第10戦 幹部誕生
地下施設に、異様な静けさが満ちていた。
培養槽が開き、一人の男がゆっくりと立ち上がる。
全身を覆う黒い装甲のような皮膚。
背後には、岩の翼。
「……ダン。ガーゴイル型、適合完了」
次いで現れたのは、細身の男だった。
背から伸びる膜翼。
鋭い爪と、爬虫類の瞳。
「マイク。ワイバーン型、適合完了」
女が笑いながら、床に降り立つ。
その背後で、複数の首が蠢く。
「リリー。ヒドラ型、適合完了」
「首は……七つ。再生、確認」
最後に、重い足音と共に現れたのは、巨躯の男だった。
三つの首。
燃えるような瞳。
「ロズワルド。ケルベロス型、適合完了」
成功者は、四人。
デイビットは、彼らを見下ろし、頷いた。
「お前たちは、幹部だ」
「俺たちの“神話”だ」
炎が揺れる。
トラの力の奥で、ドラゴンの因子が静かに目を覚ましていた。
――――――
最初の戦場は、共和国軍だった。
討伐部隊は万全の準備を整えていた。
対適合兵用重火器。
拘束弾。
抑制ガス。
「これより、反乱分子を制圧する」
マルス将軍の声が、前線に響く。
だが、想定は“適合兵”までだった。
空が裂ける。
マイクが上空から急降下し、砲台を引き裂いた。
ダンが前線に降り立ち、弾丸を弾き返す。
リリーの首が伸び、再生し、兵を薙ぎ払う。
「効かない……!?」
「対策が……!」
咆哮が響く。
ロズワルドが突進し、装甲車を粉砕した。
共和国軍は、崩壊した。
戦術も、装備も、意味を成さない。
圧倒的な“神話”の前で、人間は無力だった。
――――――
マルス将軍は、逃げなかった。
捕らえられ、跪かされても、彼はデイビットを睨みつけた。
「怪物め」
「違う」
デイビットは静かに言う。
「俺たちは、選ばれた存在だ」
「お前たちが、選ばなかっただけだ」
将軍は吐き捨てる。
「国は……お前たちを、決して認めない」
デイビットは、少しだけ笑った。
哀れむように。
「だから、焼く」
炎が解き放たれる。
逃げ場はない。
マルス将軍は、叫ぶ暇もなく、炎に包まれ、消えた。
――――――
その光景を、遠くから共和国軍の残存兵が見ていた。
そして理解する。
もう、これは反乱ではない。
戦争でもない。
神話との衝突だ。
デイビットは、炎の中で空を見上げる。
「次は……世界だ」
彼の背で、ドラゴンの影が、確かに翼を広げていた。




