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第15戦 空を制する者

夜明け前、作戦は始まった。


風向き、地形、敵の補給線。

すべては計算通りだった。


「来るぞ」


ライアンは、森の中央に立つ。

あえて姿を隠さない。


ライオンの気配を、全開に放つ。


――餌は、ここだ。


ほどなく、空気が震えた。


「……羽音?」


ケビンが顔を上げた瞬間、影が落ちる。


「上だ!」


空から、二つの影が降りてくる。


石の翼を広げ、重力を無視する存在。

――ガーゴイル、ダン。


その背後、さらに高空。

滑空するように旋回する影。

――ワイバーン、マイク。


「最悪の組み合わせだ……!」


エリックの声が、通信越しに歪む。


――――――


作戦は、“地上戦”を前提にしていた。


囮で引きつけ、

攪乱し、

近距離でワクチンを打ち込む。


だが――


「近づけない!」


マイクが上空から火炎弾をばら撒く。

地面が爆ぜ、退路が燃える。


ダンは落下衝撃で大地を砕き、即座に立ち上がる。

弾丸を弾く石の皮膚。


「地上と空……!」

ヘレンが歯を食いしばる。

「連携してる……!」


ケビンが走る。

影を裂き、ガーゴイルの死角へ――


「遅い」


ダンの翼が叩きつけられる。

衝撃で、ケビンが吹き飛ばされる。


「ケビン!」


ライアンが突進する。

正面から、ガーゴイルにぶつかる。


拳が、石にめり込む。

だが――


「……硬すぎる」


反撃の一撃。

ライアンは、地面を転がった。


――――――


上空から、マイクが笑う。


「いい作戦だ」

「でも、見上げる癖がなかったな」


火炎が、降り注ぐ。


煙弾を投げるが、意味がない。

上から見下ろされている。


臭気矢も、風で拡散される。


「撹乱できない……!」


エリックの判断は早かった。


「撤退だ! 全員、散開しろ!」

「これ以上続けたら――」


間に合わなかった。


ダンの拳が、地面を砕く。

爆風で、ヘレンが弾き飛ばされる。


「ヘレン!」


ライアンが抱きとめる。

だが、次の瞬間――


轟音。


マイクの急降下。

直撃は避けたが、衝撃で意識が白くなる。


「……っ、クソ……!」


作戦は、崩壊した。


――――――


撤退は、敗走だった。


誰も死ななかった。

それだけが、救いだった。


野営地に戻った後、重い沈黙が落ちる。


「……俺の判断ミスだ」


ライアンが言った。


「幻獣は、役割分担をしている」

エリックが続ける。

「地上制圧と、空間支配」


「神話ってのは……」

ケビンが、乾いた笑いを漏らす。

「ちゃんと、戦争してるんだな」


ヘレンは、握った弓を見つめていた。


「……私、空を撃てない」


その言葉は、静かだったが、重かった。


――――――


ライアンは、空を見上げる。


翼。

それは、完全な誤算だった。


「……でも」


彼は、拳を握る。


「分かったこともある」

「奴らは、完璧じゃない」


「どういう意味だ?」

エリックが問う。


「連携してるってことは」

「切り離せば、弱体化する」


地図を広げ、ライアンは指を置く。


「一体ずつ、引きずり下ろす」

「空から、地面へ」


その言葉に、エリックは頷いた。


「次は、殺しきる」


神話は、空を支配する。

ならば――


人間は、罠を張る。


敗北は、終わりじゃない。

学習だ。


だが、この失敗が、

さらに大きな悲劇を呼ぶことを、

まだ誰も知らなかった。

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