにする権利など、誰も持っていない。

 イクサはカオストライブのデッキを、デッキホルダーから出す。

 イクサがナミの祖父――タカミネに言ったように、このトライブで戦い抜いてみせる。

 改めて強くそう誓う。



「久しぶりだな」


「っ?!」


 イクサは突然声をかけられた。

 聞き覚えのある声に、思わず後ろを振り向く。


「孤高…センリ……」


「フッ」


 センリは小さく笑いながら、イクサのデッキを見つめる。


「あの時よりかは、使いこなしてるみたいだな」


「う、うん……」


「できることなら貴様を今すぐここで潰したいが、それは後の楽しみに取っておくことにするよ。今日は、このカードを渡しにきたんだ。受け取れ!」


 そう言って、センリはイクサに1枚のカードを投げ渡した。


「また、俺にカードをくれるのか?」


「勘違いするな、タダで渡しているわけじゃない。これは、一種の投資だ」


「投資……?」


「そう。僕としても、わざわざ雑魚と戦うほど暇じゃない。少しは僕に見合うだけの力を得てもらわないと、つまらないじゃないか」


「……」


「そのカードはサイドデッキ用の特殊ガーディアン。極めて強力だが、扱うには少々骨がいる。僕と戦うなら、いずれにしても必要になるだろう」


「サイドデッキ用の特殊ガーディアン?!」


 イクサは慌てて渡されたカードに視線を向ける。


(このカードが、特殊ガーディアン。アカネさんが使用したライズガーディアンと同様のガーディアン!!)


 しかし、渡されたカードにはカードのイラストとカード名、そして効果が記されていなかった。


「これは一体……」


「そのカードはまだ未完成品だ。完成させるのは、あくまで貴様の意志。そのカードがどのように変化するかは、僕にも分からん」


「俺の、意志……」


「では、僕はこれで失礼する」


 センリはそう言ってイクサに背を向けて立ち去ろうとし、「ああ、そうだ」と呟いて立ち止まった。


「特殊ガーディアンにもいくつか種類がある。どのような特殊ガーディアンがあるのか、オフィシャルサイトのガーディアン一覧で確かめてみるといい」


 それだけ言い、今度こそ立ち去った。

 センリの後ろ姿を見ながら、渡されたカードを握る手に力を込める。

 センリはアカネより強い。自分はまだまだ、センリの足元にさえ及ばない。

 未完成のカードを完成させる鍵は、イクサの意志だとセンリは言った。

 それが何を意味するのか、イクサにはまだ、知る由もない。




 デッキホルダーの中、カオス・ナイトのカードが静かに光り輝いていた。




◇◇◇◇◇◇




 帰宅したイクサは、早速パソコンを立ち上げると、バトル・ガーディアンズのオフィシャルサイトにアクセスした。

 【特殊ガーディアン】の項目をクリックし、種類を見る。

 現在、特殊ガーディアンとして確認されているタイプは5つ。


 1つ目は【ライズガーディアン】。アカネが使用した特殊ガーディアンだ。

 召喚する場合は裏状態でアシストゾーンにセットする【沈黙召喚(リバースサモン)】を行い、フォースが一定枚数に到達すると、表状態にする【覚醒降臨(ライズオープン)】を行うことでアタックゾーンに出現する。

 その手間のかかる召喚手順を踏まえるだけあって、能力は極めて強力。ただし、沈黙召喚(リバースサモン)中はアシストゾーンが使用不可になるので、アシストガーディアンからの補助能力が一切使えなくなるのが欠点と言える。


 2つ目は、【ドッキングガーディアン】。複数の特定カードがマテリアルカードとして揃って存在している時にのみ、召喚できる特殊ガーディアン。このガーディアンの召喚は【統合召喚(ドッキングサモン)】と呼ばれる。特定カードを早期に揃えることができれば、場を圧倒するほどの能力を秘めている。だが逆に、特定カードが1枚でも欠ければ全くもって機能しなくなる融通性の無さがある。


 3つ目、【スピードガーディアン】。相手が特定数以上のSFを持ったガーディアンを召喚した際に、サイドデッキから直接召喚できるガーディアン。召喚名は【神速召喚(スピードサモン)】。特性上、相手ターン中に召喚され、相手の行動を妨害する能力を秘めている。防御的な能力に長ける反面、他の特殊ガーディアン達と比べて爆発力のある攻撃性は無く、あくまで相手ターンを凌いで自分ターンに回すための橋渡しとしての役割を担う。


 4つ目に、【エクストラガーディアン】。サモンフェイズ中には召喚できず、バトルフェイズ終了後のエクストラフェイズにて召喚できる特殊ガーディアン。召喚名は【次元召喚(エクストラサモン)】。主にバトルフェイズを再度開始したり相手を弱体化させるなど、連続攻撃をテーマにしている。特殊ガーディアンは基本的に召喚時にフォースの消費を要求しないが、エクストラガーディアンはノーマルガーディアン同様にフォースを要求する。フォースの消費が激しいため、主に使用されるのは後半の最終局面に限定される。


 そして最後、5つ目は、【クロスガーディアン】。素体となるガーディアンとアームドガーディアンがアタックゾーンとアシストゾーンにそれぞれ1体ずつ存在していることで召喚できる特殊ガーディアン。召喚は【装着転成(アームド・クロス)】と呼ばれている。必要なガーディアンを2体揃えればいいだけなので、スピードガーディアンに次ぐ召喚のしやすさを誇り、爆発力も十分ある。しかし、エンドフェイズ時に表状態のフォースを全て裏状態にしなければならないので、カウンターカードによる防御ができなくなる。


 以上の5種類が、現状でサイドデッキに投入される特殊ガーディアンである。

 また、サイドデッキは上限8枚まで組めるようだ。

 この情報を見たイクサは、センリから渡された名無しのカードを見つめる。

 一体このカードがどのように変貌するのか、自らの意志がどのように発現するのか。


 そんな時だ。


―――ピルルルッ!!


 唐突に、イクサの携帯電話が鳴った。

 イクサが携帯電話を開くと、画面には【カイト】と映し出されていた。

 すぐに通話ボタンを押して電話に出る。


「カイト、どうした?」


〈おー、イクサ。いやさ、実はカードショップを巡ってたら知り合いの店長から耳寄りな情報をもらってさ〉


「耳寄りな情報?」


〈そう。なんでも明日、一部のカードショップでサイドデッキ用のカードを収録した特殊パックが発売されるらしい。事前告知も無しに〉


「事前告知も無しって……」


 イクサは慌ててパソコンを操作して表示されていたガーディアン一覧のページから発売情報ページに切り替える。

 バーを上下にスクロールするが、どこにも明日発売のパックは見当たらない。


〈だがまあ、カードショップ情報なんだ、信憑性は十分にあると思う。実際、商品自体も入荷されてる〉


「でも、だったらどうしてサイトに載ってないんだ?」


〈さあな。店長も、数日前に突然孤高グループから連絡来たらしいから詳しいことは何も分からないんだってさ〉


「……」


 今日渡された名無しのカード、そして明日発売の特殊パック。

 果たしてこれは偶然か必然か。

ルール解説の方も更新します。


【次回予告】

 サイドデッキ構築のために、多くのカードマスターがカードショップに押し寄せていた。俺も新しいパックを買うために赴くが、そこに卑劣非道なカードマスターが乱入してきた。

 俺のアシストガーディアンを奪うミリオネアトライブの所業、絶対に許さない!!

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