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婚約破棄されたんだけど、その後とんでもないことになった  作者: はるかに及ばない


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第七話 崩れゆく王都──三軍撤退と、第一王子の逃亡

王国暦842年 八日目──

西門での衝突は瞬く間に全戦域へ広がった。


王妃派と辺境伯軍は互いに怒号を上げ、

剣と血で道を塗りつぶすように戦い続けた。


◆◆ 王妃派 vs 辺境伯派──果てなき消耗戦


王都西門。

王妃派の騎兵が突撃し続けても、

北方兵の分厚い盾壁は崩れない。


若侯爵

「退くな! 父の仇を討つまで死ぬな!!」


北方将軍

「王妃派を押し返せ!

 この一戦を制せば、第一王子殿下の御代が来る!!」


しかし、互いの戦力は決して軽くない。

どちらも王国有数の精鋭。


結果、


前に進まない。

退くこともない。


ただ互いの血を吸い、

鉄と怒りをすり潰すだけの、

終わりなき“消耗戦”へと変わっていった。


剣が欠ける音。

槍が折れ、馬が倒れ、

怒号がかき消されていく。


若侯爵

「くそっ……押し込めぬ……!」


北方将軍

「王妃派め……化け物か……!」


両軍ともに、その場で数百の死傷者を出していた。


◆◆ 国王派、苦し紛れの“漁夫の利”


一方、王宮前で寵姫に率いられた国王派は震えていた。


側近

「寵姫様……このままでは王宮が三つの軍に踏み潰されます!」


寵姫

「だ、だって……私たちの兵は少ないのよ!?

 王妃派も辺境伯軍も、強すぎるじゃない!!」


だが、そこへ伝令が駆け込んだ。


伝令

「両軍とも、西門で激しく消耗し、動きが止まっております!!」


寵姫

「……!

 もしかして……今なら……!」


側近

「王宮軍全力で出撃すれば、

 両軍を“撃退するだけ”なら可能でしょう」


寵姫

「撃退でいい!!

 殺す必要はないわ!

 王宮に近寄らせなければいいのよ!!」


国王派は、死を覚悟した捨て身の突撃を決断した。


◆◆ 王宮軍の突撃──奇跡の撃退


王宮の正門から、一千ほどの王宮騎士団が飛び出した。


王宮兵

「王宮を守れえええ!!」


王妃派・辺境伯派

「な……国王派が……!?」

「まだあれほどの兵がいたのか……!!」


すでに消耗していた二軍にとって、

この突撃は予想外だった。


完全な不意打ち。


王妃派兵

「くっ……体が……動かない……」

辺境伯兵

「持ち場……下がれ……一度整えろ……!」


王宮軍は執拗に押し込み、

両軍の間を割って進む。


王妃派・辺境伯派は

消耗しきった状態で王宮軍の圧力に耐えられず、

徐々に後退を余儀なくされた。


しかし王宮軍もまた、多くを失っていた。


王宮兵

「こ、これ以上は……無理だ……!」

側近

「撤退だ! 寵姫様のもとへ退がれ!!」


結果──


王妃派は王都北へ後退し、自領へ帰還


辺境伯派は王都西へ撤退し、北へ帰還


国王派は王宮内へ戻るも、兵の半数以上を喪失


王都に残ったのは、


死と炎と、王宮に戻った傷だらけの王宮軍だけ。


◆◆ 崩れ落ちる三軍──王都は空洞に


王都の街道には、

重傷者が引きずられ、

市民の家は焼け、

血の川が路地に流れていた。


どの軍も勝てなかった。


どの軍も守れなかった。


王都は、ただ“死の都”へと変わった。


兵士

「……これじゃ……王都じゃねえ……地獄だ……」


誰の声かも分からぬほど、

王都は静かだった。


◆◆ 第一王子、王宮に残れず


そして。


王宮の片隅で、

第一王子レオンハルトは震えていた。


血に染まった床。

焦げた空気。

王宮の廊下に並ぶ死者。


レオンハルト

「これが……

 これが……“私のせい”……なのか……?」


侍従長

「殿下……戦はもう始まりました。

 王宮におられれば、いずれ命を狙われるでしょう」


レオンハルト

「わ、私は……どうすれば……!」


侍従長

「……辺境伯様のもとへお逃げなさい。

 北方ならば、殿下を守る兵がいる」


レオンハルト

「に、逃げる……?

 王子である私が……?」


侍従長は静かに頷いた。


侍従長

「今の殿下は王子ではなく、

 ただの“争いの火種”です」


レオンハルト

「…………!」


その瞬間、殿下の心は折れた。


リリアは泣きながら袖を引く。


リリア

「殿下……お願いです……生きてください……」


レオンハルト

「……行くしかないのか……

 これは……全部……私の……

 真実の愛などと……言い出した……

 私の……せきに……」


ついに。


第一王子は王宮を離れた。


夜明け前の裏門から。

護衛もろくにつけられず、

ただリリアと数名の侍従だけを連れて。


そして向かった。


北の果て──辺境伯のいる地へ。


王都には誰一人、

彼を引き止める者はいなかった。

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