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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

その網膜に私を映して

作者: そゞろ夜
掲載日:2025/11/22

数ある作品の中から見つけて頂けて嬉しいです。

このサイトに慣れるための投稿練習を兼ねています。

 ぼんやりと意識が浮上する。陽の光が眩しくて、朝を迎える。

 頭も痛くてくるしくて、これも全部、貴女のせい。


 朝は嫌いだ。わたしにとって、それは澄みすぎている。


 世界に「おまえもきれいに在りなさい。」 と言われているような気がして、窮屈に感じて仕方がない。

 わたしはずうっと、泥の中で眠っていたいのに。


 朝は容赦ない。時計の針に追い立てられて、生きることを強制される。 ぼうっとしていると、世界においていかれてしまいそうだ。


 そんなことを考えながら身支度をして、気づけば時刻は八時丁度。


 わたしは今、自転車に乗って学校に向かっている。


 ペダルを踏んで、踏んで、踏んで、おんなじ動きを繰り返す。道を進むにつれ、だんだん増えていく制服の群れ。


 そうして周囲が同じ学校の生徒だらけになったころ、赤信号で全員止まった。


 「あっ。」


 ぼうっと前を見ていると、ふたつ年上の藤野先輩がふと目に入った。

 私にとって、だれよりも気に食わないひと。


 彼女は長くてさらさらの髪を風に泳がせて、ああ、なんて綺麗な笑顔。

 見たくない。私の視界にあなたはいらない。

 青だ。進まなきゃ。気づけば、先輩の姿はもうどこにもなかった。




 昼も嫌いだ。わたしにとって、それはハンバーガーのピクルスのようなものだ。


  急いで飲み込んでしまうことはできても、ゆっくりと咀嚼して味わうなんてことは能わない。


 わたしには友達がいないから、この時間は退屈だし、さみしい。 今日は昼食を用意できなかったから、余計に暇で。


 時間を潰すために行った女子便所を出て、濡れた手を拭ったその時———

 不意に耳に刺さる、鈴を転がすような声。


 あなたの、声。


「ねぇ、それ、半分持とうか?」


 とっさに振り向くと、可愛らしい貴女と、貴女の隣で頬を染める男子生徒が目に入る。 そして、その美しい心を象徴するかのような、素敵な台詞。


 あーあ、見るんじゃなかった。

 痛いなぁ、胸が詰まる。ねえ先輩、やめてよ。

 

 そいつにやさしくしないで。



 わたしと先輩の出会いは、三年前。


  中高一貫のここで、当時のわたしは中学一年生だった。

  偶然出会って、互いに気が合って、話す回数を重ねた。


 うまく周りと馴染めず不安だったわたしにとって、あなたは太陽だった。そうして、わたしは恋に落ちた。


 楽しい日々はあっという間に過ぎ、あなたは高等部へ。 自然と、話す回数は減ってしまった。


 その二年後、現在からみると三ヶ月前、高等部へ進んだわたしの胸は舞い踊る。


 やっと、やっと、先輩と同じ高校生!


 なのにあなたは裏切った。


 知らない男に肩を抱かれて、驚くわたしにあなたは言った。


「紹介するね、私の彼氏!」


  そうしてわたしの恋心は、傷んで、朽ちて、地面にべちゃりと落ちたのだ。


 知っている。わたしはただの後輩に過ぎなかったのだと。

  分かっている。すこし優しくされたくらいで、舞い上がるわたしが悪いのだと。

  理解っている。「普通」の恋ができなかったわたしが悪いのだと。




 夜が一番嫌いだ。 あなたのことばかり思い出すから。息が、浅くなる。


 布団の繊維をすり抜けて耳に入る、父の怒声と、母の悲鳴。

 もうとっくに慣れたはずなのに、鼓膜が脈打って気持ちが悪い。


 こんな時は、以前のようにあなたと話したいと思う。あなたの声は、怖くないから。

 たとえ状況が良くならなくても、相談すらできなくても、あなたとの他愛無い会話は確かな救いだった。


 ねぇ先輩、あなたの隣の男なんて、あなたがいなくても生きていけるでしょう。

  わたしは違うの。


 ねえ、こっちを向いてよ先輩。


 朝も、昼も、夜も、わたしの孤独をわかってはくれない。


 先生も、同級生も、家族も、あなたも、わたしの苦痛を和らげてはくれない。


わたしは、理解者のいないこの世界で日々を過ごし、ゆっくりと身罷るのでしょうね。


 そして、それでもあなたを望むのでしょう。


———おやすみなさい、愛しい人よ。


小説を初めて書いた時のものなので拙いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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