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第20戦 かつての名を呼ぶ

灼けた大地に、炎が揺れていた。


空が赤い。

大気が、重い。


ライアンは、剣を握りしめ、一歩踏み出す。


その正面――


翼を畳み、炎を纏った男が、そこにいた。


デイビット。


人の形をしている。

だが、もう、人ではない。


「……来たのか」


低く、響く声。


「何をしにきた」


ライアンは、答えるまでに、ほんの一瞬だけ時間を置いた。


「――戦友を止めるためだ」


炎が、揺らいだ。


「……戦友?」


デイビットが、嗤う。


「まだ、その言葉を使うのか」

「俺たちは、もう――」


「人だ」


ライアンは、被せる。


「少なくとも、俺はそうだ」


沈黙。


風が、火の粉を運ぶ。


「……変わらないな、ライアン」

「お前は、最後まで甘い」


「変わったさ」

ライアンは、剣を構える。

「だから、ここにいる」


――――――


デイビットの翼が、広がる。


熱風が、吹き荒れる。


「なら、止めてみろ」


次の瞬間。


炎が、世界を裂いた。


ライアンは、跳ぶ。

地面を転がり、間一髪で回避する。


「……っ!」


熱が、皮膚を焼く。


「どうした」

デイビットが、空へ舞い上がる。

「戦争では、こんなものじゃなかっただろう」


「……あの時は」

ライアンは、歯を食いしばる。

「お前が、隣にいた」


――――――


衝突。


ライアンの剣が、デイビットの鱗を叩く。


火花が散る。


だが、通らない。


「軽い」


デイビットの拳が、ライアンを吹き飛ばす。


「――っ!!」


地面に叩きつけられ、息が詰まる。


「なぜだ、ライアン」

「なぜ、俺の側に来ない」


「……分からないのか」


ライアンは、立ち上がる。

血を吐きながら。


「お前は、守るためじゃなく」

「焼くために力を使っている」


炎が、荒れ狂う。


「守った結果が、これだ!」

デイビットが、咆哮する。

「英雄は、化物と呼ばれた!」

「居場所なんて、どこにもなかった!」


「それでも――」


ライアンは、叫ぶ。


「人でいる道は、あった!」


――――――


一瞬。


本当に、一瞬だけ。


デイビットの炎が、弱まった。


「……まだ」

「そんな夢を……」


その隙を、ライアンは見逃さない。


全力の突進。

剣が、鱗の隙間を捉える。


「――ぐっ!」


血が、飛んだ。


初めて。

デイビットが、後退する。


「……やるじゃないか」


だが、次の瞬間。


炎が、爆発する。


ライアンは、吹き飛ばされる。


立てない。


剣を、支えにする。


「……これが」

デイビットが、見下ろす。

「神話の力だ」


翼が、再び広がる。


「次は、殺す」

「その覚悟で、来い」


デイビットは、背を向けた。


炎の中へ、消えていく。


――――――


ライアンは、その場に膝をついた。


負けた。


圧倒的に。


それでも――


「……まだだ」


剣を、握り直す。


「お前を止める」

「人として、終わらせるために」


炎は、遠ざかる。


だが、戦いは――

もう、避けられなかった。

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