第24話「蒼き閃光と、鉄の対価」
第24話「蒼き閃光と、鉄の対価」
都市全体が巨大な盤面と化したプロリーグ。
交差点のホログラムが開始の光に切り替わる直前、ハルトの前方に一台の青い機体が滑り込んできた。
蒼井レンの《閃光》。最新の軽量チタンフレームに高出力マブイ・ブースターを搭載した、速度の化身だ。
「……五〇〇五。そのボロが、プロのライセンスを持ってるなんて冗談だろ」
レンが、操縦席からハルトを見下ろす。「時間は有限だ。速い者だけが前に進む権利を持つ——それが私の信念だ。……負ける理由が、俺にはない」
その言葉の奥に、何かがある気がした。しかしハルトが考える間もなく、レンが続けた。
「プロリーグの公式戦はすべてアンティ・ルールで行われる。勝った方は、負けた方のメダルと機体を丸ごといただく。……ライセンスを登録した時点で、お前の相棒は賭けのチップになったんだ」
ハルトは息を呑んだ。
機体を賭ける。負ければ、じいちゃんと積み上げてきたあの真鍮の歯車も、二度と模型店には戻れない。
「ハルト、乗っちゃだめだ!」
後方から、セナが叫ぶ。「そのヴィンテージ機はまだ調整が終わってない! マブイの伝導速度で負ける——機体を奪われたら、おしまいだよ!」
「……わかってるよ、セナさん」
ハルトは、汗ばむ手でレバーを握り締めた。逃げ道はない。この街でプロとして戦うと決めた時から、この鉄の対価は避けられなかった。
(じいちゃんと一緒に積み上げてきたこいつを、渡すわけにはいかない)
懐のメダルが、深い地の底から響くような熱を帯びた。
「いいぜ……受けてやる。その代わり、お前のその速すぎる機体、俺が止めてやるよ」
「開始!!」
ホログラムの号令と同時に、蒼井レンの《閃光》が一瞬でハルトの視界から消えた。
「——遅ぇんだよ、五〇〇五!」
「一、二、……っ、速すぎてカウントが追いつかない!?」
ハルトのヴィンテージ機の装甲が、回避が間に合わず弾け飛ぶ。
(——待て。速すぎて読めないなら、速さの後ろを読めばいい)
その考えが頭をよぎった瞬間、次の衝撃が来た。




