第27話「新生、メタルブラックベア」
第27話「新生、メタルブラックベア」
路地裏を埋め尽くす、漆黒の殺気。《黒龍》の瞳が赤く輝き、レアハンターの《サイレント・リーパー》を噛み砕こうと顎を開く。
その牙がレアハンターに届く直前——片倉の自我が、狂気の淵で踏みとどまった。
(……待て。食い殺しちゃ、俺はあいつらと同じになっちまう)
美咲の顔が浮かんだ。あの子の前に、胸を張って戻れない。それだけは、嫌だった。
(龍よ。お前が飢えてるのは分かった。だったら、俺の凡骨の魂を燃料にして——その飢えをねじ伏せてやるッ!!)
自我を代償にすることを拒んだ。
代わりに、レバーを握りしめた。泥を啜った全ての一歩を思い出しながら。密林の戦いも、黄兄弟の盤面も、アヌビスの爆風も——全部、この機体と共に歩んできた履歴だ。その全てを、《黒龍》の中枢へと流し込む。
《黒龍》の咆哮が、驚きを含んだ音へと変わった。
砕け散ったアイアン・ベアの重厚な装甲が、磁力に引かれるように黒龍の骨格へと吸い付いていく。呪いの黒きマブイが、鈍色の装甲を黒染めにし、硬度と重さを与えていく。《黒龍》の狂暴な出力を、アイアン・ベアの重厚な外骨格が受け止め、安定させる。
土煙の中から現れたのは、龍でも重機でもなかった。
漆黒の鏡面装甲。
背中には、龍の翼を模した巨大な蒸気スラスター。
右腕には、真鍮の巨大な爪。
異形の、黒き熊。
「馬鹿な……。呪いの機体を、ガラクタと融合させて——制御しただと……!?」
レアハンターの三つのレンズが、同時に割れた。
その黒き熊が一歩踏み出した瞬間、路地裏のアスファルトが同心円状に砕けた。
出目は——計測不能。
「……凡骨の意地、たっぷり味わいやがれッ!!」
巨大な爪が、レアハンターの「詰みの盤面」ごと、紙のように切り裂いた。




