友だち
「ホントに大丈夫?」
今日何度目かわからない心配の声を日置さんにかけられる。
朝登校したときからずっとこの調子で、授業の合間に毎回声をかけに来ていた。
「あと部活だけだし、大丈夫だよ笑」
私は笑ってそう返す。
実際に笑えていたかは分からない。
笑顔で話すのがやっとな程、かなり疲れが来ている。
本当ならすぐにでも倒れて寝てしまいたいくらいだ。
そんな私の状態を気にかけてくれているのは嬉しいが、昼休みに少しでも寝ておこうと思ったときに来られたのは少し、ほんの少しだけ迷惑だと思ってしまった。
日置さんは私を気遣って、話したい人が他にもいるかも知れないのに私のところに来てくれている。
日置さんからの良心を迷惑と思ってしまうなんて、人の親切を有り難く思えないわたしなんて
「死んでしまいたいな」
思わず声に出てしまった。
しまったと思ったときには、日置さんがすごい顔でこちらを見ていた。
「やっぱり何かあったんだよね?昨日と全然様子違うし」
「そんなことないよw昨日の夜そういう歌詞が入ってるかっこいい曲寝るの忘れちゃうくらいずーっと聴いてて、それがまだ頭に残っててちょっと口ずさみたくなっちゃって、うっかり声に、出ちゃった、だけ、だ、よ」
私はなんとが弁明しようと、早口になりながら話す。
いつもの笑顔が崩れ、引きつった笑みに変わっていくのに気づかないまま。
日置さんはそんな私の顔を、目をまっすぐに見てくる。
見透かしてくるような視線に段々と言葉が詰まる。
ついにはたまらず目を逸らしてしまった。
「ねえ、何かあったんでしょ?話してくれない? 友だち でしょ」
友だち だから迷惑なんてかけられない
「......ごめん。」
私はそれだけ呟く。
日置さんは不安そうな顔で首を傾げた。
私は日置さんから逃げるようにその場から走り出した。
「あ!!待って!!」
後ろから聞こえる、私を呼び止める声を無視しながら。