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34 真相①


 アレックスは気を失ったエリーを優しく抱きかかえると、部屋の入口に向かって歩き出した。そして、ふと足を止め首を傾げると、後ろにいる二人に言い放った。


「お前たち、ルイスから話は聞いた。どう足掻こうと無駄だ。お前たちに逃げ場なんてない。——エリーにこんな思いをさせたんだ。覚悟するんだな」


 アレックスは後ろで愕然とする二人に言い捨てると、隣にいるセルジュにその場を任せ、部屋を後にした。



 エリーとアレックスが去った後、


 シャロン家の姉二人とキース、そして今にも泣きそうなマヤが騎士たちの合間を縫って部屋の中へ入ってきた。


「ねえ! エリーはどこにいるの!? もちろん無事なんでしょうね!?」

「っ! エリーお嬢様! ご無事ですか!?」

「二人とも落ち着きなさい」


 エマとマヤは、騎士達に詰め寄り問いただした。そして、エルがそんな二人を宥めている。


 キースはその場から離れると、暴れるローランを押さえ込んでいる騎士たちの近くに歩み寄った。そこには騎士たちに指示を出すセルジュがいる。キースはセルジュに話しかけた。


「エリーは...無事ですよね?」


「はい。しかし、我々がこの部屋に足を踏み入れた際に気を失われました。そのため、アレックス殿下が先ほど王族用の控室にシャロン伯爵令嬢をお連れになりました。今は、ジャンから診察を受けられているかと」


「そうですか。この二人は今から——」


 その時、キースとセルジュが話している側を通り過ぎ、エマがキャロラインに近づいた。


「ここにいるってことは...、メナール公爵令嬢! 貴女がエリーを亡き者にしようとしたのね!? こんなことして、公爵令嬢として恥ずかしくないのっ!? そんなにも王太子妃になりたいのなら、正々堂々と戦いなさいよ!」


 キースが、捲し立てるように話すエマの腕をがっしりと抑えた。 


「エマ、落ち着くんだ」


 キャロラインは一瞬泣きそうな表情になるが、慌てた様子でエマに言い返した。


「っ!......私は、王太子妃になりたいだなんて...思ったこともないわ!」


「それなら、なんでエリーにこんなことをしたのよ!」


 キャロラインはエマに責められ俯き黙り込んだ。


「…………」


 エマはキャロラインの様子を見ながら腕組みすると、「なるほど」と呟いた。


「分かったわ。アレックス殿下に想われているエリーが憎かったのね。それで、エリーがいなくなれば自分が後釜に......なるほど、そういうことね。分かったわ。よほど殿下に好意を持っていたのね」


 エマは、わが意を得たりとばかりに何度も頷いた。


 キャロラインは、エマの発言を聞くと、心外だとばかりに怒りの形相で顔を上げた。


「好意なんて持っていないわ! 私は幼子と遊んでるような方に、昔から興味はなかったわ!」


 エマはキャロラインの言葉が理解できないのか、眉を寄せながら首を傾けた。


「?? 幼子?」


 会話を聞いていたエルは、エマの耳元で、「エリーのことよ」と囁いた。エマは、隣にいるエルに振り向くと、「そうなの?」と聞きながら驚きの顔を見せる。 

 

 そんな二人をよそに、キャロラインは辛そうな表情で口を開いた。


「——いつもいつも...仲睦まじい姿を見せられて......」


 エマはキャロラインをじっと見つめると、「仲睦まじい姿?」と彼女の言葉を繰り返した。


 その言葉に、キャロラインは顔を歪めながら叫んだ。


「どれだけ悲しかったか!」


 エマは呆れた表情で「——だから、何の話をしてるのよ?」とキャロラインに問いただす。


「貴女の姉とキース様よ!」


 キャロラインの言葉を聞いたエマの顔には疑問が浮かんだ。


「エルちゃんとキース様? はぁ~? エリーに関係ないじゃない!」


 エマにはキャロラインの話が理解できなかったようだ。



 ♢



 王族用の控室——


 目を覚ましたエリーは、ベッドの上で王宮医の診察を受けていた。


「シャロン伯爵令嬢、他につらいところはありませんか?」

「はい。ありません」


 エリーが頷くと、王宮医のジャンは安堵の表情を浮かべ、隣にいるアレックスに頷いた。


 アレックスもジャンに頷き返し、「念のために、夜の診察も頼む」と告げると、ジャンも当然だとばかりに頷き返した。


 ジャンが部屋から退出すると、アレックスはエリーが横たわるベッドの隣に腰掛けた。


「エリー、体が辛かったらすぐに言うんだ」

「分かったわ。すぐに言うから、そんなに心配しないで」


 エリーが微笑むと、アレックスは大きく息を吐きだした。エリーはその様子を見ると口を開いた。


「ごめんなさい。もっと慎重に動くべきだったわ」


「いや、こちらの落ち度だ。——でも、良かった。侍女からエリーがいないと聞いたときは、生きた心地がしなかった」

「侍女って、マヤのこと?」

「ああ。エリーを探していた彼女が、会場にいたポールに声を掛けたことがきっかけで分かったんだ。ポールは、謹慎させているはずのルイスが会場にいると知って探していたところでね。おかしいという話になってこちらに話がきたんだ」

「ルイスが、謹慎?」


 アレックスはエリーを見ながら頷くと、ルイスが謹慎処分を受けた経緯を話し出した。


「ポールから、ルイスがエリーの大切な侍女に婚約破棄を言い渡したという報告があったんだ。ポールは身内ということもあって、ルイスに処分を受けさせたいと申し出てきた」


「ポールさんが......」


 エリーが俯き考えてると、ドアをノックする音が聞こえてきた。




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