第1話 夢を追いかける
プロロロロ…プロロロロ…
部屋に起床のアラームが鳴り響く。
うう…朝は憂鬱すぎる…。
もっとベッドの中で夢を見させてよぉ。
ベッドの中ってさ、幸せすぎない?
だってさ、なんでも叶うんだよ?
夢の中なら叶わないことないじゃん?
なんでも自分の思い通りになる感じ。
私の言っている意味わかるかな…?
「梨奈ー。ご飯出来てるよー。今日はご飯食べて行かないは許さないよー。」
うるさいなぁ…。おばさん。
私は渋々起き上がって、洗面台に向かう。
顔を洗って、ご飯を食べて、歯を磨いて、制服を着て、学校に向かう。
基本的に何も変わらない朝のルーティン。
まあ、寝坊したらご飯は食べて行かないんだけどね。
登校中、幼馴染にあった。
「梨奈ー。おはよ。」
「おはよ。淳太くん。髪切った?」
「お、気づいてくれた?」
淳太は異常に仲がいい、私の幼馴染なんだけど…。
まあ彼氏にしたいかと言ったらちょっと違うかな。
優しいんだけどさ、うん。なんか違うよね。
学校に着くと、もう大学の話をされた。
まだ高校2年生だけど?
早くない?
そう思っているのは私だけらしく…。
淳太でさえも大学のことをちゃんと考えているらしく、志望校は地元の国立大学にするらしい。
でも大学なんか行ってもなあ…。
「いいかー。大学に行きたいやつは早くから勉強に対して本気を出しておけ。勉強に慣れておかないと後で痛い目に遭うぞ。」
先生…。テンプレの文章言われても…。知ってるよそんなこと。
「後悔のある選択だけはするなよ。大学にいきたいなら、勉強する。推薦が欲しいなら、今のうちに先生に媚びを売っておく。」
先生がそんなこと言っていいんかい。
「冗談だ。でも人生は一度きり。後悔だけはするな。後悔の残る選択はするな。していい後悔はやった後の後悔だけだ。」
どういう事…?
「今まで生きてきた中で、一回でも、夢を見たことはあるか。梨奈。おまえの夢はなんだ?」
私の夢…?
「ないです…。」
「本当に?今まで生きてきた中で、一度もこうなりたいって夢は持ったことがない?」
夢…。小さな頃の夢…。
「小さな頃の夢はアイドルでした。」
「へぇ。どうしてアイドルになりたかったの?」
「ステージの上でキラキラ輝いていて、誰かに元気を与えている気がして、誰かに夢を与えている気がして、そんな姿がかっこいいなって。」
「そうか、今はどう思ってるんだ?」
「今はもう諦めました。私なんか、あんなステージに立てるわけないし。」
私がキラキラのステージに立てるわけない。
私が誰かに夢と元気を与えられるわけない。
普通に暮らして、普通に就職して、普通に生きていければいいと思っている。
本当にそれがきっと幸せだから。
「諦めた理由はそれだけ?」
「はい。」
「何かを行動に移したわけではない?」
「何もやってないです。」
「何もやってないのに諦めたの?」
「はい。私はベッドの中で夢の中でアイドルになれれば十分です!」
クラス中に笑いが起きた。
ただ先生は険しい顔をする。
「やった後悔。やらない後悔。どっちの方がでかいかは、やらない後悔。夢は見るものじゃなくて叶えるもの。どちらもテンプレの文章だ。でも、このテンプレの文章は的を得ている。そしてこのテンプレの文章は多くの人の心に刺さっているかというと、それはまた違う。いい言葉だとか、感動したとか言っても、実際に行動に移すのは、ごく一部。さらにこの文章がテンプレ化されたことで、バカにする人も現れた。でもよく考えて。人生は一度きりなんだよ。」
人生は一度きり…。
「平凡な1日を過ごし続けて楽しいか?刺激のない人生でいいのか?後悔で終わる人生でいいのか?本当になりたいものにならなくてどうする。人生を面白くしないでどうする。」
人生を面白く…。
「全力でなりたいものに対して走り続けろ。面白いことだけをする人生であれ。自分の好きな事に命をかけろ。自分のしたいことだけをする人生になれ。」
自分のしたいこと…。
「もう一度聞く。梨奈。おまえは何になりたい。」
私がなりたいもの。私が本当になりたいもの。命をかけたいもの…。
それは…。それは…。
「アイドルです。キラキラ輝いていて、勇気と元気を与えられて、また誰かに夢を与えられる。そんなアイドルになるのが夢です。」
「よく言った!」
忘れていた。本当になりたいもの。というか、忘れようとしていた。何かと理由をつけて…。安定を求めて…。
でも面白くないじゃん!そうだよ面白くないんだよ!
せっかくの人生なんだもん。
一度きりの人生なんだもん。
好きなことで生きていくしかないじゃん。
「先生ありがとうございます。私なんか足掻いてみます。で、キラキラのアイドルになって、テレビで先生のこと紹介します!」
そこから、クラスメイトや先生がなんか言っていた気がするけどもうわからん。
とにかく私は今日からキラキラのアイドルを目指す!
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