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結婚~ウェディングマーチは高らかに鳴り響く

地方の中核都市(41万人)の郊外にある小高い丘に学園はあった。


市郊外の曹洞宗の名刹は春のうららかな日差しの中豪勢な葬儀が営まれていた。読経とお線香の立ち上る中20歳になったばかりの若い僧侶がいた。


100人を越えるのではないかの曹洞宗の僧侶たち。一斉に名刹のお堂に集まり読経をしていく。

「皆さん本日はお忙しい中をありがとうございます」

喪主の副住職が頭を深くさげて弔問のお客さまにお礼を申し上げた。

「生前の本寺の住職は檀家の皆さまに愛された僧侶でございました。とても幸せな人生を送ることができました」


お堂の僧侶たちの読経は長々と続く。20歳の住職の孫も読経に混じり故人祖父の冥福を心から祈っていた。若き僧侶の初めての晴れ舞台が実の祖父住職葬儀であった。


孫は曹洞宗の愛知学院仏教科に在学しつい先頃誕生日を迎えたばかり。

「拙僧は誕生日に得度いたしました。めでたく僧業なる資格を持ちました。拙僧自身はまだまだ未熟なんですが得度したからには一人前の宗教家になったわけでございますからシャキッとしていなければなりません」


孫の得度に故住職の祖父は大変に喜んでくれた。お祝いに新しい袈裟を与えてもらう。

「それが今着ている袈裟でございます。おじいさまは偉大だったなあ」

また副住職の目に見えないように新車を買い与えた。

「孫はかわいいからな。拙僧の孫は我が寺の宝じゃ。車ぐらい乗っていないとかっこがつかんわな、ハハ。ガールフレンドもつかまえんとな」

ご住職は孫の得度に安心されたのですかね。新車を買い与えた一週間後ポックリあの世に旅立たれました。大往生でした。

「じいちゃんは偉い僧侶や。拙僧が僧になるのを待っていてくれました。合掌」

なお得度はされて僧侶さんにはなれたんですが車は。

「お寺が暇になりましたら自動車学校に通って免許を取りたいなあ」


サムとややのその後。


サムは大学野球部に推薦で進学。今は大学2年のエースで活躍していた。

「ライバル高木が今はオリックス2軍。なんとかあいつが1軍にあがるまでに俺がドラフトにかかるようになりたい。まだプロは諦めてはいないから。時間はあるんだから焦らないで行きたい」


サムは大学野球になり投手かバッターか悩んだが父親と同じ投手を再び選んだ。


大学6リーグ春秋の大会では10傑にはなんとか名前が乗っているくらいな成績だった。

「例年ドラフトは2〜3位ぐらいが指名対象。まだまだ上がある」

インターネットではオリックス高木投手の2軍成績を気にしながら練習に励んでいた。


頑張れ!サム


やや。

医学部受験直前に父親を亡くしいやおうなく医療専門に進学。(奨学金貸与の優秀な学生)

「医学部は夢だったのよ。私が医者になるだなんてオカド違いも甚だしいわ」


ややはそう言い残すと実験のために白衣を着て颯爽と教室に消えていった。

「で専門に進学したんだけど。意外なところで意外な人にあったわ」


赤十字病院系列の医療専門はなんとサムの大学と保健医療で契約を結んでいた。

「そうなのよ。私も驚いてしまいました」

医療専門での教義の中で学生のサンプルを採取したらサムを含む6大学のスポーツ系学生の血液が回ってきた。内容は単なる健康チェックだった。

「サムの大学は知ってるから。もしかしてサンプル(血液や尿)にあるかなとは思ったけど」

サムのサンプルはなぜか入念に検査をされた。

「なにか変なもんないかなあと思ったから、えへへ」

血液は大丈夫だったが、尿は、

「おっ!だ大丈夫かなあ」


少し蛋白が降りていた。異常値だったのは運動のやりすぎだった。


おしゃまなあみとまゆはどうしているか。


仲良しな附属高校D-2クラスのふたり。

「えへへ。あみは無事に附属高校から大学に滑り込みセーフしました」


あみの場合評定が低いところだったが子供時代の子役が評価された。

「子役で附属学園を宣伝したからだってさ」

今は大学文学部で、

「一番ねお勉強しなくてもいいからと西洋史選んだの。まゆちゃんも一緒だから楽しいや」


そのまゆは大学入学と同時にアルバイトに励んでいた。

「まゆはアルバイト代貯めて海外旅行したいなあ。お医者さんのお嬢さまのあみちゃんがうらやましいけどね」

アルバイトは飲食関連がほとんど。喫茶店レストランから吉野家まで。友達のあみお嬢様が、

「うーん正直ね入ってみたことがないところばかりでして」

マクドナルドやミスタードーナッツは聞いたことはあるが中に入ってみたことがなかった。必要がなかったからだ。

「あっ、マックは入ったことあるわ。ハンバーガーをパックは一回だけしたわね。あのジュワーのドリンクはおいしかったわ。名前知らないけど」

コカコーラを初めて飲んだのがマックだった。


吉野家などのファーストフードはまったく知らなかった。電車の駅で切符を買ったこともない。地下鉄はみたこともなかったし市バスなど停留所からどうやってバスに乗るかは皆目わからない。


移動はすべておかかえ運転手の黒塗りスーパーサルーンだった。


まゆはアルバイトの目標を100万円に設定。なんとか早く貯めて、

「あみちゃんと欧州に旅行したいかな。あみちゃん待っていて」


まゆはアルバイトの接客態度が大変に可愛らしくお客さんの受けがよかった。同じアルバイト仲間にも人気だった。大学生からデートに誘われてそれなりの青春を楽しんでいた。ただあの大学でアルバイトをしている学生は珍しい存在ではあった。

「まゆはデートを誘われて断ると後で嫌な思いしてしまうから」

なるべくならとグループ交際を好んだ。団体ならば楽しんで時間が過ごせるし堅苦しいこともない。

「グループなら楽なんですね」

なんどかアルバイト仲間でまゆを果敢に攻めてくる学生がいた。

「まゆちゃん。僕とデートして。まゆを独占したいなあ」

グループの仲間にも公然といい始め、まゆはかなり迷惑をする。


しかし。

「まゆちゃん。僕本気なんだ。僕と付き合ってくれないか」

大学2年まゆより2歳上の大学生は真面目な顔で交際をプロポーズを求めた。


この積極的なアタックがバイト仲間にわかり皆んなでなんとか結びつけつやろうやとなる。


まゆはちょっと戸惑っていたが、

「悪い人ではないわ。親切な先輩だから」

まゆは小さく頷き交際は始まった。大学生は喜んで万歳をした。


まゆの彼氏になった大学生は4年を卒業をすると家業の浜名湖養殖を継ぐことになっていた。養殖内容はうなぎ・はまち・ふぐ・すっぽん。年商50億〜100億円。水あげ高にばらつきがあるのは自然に左右されるから。

「エッこんなに稼ぐの」

学生の父親は浜名の名士さん。だから息子さんは御曹司だった。


学生の身分を知り今度はまゆが夢中になる番だった。

「アルバイトなんて辞めちゃうかな。早目に花嫁修業しないといけないなあ」

ちょっとちょっと。


あみお嬢様大学2年の春のことだった。父親に呼ばれる。

「なんですのパパ」

と娘あみは父親の元に行く。


父親はにこにこしながら

娘を見る。

「あみ早いもんだなあ。お前も20歳に今年なるんだ」

産婦人科医の父親はリビングに娘のあみを呼び卓台の上にポンとなにやら書類のようなものを置く。なんでしょとあみは中身を見る。

「えっ、お見合い写真」

あみが手にした写真には東大医学部の若手産婦人科医がニッコリと微笑んでいた。


あみはジィ〜と眺めたまま石になってしまった。

「東大医学部で次男さん」

見合い相手は父親同士が医学部の同窓だというよしみだった。

「だからあみ。来日曜は俺について一緒に、金沢の産婦人科学会にきてもらうよ。向こうさんも息子さんが来るからね。お父さんは医学部の同期だからなんでもないが。ハハなに見合いだと重苦しく考えなくてもいいさ。ちょっとパパのお供をして金沢に来ました。娘のあみでございます。あら偶然に金沢で逢いましたね。あらまたこちらが息子さんでございますか、そんな程度でいいさ」


それからあみは長い一週間を過ごすことになる。

「ちょっと美容院に行こうかな。エステサロンはどうかなあ、今から一週間だから間に合うかなあ」

頭の中は見合い写真のことでいっぱいになる。


あみはいきなり青春をし始めた。恋する女子大生あみ。

「えっーやだあ。変なこと言わないで」

真っ赤になりながら父親と金沢行きを楽しみに待っていた。


子役の成長株はチャコである。附属幼稚園〜初等科と子役として名を売ってきた。

「はーい皆さん、チャコでーす。今は20歳を越えて女優さんしています」


チャコは附属小の時代からテレビドラマ"渡鬼"のピン子の娘役として活躍をしていた。はまり役は見事な金的を射る。


泉ピン子の顔にソックリなことが幸いして見る見るうちにお茶の間の人気者。ファンもつきピン子のお嬢様と呼ばれて親しまれていた。悪口としてはピン子が引退したらそのままピン子の代打で行けるとも。

「ピン子2世なんてねイッヒヒ」


そのピン子お嬢様が中学から高校になると、「共演のえなりかずきくんの彼女役さんになるのね。皆さんがお似合いさんですよと言ってくれたの。嬉しかったなあ。チャコは幸せさんどす」


チャコの今の肩書きは橋田ファミリーの一員。大御所ピン子お嬢様2世でいるかぎり女優としては食いっぱぐれはないとまでいわれている。

「チャコは女優の道を歩むんですわ。ノシノシ」


そのチャコにロマンスが生まれる。

「アチャア、ばれちゃったかな」


えなりかずきとチャコの熱愛が発覚してしまう。ふたりで深夜仲良くデートがばれた。

「いゃーんばれたわあ」


まっ、とにかく発覚したらしい。


芸能プロダクションの支配人雅人。2人の父親雅人は上の娘さんが子役として活躍をしていた。

「子役もね。他人の子があれこれ演技してもあまり関心なかった。これが自分の娘が演技をして子役の力量を問われたら」

雅人は芸能プロダクションの支配人よりも実娘のステージパパになりたいと考えていた。

「あの泣き虫な上の娘がちゃんとセリフを覚えて演技する。親としてはたまらない幸せを感じるなあ」

娘さんは父親譲りのサービス精神を発揮し子役の地位を固めていく。

「この娘は小学から中学と成長するけど女優さんになれるかどうかは疑問だなあ。なんせ親が親だからさ」

長年の経験から子役の将来はその親を見れば大抵想像がつく。

「決して高望みはしないこと。子供は親を越えることはない」

雅人は実娘の子役のファイルをパタンとしめた。


今夜は残業だなあと呟き手短にあるインスタントコーヒーをいれる。

「さて。附属幼稚園の新しいおこちゃまのファイルからチェックしていくかな。来年のドラマに欲しい子役を見つけなければならない。えっとファイルはどこだった。面倒だなネットで検索するか」

インスタントをすすりながら雅人は新しい子役を見つけていく。


ー了ー

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