第37話「三極の閃光、土鬼の終焉」
第37話「三極の閃光、土鬼の終焉」
「……計算は終わった。ハルト、片倉、私の指示に従え!」
《真・皇龍》のコックピットで、氏胤が叫ぶ。前には北条重工の全リソースを投入したリアルタイムの弾道予測が広がっていた。
《土鬼》の質量は、都市の瓦礫を取り込むことで無限に膨れ上がり続けている。だが、肥大化した肉体には必ず結合の結び目が存在する。
「片倉、貴様のその爪で土鬼の左脚——重力制御の基部を叩け! ハルト、貴様は魔導の糸で奴の磁気回路を一時的に遮断しろ!」
「……命令形かよ。だが、その作戦——乗ったぜ!」
「一を、限界まで積み上げる——それが俺と相棒の全開だ!!」
漆黒の熊が、重力波の渦を強引に突破し、土鬼の足元へ潜り込む。赤熱化した右爪が土の巨人の膝を爆砕した。
バランスを崩す土鬼。すかさずハルトのブラック・マギが杖を掲げた。紫の光が土鬼の全身を駆け巡り、磁力による修復機能を遮断した。崩れた瓦礫が、二度と元に戻ることなくパラパラと剥がれ落ちていく。
巨躯が、ついにその心臓部をハルトたちの前に晒した。
「北条の論理が、この盤面を支配する——証明してやろう」
氏胤の真・皇龍の三門の砲門が、臨界点に達する。
「排除する。計算通りに」
白銀の光が正面から貫く。漆黒の衝撃が左から砕く。紫の魔力が右から刻む。三色の奔流が一本の巨大な槍となり、土鬼の胸部を貫いた。
轟音。山のような巨体が内側から弾け飛ぶ。爆風が都市の雲を消し飛ばし、一瞬だけ青い空が顔を覗かせた。
土煙が晴れた。ハルトは肩で息をした。
……終わった、と思った。
「あはは! すごい、すごいよ! 三つの伝説が揃うと、こんなに綺麗な花火になるんだね」
アサヒは瓦礫の山の上で、掠り傷一つ負わずに笑っていた。
「月、火、水、木、金、土。……これで六つが揃った。……ねえ、知ってる? 日曜日は『休み』じゃないんだよ」
これまで倒したはずの六体のマブイが、光の帯となって天に昇り、太陽を覆い隠していく。
「日曜日はね……すべてをリセットして、新しい世界を『創る』日なんだ」
目を背けたくなるほどの光の巨体が、空に現れた。白熱するプラズマを纏った、これまでの鬼たちとは次元の違う影——《日鬼》。
パキリ、という音がした。
ハルトは懐に手を当てた。メダルが——割れている。
(将軍?)
答えは、なかった。
「——絶望の『正午』へようこそ、ハルトくん」
アサヒの声が響くと同時に、街のすべての色が失われ、白熱の地獄が始まった。




