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私のわたし  作者: Miko
5/16

期待

「前の部長さんが私のことを推薦してくれたんだ」

「へえ〜すご!やっぱり絵が上手いから?」

「そんなことないよw部長さんは周りをよく見てるからって言ってくれたかな」

以前の記憶を辿りながら応える。

筆を置いたのは不自然がられたけど、「もっと日置さんと話したいから」と言うと

照れたような笑顔を見せて色んなことを聞いてきた。

前の部長さんのこと、美術部の活動のこと、今までの作品のこと。

話すたび内容が広がっていく。それに比例するように

日置さんの興味も尽きることはなく、部員が片付けを始めるまでずっと話していた。


「話しすぎちゃった、作業止めてごめん、、」

「ううん、いっぱい話せて楽しかったしいいよ。それに私、進み一番早いから」

申し訳無さそうな日置さんに、そう言葉をかける。

実際、文化祭のポスターはあと少しで終わる。

でも、しなければいけないのはポスター制作だけではない。

部員全員の進み具合を把握したり、アドバイスをしたり、

部長としてやるべきことをすべて放棄してしまった。

良くない。無駄話でその時間をなくしたことは。

先生や部員は私に期待してくれている。

今日の行動は、信用を失ってしまうようなものではない。しかし

自分の印象、つまり親の印象を下げかねないものだった。

今日は先生がおらず、部活に来た生徒が多かったため目立たなかった。

先生や部員から注意を受けていたら、きっと今みたいにいつも通りの会話をすることができなかった。

家に招待したことを後悔した。

きっと私には悪影響だと親も言うだろう。

でも、


「許可取れたら、日にちとか連絡するね」

「うん、わかった!じゃあまたね~」

正門で別れて、今日のことを考える。

絵を描かない、勉強もしない、ただ話しているだけの時間。

少しだけ。ほんの少しだけ。

こんな時間が続いてほしいと思った。


「きっと、無駄なことなのに」

そう呟いた言葉は、誰にも聞こえず空に消えるだけだった。

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