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27 計画


「三か月後にある舞踏会で、王太子即位と二人の婚約を発表します」


 王妃は未だ王宮の上層部への報告が済んでいない状況で、王太子即位と二人の婚約を舞踏会で発表すると明言した。


 すると、そのことを受けて、アレックスは気がかりなことについて王妃に訊ねた。


「些か急ではありませんか? まだ関係各所への報告も済んでいません」


「アレックス、陛下の体調が思わしくありません。私は、速やかに療養を取らせるつもりです。その間、あちら側に連なる方々に付け入る隙を与えてはいけません。ここは時間との戦いになります。いいですね?」

 

 話題が陛下に及ぶと、王妃の目にほんの一瞬だけ寂しげな色が浮かんだ。それを見たアレックスは、感情を抑え込み「はい」と答えた。


 まず、王妃は舞踏会を自身が主催すると述べた。その上で、準備は自身とアレックスが行い、警備に関してはセルジュが担当することになった。


「警備の責任者はセルジュに任せるわ」

「セルジュですか?......それは、この機会に騎士団内を再編するということですか?」

「ええ、そのつもりよ。後でセルジュと話をするわ。あなたもね」

「はい」


 アレックスは王妃の強い意志を感じたのか、神妙な面持ちで返事をした。


 王妃はアレックスに頷くと、次にキースに目を向けて話し始めた。

  

「キース、悪いんだけど、来週中にローレン公爵とエヴァンス公爵にご挨拶がしたいの。調整お願いね。それから上層部との会議があるわね。頼めるかしら? よろしくね」


 キースは、有無を言わせぬ物言いに「御意」と答えた。


 それから王妃はテレーズを見据えて口を開いた。


「テレーズ、エリーの準備は任せてもいいかしら?」

「かしこまりました。ご期待に応えられるよう努めます」


 王妃は頷き、「よろしくね」と答えると、エリーに視線を向けた。


「エリーは淑女科の卒業資格を来月までには取得してね。エリザベス嬢から、あとは試験だけと報告があったわね。大丈夫かしら?」


「はい。学院へはすぐに向かいます」


「そう。グレース先生には私からもご挨拶をしておくわ」


 王妃は微笑みながら頷くと、椅子に腰掛けた者たちに視線を送った。


「最後に一点だけ、気に留めておいてほしいことがあります。これまで、王位継承者が未定だったために、アレックスにも第二王子にも婚約者はいませんでした。しかし、状況が変わって、いくつかの高位貴族家からアレックスに婚約の申し出が来ています。その中でも、メナール公爵からは三回も申し出がありました。こういう時は、予期せぬ事態も起こり得ます。話しがより明確になるまでは、どうか内密にお願いしますね」

 

 それぞれが王妃の言葉に頷き、返事をして、その場は解散となった。


 

  ♢



 エリーとテレーズは馬車に乗り込み、帰路へと向かった。

 馬車の中では無言のエリーと嬉しそうなテレーズが互いに向き合って座っている。


「エリー、心配事?」


 テレーズの伺うような視線を受けると、エリーは考え事を口にした。


「違うわ。王妃様のお話を聞いて、昔のことを思い出していたの」

「昔のこと?」


 エリーは頷きながら、昔を思い返すような表情で話し始めた。


「幼い頃にエルちゃんと一緒に登城したことがあったでしょう?」

「そんなこともあったわね」

「そのとき、メナール公爵家のキャロライン様から叱責を受けたの。あのときは動揺したけれど、今振り返ると、キャロライン様の言葉は正しかったわ」 

「そう。私がもっと考えて動くべきだったわ。ごめんなさい、エリー」

「お母様は悪くないわ」

「——ふっ エルと同じことを言うのね。やっぱり姉妹ね」

「エルちゃん...。エルちゃんはすごいわ。ううん、エルちゃんだけじゃない。リザちゃんもキャロライン様も......。私よりも優秀な女性はたくさんいるのよね。......でも、殿下の隣は誰にも譲れないわ」


 テレーズは、迷いながらも揺るぎない視線を向けるエリーを見て安心したかのように微笑んだ。



 ♢



 それからしばらくすると、馬車はシャロン家のタウンハウスに到着した。

 エリーとテレーズが屋敷に入ると、エルとエマが二人を出迎えた。


「お母様もエリーもお疲れ様! 献上品どうだった? 王妃様はお喜びになられた?」

「エマ、落ち着いて。お母様もエリーも疲れているわ。話は後にしましょう? お母様、エリー、お疲れさまでした。どうぞお部屋で少しお休みください」


 テレーズは、エルから労いの言葉をかけられると、お礼を言いながら「後で大切な話があるの」と伝えた。


 一瞬目を見張ったエルが、「もしかして」と畳みかけるとテレーズは微笑みながら頷いた。


 エルはエリーを見つめながらそっと歩み寄り、力強く抱きしめた。


「良かったわね、エリー。おめでとう」

「——エルちゃん、ありがとう」


 エリーはエルにも自分の想いを知られていたことを思い出し、赤面しながらもお礼を伝えた。


「えっ、なに? 何がおめでとうなの? ちょっと、私にも教えて!」


 エリーとテレーズが部屋に戻ると、エルの語った真実にエマは愕然とし、その叫び声は屋敷中に響き渡った。



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