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第7戦 デイビット軍始動

それは、追手というより使者だった。


森の中、焚き火の煙がまっすぐ上がる夜。

気配を隠すこともなく、三つの影が姿を現した。


「……出てこい、ライアン」


名を呼ばれ、ライアンは立ち上がる。

暗闇の向こうに見えたのは、見覚えのある顔だった。


「マーク……?」

「久しぶりだな」


マークは、かつて同じ部隊で戦った適合兵だった。

彼の背後には、狼と熊の能力を持つ二人。

どちらも、戦争を生き延びた仲間だ。


「安心しろ。殺しに来たわけじゃない」

「なら、何の用だ」


ケビンが一歩前に出る。


マークは静かに言った。

「デイビットが、俺たちを集めている」

「……復讐か」


「違う」


マークは首を振る。

「新しい国を作る。適合兵が、人として、いや……それ以上として生きられる場所を」


ライアンは黙って聞いていた。

その言葉が、どれほど甘く、危ういものか分かっていたからだ。


「ワクチンも、確保できる」

「エリザベスがいる」


その名が出た瞬間、ライアンの表情が変わる。


「……彼女を、どうした」

「保護してる」


マークはそう言った。

だが、その言葉に信じられる響きはなかった。


「デイビットは、変わった」

「それでも、あいつは俺の友だ」


ライアンは答える。

「だが、俺はもう戦わない」

「お前もか」


マークは苦く笑った。

「力があるのに、使わないのか」

「力があるから、使わない」


沈黙が落ちる。


ヘレンが、弓を引いた。

「話は終わり?」


マークは彼女を見て、初めて眉をひそめた。

「……人間か」

「だから?」


その瞬間、空気が張り詰めた。


「拒否するなら、連れて行く」

「無理だな」


ケビンが、地を蹴った。


――――――


戦いは、一瞬だった。


チーターの速度が、狼の喉元に迫る。

熊の拳が大地を割るが、ライアンが正面から受け止めた。


「やめろ!」

ライアンの咆哮が響く。


「俺たちは、同じだろ!」


だが、返ってきたのは牙だった。


彼らは知っている。

この世界に、居場所はない。

だからこそ、デイビットの言葉に縋った。


ライアンは剣を振るう。

致命傷は避け、骨を砕き、動きを封じる。


「……すまない」


最後に立っていたのは、マークだった。

肩で息をしながら、ライアンを睨む。


「お前は……優しすぎる」

「それでいい」


マークは笑った。

「次は……こうはいかない」


三人は森の闇へ消えた。


――――――


焚き火が、静かに燃えている。


「仲間、だったんだな」

ヘレンが言う。


「ああ」

「それでも、止めた」

「……まだ、戻れると思ってる」


ケビンは黙っていた。

自分も、少し前まで同じ立場だったからだ。


遠くで、獣の咆哮が響く。

それは、ただの動物のものではなかった。


デイビット軍は、動き出している。


そしてライアンは知る。

もう、逃げることは許されない。


追われる側から、立ち向かう側へ。

戦争は、終わってなどいなかった。

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