表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくりすごろく-将軍の覚醒-  作者: 水前寺鯉太郎
からくりキングダム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/43

第13話「黄金の城・黄兄弟」

第13話「黄金の城・黄兄弟」


 密林の湿り気を帯びた闇を抜けると、黄金の静寂が広がっていた。

 黄金の城。入り口となる大広間は天井が見えないほど高く、壁面には幾何学的な装飾が施されている。その煌びやかさは、死者の埋葬品のような冷たさを湛えていた。

 「……趣味の悪い場所だな」

 片倉が《アイアン・ベア》の装甲を軋ませ、周囲を警戒する。ハルトはヴィンテージ機を走らせながら、ふと足を止めた。

 広間の白磁の壁に、鋭い爪で引き裂いたような紋様の傷跡が刻まれていた。新しい傷だ。懐のメダルが、わずかに震えた。なぜこの傷にメダルが反応するのか——思考を深める時間は、与えられなかった。

 「止まれ。これより先は『王』の領域だ」

 前方から、二体の機体が影から滑り出すように現れた。双発機《比翼》。一方に燃えるような赤、もう一方に氷のような青のラインが走っている。操縦席に、兄・志遠と弟・志来が座っている。

 「ここを通るには、貴様らの命を置いていってもらう」

 兄の志遠が告げる。その声は深い諦念に満ちていた。

 ハルトはモニターを拡大した。二人の瞳が、半分だけ色が抜け、灰色の澱みが混じっている。

 「更生局に……マブイを抜かれたのか?」

 「半分だけな」

 弟の志来が、感情を削ぎ落としたような声で答えた。「エジプト卿に半分を預け、残りの半分で命を繋ぐ。負ければ、残りも没収される。我らにとって敗北は『死』だ」

 懐のメダルが冷えた。

 『……退け、小僧。この程度の「半端者」に歩みを止めさせるな』

 将軍の短い一言。

 (黙れ——まだ、戦い方が見えていない)

 ハルトは将軍を内心で遮った。目の前の二人が「何と戦っているか」を、まだ分かっていなかった。

 「……ふざけるな。そんな戦い、間違ってる!」

 「正しいか否かは、盤上の出目が決める。……行くぞ、ジーライ!」

 「了解、兄さん!」

 赤と青の二機が完璧なシンクロで突進してくる。兄が前線を張り、弟がその死角からダイスを滑り込ませる。波状攻撃に翻弄され、ハルトは一歩ずつ後退する。

 その時、弟・志来の機体が一瞬だけ動いた。兄をかばうように、自分の機体を前へ滑り込ませた——ほんの一瞬、コンマ二秒だけ。その分、志来のカバーが遅れた。

 「ハルト! わかったか! 右の赤が動いてから、左の青が反応するまでに空白がある。そこを叩け!」

 片倉の声が後方から来た。

 (そうか——弟が兄をかばおうとするから、連携に隙ができる)

 ハルトはヴィンテージ機の歯車を低速で噛み合わせた。

 兄・志遠の突きを、最小限の回避で流す。その瞬間——コンマ二秒の空白。

 「今だッ!」

 ヴィンテージ機の腕を、その隙間へと差し込んだ。直接、相手の乱れを突く一撃。

 ガガッ! と重厚な音が響き、赤の機体がバランスを崩す。連鎖して青の連携も崩れ、二体が重なり合った。

 「……な、ぜだ。計算上の隙はなかったはずだ」

 「計算じゃない」

 ハルトはレバーを握る手に力を込めた。「半分しかないマブイで、それでもお互いを守ろうとしてる。……その必死さが、動きに出てるんだよ」

 「…………」

 志遠が黙った。

 「……兄さん。この少年、もしかして……」

 「…………ああ。わかっている」

 志遠が、折れかけた姿勢から機体を立ち上がらせた。

 「……まだ、終わらせない」

 ハルトは静かに言った。「あんたたちが、自分の意志で動けるまで」

 ヴィンテージ機の歯車が、再び重く鳴り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ