表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたんだけど、その後とんでもないことになった  作者: はるかに及ばない


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/18

第十三話 崩れゆく玉座──王、傷を押して立つ

王国暦842年 十七日目──

氷壁砦でも白塔城でも知られていなかった、

ただひとつの知らせが王宮に響いた。


「国王陛下、意識回復!」


半ば死んだと思われていた王が、

静かに体を起こしたのだ。


◆◆ 傷だらけの国王


王の寝室。


包帯に巻かれた胸。

青白い顔。

痛みに時折声を詰まらせながらも、

王は立ち上がろうとしていた。


医師

「だめです陛下!

 傷はまだ塞がっておりません!!」


「……私が立たねば、

 この国は……滅ぶ」


侍従

「しかし……!」


「妻と寵姫が争い、

 息子たちが剣を向け合う……

 私が作ったはずの王国が……

 私のせいで崩れてゆくのだ」


震える足で、

王は寝台の端に座り込む。


「……もう、逃げぬ。

 たとえ死んでも、

 この混乱だけは……止めねばならぬ」


その姿は、

弱く、しかし強かった。


◆◆ 王、全勢力に“会談”を召集する


王の命令は、

各地へ伝令によって届けられた。


王妃派セドリック


北方軍(第一王子レオンハルト)へ


国王派(寵姫とアレク)へ


王の書状は短く、ただ一言だけ強かった。


「王都に集い、この混乱を終わらせよ。

これは“王命”である。」


歴史家は後にこれを

「王都三勢力会談」

と呼ぶ。


しかし──

この呼びかけは、

火に油を注ぐ結果となる。


◆◆ 王妃派──王妃の怒り


白塔城。


王妃は書状を読み終えると、

手にしたそれを机に叩きつけた。


王妃

「いったい何を考えているのですか陛下!?

 寵姫と、その子まで会談に呼ぶなど……!」


重臣

「しかし殿下セドリックが参らねば、

 “正統性”が問われます」


セドリックは静かに言った。


セドリック

「……行きます。

 父上は、この国を救おうとしている」


王妃

「セドリック……!

 あなたは優しすぎます!!

 会談など……罠かもしれないのですよ!」


セドリック

「それでも行かねばなりません」


王妃は歯を噛みしめた。


王妃

(……またあの寵姫の顔を見ねばならぬの……?)


怒りは、もう言葉では抑えられなかった。


◆◆ 北方軍──レオンハルトの不安


氷壁砦。


書状を受け取ったレオンハルトは

しばらく言葉を失った。


レオンハルト

「……父上が……目を覚ましたのか」


辺境伯

「殿下、会談に出られますか?」


レオンハルト

「私はもう……歩けない。

 それでも……行くべきだろうか?」


辺境伯

「殿下。

 “歩けるかどうか”ではない。

 殿下の意思を示すのです」


レオンハルトは拳を握る。


レオンハルト

「……わかった。

 私は行く。

 この戦を……終わらせるために」


しかし背後で、

北方軍の将官たちはざわついていた。


将官A

「殿下の怪我……あれでは他勢力に侮られるのでは?」

将官B

「それでも出ねば、北方が孤立する……」


将官たちの顔には不安が浮かんでいた。

忠誠と現実の狭間で揺れていたのだ。


◆◆ 国王派──寵姫の狂気とアレクの怯え


王宮。


寵姫は書状を読み終えた瞬間、

絶叫した。


寵姫

「陛下は……私の言うことを聞かずに、

 あの女(王妃)を会談に呼ぶのですかーーー!?!?」


アレク

「は、母上……

 もうやめてください……

 僕は……戦いたくない……」


寵姫

「アレクは黙っていなさい!

 あなたは王になるのです!!」


側近

(……もう会談どころではない……)


それでも寵姫派は参加せざるを得なかった。

“国王命令”は絶対なのだ。


アレクは震える手で書状を握った。


アレク

「……兄上や……セドリック兄上と……

 顔を合わせるのか……

 どうすれば……」


彼の目からは涙が落ちた。


◆◆ 三勢力、会談に向けて動き出す


三つの軍は、それぞれ王都へ向かう準備を始めた。


しかし──

誰も信じていなかった。


王妃派は“寵姫の罠だ”と思い


国王派は“王妃と北方の陰謀だ”と思い


北方軍は“他勢力に討たれる場になる”と思った


三勢力すべてが、

“相手を信用していない”状態で

王都へ向かうこととなった。


王都へ近づく各軍の陣営には

緊張と疑念が渦巻いていた。


◆◆ 王の決意


会談前夜。

王は傷の痛みに耐えながら、

玉座に体を縛り付けるようにして座っていた。


侍従

「陛下……どうかご無理はなさらず……!」


「無理をせねば国は守れぬ。

 私は……父として、王として……

 息子たちの争いを終わらせる。

 それが私の最後の務めだ」


王は震える手で剣を握った。


「……この会談で……

 誰かが血を流せば、

 私は必ずその者を罰する。

 息子であっても……だ」


その目は鋭く、

まるで死を覚悟した獅子のようだった。


◆◆ 歴史は語る


後世の歴史書は、この時期をこう記す。


「王国史上、最も危険な会談。

“王都三勢力会談”は、

もはや和平ではなく、

互いが互いを疑う情報戦の始まりであった。


ただ、当事者である三王子たちの願うところは、この争いを止めたいと一致していた……。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ