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蜂蜜  作者: 杉浦 澪
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ーstory 1ー

季節は夏。八月の暑い夜。

私は友達の由宇と一緒に花火大会に来ていた。

この花火大会は由宇の地元で、花火の規模もなかなかのものだという。

夏が来ると浴衣が着たいと騒ぎ出す私を大人しくしようと、由宇が誘ってくれたのだった。

花火大会の夜。

今年最初の浴衣を着て、会場となる公園へ向かった。

途中由宇から遅れるとメールがきて、由宇が来るまでの小一時間、独りで暇を持て余すこととなった。

決して狭くはない公園もこの日だけは何処も狭かった。

隙間なんかないんじゃないかと思えるような公園内を無理矢理歩く。

花火大会はとうに始まっているから、頭上では休みなく割れるような爆発音が響き、濃紺の空には色とりどりの光が咲いていた。

擦れ違う人は友達同士だったり、家族だったり。

でもやっぱり一番多いのは恋人同士だ。

愛し合う二人が逸れないよう、しっかりと互いの手を握っている。

どの人にもちゃんと一緒に居る相手がいる。

独りぼっちなのは私だけだ。

皆が幸せそうで楽しそうなこの空間は、私をひたすらに孤独にさせた。

私がこんなに寂しいとき、一体彼は何をしているのだろう。ふと、あの彼のことが気になった。

いや、何時だって気になってはいたけれど、このときは無性に彼と繋がりが欲しくなったのだ。

もう、一ヶ月近く電話もメールもしていないのに。

もう、私達は終っているかもしれないのに。

頭では連絡するべきじゃないって解っていた。

だけどこの孤独な空間に耐えられなくって。

少しでも彼に救って欲しくて。長い沈黙を破り、彼にメールを送った。

「今日は花火大会に来ています。今、何をしていた?」


嫌な感じの緊張が体を包む。

「今は友達と飲んでる。」


昔に比べて確実にそっけなくなっているメール。

それでも彼が返信をしてくれただけで嬉しかった。私の孤独が少し薄れる。

「そうなんだ。じゃあ邪魔しちゃったかな?楽しんできてね。飲みすぎには注意!」


大きな木の下でこっそりと愛する彼にメールを送る。

少しだけ恋人気分だ。私の恋人はやっぱり彼しか居ない。

そうして彼からの返信を待った。五分…十分…

彼からのメールは届かなかった。

そうだった。

私達はもう結末に辿り着いてしまったんだった。

私は恋人なをかじゃないし、もう彼を好きでいてはいけないんだ。

思い出したらさっきよりも暗い孤独感に襲われた。

そうだった。私は独りだったんだ。

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