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第2戦 適合兵
ライアンが初めて適合兵として戦場に立った日、空は異様なほど澄んでいた。
耳元で風が唸り、血と火薬の匂いが混じり合う。
体の奥で、ライオンの鼓動が脈打つのを感じた。
合図と同時に、彼は地を蹴った。
人間ではあり得ない跳躍。
人間では振るえない腕力。
咆哮とともに、敵陣へと突き進む。
その瞬間だけ、彼は“適合兵”だった。
戦闘が終われば、再び人に戻る。
鎧を脱ぎ、武器を置き、仲間と同じ飯を食う。
夜になれば、焚き火を囲んで他愛のない話をした。
「戦争が終わったら、どうする?」
そんな問いが、何度も交わされた。
デイビットは笑って言った。
「とりあえず、腹いっぱい肉を食う」
トラの力を宿す彼は、いつも前線に立ち、誰よりも派手に戦った。
ライアンは答えなかった。
戦争の終わりを想像すると、胸の奥がざわついた。
適合兵でなくなった自分を、社会が受け入れるとは思えなかったからだ。
彼らは知っていた。
戦場では怪物であることを求められ、
戦場を降りれば、人間であることを求められる。
その狭間で、適合兵たちは生きていた。
そして、誰もが薄々気づいていた。
この戦争が終わった時、自分たちの居場所は、どこにもないのではないかと。
それでも彼らは戦った。
今日を生き延びるために。
隣にいる仲間を守るために。
そして、戦争が終わる日を、信じるために。




