第8戦 追われる者たち
共和国の決断は、早かった。
「適合兵反乱分子に対し、討伐命令を発令する」
それは声明というより、処分通告だった。
デイビット軍の蜂起を理由に、すべての適合兵が危険因子として扱われる。
区別はない。
従っていようと、逃げていようと、関係なかった。
――半獣は、排除する。
それが国家の結論だった。
――――――
最初に異変を察知したのは、ケビンだった。
「足音が多すぎる」
「……軍か」
森の奥、野営地の空気が一変する。
次の瞬間、銃声が響いた。
「共和国軍だ! 包囲されてる!」
ライアンは即座に判断する。
「突破する。殺すな、逃げるぞ」
理想論だと分かっていた。
だが、それでも言わずにはいられなかった。
ライオンの力を解放し、盾となる。
弾丸を弾き、進路を開く。
ケビンは影のように駆け、包囲網に穴を空ける。
ヘレンは、弓を引いた。
狙うのは人ではなく、武器だ。
銃を持つ手、脚、視界。
「……何で、こんなことに」
息を切らしながら、彼女が呟く。
答えは、誰にも分からなかった。
――――――
逃走の最中、ライアンは気づく。
共和国軍は、慣れていた。
適合兵を相手にする動きだ。
戦術も、武器も、完全に“対半獣用”。
「最初から……準備してたんだ」
ケビンが歯を食いしばる。
「勝った瞬間から、俺たちは敵だったってわけだ」
ライアンの胸に、重いものが沈む。
守ったはずの国。
その国に、狩られている。
――――――
逃げ延びた先で、ライアンは決断する。
「デイビットを追う」
「止めるってこと?」
ヘレンが問う。
「それしかない」
デイビット軍が存在する限り、討伐は止まらない。
反乱の象徴を消さなければ、適合兵は皆、処分される。
「共和国にも、デイビットにも、つかない」
「……どこにも居場所がねえな」
ケビンが苦笑する。
「それでいい」
ライアンは言った。
「俺たちは、俺たちの戦いをする」
――――――
その夜、遠くで炎が立ち上る。
デイビット軍の痕跡だ。
ライアンは、かつて剣を置いた手で、再びそれを握る。
今度は祖国のためではない。
命令のためでもない。
「人として終わるためだ」
ヘレンは弓を背負い、ケビンは深く息を吸う。
追われる身でありながら、彼らは前へ進む。
共和国軍から逃げ、
デイビット軍を追い、
二つの敵の狭間で。
戦争は、形を変えただけだった。




