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第21戦 炎は、命を照らす

牢獄は、静かだった。


炎の気配が、常に満ちている。

壁は焼け焦げ、床には無数の実験痕。


その中央に――


エリザベスは、いた。


鎖に繋がれ、

背中には、淡く燃える翼の影。


「……来ないで」


弱々しい声。


ライアンは、足を止めた。


「エリザベス」

「迎えに来た」


彼女は、ゆっくりと顔を上げる。


「……来ちゃ、だめ……」

「私は、もう――」


「人だ」

ライアンは、即座に言った。

「今も、これからも」


鎖が、震えた。


「……嘘」

エリザベスの瞳が、揺れる。

「私は……何度も、死んだ」

「焼かれて、裂かれて……」


「それでも、戻された」


声が、震え始める。


「私の命は……」

「もう、私のものじゃない」


――――――


警報が、鳴る。


「時間がない」


ライアンは、鎖に手をかける。


その瞬間。


エリザベスの身体が、燃え上がった。


「――っ!」


炎が、爆ぜる。


ライアンは、弾き飛ばされる。


「近づかないで!」

エリザベスが、叫ぶ。

「私の意思じゃない……!」


フェニックスが、目を覚ましていた。


翼が、完全に顕現する。

灼熱が、空間を歪める。


「……殺して」

エリザベスは、泣きながら言う。

「私が、怪物になる前に」


「――ふざけるな」


ライアンは、立ち上がる。

全身を焼かれながら。


「俺は」

「二度と、誰も見捨てない」


――――――


敵が、なだれ込む。


適合兵。

炎に耐えられる者だけが、前に出る。


「ライアン!」

ヘレンの声が、通信に割り込む。

「時間が――」


「分かってる!」


ライアンは、剣を振るう。

焼ける。

斬る。

倒れる。


致命傷。


何度も、倒れる。


そのたびに――


炎が、彼を包む。


「……?」


傷が、塞がる。

血が、引いていく。


エリザベスの瞳が、見開かれる。


「……私の、力……?」


「貸してもらう」

ライアンは、微笑んだ。

「必ず、返す」


――――――


最後の敵が、倒れる。


牢獄に、静寂が戻る。


エリザベスの炎が、弱まる。


膝から、崩れ落ちる。


「……ごめんなさい」

「私は……」


ライアンが、抱き留める。


熱い。

それでも、離さない。


「代償があるんだろ」


エリザベスは、震えながら、頷く。


「……フェニックスは」

「命を、燃やす力」


「癒すほどに」

「時間が、減る」


「あなたに継承したら……」

「私の“終わり”は、早まる」


ライアンは、黙って聞いていた。


「それでも」

エリザベスは、泣きながら言う。

「あなたを、失うより――」


「十分だ」


ライアンは、彼女の額に触れる。


「俺は、その時間で」

「終わらせる」


――――――


外へ出る。


夜空に、火の粉が舞う。


エリザベスは、歩けない。

翼は、半分、消えている。


「……ごめんね」

「私、もう……」


「言うな」


ライアンは、彼女を背負う。


「お前は、生きた」

「それだけで、いい」


遠くで、炎が上がる。


デイビットの気配だ。


エリザベスは、目を閉じる。


「……勝って」

「人として……終わって」


「約束する」


ライアンは、前を見る。


不死の力を背負って。

終わりを、知りながら。


それでも、進む。


炎は、命を照らす。


だが――

永遠では、なかった。

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